十六夜荘ノート (中公文庫)

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  • 中央公論新社 (2017年9月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784122064522

作品紹介・あらすじ

面識の無い大伯母・玉青から、高級住宅街にある「十六夜荘」を遺された雄哉。大伯母の真意を探るうち、遺産の真の姿が見えてきて――。〈解説〉田口幹人

みんなの感想まとめ

歴史と人のつながりが深く描かれた物語で、主人公が過去を探る中で成長していく様子が魅力的です。物語は、戦前から戦中にかけての「十六夜荘」を舞台に、主人公雄哉が亡き大伯母から相続した屋敷を巡る冒険を描いて...

感想・レビュー・書評

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  • 歴史のつながりと人のつながり。見えなかったものが、見えるとき、そのぬくもりを感じることがある。知らないことは、悪くないが、知ることで前に進める。過去の人とのつながりは確かにある。

  • 良かったです!知人の紹介で拝読しましたが、またまた良い作品を紹介してもらったと感謝です。内容としては、戦前から都内一等地に建つお屋敷「十六夜荘」、面識も記憶もほぼ無い今亡き大伯母から突然相続することになった主人公雄哉。とっととこんな物件は売ってしまおうと目論む雄哉ですが、十六夜荘はシェアハウスとなっている為、まずは住人を追い出す計画へ。しかしながら、それら住人達との出会いや、何故大伯母は自分へ相続させたのか、そもそも大伯母とはどんな人物だったのか、ここは一体どんな場所だったのか、まつわる謎を紐解いていく中で雄哉の気持ちにも変化が現れてきて、、という現代のお話と、、、戦前〜終戦までの間、十六夜荘で華族として生きている若き大伯母玉青とその兄、さらに共に生活をしている若き画家達のお話が交互に展開されていきます。遠い時代差で別々と思えるそれぞれの話しが、十六夜荘というひとつの屋敷を舞台に、いずれの物語も進むにつれ現代と戦争当時が何か徐々に交わる程に近づいていくようなそんな印象をもつ展開です。玉青が十六夜荘へかける想い、戦時下の惨劇、十六夜とは?それらの状況や気持ちが直接的ではないながら現代のひとりの若者の下へと受け継がれていく様子がなんとも良い感じに描かれていて秀逸だなと思いました。今のこの時代、様々問題があるにせよ、平和という括りとしては間違いはないわけで、人、土地、建物、想いも含め残されているもの全ては戦争当時の悲劇の上に成り立っており、あの時代があったから今があるんだという事を改めて痛感する次第です。何より主人公雄哉のように様々な気付きを経て成長していくことはとても大切な事だと思いました。

  • 先月末ロンドンで亡くなった大伯母笠原玉青から、都内一等地にある赤い三角屋根の屋敷「十六夜荘」を遺された雄哉。
    雄哉は、親戚からは生涯独身の変わり者と噂されていた、ほとんど面識のない大伯母について調べるために、現在シェアハウスとして使われている「十六夜荘」を訪れ、奇妙な住人4人と関わるようになる。

    雄哉が「十六夜荘」の過去を探る現在と、玉青がこの屋敷で家族と、離れのアトリエに集まる画家たちとともに過ごした昭和初期の戦中の頃のことが交互に書かれていて、二つの時代が一つに重なっていくような壮大さを感じさせられます。

    屋敷に集まる個性的な人たち、芸術に情熱を燃やす若者たちが、戦争というすさんだ時代にもいたということが瑞々しく感じられ、戦争に翻弄され、身の程知らずと言われようとも凛とした玉青の生きざまが、本当に素晴らしい。

    大伯母玉青の家族に対する深い想いと守り抜いたもの、積み上げてきた暮らしという温もりを、後に遺された者は大切にしていきたい。
    過去を知らされることによって、自分が今生きていることを充分に嚙みしめられるのではないかと思います。

