路上のジャズ (中公文庫 な)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 79
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122062702

作品紹介・あらすじ

一九六〇年代、新宿、ジャズ喫茶。デビスに涙し、アイラーに共鳴し、コルトレーンに文学を見た中上健次。「破壊せよ、とアイラーは言った」ほかエッセイを中心に詩、短篇小説までを全一冊に収める、ジャズと青春の日々をめぐる作品集。巻末にジャズ評論家小野好恵によるロングインタビューを併録する。

感想・レビュー・書評

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  • 人はどこかでガス抜きが必要だ。 "きれいごと"の布に覆われた醜い社会で、今、僕たちは生きている。 ひょっとしたらもっと醜くかったであろうあの時代が、実はへどや膿を吐き出せるまっとうな社会だったのではないのだろうか。 この本を読むと、そんな気にさせられる。

  • 2020/5/5購入

  • 芥川賞作家による若き日のJAZZ浸りの日々を通じての破壊的な感性で綴る作品集。黒人差別等暗黒時代に生まれ発展し、やがて収束した表現手段、JAZZ。ただ、その世代が分からない自分にとってはその熱い感性の爆発をJAZZに感じる根本的な根拠が語られておらず共感出来ない。コルトレーンにせよ、デビスにせよ時代背景の中にあって、あるいは病的なJAZZ喫茶で大音量で聴く環境なくしては中上氏のようには感じ得ないのではないか、と思う。デビスの「リラクシン」など聴いてもカフェでのBGMになりうるオシャレ音楽と感じてしまう。
    とはいえ、JAZZ奏者には不審な死が相当あるとのこと、単に作者の妄想ではないのも確かではある。
    特に「灰色のコカコーラ」の闇は何か惹きつけられるものがあります。

  •  中上健次の遺した作品から、ジャズがらみのものを集めて一冊に編んだ文庫オリジナル。
     よく知られた「破壊せよ、とアイラーは言った」などのジャズ・エッセイを中心に、ジャズを題材にした小説や詩、ジャズ評論家・小野好恵による中上へのロングインタビューまでを収めている。

     初期の小説(「灰色のコカコーラ」など)や詩は青臭くて鼻白んでしまったが、ジャズ・エッセイは素晴らしい。

     それらのエッセイはみな、中上が18歳で上京してから、新宿のジャズ喫茶に入り浸ってフーテンをしていた約5年間の放蕩の日々が背景になっている。
     つまり、中上にとってジャズは自らの青春と分かち難く結びついた音楽なのであり、青春を語るようにジャズについて綴っているのだ。

     その中には、コルトレーンを論じた「コードとの闘い」に見られるように、ジャズ論として傾聴に値する卓見もある。
     が、全体としては評論色は希薄で、ジャズを詩的な言葉で表現した、他に類を見ない音楽エッセイになっている。たとえば――。

    《ジャズはモダンジャズ喫茶で聴くものである、と言えば、いいだろうか? 路上で聴くものだと言おうか? 町中のジャズ。ジャズは野生の物であって、自分の小市民的生活の背景音楽になど似合っていない、と私は、ステレオを買って初めて分かった。
     ジャズは、単に黒人だけのものではなく、飢えた者の音楽であると言おう。(中略)例えば、アルバート・アイラーを聴く。スウィングを無視したそのサックスの音のうねりから、貧しくて腹一杯飯を食うことも出来ずにいる少年が見えると言うと、うがちすぎだろうか?
    (中略)
     路上のジャズ、野生のジャズを聴くには、町が要るし、その飢えた心が要る。語るにしてもそうである(「路上のジャズ」)》

     興味深いのは、中上の小説作品はジャズからの強い影響を受けている、と自己分析している点。

    《私の初期の長い文章や、メタファの多用、「岬」の頃の短い文章、読点の位置、それに、「枯木灘」のフレーズの反復は、ジャズならごく自然のことなのである。今、現在、私が言っている敵としての物語、物語の定型の破壊も、これがジャズの上でならジョン・コルトレーンやアルバート・アイラーのやったフリージャズの運動の延長上として、人は実に素直に理解できると思うのである。ジャズは私の小説や文学論の解析の大きな鍵だ(「新鮮な抒情」)》

  • 著者の青春はジャズと共にあり。
    ジャズはやはり狂気なのか。
    18歳から23歳…一瞬戻りたくなって、戻れないことに気づいて、胃が痛くなった。

  •  中上健次のジャズに関する雑文、詩や短編小説をまとめたもの。掲載メディアも様々で、折に触れて当時(中上18歳から23歳の頃)の話が繰り返されたものを集めてある。何度も同じ話が出てくるが、それが却って若かりし頃の煩悩のように、振り払えず、まとわりついてくるような焦燥感がひしひし伝わる気がする。
     1960年代の新宿。和歌山の片田舎(いわゆる“路地”)から徒手空拳で上京してきた若者のもがき苦しむ描写が赤裸々だ。カサブタになりきらない皮膚に触れられるような痛感とでもいおうか、あの時代のアングラな街の空気が伝わってくる。

     ジャズについては、マイルスとコルトレーンとアイラーのことしか出てこない(ちょこっとセロニアス・モンクの記述もあったか)。中上健次は、アイラー、コルトレーンに、彼らが傾倒していくフリージャズに「破壊」というメッセージを聴きとったようだ。
     しかも、ジャズは「路上」で聴くべきと断じる。安保の時代、政治の季節が終わった60年代後半、団塊の一員として社会への反発するでもなく、溶け込めないでいる鬱屈した精神を抱え、新宿の薄暗いジャズ喫茶に集う。そこが彼の言う「路上」だ。

     ジャズを、アイラー、コルトレーンをどう解釈しようが個人の自由だ。ジャズのことより、あの時代と、鬱蒼とした都会の片隅で、カサブタの剥がれた皮膚感覚でヒリヒリとした痛みと、なにかに餓えた心を抱えた若者の生き様に、けっして現代(いま)の時代には感じられない自由を見る。なにかに囚われつつも解き放たれた心を見る。それがジャズの精神か?

     何かを理解できたわけではないけど、何か心に響く作品群だ。

  • “ジャズ”をキーワードに、中上健次のエッセイや短編などを収めた作品集。

    中上はフリージャズを好み、とりわけアルバート・アイラーへの思い入れが強いことが読み取れる。

    玉石混交だが楽しめた。

  • 一九六〇年代、新宿、ジャズ喫茶。エッセイを中心に詩、短篇小説までを全一冊にしたジャズと青春の日々をめぐる作品集。小野好恵によるインタビュー併録。

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著者プロフィール

1946年和歌山県生まれ。74年『十九歳の地図』でデビュー。76年『岬』で芥川賞、77年『枯木灘』で毎日出版文化賞、芸術選奨新人賞を受賞。他の作品に『千年の愉楽』『地の果て 至上の時』『日輪の翼』等。

「2015年 『中上健次』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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