隼別王子の叛乱 (中公文庫)

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  • 中央公論新社 (2017年2月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784122063624

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プレミアム

みんなの感想まとめ

神話が息づく古代の日本を舞台に、隼別王子と女鳥姫の恋愛を中心に描かれた物語は、登場人物たちの複雑な感情と人間関係を深く掘り下げています。大王と大后の関係は、愛情と悲しみが交錯する静かな強さを持ち、彼ら...

感想・レビュー・書評

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  • まだ天皇が大王とよばれていた頃、神話が生々しく生きている古事記が舞台の物語です。田辺聖子さんの平安文学の雅な現代語訳とは違い、この本はとても猛々しく雄々しいのですが、そこがこの物語にとてもよくあっています。初めて読んだときは、大王は恐ろしい人で、大后は嫉妬深い嫌な女性でした。隼別王子と女鳥姫は美しかった。でも今は、大王の為政者として生きなければならない悲しみや、愛することに必死すぎた大后の痛みと悲しみがわかるような気がします。大后としてのプライドは、わかりすぎるくらいでした。このふたりには、好きも嫌いも超えたものすごい固い絆があるような気がします。

    太陽のように光輝く、隼別王子と女鳥姫の恋愛は若さゆえと思うこともありましたが、これはこれで美しい。でも、ともに深い悲しみと孤独を心の底に抱えた大王と大后の静かな関係はゾッとするほど揺るがない。憎しみも悲しみも孤独も、愛情あればこそなのかも知れません。大王と大后の関係を見ていると、悲しみを愛する、悲しみに愛されるということばの意味がわかるような気がしました。

  • 「日本書紀」「古事記」に登場する大王オオサザキ(仁徳天皇)と大后イワノヒメの夫婦の物語を中心に、大王の弟・隼別王子とその恋人・女鳥姫が謀反の悲劇に流されていくドラマが描かれる。

    舞台は大和朝廷。大王にのぞまれた美しい女鳥姫が、大王の求愛を退け、大王の弟・隼別王子と恋仲になったことから悲劇は始まる。大王は2人を引き裂こうとするが、嫉妬心の強い大后の計略も加わり、若い2人は「謀反」というかたちで愛を貫く。絶頂で摘み取られた若く輝かしい愛は、その後の大王と大后の関係に、深く深く影響を及ぼしていく。

    前半の隼別王子たちの若く激しい愛に対して、大王と大后の愛憎は、まるで灰の中の炭のように静かに、不気味にくすぶり続ける。この鮮やかな対比が、男女の愛のたよりなさをあぶりだし、歳月というものの残酷さを思わずにはいられない。

    30年前に読んだ私は、前半の隼別王子・女鳥の悲恋があまりに甘美なのに対し、後半は読後感が悪く、大后を好きになれなかったのを覚えている。しかし、今は、大王と大后の「悲劇」に涙が止まらなかった。求める「愛のかたち」が違えば、時にそれは、憎悪しか生まない。いつの時代にも、どんな関係性にも繰り返される永遠のテーマなのだろう。

    だが、私がこの物語に最も強く惹かれたのは、大后の身を切るような「女のプライド」にある。大后は、大王が若い愛人を手に入れたことをきっかけに、自分の権威の衰えを自覚し、大王のもとを去る。大王は、弱った大后の姿に、ようやく何かしらの情を感じ得たのかもしれない。大后を迎えにいき、「我々には夫婦としての絆・歴史があるじゃないか」と説得を試みる。もしも、大后がその言葉を受け入れられるような女であれば、この物語は本当につまらないものになってしまっていただろう。もちろん、作中の大后は帰らない。謀略と嫉妬の象徴であった大后イワノヒメが、最も身近に、愛おしく感じられたシーンであった。

    ところで、「古事記」では、大后は大王の説得を受け入れ、一緒に宮に帰っている。一方、「日本書紀」では「帰らなかった」と記録されている。いずれが事実かは知るよしもないが、本作の作者である田辺聖子さんは大后を帰さない選択をした。私も大いに賛同する。田辺さんは著書「田辺聖子の古事記」で、大后について「イワノヒメの自我とプライドは美しい」と述べている。古来、大后は嫉妬心の強い女性として、ネガティブなイメージで受け取られがちだったという。だが、それは主に男性からみた価値観ではなかったか。田辺さんは、そんな既成概念を軽やかに乗り越え、大后を「普遍的な一人の女」として見事に描ききったと感じる。

    この作品は、「日本書紀」や「古事記」の場面場面がきりとられ、時系列も含めて、見事に再構成されている(古事記と日本書紀ではそもそも時系列や史実が微妙に食い違っている)。実はこれこそが真実歴史であったのでは、と錯覚するほどの説得力。田辺さんの力量と造詣の深さに、改めてため息がでる。名作。

    さて、これをを20年後に読んだ時、果たして私はどんな感慨を抱くのか。楽しみだ。

  • 短いページで一人称の視点がコロコロ変わる。
    突然出てきたこともない付き人とかの視点になる。
    読みにくさを感じてしまった。
    読者にこびていない書き方だ。有名作家さんだから本にできたのだろう。
    作者さんはこういう書き方をしたい、と決めて、それをつらぬいたのだと思われる。

    内容はすばらしいんだけど……うーん、やっぱりこの内容なら、ひっかかることなく三人称で全部を読みたかったなあ。
    一人称で誰かの視点になって読まないといけないと疲れる。

  • 倦むことは凶器となり得るのかもしれない。

    古事記から着想を得た本作。
    各々の胸の内を密やかに語るような構成と万葉言葉に、まだ神と人とが近過ぎた時代の妖美さを感じ怖気立つほどだった。

  • 第1部と、第2部、それぞれに面白みを感じられました。きっと、もう少し前のわたしなら、第2部はわからなかっただろうなあ。
    年を重ねて、経験値を増やしていくことって、いいことね。

    日本書紀も古事記も、あまり詳しくないのだけれど、少し興味が出てきました。
    そしてあとから、この第1部が宝塚で演じられたことを知りました。運命的!見てみたいなあ。
    2017.08.10


  • いぎなぎ、いぎなみ?

  • ヤマトの大王の想われびと女鳥姫と恋におちた隼別王子は大王の宮殿を襲う。「古事記」を舞台に描く恋と陰謀と幻想の物語文学。〈解説〉永田萠

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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