人質の朗読会 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 1636
レビュー : 192
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122059122

感想・レビュー・書評

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  • そのように存在するという点で意義深く愛すべき書だと思うけど、でも、せっかくの、一度しか使えない設定(全員死んでいる)なら、もう一仕掛け出来たんじゃないかと、大作家に対しては不服を覚える。

  • この冒頭と結びを書き替えても全然成立すると思うので、人質という設定にあまり必然性を感じない。
    ひとつひとつの話にもうすこし重みがあれば…。小説を書くカルチャー教室の朗読会だったとしても納得できる。

  • どの語り手も控えめに生きている感じが素敵です。人質であり、いずれ殺される運命なのにこの落ち着きかた。この作者の文章はポツリポツリとした感じが好きです。でもなんとなく村上春樹の文章に似てるような気がしました。

  • 遠く離れた異国でゲリラにより人質となってしまったツアー客たち
    長期間にわたる監禁の果て、人質たちは亡くなってしまった

    8人は監禁された中でそれぞれの思い出を朗読する時間を作る
    その8つの物語と、もうひとつの物語の9つが収録されている

    鉄工所の向かいに住む少女と助けるために作った杖
    ビスケット工場で働く女性と厳しい大家のおばあさん
    公民館の談話室へ黙々と通う男性
    眼鏡屋の息子と片目の潰れたおじいさんの作るぬいぐるみ
    コンソメスープを作る隣人と少女
    槍投げをする青年と仕事を休んだ女性
    死んだおばあさんに似ている、と何度も言われる女性
    スーツ店で働く男性と花束、妹の人形
    初めて会った日本人とハキリアリ


    それぞれの朗読時の職業や年齢も記載されていて
    それがとても気に入った

  • 2018.4.6読了
    いわた書店選書

  • 冒頭で人質達は全員死亡とのニュース。読み進めながら、こんなに細かな描写がされて、頭に鮮やかに思い描けるほどなのに、これはもういない人達の言葉なのだと、沁みてくる。淡々と、過去の日常(あるいはやや非日常)が切り取られて、押し付けがましくもなく、そっと差し出されている感じ。私なら何を語るか、と読後に考えてしまう。

  • 読友さんが貸してくれた本。発売当時気になっていたものの手に取らずじまいだったが、早く読めばよかった。人質たちがどうなるかは最初に語られるのでハラハラ推理するような物語ではない。むしろその設定とは対極にあるような、柔らかで温かい、少し風変わりな記憶。私自身は幼い頃の記憶がそれほど残っておらず(いかに何も考えずぼんやり生きてきたか...)、覚えていても動画ではなく写真のように切り取られた場面ばかりなので、人に話せるようなこういう宝物のようなストーリーがあることが素敵だなーと思う。読んでいて楽しかった。

  • 過去からの解放。それは肉体的解放よりも心地良い物なのかもしれない。祈りにも似た朗読会の先にある未来。解放された過去から繋がる未来。そこから再び始まる私の物語、生まれる言葉にまた触れてみたい。

  • 今まで読んだ中で、こういう形の本ってあっただろうか。

    旅行ツアーの参加者7名と添乗員1名が旅先の海外で拉致される。
    水面下での交渉空しく人質全員が死亡。
    死亡する前に人質8名が行っていた朗読会のテープが見つかった…。

    私は人質になった経験は皆無だけれど、もしこの立場に立たされた時、何を語れるのだろう。
    朗読の内容は助けを求めるものではなく、それぞれの思い出話で、その内容はどれも切ない。
    朗読は穏やかに淡々と進んでいたが、過去の話をしているにも関わらず、生きる希望を感じ取れるものだった。
    不思議な余韻を引きずる物語。

  • 目次
    ・第一夜 杖
    ・第二夜 やまびこビスケット
    ・第三夜 B談話室
    ・第四夜 冬眠中のヤマネ
    ・第五夜 コンソメスープ名人
    ・第六夜 槍投げの青年
    ・第七夜 死んだおばあさん
    ・第八夜 花束
    ・第九夜 ハキリアリ

    連作短編集ではなく長編小説なので、本来は章タイトルを書くことはないのだけど、一章ごとにひとりの人生の場面が描かれているので、イレギュラー的に記載してみました。

    地球の裏側にある国で、反政府ゲリラの人質とされてしまった8人と、ゲリラの様子を探るためにアジトを盗聴していた政府の作戦本部の男が語る物語は、自分が書いた自分自身の物語。

    世界的に有名なわけでも、世界をゆるがるような何かをなしたわけでもない、ごく普通の人びとにも、人生を振り返ってみればどこかに、人に語るべき何かがある。
    彼らはそれぞれ、インテリアコーディネーター、調理師専門学校製菓コース教授、作家、医科大学眼科学教室講師、精密機械工場経営者、貿易会社事務員、主婦、ツアーガイド、政府軍兵士と肩書はバラバラ。

    共通するのは、弱者に対する優しさ。
    通り一遍のものではなく、多くを語らない相手の気持ちを慮り、心を寄せることが自然にできる。
    しなやかな強さを持った人たちの物語は、甲乙をつけられないくらいどれも好き。
    本当は甲乙をつけてみようと思ったけど、できなかった。

    私が自分の人生を物語るとしたら、一体何を書くだろう。
    人前で読み上げられるような物語を書くことができるだろうか。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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