- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122059511
作品紹介・あらすじ
すぐれた随筆家として知られる著者が、侍従生活二十幾年にわたる感慨をこめて皇居内の四季の折ふしを、流麗な筆と巧まぬユーモアにのせて綴る珠玉随筆集。
感想・レビュー・書評
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「「スケマサとお読みですか」なんて聞いてくれる人がある。私は
こういう学のある人は好きで、こういう人には目をかけることにし
ている。アイマサなんて読むヤツには、ろくなのはいないはずなん
だから」
す、すいません。入江侍従長のことは存じてましたが、下のお名前
の読み方までは分からず、「アイマサ…かな?」と思っていた、
若かりし頃の私は確かにろくでもないです。あ、今はきちんと
「スケマサ」と読めますけど、ろくでもないところは変わって
いませんが。
学習院の先生から昭和天皇の侍従・侍従長を務めた入江氏のエッセイ
集である。『侍従とパイプ』に次ぐ2作目だったと思う。
冷泉家の流れを汲むお公家さんの出身なのに、東京生まれ・東京育ち
のせいかかなりのガラッパチ。ただ、それが下品にならないのは
やはり育った環境なのかもしれない。
筆致もユーモアに溢れ、城の中=皇居(江戸城)の四季折々の風景、
昭和天皇のご研究や行幸にまつわるエピソードが記されている。
ほとんどの作品が昭和30年代に雑誌などに発表されたものだが、
既にその年代で、明治生まれの入江氏は東京の街が風情を失った
ことを嘆いている。
昭和生まれの私だって昨今の都内のそこかしこで行われている
再開発によって、どこでも巨大な複合商業施設を中心にした
街並みになって無機質化が進んだように思うものな。
古典文学に通じ、能や謡を愛したことが数々の作品から伝わって
来る。
敗戦直後に行われた昭和天皇の巡行にも多く同行され、陛下が国民の
なかに入って行かれるお姿に喜んでいるのは、入江氏が「開かれた
皇室」を目指していたからだろうな。
こんな点で、一部の人から入江氏は今でも敵視されているらしいが。
尚、「〇〇であります」の「あります」は入江氏曰く長州方言なの
だそうで、「こんな田舎言葉なんかむねくそわるい」のだそうだ。
私の手元にあるのは昭和53年の文庫版で、生憎と表紙カバーが失われ
ている。多分、どこかの古書店のワゴンセールで購入したんだろう。
2014年に改版が発行されているので、買い直すか考え中である。詳細をみるコメント0件をすべて表示