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Amazon.co.jp ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784122063914
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組織の不条理をテーマにした本書は、第二次世界大戦における日本軍の失敗を通じて、経済学理論に基づく組織の合理性とその限界を探ります。具体的には、取引コストやエージェンシー理論、所有権の観点から、なぜ組織...
感想・レビュー・書評
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本書は、第二次世界大戦における日本軍の失敗事例を3つの経済学理論(取引コスト、エージェンシー、所有権)に基づいて「組織の不条理による失敗」であることを説明し、同様の現象が現代の企業活動の中でも発生して、事業の失敗や不祥事がもたらさらることを解説している。
ガダルカナル戦をはじめ当時の戦略や作戦状況が解説されている軍事史の側面だけでなく、現代企業の失敗事例の紹介というビジネス書の側面も併せ持った書籍であり興味深かった。
自分の仕事経験からも、数値目標に繋がらなければ意味がないという「勝利主義」の考えや、社内調整の「取引コスト」を無意識で計算して、部分合理の意思決定に流されてしまう覚えがあり、耳が痛い部分もあった。
今後は以下の3つを仕事における行動として取り込む。
①批判的議論を受け入れる姿勢を発信して自分への取引コストを下げる。
②正しい行動、誠実さを評価軸とした判断をする。
③不明確な無責任状態を作らない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2009年出版の「組織は合理的に失敗する」を改題して2017年の出版されたのが本書。日本軍の「失敗」を単にその不合理性に求めるのではなく、最新の経済理論に基づいて組織が「合理的に失敗する」仕組みについて考察している。改題された本書では、はじめと最後に「不条理」と何かなどの定義だとか、最新の組織の失敗事例に関する考察だとかを加えられていて、正直、この加筆された部分のみを読んでも良いかと思った。
人間は完全に合理的な生き物ではなく、得られる情報も限られていてその合理性は限定的である。自分や周囲にとって合理的な行動が、組織全体の合理性とはならない。仮に全体を最適化することが理解できても、そのための取引コストが得られる利益を超えれば、とりあえず不合理なままであることが合理的になってしまう。物性理論で言えば、自由エネルギー最小の状態に向かおうとしても周囲の障壁によるローカルミニマにとどまってしまうということか。
変化の激しい時代、組織を大きく変えようとするときは必ずこのコストも考慮して進める必要があるし、平時から組織内の取引コストが小さい状態を作り出しておく必要があるのだろう。そもそも組織だとかコミュニティーを作るのは、信頼関係を気づいて取引コストを小さくするためなわけで、組織内の横の繋がりを断ち、競争を煽るようなシステムを構築するのは愚の骨頂なのかもしれない。 -
取引コストを侮ってはならない。仕事に関する様々な不条理は、主に取引コストに依存する。
逆に言えば、取引コストを低くマネジメントしていくことが大事なのである。 -
学者先生の論文的な本なので、かっちりした構成で、不条理の理論的説明、事例検討、考察(不条理の生成メカニズム、その解決案)という順番に書かれている。
最初の理論的説明は堅苦しく読みづらい。事例検討は正しい分析だと思うが迂遠。さらに不条理、条理のまとめへと進むが、ここも重複が多く読みづらい。それだけでなく、この章は企業事例が古い(著者もあとがきで弁明している)。ここまで読み進んでも解決案はまだ示されず、フラストレーションは溜まるばかりである。
それでも終章間際にようやく著者から結論が提示される。どんな内容かは、読んでのお楽しみ(ヒント:批判的態度、漸次工学)。まあただ、そのような健全な批判を受け入れることのできる組織はそもそも無謀な戦争を起こさないし、インパールのあの状況で牟田口廉也や河辺正三をどのように無効化すれば良いのかという答えは示されずじまい。
