阿寒に果つ (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.90
  • (3)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 58
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122061033

作品紹介・あらすじ

阿寒湖を見下ろす雪の峠で、天才少女画家・時任純子は美しい遺体となって発見された。十八歳という若さで、彼女はなぜ自ら死を選んだのか。彼女が一番愛したのは誰だったのか。彼女に深く関わった六人の視点から描き出す、少女の鮮烈な人生。愛と死で華麗に彩られる渡辺文学の礎となった自伝的小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 男性の純な部分を見事に表現していて、男性から見ても切なくなってしまった。一方、女性って・・・。

  •  仕事が忙しい時期なので面白いものをと思い、終戦から数年を経た北海道が舞台のこの小説を手に取った。物語のヒロインである時任純子は「天才少女画家」として脚光を浴びる色白の美少女だ。純子は複数の男性と同時に交際し、十八歳の若さで、阿寒湖を見下ろす雪深い釧北峠において「華麗で鮮やかすぎる」死を遂げる。高校生の頃に純子と恋仲だった「私」は、純子の死から二十年後、純子と親しかった四人の男と純子の姉に逢い、さまざまな貌をもつ純子という存在を見直そうとする。そして、「私」を含めた六人の視点から見たそれぞれの純子が描かれる。

     「私」は、純子が最も愛したのは誰であったのか、純子はなぜ死を選んだのかという二点について解明を試みる。ともに作中において明確な答えは出されていないが、個人的にはそれぞれ次のように思った。まず、純子は恋愛で熱しやすく冷めやすいタイプなのだろう。そして、初恋における屈辱から男に対して復讐したい思いがあり、これが男を手玉にとっては捨て去る行動につながっているのではないか。純子の派手な異性関係は、自身の将来への不安や思春期特有の不安定な気持ちからの、ただ今の一瞬を忘れたいがためのものにも思える。もっとも、打算や単なる物珍しさを動機として接近している場合もあり、結局のところ純子が本当に愛しているのは純子自身だけなのかもしれない。

     次に、純子が死んだ理由については、純子は世間から注目されて力作を期待されていたが、思ったような絵を描くことができず、自身の才能への限界を感じて悩んでいた。このため、躁と鬱が交互にやって来る情緒不安定さも相俟って、最も美しいときに「夭折の美」を遂げようとしたのではないだろうか。その証拠に、純子は自身の死を印象付けるための行動をいくつか計算のうえで行っている。

     そのほか印象的なのは、純子と親しかった男たちがみな一様に、自分は純子にとって特別な存在だったと考えていることだ。純子はただ奔放なだけではなく、かなり高レベルな魔性の女だ。魔性の女といえば『痴人の愛』のナオミが思い浮かぶが、純子の場合はその背後にどこか暗い影を感じる。本作も嵌る人は嵌るのではないだろうか。とても面白かった。

     なお、本作は渡辺氏の経験を描いた自伝小説であり、純子のモデルは渡辺氏の高校時代の同級生で、恋愛関係にあった加清純子という実在の人物だとされている。

  • 渡辺寿一さんの高校時代の恋愛をモデルにした作品。純子の阿寒での自殺の仕方が印象的でした。

  • 作者自身の自伝的青春小説の体裁だが、どこまでが事実か。奔放で捉えどころのない少女の自殺。一体誰を一番愛し、なぜ自殺をしたのか。少女を巡る人間関係から、恐らくは作者自身なのだろう主人公が探る。

    振る舞いや情緒が一定せず、それに悩み振り回されるのが青春なのかも知れない。読んでいて、自らの体験を回想してしまうほどに、ノスタルジックな気分に浸れる。実体験と重ねられる範囲にある事も自伝的リアリティかもしれない。

  • 阿寒湖を見下す峠で?天才少女画家?純子は十八歳の若い命を断った。純子の愛の遍歴と謎の死を追う〈私〉は意外な事実を知る。渡辺文学の原点ともいうべき恋愛長編。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。1970年『光と影』で直木賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞受賞。2003年には菊池寛賞を受賞。著書は『失楽園』『鈍感力』など多数。2014年没。

「2018年 『死化粧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

渡辺淳一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
湊 かなえ
宮部みゆき
柚月 裕子
辻村 深月
ジェイムズ・P・...
遠藤 周作
宮下奈都
ヴィクトール・E...
東野 圭吾
佐々木 圭一
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする
×