花桃実桃 (中公文庫 な 64-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122059733

感想・レビュー・書評

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  • アパート小説、好きだな!とふと気付く。個性的な住人をそれぞれ描きつつ、大きな物語が動いていく――というのが一つのスタイルかと思うけれど、その形がまず面白くて好き。連作短編とも言えるが、大きなハコに小さなハコがいくつも入っているイメージ。
    この物語は中島さんらしく定期的におもしろポイントがやってくる。40過ぎの茜の人生を、自分に引き寄せて内省しなければ・・・というちょっとしんみりしたキモチは、おもしろポイントのおかげで長続きしない。いま目の前にクスッと楽しいことがあり、変なことや刺激があり、(たとえ勘違いに終わろうとも)ソワソワすることもある。
    人生折り返しといったって、まだまだ捨てたもんじゃないよ、楽しいことあるよ、と言われたような気分になれた。

    「花や実だけじゃなくてね、ジャガイモみたいに、重要なのは地下茎って人も、きっと人間の中にもいるわよ」

  • 中島京子さんは初。
    こちらのインスタで何度も目にしたため、読みたいと思っていました!

    主人公の茜は43歳、独身。亡くなった父の桃蔵が残した古アパート「花桃館」の管理人を、会社を辞め、思い切って引き受けることに。

    失恋に悩むウクレレ奏者に、父親がべらぼうに情けない3人息子の父子家庭、万年整形を繰り返す神出鬼没の女性、猫と暮らす探偵、そして、父の元恋人。
    そこに住んでる住民たちはみな、一癖ありへんてこりんだ。
    茜は彼等に巻き込まれ、翻弄されながらも、少しずつ管理人業に親しみを覚えていく。

    高校時代の同級生であり、またこれも一癖ある尾木くんとの距離感も良いよね。

    もう、彼等のやりとりが最高に面白い!
    茜の心の中のツッコミも秀逸だし、終始面白エッセンスが盛り込まれていて、飽きない。そして、少しほっこり。
    一気に読んでしまった!

    中島京子さんの筆力。この一冊だけでしっかり伝わってきた!

    他の作品も読んでみよう!

  • 初めての作家さんだけど、まず、表紙の可愛さと主人公の年齢に親近感を持ち購入。
    読み始めると、独特な文章に少し違和感があったけど(いちいち主人公をフルネーム呼びするところや、古めかしい言い回しが多い?)、内容はほんわか緩い雰囲気なので読みやすかった。
    1話につき1部屋フィーチャーして話は進んでいく。
    中盤あたりで、このまま特に何もなく終わっちゃうのかしら?と心配になったが、読み進むにつれて、最終話はお父さんが登場か?!とか、茜もいよいよ結婚?!と勝手に私の気持ちが先走ってしまったので、あれれ?という感じで終わってしまった。
    だから、ちょっと物足りないような気もするけど、よく考えると悪くない終わり方な気もする。 

  • ほっこりとはまた違うけれど、春の優しい雨のように穏やかな気持ちになれる1冊です。

    主人公が希望に満ち溢れていないし、強い信念をもっているわけでもないのが花桃館の雰囲気とマッチしていると思います。
    何か起きそうで起きない。でも、少しずつ居心地の良い毎日に近づいている。
    そんな様子にホッとしました。

  • 花村茜。43歳独身。
    会社で肩たたきに遭いどうしたものか?と思っていたところ
    高校の同級生・尾木くんが転職したのを見て、
    急死した父の昭和チックなアパートを相続し
    アパート「花桃館」の大家に…。
    自分に大家は無理なのでは?と思いつつ
    癖のある住人達
    (父の晩年の愛人、
    子ども3人抱えたシングルファーザー
    ウクレレを愛する青年
    仲の良い老夫婦…但し2人とも〇〇
    整形マニアの女性
    妹の〇〇と暮らす探偵
    クロアチアの詩人…)との日常が始まる。
    花桃館の住人たちを通して
    交流のなかった晩年の父親を思い
    またこれからの人生を考える。

    "『花桃実桃』だよ、人生にはいろんな味わいがある"。

    人生いつでも、何歳になってもこれからだと思う。

    サクッと読めるゆる~~~いお話。
    悪くないけど印象に残らないかな?

  • 再読。

    茜のユーモラスな発言や発想にニヤニヤしながら読みました。
    花桃館の住人達も相変わらずのヘンテコさ。
    整形マニアの日名子、亡き父の愛人李華ばあさん、クロアチアのポーエットイヴァンほろほろヴィッチとその妻セヴェリナ、ウクレレ奏者のハルオ、ライターの槌田。
    陸海空の三兄弟が魅力的。
    陸君がいなくなった後、人に頼ることを厭わない父大介の教えを受けた残された兄弟達の今後にも興味ありです。
    大家さんは、このメンツをみたら、今や茜にしか務まらないのでは、とも思います。
    ゆるゆると続いて欲しいと願いながら本を閉じました。

  • 花村茜、独身で43歳。
    父が突然亡くなり、兄妹で話し合って というより兄の采配で兄は父の住んでいたマンションを、茜は父が所有していたアパートを相続することになった。
    そのころ職場から肩たたきにあったこともあり、そのアパートに大家として住むことになった茜。
    茜の日々を彩る、住人との関わりの日々が描かれる。

  • 冴えない暮しを送っている40台シングル女性が父の残した古アパートの管理人となり、風変わりな住民たちと交流する中で自分の道を見つけてゆく。中島京子ワールド全開のユーモアと暖かさに溢れた小説。

  • 肩たたきにより職を失った43歳独身の茜は、父の遺産で相続したオンボロアパート、花桃館の管理人になることに。
    とても変わった住人達がいっぱい出てきます。生きている人間から幽霊まで。まぁ、皆あれこれやらかしてくれて笑えます。
    自分も気づかないうちにアパートの存在が茜の大きく変わっていって。素直じゃない父親の最高の贈りものだったんですね。ほっこり力の抜け具合が心地いい一冊です。茜の和歌の解釈っぷりはある種の才能かも(笑)。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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