理論と分析は正論で、まさにその通りなのだが、何ともすっきりしない読後感。事態がある程度の段階にまで進行してしまうと、もはやどうにも止められないという、身も蓋もない教訓しか得られない。これじゃ、インパールはまた起きるし、原爆もまた落ちてしまう。
さらに本当の最後まで読み進めると・・(ネタばれなので削除)・・まあこの辺りに期待したくなる気持ちもわかるけど、これで社会的コストをカットできると考えるのは少々楽観的過ぎる気もする。
それにしても、一番大事な考察は中公文庫版のあとがきというサプライズ。前半の堅苦しさと後半の冗長さに邪魔されて、総じて読みにくい本だったが、示唆深い内容と切り口で、辛抱して読む価値のある本ではある。著者が防大の教授をしていた頃は、後々の補足説明もなく、さらに解りにくかっただろうから、当時の学生や教官にはほとんど理解してもらえなかったんじゃなかろうかと推察する。今の世なら、理論を数理モデル化することまでできるかもしれない。それができれば、国防だけでなく企業経営や制度設計に於いても恩恵は大きいだろう。 -
今村均の生き方、考え方をより詳しく知りたい。
人間は限定合理的であることを前提にマネジメント。
他律と自律の合わせ技で完全安全性を実現する。
批判的議論の場を設ける。 -
作者の主張したいことは理解も共感もできるのだが、「限定合理性」という考えが先にあって、後から事例を当てはめた感が強く、理論と事例の関連付けがどうもしっくりこない。
何かいまいちだな...と思って文庫版のあとがきを読んだら、こっちの方が面白かった。
間違っているとは思いつつも、取引コストの高さに辟易して保身と打算で過ごしている小物の身としては、「内なる良心にしたがって自由を行使せよ」という叱咤の声は、眩しすぎて少々疎ましい。
腐りかけた性根には澱んだ水が合うようだ。 -
これはおもしろい!「失敗の本質」を読みながら、とはいえ当時の日本軍や日本政府にも「止むに止まれぬ事情があったからそうなっちゃったんじゃないか」と思っていたが、それを新制度派の考えで読み解くと「止むに止まれぬ事情」が理解できてくる。
じゃー、あのときどうすればよかったのか、についても執拗なほどに事例が挙げられており、著者の不条理問題解決に対する執念が感じられる。会社経営者としてしっかり咀嚼し、生き生きとした組織づくりに活かしていきたい。
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取引コスト理論:
転身が必要な場合の取引コスト
✖️ガナルカナル
✖️太平洋戦争開戦
人間関係、埋没コスト、駆け引き、トラブル、摩擦、 事前調査、弁護士雇用、契約書締結
市場経済の結果は歴史的経路に依存、歴史的不可逆性、既得権益・デファクトスタンダード側からの反発、反発に対応するコミュニケーション、
利己的利益最大化、機会主義
取引コスト最小化に向けて動く
→取引コスト最小化に向けて意思決定する
→結果として、非効率な状態を選びうる
わずかな勝利の可能性に賭けたり。
対策:①信頼できるものが集まって組織を形成=別会社を垂直統合、集権型組織から現地分権型組織へ、権限委譲(事業部制) ②罰則など、さまざまな制度 ③会話量増加(今村式 懇談と雑談による調整) ④management by walking around ⑤下層部への権限委譲 ⑥外部者にとっては取引コストは小さい。反発をものともしない。=カルロスゴーン、私。
エージェンシー理論:
✖️インパール 中牟田中将だけでなく、東郷も政治的に何かの行動を必要としていた
利害不一致、ルーティーンでない新しい局面、情勢が大きく変化した時に表面化する
情報の非対称性
曖昧な状況
モラルハザードが起きやすい:人はサボる、ズルをする
アドバースセレクションが起きやすい:利己的な政治的な利益のために非効率を掲げる人という人が残る可能性
非効率で非倫理的な人が残る現象
対策:毅然とした倫理規定、モニタリング制度、罰則、情報公開制度、スクリーニング
所有権理論
リソースを使った結果が誰にも帰属しない
メリット/デメリットの外部性
→マイナスの外部性 例 ✖️公害
非効率を続ける
→+の外部性 維持されない
対策 内部化する 例 ◯今村均のジャワ島統治
◯アメーバ経営
◯後期の奴隷制、奴隷の厚遇
◯美容院の独立支援制度
◯部下の功績とする、部下の主体性尊重
危機感の中で、組織はようやく変わる
♯組織構成員の7割がやばいと認識した時に変われる
♯ガナルカナルとインパールと原爆は必要なのかも。。
背景
過去の勝利体験へのこだわり
ドグマによる洗脳
総合改善策
