ドビュッシーとの散歩 (中公文庫)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122062269

感想・レビュー・書評

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  • おそらく2012年のドビュッシー生誕150年の時に読んで再読。
    曲を聴きながら読むとより面白い。
    イヴォンヌの話が出てきたときに、ドニの水色の絵が浮かんだ。芸術は繋がっていると感じた。

  • 好きなクラシックの作曲家はエリックサティとドビュッシーである。

    子供の頃は『月の光』、『亜麻色の髪の乙女』位しか知らなかったが、ピアノに興味を持ち、購入したYAMAHAの電子ピアノに収録されていた『夢』『アラベスク第一番』、母から借りたCD『ヒースの茂る荒地』、ベルガマスク組曲の『前奏曲』、『アナカプリの丘』。
    自分で手に入れたモニクアースのCDで聴いた『パゴダ』『沈める寺』…人生の折々にドビュッシーの曲に出逢い、その度に気に入りの曲が増える作曲家なので、他の曲も深く知りたくなり本書に手を伸ばした。

    特にヒースと亜麻色は旋律が美しく大好きで、亜麻色の終盤の再現部?(と言うのだろうか)聴く度に泣きそうになる程、ノスタルジーに襲われる。
    彼の曲は、全体的にノスタルジックに感じるのだがドビュッシーは東洋趣味があったらしく懐かしさを憶えるのはどうも日本人共通らしい。
    曲そのものにはそんなにアジア感はないのに。不思議。

    ドビュッシーの曲はわかりにくいものが多い中で、アラベスクや夢は成程口ずさみやすいわかりやすい曲だ。お金のために大衆向けに作られたと知り合点がいった。

    曲に詩的なタイトルが多いのも詩や絵本から着想を得て作られた曲だからか。『音と香りは夕暮れの大気に漂う』『しかも月は廃寺に落ちる』タイトルだけで想像を掻き立てられる。

    本書は1章あたり4.5ページ、ドビュッシーのピアノ曲を一曲テーマに40章程に分けられたエッセイである。
    ズバリ曲そのものについて語ったり、ドビュッシーの人となり、自身の経験や童話についてなど脱線しつつも自由に語られる。
    時には音楽用語も出てきて音楽を嗜む人でないと理解が難しい部分もあるが(元々音遊人というピアノ弾き向けの雑誌で連載されていたようだ)わからなければ読み飛ばしても差し支えないだろう。
    解説にあるように、散歩なのだから。気楽に読める本。

    本書を読む時はYouTubeやCDで曲を聴きながら、また、ピアニストの指の動きも観察しながら読み進めるとより楽しめるだろう。

  • 斜め読みなので、評価せず。

    ドビュッシーが絵本好きだったエピソードは
    その絵本と共に紹介され、
    素顔の部分がクローズアップされていて面白い。
    こちらも、じっくり読みたかった本。

  • 堅苦しくないクラシックを堅苦しくない言葉で語ってくれる。
    フランス文学とギリシャ神話のくだりはちんぷんかんぷんだったけど、曲を聴きながら楽しく読めた。

    宝物に仲間入りした一冊。

  • ドビュッシーの残したピアノのための作品を、ドビュッシーの演奏・解釈の第一人者である作者の青柳いづみこさんが丁寧に紹介していく一冊。

    ドビュッシーと言えば、流麗なピアノ曲が多いイメージ。
    「月の光」は誰もが知るクラシックの名曲ですね。
    とは言え、私は、まだ曲も、ドビュッシーの人物像も明るくないため、これはとても勉強になった。

    ドビュッシーは、ジャポニズムを取り入れた最初の作曲家だったという。
    東洋の美術が大好きで、蒐集していたという。
    多くの日本人がドビュッシーの曲を「美しい」と感じるのは、そのためなのですね。

    ラヴェルとの関係性も興味深かった。
    印象主義といえば、ドビュッシーとラヴェル。
    しかし、弟分だったラヴェルとは少しずつ確執が生まれていったらしい。
    独自のスタイルを完成させたのはラヴェルが先。
    ドビュッシーは以前に書いたものを無意識に作品に取り込んでしまう傾向があったようで、ラヴェルに似た曲を作ってしまったことで、ラヴェルに非難されたようだ。
    いつの時代もつきまとう、盗作とオマージュの問題・・・。
    でも無意識で似てしまったのは仕方ない気もするが・・・。

    ドビュッシーは印象主義で括られるも、特に絵画の印象主義の画家たちを好んで影響を受けていたわけではないのですね。
    ボッティチェリ、モロー、ロセッティ、バーンジョーンズなどのラファエロ前派、ターナーを好んでいたらしい。
    ターナーは特に好きだったようだ。ターナーは印象派の先駆けとも言われるから、やはり少なからず影響はあったんだろうな。
    音楽と美術の「印象派」のつながり。気になるな。もっと調べてみようと思った。

