革新幻想の戦後史 上 (中公文庫 た 74-2)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122061729

作品紹介・あらすじ

戦後社会を席捲した「左派でなければ知的ではない」という空気"革新幻想"はどのようなものだったのか。渦中を見てきた社会学者が自分史と交差させながら、膨大な文献と聞き取り調査を駆使して立体的に描き出す。第一三回読売・吉野作造賞受賞作。文庫版上巻には補論「昭和戦前期「左傾学生」の群像-統計的考察」を増補。

感想・レビュー・書評

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  • あとがき後の解説にあるように、本書は革新幻想の時代下における著者の信仰告白である。信仰の原風景ともいえる佐渡の有田八郎と北昤吉の生き方から革新幻想の始まりが語られる。それは丸山真男のいう悔恨共同体と、著者の言による無念共同体による社会的分裂から始まった。その後50年代を境に世論の多数が改憲から護憲にかわって以降、経済成長と安全保障が確保されるのであれば政治体制を現状維持しようとする花より団子的価値観が是となった。また政治家も当選のために改憲を語らなくなった。このことは革新派をおおいに元気づけ、また勘違いもさせた。革新派は、その思想がもつ先進的な理念や理想が支持されたと考えたかもしれないが、世論はその理想や理念に共感したのではなく、戦争体験の反動として頑なな保守派を嫌ったのではないだろうか。戦争体験者が減れば同時に革新思想にも陰りが見えるわけで、そのような意味でも革新は幻想だったのだと思う。
    加藤典洋の「敗戦後論」にたとえとして登場するジキル博士とハイド氏の典型を見るよう。戦死者と共同体を持たないことが革新幻想であり、戦死者と共同体をもつことが無念共同体ではないだろうか。

  • 本郷の生協で購入、根津の喫茶店で読んだ。

  • 単行本で既読。

  • 戦後社会を席捲した「左派にあらざればインテリにあらず」という空気を、膨大な文献と聞き取り調査から描き出す。読売・吉野作造賞受賞作を増補した決定版。

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著者プロフィール

1942年、東京都生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。京都大学大学院教育学研究科教授などを経て、現在、関西大学東京センター長。関西大学名誉教授・京都大学名誉教授。教育社会学・歴史社会学専攻。著書に『日本のメリトクラシー』(東京大学出版会、第39回日経経済図書文化賞)、『革新幻想の戦後史』(第13回読売・吉野作造賞)『清水幾太郎の覇権と忘却』(ともに、中公文庫)、『社会学の名著30』(ちくま新書)、『教養主義の没落』『丸山眞男の時代』(ともに、中公新書)、『大衆の幻像』(中公公論新社)、『立志・苦学・出世』(講談社学術文庫)など。

「2018年 『教養派知識人の運命 阿部次郎とその時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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