非合理前提の組織を作る
批判的合理的構造が必要
絶えず非効率や不正を見つけ、それを排除する流れ=散逸構造
常にゆらぎの状態を許容する、セカンドベストを許容する
未来に対して開かれた状態
失敗を語る組織
変化を当然とする組織
常識を疑う
混血化、雑草化
漸次工学、だんだんよくしていく
試行錯誤する
小さいチャンスは案外多い、繋ぎ合わせるとビッグチャンスになる
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別の著者の本を読みながら考えていた、全体合理性と個別合理性の不一致について、全く同じ思考かつ体系だった学問として解説された内容だったために、それだけでも私にとっては価値のある一冊となった。
合理性の範囲の差により不条理が起こり、突き詰めるとそれは、倫理性と効率性、長期的帰結と短期的帰結がそれぞれ一致しない時に生まれる。これらを研究した新制度派経済学は、取引コスト理論、エージェンシー理論、所有権理論から構成される。
人間は限定合理的であるが故、相手の情報不備につけ込んで利己的利益を最大化しようとする。この仮説は、機械主義的行動を招く。相互に駆け引きをするため、取引コストが発生する。利己的利益を最大化するために、集団組織の形態が取られる。組織内の取引コストを抑えるためにガバナンス制度が設けられていく。
依頼人であるプリンシパルと代理人であるエージェント。プリンシパルの不備を利用して、利益追求を図るエージェントにより、非倫理的なモラルハザードが起こる。悪しきエージェントが生き残るアドバースセレクション、逆淘汰現象が生じる。エージェントコスト。中古車におけるレモン市場、保険加入者による情報非対称性で起こる。
どんな事象、いつの時代でも起こり得る合成の誤謬であって、それを避ける為にすべきは、無知を知り、その上で制度設計する事だろう。 -
組織を不条理に導くのは、人間が限定合理的だから。完全合理的に行動すると、組織内で批判的議論がされず、非効率や不正が排除されない。そして組織は不条理に陥り、淘汰される。
人間は限定合理的だと認識し、絶えず批判的な議論を展開すれば、組織は進化していく。 -
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あとがきが興味深い。
問題はいかにして実践するか。 -
完全ではない限定合理的である人間が、不条理な結果をもたらす悲劇を、太平洋戦争の失敗例や改善例で分析した名作といえる作品。
戦記物に馴染みのない人でも、作戦や組織、人物を説明し、学説で、分析し解説しているのが、素晴らしい。
そして、批判を許容し自己学習する組織作りの大切さを説く。
空気を読んで、批判・反論したいのが本音なのに、我慢せざるを得ない時って、まだまだあると思う。
同時に、命を賭けて戦った先祖や先輩たちに、皆さんの時代と違って、反論を許容し進化する文化になってるよ!日本は!と堂々と顔向ける状況にない事に、やるせなくなってしまう。
それにしても、ある程度知っていたが、失敗例のインパール作戦には、表現出来ないほど、呆れる。作戦の結果としての敗北・戦災ではなく、人災と言っても過言でない。
会社の例で言うと、実力や勝利経験のない、身のほどをわきまえないバカ部長の暴走と言った所かなと勝手に解釈してしまった。 -
組織を構成する個々人は優秀なのに最低な意思決定、組織運用をしてしまう事例は多く存在する。旧日本軍の失敗の轍を現在も多くの日系企業が踏んでいる気がしてなりません。
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組織の本質は、人間の限定合理性にある。
なるほどと思いました。
著書は、「取引コスト理論」「エージェンシー理論」「所有権理論」をベースに、人が限定合理性の枠組みの中で、合理的に意思決定し行動するが故に、不条理に陥ってしまうと論じております。
著書を一読してみて、切り口は違えど、「行動経済学」とクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」と類似しているなと感じました。
最後に、その処方策として、批判的精神を持ち、漸進的に組織を変えていくとの主張がありましたが、自分はこの書のあとがきに明記されている「個々の自律による主体的な行動」の主張の方が、しっかり腹に落ちました。
良書でした。 -
