アンダスタンド・メイビー(下) (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 346
レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122058965

作品紹介・あらすじ

故郷でのおぞましい体験から逃れるように、黒江は憧れのカメラマンが住む東京へ向かった。師匠の家に住み込みながらアシスタントとして一歩を踏み出すが、不意によみがえる過去の記憶。それは、再び心を通わせはじめた初恋の相手・彌生との関係にも、暗い影を落とし出す-。

感想・レビュー・書評

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  • 上下合わせて力が落ちなかったですね。
    前半のほうがある意味では、未熟だけど真っ直ぐさがあって、好感持てたけど…
    十代半ばにありがちな流され方もしていました。

    下巻は二年半後。
    今は憧れの写真家の助手に見事なって、家事や現像など何くれとなく世話をし、がんばって働いている20前後の女性。
    もっとも、ほめられるのは料理だけ。
    個人で撮った写真は評価されず、写真の指導はそれほどして貰っているわけではない。

    おいおい、それはやめとけ、という所も。
    男性遍歴の成り行きには、それなりの意味が。
    過去の小さな出来事のようであったことも、本人もわからないでいたことを少しずつ確認していく…

    旅立つ方向性があり、過去のこともただ放り捨てていくのではないあたりが良かったです。
    事件性も含めて、広がりを持った作品でした。

  • 上巻に比べ、重さ控えめ。下巻は喪失と再生。黒江にとって彼が神様として崇める気持ちは私自身もよくわかる。恋愛をして付き合うという事が全てではなく、離れていても大切に思うという気持ちも大切だろう。宗教団体が絡むと人間と言うのはどうしてあんなにも破滅をしてしまうのか。黒江は彌生君という存在が居たから生きてこれたのだろう。そして、仁さんの存在も大きかった。『どうか私だけの神様になって。私を許して。』という言葉に込められた思いがグッとくる。超無糖な恋愛小説だが自分と重なる恋愛観で客観的に自分自身を見た気もする。

  • 黒江、その選択はダメだよ!と、なんど声に出しそうになっただろう。読み飛ばしたくなるくらい痛々しい。
    主人公の少女・黒江の気持ちのありようも、物事のやり方も、出てくる言葉も、背伸びしようとしてつまずいたような危うさが常にある。幼さ・・・とでもいうのかな。偽成熟、という言葉が出てきたとき、ああその通りだな、と思った。(黒江をそういうふうに表現して書いてきたんだから当然だけど。)その危うさにハラハラしどおしだった。

    男女の間をとりもつのは気持ちなのか、行為なのか。必要にされたいと願うとき、求められたことを鵜呑みするのが正しいのか。救われる人がいるなら、どんな行為も許されるのか。
    いろいろな問題提起が含まれているように感じる。作者なりの答えが出ている問いもあれば、そうでないものもある。登場人物が皆、周りにいないような人ばかりだったので、登場人物よりも書き手の考えに寄り添いながら読んでいたような、と後から思った。

    仁さんと黒江の写真、どんなんだろうな。それを想像するのも、また読み味。

  • どんなに理解して欲しても、決して男の人に言葉で伝えられないし、わかってもらえない事。それが書かれています。

    他の人が何を考えているのか、全然わからなくて、何を信じたらいいのかもわからなくて、でも、あれの間だけは、確実に自分が必要とされているのがわかるから、そして、嫌われるのが怖いから、余程無理じゃなければ、人形になっているしかないとか、決して、男の人には理解出来ない、と思います。

    でも、大した事じゃない、という事にしたいからするだけで、本当は、ただ一人の人に愛されて、とても大切にされたいだけなのにね。

    そのくせ、本当は、酷い事を言いたくなんて無いのに、大切な人を傷つけずにはいられなかったり。

    自分だけの神様が欲しかった、黒江と聖良が、すごくよくわかります。

  • 幼少期からの心の傷を引きずる少女が、苦しみもがきながらも少しずつ成長していく姿を、中学三年から20歳まで描いた長編。

    とにかく、不安定な主人公の行く末が気になって、上下巻を一気に読んだ。
    前半は、特殊な家庭環境に思春期特有の未熟さがあるとはいえ、痛い目にあっても取り返しのつかないような過ちを何度も繰り返す主人公に腹立たしささえ感じる。カメラマンを目指してからの後半は、家族や幼少期の出来事が背景として鮮明になるにつれ、彼女の突拍子もない言動にも納得ができた。

    それにしても、あれもこれもと要素を盛り込みすぎている。
    家庭内での性的虐待や新興宗教、レイプ、自殺未遂、精神病院の入院など主人公を巡る数々の出来事もさることながら、周囲も特殊な事情を抱えた人たちばかり。欲張りすぎて、ひとつ一つの出来事が安易に見えてきてしまう。
    どんな自分も赦し受け入れてくれる神様がほしいと願う、主人公の切実な気持ちはわかる。でも、こんなに不幸をてんこ盛りにしなくても、痛々しく壊れた心が行きつ戻りつしながらも再生していく様子を描けたはず。
    直木賞候補作。

  • 人のことを理解するのは容易ではなくて、自分の辛さを理解してもらえない一方、他の人を傷つけてしまっていたりする。ただ相手を肯定することの大切さ、難しさを知った。主人公好きじゃなかったけど、自分に置き換えられる部分はある。

  • 上巻とは少し話の流れが変わってしまい、少し残念。
    作者にしかわからないような詳細設定をあたかも「わかるでしょ?」みたいな感じで描かれているところが島本さんらしいなと思いました。
    単純に私に読解力がないだけかもしれませんが。

  • 自分の生い立ちや失踪していた父親に会う。物語は目まぐるしく展開していく。辛いことがいろいろあるがそれでも少しずつ前を進んで行くからこそ光が射していた。

  • 第145回直木賞候補作。「誰か彼女(黒江)を救ってあげてよー!」って思いながら読み進めた作品。あとがきの通りこれは読む人選ぶ作品だなぁって思った。上巻の怜ちゃんだか紗由ちゃんだかの「男の人そういう視線が気持ち悪い(だっけか?)」っていう、それも伏線のひとつだなーって。彌生君が男の人になった途端に気持ち悪くて怖くなる、あぁ、これは、的確な書き方だなって思った。ナラタージュで「んー」って感じだったので良い意味でも期待を裏切られた。どうでもいいけど、表紙に人物の写真って好きじゃない。この子=黒江?って錯覚しちゃう。

  • 島本理生の書く小説は、描写(文章)が足らない、と思うことがある。
    それはこの『アンダスタンド・メイビー』でもそうだし、初めて読んだ『ナラタージュ』も変わらない。

    けれど、ホントはそうじゃないのかも知れない。
    この作品は、本質的に男性は理解できないのかも知れない。
    女性のみが理解できる世界。

    読み終わってしばらくして、そんなことを思った。

    買ってからしばらく経ってしまったので、最早、なぜこの本を手に取ったのかは覚えていない。
    つまり、これまで読むこともなく、久しぶりに本を開いたのだけど、やはり私は本を読むことが好きらしい。

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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