人質の朗読会 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 192
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122059122

感想・レビュー・書評

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  • 土屋さんの作品が表紙なので、気になっていました。
    文庫になったので、即購入。
    ジャケ買いしたわけですが、内容は素晴らしかったです。
    有名な作家さんなので、今まで読んでいないのか!?
    という感じでしたが、本当に勿体無いことをしていたと
    思うほど。
    1冊でひとつのお話ですが、短編集として読んでも
    楽しめると思います。

  • やはりこの作家の本は、静かで悲しく、温かで美しい日本語を使い、心に沁みる。

  • 遠い異国の地で反政府ゲリラによって拉致された人々。彼らは思い出を書いて朗読し合う。自分の中にしまわれている過去に耳を澄ませ語るのだった。
    ひとつひとつの物語は実に小川洋子らしいものです。大家の老婆と食べるビスケット、様々な会合が行われる談話室、一心不乱に作られるコンソメスープ、葬儀会館の課長から貰った花束。ごくありふれたことを描いているようでありながら大きな虚構に包まれているような妙な感覚。それが「人質の朗読会」という舞台設定を与えられることにより、ただ単に短編を集めたものとは異なるイメージが広がります。
    もしかすると最後に何か仕掛けがあるのではとも思いましたが、そういうこともなく最後は朗読の聞き手の思い出によって締める。それがまた素敵な彩りを加えてくれます。

  • 遠く離れた彼の地に閉ざされた人々の言葉に耳を澄ませる…

    3.11の震災後に書かれたのかと思ったけれど、刊行されたのはその直前。しかし、今この本を読んで感じることは「人々の物語に耳を澄ませる」ことの必要性。そこにいる(そこにいた)人々のそれぞれの物語の存在を感じ、耳を澄ませることこそ、私たちが忘れてはいけない…。

    そして、その人たち自身にとって「物語る」ことが、いかに生きる力を生み出すかという「物語ることの必要性」も見事に表現しています。

    さらに、その語られる物語に登場する人物は日々をともに過ごす存在ではなく、人生のほんの一瞬偶然もたらされた出会いの相手。それを「意味ある偶然(シンクロニシティ)」として自分の中に取り込み自分だけの物語を生み出すことが、生きる上で必要な場面があるのだということを教えてくれる。

    「物語る」ことが人生にとってどれほど大きな意味を持つのかということを三つの視点で感じることができる作品です。

  • 遠い異国の地でテロに巻き込まれ人質にされた観光客+ツアーガイドの8人の日本人が、それぞれに書き記し朗読しあった物語の記録。それぞれの話は独立した短編としても十分成立しているのに、あえて付加されたこの設定が、全体に奥行きというかドラマ性を加えていて、なぜこういう形式を作者が選んだのか、ということがすなわち、なぜ作家が小説を書くのか?という問いへの答えにもなっていた気がします。

    単に登場人物たちが語る(喋る)のではなく、「朗読」という、一度言葉として書いたものを改めて読むという形にしたのも、巧いなあと思いました。朗読された物語はどれも、「自分のなかにしまわれている過去、未来がどうあろうと決して損なわれない過去」であり、「それをそっと取り出し、掌で温め、言葉の舟に乗せる」のが朗読という作業なのでしょう。

    個人的に好きだった話は「やまびこビスケット」と「冬眠中のヤマネ」。どちらも、語り手のもとにお守りのように残された小さなもの(ビスケットや、ヤマネのぬいぐるみ)についてのエピソードだったのですが、これはたまたま目に見える形でそういう「もの」があっただけで、他の物語も全部そういった、お守りのようなもの、お守りのような思い出、それがあるから今生きている自分が支えられている記憶、について語られていたのだと思います。誰の中にも語り得る物語がある、という事実が作家に物語を書かせているのであり、「B談話室」の語り手であった小説家が伝えたかったことがひいては小川洋子自身の姿勢なんだろうな。

    ※収録タイトル
    「杖」「やまびこビスケット」「B談話室」「冬眠中のヤマネ」「コンソメスープ名人」「槍投げの青年」「死んだおばあさん」「花束」「ハキリアリ」

  • まさに小川洋子の作品だと思う。

    現実と幻想のはざまにある物語。ひとは誰でも人生の中で一つは語るべき物語を持っていると筆者はいう。

    私にもそんな物語があるのだろうか、と読み終えて思う。

  • 全体を通して、特に謎が隠されてるわけでも、どんでん返しのような派手な展開があるわけでもない。
    だが、外国で人質となり死の恐怖と隣り合わせ、という非日常的状況に置かれた人々がしたためた文章だと思って読むと、なんてことない日常が不思議とドラマチックに感じるものである。
    正直少し退屈なところもあるが、これらの日常を退屈と思える自分は幸せなのだな、と思う。
    なんだか心が洗われるような小川ワールドは、相変わらず素敵だと思う。
    ただ、普通の人々が極限状況で書いた文章という設定の割に、どの話も文章が小川洋子過ぎる。美し過ぎる。
    私は小川洋子さんの文章が好きだし、その美しい空気に触れたくて小川作品を読んでいるので、いいっちゃいいのだが、「人質たち」という設定を活かすような生々しさがもう少しあっても良かったのかなと思った。

  • 日本人の観光ツアー一行八名が、反政府ゲリラに拉致・監禁された。八名の人質は、それぞれの思い出に残るエピソードを書き出し、順に朗読し合う、という設定。その八名のエピソード(「杖」「やまびこビスケット」「B談話室」「冬眠中のヤマネ」「コンソメスープ名人」「槍投げの青年」「死んだおばあさん」「花束」)と、特殊部隊の一員として人質の会話を盗聴していた特殊部隊兵士が語るエピソード(「ハキリアリ」)。

    どのエピソードも、記憶に鮮明に残るであろう不思議体験だが、特にオチがある訳ではない。が、それが本作の良いところなのかも。

  • 小川洋子の詳説は久しぶりだったけど、やっぱ素晴らしかったな~。人質8人とレスキュー隊員1人の、それぞれの朗読内容を順に綴るとういう体裁。一応の舞台設定はあるけど、基本的にはそれぞれが独立した連作短編集。語られるのは、死の恐怖にさいなまれた、ネガティブだったり緊張感あふれるものとかではなく、寧ろ淡々とした、ともすれば日常に飲み込まれてしまいそうなふとした情景。そこに個々人の特別な思いが加わって、どの物語も特別な余韻が味わえる趣向。不謹慎ながら、もっと色んな人から、もっとたくさんの話を聞きたくなるような、そんな小説。

  • ひとつひとつは関連性のない、何気ない切れっぱしのような要素でも、繋ぎあわせると不思議と物語になり、不思議。ちょっとしたものを拾ってきて、「え、そんなのどうするの?」と思ったらパーっと床に置いていって、遠くから引いてみたら絵になってた、みたいな。著者のセンス、日常への眼差しが光る。ビスケット食べたくなった。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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