  • 戦中戦後の厳しい時代を乗り越えてきた強い女性が守り抜いてきた屋敷。

    その屋敷を相続することになった姪孫の男性が何故自分に?と思う気持ちで過去を紐解いてゆく。

    だんだん明らかになっていく屋敷の背景にある物語りに読む手が止まりませんでした。

    (Word)
    ・知りたいと思わなければ、何も分からない。

    ・満月にだって雲はかかる。けれど一度闇を知った月は、今度は群雲なんかにびくともしない、本物の十五夜になるのだろう。

  • どんどん話に引き込まれていき、何度か涙しそうになる場面もありました。
    英国で独りこの世を去った大叔母からの突然の遺産。
    話は大叔母・玉青さんの生きていた戦時と遺産をうけた雄哉さんを行き来しながら進められていくが上手くリンクしていて違和感がない。
    人というのはすごく身勝手で残酷でもあり、暖かく支え支えられながら笑い合える存在でもありすごく複雑。考えさせられます。
    今の自分にとって必要な言葉が散りばめられている素敵な本でした。
    大叔母の玉青さんの生き方がとにかく素敵です。

  • 突然遠い親戚の遺産で、
    都内の一等地が手に入るなんて…
    なんて夢のような話。

    赤字のシェアハウスとして使われているあたりから様子がおかしくなってきくる。
    現代と戦時中が交互に進んでいくが、
    個人的には戦時中の話の方が引き込まれて
    現代に戻らなくていいのになあと思いつつ、
    結構夢中で読んでいた。

    古内さんの作品はマカンマランなど読みましたが、
    雰囲気は違うけど、伝えてくることは似ているような。他の作品も読んでみたい

  • 人生に満ち欠けがあり,大切な事に気付くのは欠けていく辛い時。十六夜荘相続人雄哉の視点で,戦禍を生き抜く(大叔母)玉青の人生を追体験。他人に左右されず自分の信念に従い後悔なく生きたい。

  •  英国で亡くなった、会ったこともない大伯母・玉青から、高級住宅街にある「十六夜荘」という洋館を遺産として相続することになった雄哉。32歳という若さで管理職となるほど有能な彼は、この屋敷を売却しようと考え、十六夜荘を訪れる。そこに下宿する4人の住人たちと出逢い、また、大伯母の過去を知ることで、尖っていた彼が変わっていく。

     そんな雄哉が生きる現代と、大伯母が生きた戦前から戦後、の二つの時代が交錯する物語。

     玉青は元華族なのだけど、その生き様がなんとも清々しい。そして海軍省軍人の兄・一鶴の人物像が素晴らしい。雄哉よりもこの2人に心引かれた。

     この物語の一つのテーマは「遺産」。「十六夜荘」という建物であり、それが立つ土地=もの。でも、やがて、雄哉が受け取るものは「もの」だけではないことに、彼自身が気づく(読者もまた)。

     雄哉は幼い頃に母親を亡くし、ちょうどその頃、父親の転勤が決まり、父親は雄哉を両親に預けることにした。それ故、雄哉自身、母親の記憶がほとんどなく、家族の愛情にも乏しい人生を生きてきたと思っていた。

     でも、ラスト、遺されていたアルバムに、楽しげな様子の雄哉の祖母と母親がいて、母親の膝に幼子がいる写真、大伯母に抱かれた幼子の写真を見つける。その幼子は雄哉。

     そして、「大伯母、祖母、母の3人から、自分に遺産が手渡されようとしているのを感じた」雄哉。(このくだりは泣いた)

     雄哉は大伯母のことも母親のことも覚えていなかった。常に自分を中心にそう考えていた。けれど、逆の考え方がある。大伯母は自分を覚えていてくれた。自分自身に記憶はなくても、母の短かった人生に、3年分の記憶を残すことが出来た。

