母の遺産 - 新聞小説(上) (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 110
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122060883

作品紹介・あらすじ

八十歳を過ぎた母が骨折をして病院に運び込まれたその日、美津紀は夫・哲夫の引き出しから花柄のティッシュ入れを見つける。施設に入った母に時間を奪われ続け、美津紀は思う。「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」親の介護、夫の浮気、忍び寄る更年期、老後資金の計算…実体験を交えて赤裸々に描き大きな話題を呼んだ、大佛次郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 業深い母と娘の壮絶ともいえる生と看取りの戦い

  • わがままだった母親の弱って行くさま。
    父親に対する母を許せなかったり 哲夫があんまりだったり。

    年齢に伴う体調の悪さもあったり仕事で食べていけるかなど色々悩み最後は シビアに生活できるかの計算において自分のこれからを決める。身につまされる。

  • 2012年に単行本で出た際に、読んでいるんです。
    2017年現在からみると、たったの5年前。
    最近、電子書籍で再度購入。

    「母の遺産」水村美苗さん。中公文庫、上下巻。

    #

    50代の女性がいて、結婚していて子供はいない。
    父はもう亡く、老いた母がいる。
    この母が、色々面倒ばかりかけ、たいへんにしんどい。

    コレという判りやすい被害がある訳ではないけれど、とにかく気持ちに負担をかけてくる。手間暇をかけさせる。

    ただでさえ自分も体調が悪いのに。重ねて、介護の手間が厚塗りされる。地獄のような疲弊感。誰とも分け合えない苦労。誰も褒めてくれない重労働。

    そして、夫が不貞をしていたことが分かる。若い女と。匂い。証拠。確証。
    それも、浮気と言うより、本気。離婚を切り出されそう。

    そんな、日常の着物を一枚めくると、すれ違う誰もが抱えていそうなスリルとサスペンスと、げんなり感。

    母との、愛憎。


    そして、ようやくの、母の死。ほっとする。

    やっと、死んでくれた。

    そして後半は。
    夫とどう向き合うか、今後の人生をどうするか、という流れになっていくのですが...。

    #

    5年前に読んだ時も、今回も同じく面白かったんです。

    水村美苗さんは、とにかく文章に持っている品格と言うものが。触れなば斬れん妖刀村正...と言う感じ、水際立った背筋の伸び方。
    さしずめ、大正時代からの老舗の喫茶店で、物静かでシュッとしたワイシャツ姿のマスターが入れてくれるアイスコーヒーのような。それを、うだるような灼熱の午後のひととき、適度な冷房の中で味わい、上等な氷がカランと音を立てるようなココチ良さ。
    「日本語が滅びるとき」「續明暗」なども、僕は本当に大好きです。

    なんですが...
    30代で読んだ時は、「面白いなあ」だったことが。
    40代の今回の再読では「痛い...怖い...苦しい」。
    正直、特に老いた母が死ぬまでは。

    (唐突に1986年の日本映画「人間の約束」を思い出しました。あれも凄い映画でしたね。三国連太郎と佐藤浩市の共演。)

    #

    そんなわけで、下巻に入って、母が死んでくれたあとは、正直大変に読み易くなりました(笑)。
    夫と向き合う、人生の再出発を考える主人公、というのは、つまり、なんというか、どこかしら、

    「ひとごと」

    として楽しめている自分を感じましたね...恥ずかしいことですが。

    比べて前半は...。

    親の老い... 介護...
    人の、人生の、終わり方...

    みたいなことを、コレデモカと、首根っこを押さえつけられて、目をひん剥かされて直視させられるような。

    自分の親がどうこう、ということもですが、「自分のときは」みたいなことを、よぎっては身の毛もよだつ...。

    「ひとごとや、あらへんなあ」

    だったんでしょう。5年前に比べて(笑)。


    #

    村上春樹さんが、「ある年齢になってから、昔読んだ本の再読が増えてくる」ということをどこかに書いていたような。

    そんなことに、心中、同意してしまう。
    再読もまた、愉しからずや。

    でも、水村さんの新作、出ないなあ...まだまだ何か書いてほしいなあ...小説ぢゃなくてもいいから...。

  • 何かの雑誌で林真理子がオススメしてたので積読リストに入れてました。

    著者の作品は初めてだったのですが、あーマリコさんが好きそうだな、というのが第一印象です。
    親の介護の話を主軸としながら、更年期、老後資金・・・などなど現実的な問題が山積みでいつかは私も向き合うことなんだ、と漠然とですが感じるものがありました。

    登場する姉妹が母の死を待ち望みながらも、母の老いが進むのに合わせて母が不幸にならずに寿命をまっとう出来るよう努力して快適にしようと努める姿がリアルで、救われるようでもあり、切なくもありました。
    切ないといえば、母親が日に日に老いてゆく姿の描写がかなり切なかったです。
    我儘ですごい人なんだけど、だからこそ、見舞い客が誰であるかは理解出来ても相手のことを尋ねることはできなくなっていった、とか、あれよあれよという間にその日にあったことも説明できなくなっていった、とか辛くって。
    極めつけは、大好きな洋画を観始めても興味が続かず、それでいて洋画に熱中する自分こそが本当の自分だと信じているので、私はこれなしに生きていけないの、と言い続ける、とか・・・泣けてくる。

    下巻は、どうなってゆくのか。

  • 「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」

     そんなことを言ってはいけない、と怒る人もいるのだろうか。私はまだ30代だけど、「自分の人生を生きたい」母の介護、というだけで他人事とは思えない。まして、私は一人娘。こういうとき、弟なんて役に立たないんだろうな。。「早く死んで欲しい」そんな会話ができる姉妹が妬ましい。

     下巻も一気に読んでしまいそう。感想は下巻で。

  • 下巻のレビューに書いています

  • 人生における絶対は「死」のみ。下巻へ。

  • 読み始めは、母親が早く逝ってくれる事を願っている娘とは・・・と思ってしまった。

    二人姉妹でも、必ずどこかしら不公平感があるもので、ましてやそれぞれ家庭を持ってしまうと、尚一層それが顕著になる事が多い。
    両親との相性もあり、性格もあるが、結局は動ける者が、介護する場合などはやることになる。

    登場する場所も良く知っている地名ばかり、まるで私の近くで起きているかのようなリアルな感じでした。
    肉親だから、無償の愛もあり、でも冷たく切り捨てていけるものもあり。母娘ともそれぞれの人生を生きていかなければならないのだから。
    理屈では割り切れないもの。
    後半になり、早く逝ってほしいと願っていることは、深い愛情なのかもしれないなと思ってしまいました。
    Booby

  • タイトルで誤解するかもしれないが、莫大な遺産をめぐる相続の争いの物語ではない。

    老親が(この作品では母)身体を動かせなくなり、入院をしたと言って呼び出され、あれこれ用事を言いつけられ、生きるのが嫌になったと泣き言を聞かされ、
    介護できないのでホームに入り、毎日呼びつけられ、そしてホームから、熱が出たから救急車を呼んだ、病院を×軒、断られた(ホームの職員が救急車に同乗してくれている)
    急激にボケ始め、同時に始まる食べ物への執着、誤嚥性肺炎、延命措置について等々…

    経験のある自分には身につまされ過ぎて辛い。

    やっと『母』はあちらに旅立ったようですが…
    では、下巻のストーリーはどうなるのだろう?

  • 150520

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