幸せの条件 (中公文庫)

著者 : 誉田哲也
  • 中央公論新社 (2015年8月22日発売)
3.88
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122061538

作品紹介・あらすじ

恋も仕事も中途半端、片山製作所勤務の「役立たずOL」梢恵に、ある日まさかの社命が下された-単身長野に赴き、新燃料・バイオエタノール用のコメを作れる農家を探してこい。行く先々で断られ、なりゆきで農業見習いを始めた24歳に勝算はあるか!?働くこと、生きることの意味を問う、『ジウ』シリーズ著者による新境地。

幸せの条件 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 著者が、リサイクルライフに興味を持ったのが、この作品を書く動機だとか。
    さらに、3.11の震災と原発事故が、著者の背中を押したそうだ。
    減反、高齢化、待ったなしの農業問題に焦点を当て、その魅力(もちろん過酷な条件は都会に比べるべくもないが)や必要性を描いた一方で、食料自給率についての政府のまやかしを、登場人物に批判させている。
    そして、福島第一原発は、東京電力の施設であり、関東の人がその恩恵を享受しているのに、被害を受け農地を奪われたのは東北の人々だと、訴える。

    「農業小説」ともいえるこの系譜には、テレビドラマにもなった『限界集落株式会社』(黒田伸一著)や、主人公の青年が、米つくりに出会い成長していく『生きるぼくら』(原田マハ著)などがある。
    題名とも関連するが、いずれも都会で自らの立場を見出せない者たちが、農村で生きる意味を見つけるサクセスストーリー。
    「あなたが会社に必要とされていないのではなく、あなたにこの会社が必要ではないのだ。あなたのいるべき場所は他にあるはずだ。」―登場人物の言葉。
    もっと、広く読まれるべき作品の一つといえよう。

  • 再読で一気読み。やはり、面白い。農業を舞台にここまで微笑ましかったり、泣けたり、社会問題を考えられたり。農業の知識、取材がしっかりなされているから、時事の原発まで取り込み、見事な取り込みかた。仕事をする、必要とされるのではなく、自分自身で見極めることが大事。自分はこうやっていきていくんだを見つけられる、そしたら死ぬ気で守り抜くのが大事。ハッとした。登場人物が良い、チームで声を出して、集中していく気持ちよさ、ご飯の美味しさ、忙しさと爽快さ。恋愛要素もほとんど爽やかなのに、惹き付けられる名著。

  • 誉田さんの、ミステリー以外の本は
    実は初めて読みました

    最高だった!

    農家にバイオエタノールの機械売るために
    見習いに出る女子の物語

    農業やりたくなる
    っていうかこんなあったかい家族に出会いたくなる
    素敵

  • ふーむ。ホントに 誉田哲也の本だろうか
    と思いながら 読み進めていった。
    環境問題。そして、バイオエタノール。
    楡周平のゼフィラムをよんだところだったので、
    問題意識は つながった。

    オコメを バイオエタノールにする という。
    食糧を バイオエタノールにするというところに
    かなりの抵抗感がありながらも
    主人公が 徐々に成長していく姿が なんとも言えない良さがある。
    ひょっとしたら、なんにも取り柄がなく、目的もなく
    彼にも捨てられる存在だった 主人公 梢恵が 
    存在をみとめられるようになっていくことで、
    自分の居場所を探す。

    何よりも 福島と言う事件が 一回り大きくする。
    コメだけでなく、炭水化物すべてが、バイオエタノールになるのだ。
    コメを狙うのでなく 竹だったら ちょっとつまらなくなるのか。

    ふーむ。
    爽やかな中にも なぜか 気になる一抹の不安。
    物語と現実のギャップに 何かが違うんだよねと思いながら
    物語にしている 誉田哲也の鮮やかさ。

  • 誉田哲也 著「幸せの条件」、2012.8刊行、2015.8文庫化、450頁の大作です。瀬野梢恵、24歳が未知の分野、農業を体験しながら、バイオ燃料を作るというテーマですが、梢恵を取り巻く人間模様、そして「3.11」の大震災・津波・原発事故がからみあい、読者に様々な思いを掻き立ててまいります。農業や燃料の自給自足、地産地消、過疎、環境問題、雇用問題、仕事への取り組み方、生きがいなど、現在日本が抱えている諸問題とその解決の重要性を読者に提示した作品と思います!