    また、青柳さんが「アラベスク一番」について述べていた章が印象に残った。
    「アラベスク=アラブ風の。唐草模様という意味。
    カーブを描くメロディの象徴で、左手と右手の滑らかな動きから唐草模様のような美しいアルペジオが次々に紡ぎ出される。」
    と綴る。
    代表曲ではないようだけど、青柳さんはこの曲が好きなんだろうな。
    私も、実は今弾いているショパンが終わったら、ドビュッシーに初挑戦してみようと思っている。
    私も、「アラベスク一番」が最近同じく好きで、弾いてみたい憧れの曲になっている。すごく難しそうだけど。

    ドビュッシー。まだまだ知らない曲も沢山あるので、聴いてみたい。

  •  いつもの青柳先生のドビ本シリーズ。本書はかなり軽いタッチで、1時間とかからず読了してしまった。版画ネタが、現在練習していることもあり、グッと来た。やはりドビュッシーはエスニック(特に日本)に並々ならぬ興味を持っていたということで、納得。

  • 著者の本はドビュッシーの評伝の他、数冊を持っている。あとピアノ曲のCDも。評伝はドビュッシーが好きなんだナと思える処と冷たく分析する処が、演奏家としても評論としても、プロの文章の印象だった。

    「亜麻色の髪の乙女」から始まる、短めの文章。ドビュッシーは髪フェチだったとの指摘。実はオペラ「ペレアスとメリザンド」の作曲中に歌曲「三つのビリチスの歌」も作曲されたとレコードの解説にあったので、そうだろうと思っていた。著者は更に証拠のエピソードを挙げている。ちょっと、嬉しい。
    「ビリチス」へ言及は何度も。特に2曲目「髪」の官能の暗示、そして3曲目「ナイヤードの墓」の寒々しさ。若い頃買ったLPのアメリンクのソプラノとボールドウィンのピアノの素晴らしさを思い出しながら読む。

    若い頃のドビュッシーはピアノ曲の作曲に熱が無く、オーケストラ曲や「ペレアス‥」が評判になってから、ピアノ曲を世に出していったと。意外。評伝読んでるのに、まったく知らなかった。

    「ミンストレル」はアメリカから来た音楽円劇団。吟遊詩人としている世にある通説を訂正している。僕は、ギリシャ関係の何かぐらいと思ってた。人知れず赤面。
    金色の魚は金魚でなく、蒔絵の箱の緋鯉がイメージ源とか、絵本がテーマになっているものが多いとか、へ~と云う話が沢山。
    「雪の上の足跡」「雪が踊っている」など冨田勲のシンセサイザーで知った曲も多いなあ。フランソワとミケランジェリのタッチの違いは、えっと、そうだたっけと再び赤面。
    ドッビュシーはショパンの系譜なので、ハ長調から教えるチェルニーに批判的だっとのこと。最近、吉松さんの調性の本を読んだが、まさかピアニストがハ長調が不得手とは思わなかった。

    一番沁みた文章は「自分の磁場をなるべくしなやかに、どんなものでも対応できるようにするする広げておくと、そこにドビュッシーの音楽がいつのまにか忍びこんででくる。そして、一緒になってのびひろがってくれる。」
    僕は単身赴任中で、手元にCDがない。やっぱり、曲を聴きながら読みたい文章だね。

    映像第1集「ラモーを讃えて」が好きなんだが、触れてなかったのがチョッと残念でした。

  • ドビュッシーの演奏・解釈の第一人者が、偏愛するピアノ作品四〇余曲に寄せたエッセイ集。怪奇趣味、東洋幻想まで、軽やかな文体で綴る。〈解説〉小沼純一

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著者プロフィール

ピアニスト・文筆家。安川加壽子、ピエール・バルビゼの両氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院卒。東京藝術大学大学院博士課程修了。学術博士。武満徹、矢代秋雄、八村義夫作品を集めたリサイタル『残酷なやさしさ』により平成元年度文化庁芸術祭賞。演奏と文筆を兼ねる存在として注目を集め、安川加壽子の評伝『翼のはえた指』で吉田秀和賞、『青柳瑞穂の生涯』で日本エッセイストクラブ賞、『六本指のゴルトベルク』で講談社エッセイ賞、CD『ロマンティック・ドビュッシー』でミュージックペンクラブ音楽賞。2020年、浜離宮朝日ホールにて演奏生活40周年記念公演を開催。テレビ朝日『題名のない音楽会』、NHK Eテレ『らららクラシック』、『ラ・フォル・ジュルネ音楽祭』『東京・春・音楽祭』等にも出演。日本演奏連盟理事、日本ショパン協会理事、養父市芸術監督。大阪音楽大学名誉教授、神戸女学院大学講師。

「2023年 『安川加壽子の発表会アルバム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

青柳いづみこの作品

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