フォグ・ハイダ - The Fog Hider (中公文庫 も 25-12)

著者 :
  • 中央公論新社
4.20
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本棚登録 : 372
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122062375

感想・レビュー・書評

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  • 「ヴォイド・シェイパ」シリーズ第4弾。

    前作より意外な展開は少なかったが、より物語が深くなった印象。前は事件に巻き込まれて剣を振るっていたが、本作でのゼンは他人のため、自分の意志で戦いに入っていく。

    刀を交えることでしか、得られないものがあると実感しつつ、相手の命を奪うことへの疑問が更に大きくなっていく。それは山を下り、旅を続けることへの疑義となっていく。

    「刹那」に得るものは、剣を通じるしかないのだろうか。

    世間を知らず、純粋無垢なゼンも本作では、より人との繋がりが強くなっている。師カシュ―から愛されていたという想いは、相手を思い図ることを知った記憶となる。
    そしてゼンの純粋さは時に呆られながら、悪人に生き方を変える転機を与え、陰惨な物語にホッと一息をつかせる。

    大人数の敵との戦いは、小学生の時に読んだ吉川英治「宮本武蔵」の一条寺下り松の吉岡一門との死闘を思い出させた。武蔵ならこの後沢庵和尚に城の一室の閉じ込められて自省の時間を持つが、ゼンの持つ疑問は尽きない。やっぱり剣豪小説ではないんだろうな。

    「ああ‥‥、侍ってのは、はぁ‥‥、しょうがないねぇ、本当に」というノギの科白が幕を引く。
    最終巻は、一体どうなるんだろう。

  • シリーズ、第四作。ゼンより強い侍現る。その名をキクラと云う。己より強い侍に対峙し、死を感じゼンはまた成長する——。次巻、完結巻だがゼンの成長物語がどう集結するのか全く分からん…。

  • 【あらすじ】
    山の中で盗賊に襲われたゼンは、用心棒らしき侍と剣を交える。強い。おそらく、勝てない―歴然たる力の差を感じながらも辛うじてその場を凌いだゼン。彼を戦慄させた凄腕の剣士には、やむにやまれぬ事情があった。「守るべきもの」は足枷か、それとも…。

    【感想】

  • 子供の真っ直ぐさに近い感覚を持つゼン。考えすぎるきらいはあるが、見たもの、体験したものがどういうものかをじっくり考えて、これは自分にいるもの、いらないもの。そうやって成長しているようにも思える。「自分の命をいつも第一に考え、危険を避け、無理をするな。意地を張ったり、名誉のため、義理のためといった目先のものに惑わされるな」いい師匠を持ったとうらやましくさえある。芯がぶれないから、どんな人にあってもどんな体験をしようとも。ゼンはゼンでいられるのかと。

  • ヴォイドシェイパの頃は物語の風景に色が無く世界が謎に満ちていた。
    今作でシリーズは四作目!ゼンの成長と供にゼンの見る世界に色んな色が付いてきた。ただまだその色にくすみは無く清々しさを放っている。

    山から里へ、里から街へ、街から都へと行くうちに、都会の絵の具に染まらないで欲しいと只々思うばかりです。

  • 今回もぐいぐい読めた
    ただ、わりと実直な斬り合いへの発展が多く、ストーリー的にはやや平坦か
    にしても仲間が増えたなぁ、それに付随して他者の思想や心情が所作として描画される事が増えた
    これはすなわち主人公たるゼンがそう思うからである
    (このシリーズ程、極まった一人称小説はなかなかないと思う)
    精神的な距離感に加え物理的な意味でも孤独が持ち味ではないかと思っていた(個人的にも求めていた)が、妻、人の群れ、連れ、敵など、そこからの進展(あるいは成長?)がもしかするとこの物語の核なのかもしれん
    剣を狂言回しにして
    そういった片鱗を少し見せた巻であった(それを理論的にゼンが捉えるであろう様は楽しみではある)

  • シリーズ4作目。

    仲間がいることで、今までと違う雰囲気になっていたが、それが良かった。3人の侍とリュウ、そしてナナシも皆好きになった。
    互いを信頼し、身を案じ、相手の不幸を嫌う。真っ当な人間でなければそんな関係を築くことも難しいだろうが、現代でもそんな仲間と巡り合えたら幸せだと感じた。

    ゼンが山に隠れていた時の回想も良かった。ゼンは、本人の前ではカシュウのことを何と呼んでいたのだろう?そのまま「カシュウ」だったろうか。

    *2016.6

  • 20160601読了
    ヴォイドシェイパシリーズ4冊目
    生きる事について。あと旅。

  • 生きる事、人を殺すこと、一つ一つの事について深く深く考えていく、ゼンの思考が興味深い。
    山を下りて来た頃と比べると、素直さはそのままに幅が出てきたようで、ノギ達との掛け合いにも成長が見えて微笑ましい。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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