  • 東京の中小企業の冴えないOL梢恵は、社命で長野の農家を営業活動することに。そしてひょんなことから農業体験をしていくうちに、農家の緊密な家族愛、仲間愛、そして肉体労働の充実感にはまり…。

    梢恵が農業に目覚めるきっかけが、東日本大震災なので、本書は東日本大震災ものとも言えるのかな。

    現代農業のリアルな姿が描かれていて、中々興味深い。しんどそうではあるけれど、農業の魅力満載。ちょっと憧れるなあ。

    軽めの話だけれど、読後感は爽やかでgood。

  • 白い誉田も、やっぱりイイねえ。
    農業がテーマという点からは、退屈な物語になりそうな予感があったが、全くそんなことは無かった。

    ヒロインの心の成長や「あぐもぐ」メンバーの魅力がまず、山場の少なくならざるを得ない農村の日常風景から“退屈さ”要素を取り去ってくれた。

    そして、誉田さん、かなり綿密に取材したのだろうな、、、ここで描かれる“農作業”の描写、それは、兼業農家である実家で過ごした日々の思い出と寸分違わずに目に浮かんでくる。

    「あぐもぐ」社長の理想と主張と行動力、社員たちの情熱は、、、なんともまあ、農業を格好よく描いてくれたものだと、歓心しきり。


    後継者問題や土壌改良詐欺などの社会問題にもサクッと触れつつも、作者曰くの通りの「明るい農業小説」に仕上がっているのも、好印象。

    また、、、会社形態としての農業経営、農作物や廃棄作物を用いての次世代燃料の開発など、現実にも動き出している新しい可能性の存在を知れることも、良い。

    後継者問題に悩む農業従事者やその子息、起農を目指す人はもちろん、農業には無縁な人生を歩んできた人達にも、ぜひ読んでもらいたい、大いに薦めたい一冊。


    ★4つ、9ポイント半。
    2017.07.23.新。


    ※購入時には気づかず、読み終えた後に気づいた文庫帯のコピー「誉田哲也史上最弱のヒロイン」に、ニンマリと納得(笑)。

    たしかに、溌剌として強いヒロインを数多く産み出してきた誉田さんには異色な主人公だったけれど、こういう感じも十分に「アリ」だな。

  • 仕事も恋も中途半端になんとなく日々を過ごしている東京のOL。
    突然長野へ単身赴任することになり、成り行きで農業を一から学ぶことに。
    そこでの生活は今までとは180度違っていて、彼女を大きく変えていく。


    農業にバイオエタノールに…馴染みがない上に難しく、ひとつひとつ理解もできなくて、読み進めるのにストレスを感じました。

    が、それも中盤あたりまでのこと。

    成長していく主人公の様子にとても好感が持てて、後半は一気に読めました。
    誉田さんの作品とは思えない爽やかな読後感。

  • 会社に自分の居場所を見いだせない梢恵。
    ある日、社長から期限のない出張を命じられる。
    行先は長野。
    何の知識ももたないまま、バイオエタノール用の苗の作付を了承してくれる農家と契約を結ばなければならない。
    何をやってもうまくいかない梢恵が、農業に携わることで自分の道を見つけていくのだが…

    誉田さんの本は「姫川玲子シリーズ」のような本の方が好みです。

  • 何とも珍しい農業小説。誉田哲也と言えば、警察小説やホラー小説、ミステリー小説しか読んだことが無かったのだが、こういう社会派の小説も書くのかと驚いた。

    片山製作所に勤めるお荷物OLの梢恵が、社長の命令でバイオエタノール用の米の作付農家を探しに長野へと赴くが、その道は険しかった。果たして、梢恵は任務を遂行出来るのか。

    ストーリーに東日本大震災も描かれ、日本の農業のみならず、食料自給率、環境問題などの社会問題が描かれる。しかし、梢恵を取り巻く人びとの人情や農業に賭ける熱意も描かれ、硬い社会派小説には止まらない面白い小説に仕上がっている。

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