新編 - 特攻体験と戦後 - 〈対談〉 (中公文庫 し 10-5)

著者 :
制作 : 吉田 満 
  • 中央公論新社
4.09
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本棚登録 : 50
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122059849

作品紹介・あらすじ

太平洋戦争で「特攻死」を目前に生き残った若者たちは、何を思い、戦後をどう生きてきたか。戦争を文学作品として記録した二人の作家が、戦艦大和からの生還、震洋特攻隊隊長という極限の実体験とそれぞれの思いを語り合う。同世代の橋川文三、吉本隆明、鶴見俊輔の関連エッセイを追加した新編増補版。

感想・レビュー・書評

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  • 厚みがある本ではありませんが、対談の内容は思想的な話が多くて難解。戦時の体験談も語り口調が柔らかいためか、戦争の悲劇性・悲惨さがあまり伝わってきませんでした(あえて悲劇的な体験を語るのを避けていたのかもしれませんが)。

    対談部分より、島尾氏・吉田氏それぞれによるあとがき(?)の方が分かりやすく、戦争のシリアスさも感じられたように思います。特に、実際に大和での特攻に参加した吉田さんのあとがきからは、生き残ったことの苦しみなどが垣間見えたような気がします。

    あとがきでは、発言の元となっている著作等について引用があるため分かりやすかったのですが、対談部分はそれがなかったので理解することが難しかったのかも? だとすると、対談部分をより理解しようとするなら、あらかじめ二人の著作を読んだうえで対談部分を読み始める必要があるように思いました。

  • 「特攻」を違う形ながらも体験した御二方による対談。
    吉田満さんは戦艦大和に乗り、壮絶な戦いで多くの仲間を失うなか、自分はなんとか生き残る。
    一方で島尾敏雄さんは奄美で特攻隊として駐屯するも特攻を迎えることなく終戦となった。
    同世代でもこのように違う戦争体験をしてきた二人が戦後どう生きてきたか、どう戦争と向き合ってきたかについてお話ししている。
    特攻体験はイデオロギーを超えている。「特攻体験ほど、イデオロギーから遠いものはない。感動から遠いものはない。」
    解説が大変秀逸。

  • 特攻死の半歩手前を体験した、吉田満と島尾敏雄による対談。

    吉田「死ぬ確率と生きる確率の間には適正配分がありまして…特攻というのは、そういう原則を破るものですね。だから、みんな止むを得ず、無理をしてその中をくぐりぬけるわけでしょう。…」
    島尾「あれをくぐると歪んじゃうんですね。」
    吉田「歪まないとくぐれないようなところがありますね。」
    島尾「…一見美しく見えるものをつくるために、やはり歪みをくぐりぬけることが必要というふうなことが必要となると、ぼくはやはりどこか間違っているんじゃないか、という気がしますね。ほんとうはその中にいやなものがでてくるんだけど、ああいう極限にはときに実にきれいなものもでてくるんですね。そこがちょっと怖いような気がしますね。」
    吉田「そういうものの全体が、これはもう非常に大きな悲劇なんですね。」

    この歪んだ心境の正体とは何だろうといつも考える。実例は様々本書でも縷々述べられているものの、私には真の理解に至る確信がない。それは、心身ともに健常であるにもかかわらず、同時に死した状態を経験したものが持つ歪みだからだと思う。今に特攻体験を語る難しさばかりが読む者に染み渡る。

  • 特攻体験者の二人が、戦後30年を経て、その従軍経験を語り合う対談を、さらに30年を経ていま手にして読む。
    島尾敏雄が吉田満の『戦艦大和の最期』を評して、「陶酔」、「極限にはときには実にきれいなものも出てくるんですね。そこがちょっと怖いような気がしますね」と言及する。非常に興味深いくだりがある。
    この文庫版新編は加藤典洋の解説が加わっており、近年のベストセラー「永遠の0」と、本対談集との決定的な違いを分析している。非常に腑に落ちる内容だった。

  • 特攻という極限の状況がどういうものであったのか? 共に特攻隊員でありながら異なった経験を経たお二人の話が興味深い。

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著者プロフィール

1917-1986。作家。長篇『死の棘』で読売文学賞、日本文学大賞、『日の移ろい』で谷崎潤一郎賞、『魚雷艇学生』で野間文芸賞、他に日本芸術院賞などを受賞。

「2017年 『死の棘 短篇連作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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