倫理としてのナショナリズム グローバリズムの虚無を超えて (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2015年12月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784122062092

みんなの感想まとめ

他人への思いやりやコミュニティへの気遣いを通じて、より良い生き方を探求することがテーマとなっています。この作品は、倫理や規範がどのように再考されるべきかを深く掘り下げており、読者に新たな視点を提供しま...

感想・レビュー・書評

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  • 単行本から10年という歳月を経ての文庫化。
    御本人は「今この時点で修正をほどこしたり、書き加えたいと思う点はないわけではない。」と述べながらも「しかし、それよりも、事態の本質はこの一〇年でほとんど変化していないという驚きのほうが強くなった。……いっそう緊急性を帯びてきているようにも思うのだ。」と加える。

    「グローバリズム」と「倫理」がどう結び付くのか。
    佐伯啓思も、もう六冊目。この方の考え方に共感するところが大きい。しかし、何も「倫理」で解決しようなんて……と若干訝りながら読む。

    本書は最終的に「グローバリズム」を保守的な観点から批判している。
    まず個人の自由が格差的な富を生み出している現状。自由が経済的勝ち負けのみを目的とし、勝つためにはナンデモアリになってしまったら。
    自由という平等はなくなってしまう。

    更には、個人や国家がその勝ち負けの舞台を世界に移したことにより、グローバリズムとその反動であるファンダメンタリズムの衝突が起こっていること。また、衝突そのものは、個人ではなく国家間また私はある種の価値観を共にするエリア間でも起こっていると考える。

    そこで筆者が伝えるのは、ナショナリズムの再生である。
    「われわれ」意識を改めて認識することで、その範囲において「倫理」は生まれ、これこそ意味喪失に突き進むゲームを静観し得る理性を作る。……とおおよそ、こういうことかな、と考えてみた。
    私の単なるレビューと佐伯啓思が言わんとするところがズレている可能性は大いにある。すいません。

    私は「日本」に生まれた。
    けれど、もちろん海外に年に一度くらいは行くし、そこになんの規制もかからない。
    そうして、また「日本」に戻ってくる。
    フクシマがあった時、一体幾らの人々が此処を出て行く選択をしただろう。
    そうでなくとも、海外で働き一生を終える選択肢はかなり一般的である。

    それは海外が日本とさほど違わない場所になった、つまり世界が均質化されつつあることを意味する。
    しかし、本当ーに均質になるんだろうか。
    そこで、私が偶然「日本」に生まれたことに、何らかの意味を見出せるのだと思うし、何の意味も見出さない姿勢そのものに疑問を感じる。(これがファンダメンタルとの衝突、ミニバージョンか?)

    ただ、確かにそれは国家に忠誠を誓うといった絶対的なものではない。「日本」という国が成り立ってきたこと、その歴史性への愛着ぐらいのものかもしれない。もっと言うと、そこで生きてきた「日本人」への尊敬でもあろう。

    そうしたものが「倫理」へと結び付くのだろうか。
    ナショナリズムは、かつての在り方へと本当に戻っていかないのだろうか。
    そもそも、外からも沢山の外国人が次々にやってくる中で新たなナショナリズムを形成することなんて出来るのだろうか。

    ただ、日本という国は残念だけれど内側を見つめていないと感じる。
    次の手を打ち出すはずの教育を見ていても、そう。世界で通用する、世界に表現し得る人間。能力を持っていて、それを適切に世界に打ち出す技量を併せ持つ人間を育成しようとしているからだ。

    そうして、それは個人の一時の幸福には繋がるし、経済的勝利を手にする確率は高くなるだろう。
    けれど、日本が様々な人材を輩出し尽くした時に、残った人々はどうなるんだろう。

    誰に何が出来るのか、ということは大きい。
    「倫理」はそれがある範囲にでも通用しなければ、意味を成さない。そうして、その範囲とは想像以上のスピードで縮小……いや、点在化していっているような気がする。

    何はともあれ、2015年佐伯啓思読みおさめ!良かった。

    • yasuさん
      初めまして。投稿者さんの感想に感銘を受けましてコメントさせて頂きます。私は投稿者さんの感想を聞いてこれからこの書籍を読ませて頂こうと思ってい...
      初めまして。投稿者さんの感想に感銘を受けましてコメントさせて頂きます。私は投稿者さんの感想を聞いてこれからこの書籍を読ませて頂こうと思っているものです。人間みな同じとは言っても その国々の歴史はそれぞれ有る事によっての価値観、または常識 マナーみたいなものが有るのは当たり前で自然な事だと私も思います。その過程の中で様々な常識、法律などが生まれて来ることも当然で有りそれが妥当だと思います。なのにグローバル化するってことはそれまで自分達、自分達のご先祖が重んじてたことよりも現世界のスタンダードを重視して行かなければいけないっていう環境が人としての秩序を乱してきているように思います。
      2020/04/19
    • mitsukiさん
      >yasuさん

      拙いレビューに御丁寧なコメントをいただき、嬉しく読ませていただきました。

      ナショナリズムに怯えて薄めていくことと...
      >yasuさん

      拙いレビューに御丁寧なコメントをいただき、嬉しく読ませていただきました。

      ナショナリズムに怯えて薄めていくことと、共同体から個としての生き方が強くなる中で、国と私の関係ってビジネス的だよなと思わないでもないのです。

      その中に在って、日本人の美徳としての倫理には、まだ確かな息付きを感じる。
      同調圧力や世間体はマイナス要素もありますが、範囲としての倫理は恐らくそこに重なる。経済や情報が世界基準になっても、人はローカルであって良いのだ、というのが多様性の意味なんだろうと考えるようになりました。ぜひ、素敵な読書時間をお過ごしください!
      2020/04/19
    • yasuさん
      まさかの返信にビックリしております。ありがとうございます。じっくり読ませて頂きたまたコメントさせて頂きたいと思っております!
      まさかの返信にビックリしております。ありがとうございます。じっくり読ませて頂きたまたコメントさせて頂きたいと思っております!
      2020/04/23
  • 他人への思いやり、コミュニティへの気遣い……「善き生」を見いだすためにこそ倫理や規範が問い直される。保守思想の成熟を示した名篇。〈解説〉澤村修治

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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