太平洋戦争で日本軍は非科学的、非合理的な意思決定を重ねたが故に多大な損害を出したという見方がよくされます。しかし、それは後世にすべての状況を知り得たが故に非合理と判断できるのであって、戦争を遂行している状況では得られる情報は限定的で、得られた情報の範囲内では極めて合理的な決断を重ねていたにも関わらず結果として誤った状況判断を下していたというのが本書のスタンスです。
状況を完全に俯瞰できる情報が常に得られれば人間は合理的に判断ができますが、そのような理想的な状況は実は稀であって、人間は常に判断ミスをする可能性があるし、安きに流れる傾向を持っているという前提で組織を運営しましょう。さもないと意思決定をする局面では合理的に判断をしていても、全体として誤った方向に進んでしまいますよ、という事を太平洋戦争や、企業不祥事の実例を挙げて解説しています。
著者の上記の見解には非常に共感できますが、その裏付けとして「新制度派経済学」という分野を持ち出し、そこで述べられている経済理論を根拠とする進め方は、ちょっと理屈っぽ過ぎる印象が残りました。 -
太平洋戦争で日本軍が如何に失敗していったのか、組織論と合わせて説明されている。
それぞれが自分にとって合理的な判断を行うと、全体として非合理な結果が出るという。。。
当事者は気づかないのだろうけど、非常に参考になった。 -
組織が自らの立場にとっての「合理性」に基づいて行動すればするほど、全体の利益から乖離していく「不条理」を解析していく。対象は破滅的な愚行の事例に富む太平洋戦争時の日本軍。はたから見れば信じ難い錯誤を犯した軍人は全て当時のエリート層だっただけに、単純に彼らは愚かだった、では済まない問題を抱えている。その失敗要因を、従来言われてきた過度の精神性等を脇に置き、愚行を行った側の「論理」に焦点を当てた見解が面白い。痛恨なのは、国家が膨大な費用を掛けて養成した人材たちが、いつしか所属組織の利益最大化に走り、その前には国家を忘れるという過誤に陥ったこと。不条理は罠と言い換えても良いだろう。論旨を明快にするためか、悪玉と善玉が分かり易く設定され過ぎているきらいはあるが、今日の(日本に限らない)企業や官庁の不祥事にも通じる話でもあり、身近なところにも事例が転がっているテーマでもある。何かがおかしい状態が現出した時、本書をひとつの補助線として活用する事が出来るのではないか。
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佐藤優さんと池上彰さんが絶賛していた本。日本軍の失敗を新制度派経済学の取引コスト理論とエージェンシー理論、所有権理論を用いて説明している。つまり、人間は合理的に不正を行い、非効率を追求する可能性があるという事を多くの事例を挙げて解説している。
ガダルカナル戦とインパール作戦は非合理の中に合理性があり、ジャワ軍政と硫黄島・沖縄戦は合理性と効率性が一致していると主張している。
この理論を現代の会社にあてはめて、シャープや東芝の失敗事例と、京セラや味の素の成功事例などを解説しているのが興味深かった。組織が不条理を回避するためには、人間は限定合理的であり、常に誤りうることを自覚することが大事で、絶えず非効率や不正を排除するような流れを作る批判的合理的構造を持つ事が重要である。 -
組織は合理的に失敗する。
非合理な精神主義がガダルカナル戦やインパール作戦の悲惨な結果を招いたとする従来の考え方を進めて、人間は限定的な情報や経験の中で合理的に判断する生き物で、その結果合理的に失敗するものであるという分析。
人の失敗(先の戦争であれ、現代の政治家であれ、自分の会社であれ)に対し、まるで自分は過ちを犯さないといった態度で安易に批判する人に対して違和感を抱いてた理由がはっきりした。つまり自分を完全合理的と思ってる人であり、まさに合理的に失敗するタイプの人である。
また、文庫版のあとがきは示唆に富む。限定合理性の罠に陥らないために、カントもドラッカーも小林秀雄も同じことを言っており、客観的な損得勘定ではなく、自分の主観意思で判断する事だという。
つまり「覚悟を持って正しいと思う事をする」に帰結し、一瞬すっと腹に落ちたような気がしたが、その後すぐに疑問が。牟田口中将は正しいと思って覚悟をもっていなかったのか?と。
やはり主観は危険。
どこまで行っても人間は限定合理性の罠からは抜け出せない事を認識する事だけが唯一の道だと思う。
著者プロフィール
菊澤研宗の作品
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