     遺産、それはモノだけではない。人の想い、生き様、繋がり、その人が歩んだ歴史もまた「遺産」。

     古内一絵さんの紡ぐ物語、好きです。

  • 古内一絵さん7冊目。これまでお菓子や食べ物が関わる現代のお話を読んできたが、本書は戦前から現代と時代を超えた壮大な小説だった。十六夜荘という大伯母の遺したお屋敷を通じ、現代を生きる主人公の雄哉の価値観や命をつないできた人たちに対する思いの変遷に心を打たれた。名もない人の人生や思いが時代をつないでいることを実感し、そのことを常に心に留めて生きていきたいと思わさせられる作品だった。

  • 環境や人との出合いはその人の人格にかなり影響されるんだなぁ。

  • 十六夜荘というお屋敷を巡って
    現代と昭和初期の第二次世界大戦あたりの時代が
    交互に進められています。

    本当の豊かさとは何なのか、人生とは生き方とは
    などエリート人生まっしぐらの雄哉と
    大伯母にあたる玉青の物語を通じていろいろ
    考えさせられました。
    戦後大混乱の中、家族を背負っていきぬいた
    玉青さんや家族、仲間達
    平等でもなく理不尽すぎる世の中に
    押さえ込まれながらも温かさや、人としての尊厳を曲げず一歩一歩歩く姿に惹かれ
    今現在
    そこに住む奇妙だけれど、真っ直ぐに生きている住民達にいつしか心動かされ、雄哉も自分の心や
    居場所を見つけていく
    そんなお話です。

    毎日毎日追われるように生きる人生だけど
    一度しかない人生
    たまには
    空に向かって大きな深呼吸をしよう。
    それだけでも幸せな気分になります。



  • 失恋後26作品目
    「満ち欠けがあるのが自然なのよ。人も国も社会も仕事も、恋愛もね。」
    月の満ち欠けと雄哉と玉青の2人の物語。時代に翻弄された玉青さんのカッコいいこと!すごいなぁ。読みやすいし、時代背景も知れるし、繋がっていく感じがとても良かった。いい読後感。

  • 会ったこともない大叔母からの遺産相続。それは大叔母の記憶が詰まった十六夜荘だった。相続人の大崎雄哉は自分の目的のためなら、周囲の気持ちなど顧みない鼻持ちならない男だったが、ある事件をきっかけに自分の歪んだ考え方に気がついていく。そして大叔母がなぜ十六夜荘を大切にしていたのか、戦争の傷跡の中で大叔母はどう生きていたのか知ろうと思うようになる。戦争の悲惨さを物語として目の当たりにするから、とても辛い物語。目を背けてしまいたくなる。事実を知って戦争を行ってはいけないと改めて思う。

  • 今の自分の価値観は絶対ではないのだな、と改めて思った。
    いつの時代も周りの評価や価値観に左右されず、自分の芯をしっかり持って、好きなように生きなきゃね。
    戦争や大災害なんかで、世の中いっぺんでひっくり返ってしまうのだから。
    月が満ち欠けするように、見えてなくても確かにある大切なもの。
    暗いからこそ、周りの輝く星がよく見えるってこともあるのだな。

  • 元華族である大叔母の遺産として、古い洋館を相続することになったエリート社員の雄哉。
    華族だった大叔母の玉青と館に集っていた画家や作家たちが、華やかに過ごす昭和13年から戦後の激動まで、ちょっとした大河ドラマのよう。この時代に華僑と呼ばれた人たちの複雑な変遷もあり、読後感は思いの外重厚でした。
    現代の雄哉の章が、ありがちな感じで邪魔に思えたのが残念。

  • 今、現在進行形でウクライナの戦争のニュースを見る時、この小説の80年前の第二次世界大戦中の日本での戦時の描写がすごく身近に感じていたたまれなくなりました。百年近く経っても戦争は似たような状況で、苦しむのは市井の民で、人間って愚かしいと、なんにも変わらない結果に胸が痛くなりました。

  • もの凄くよかった。
    感覚フル動員で楽しめた小説。


    ある建物に関わるひとりの女性をキーに過去編と現在編が収束していき、タイトルの通り一冊の「ノート」でもって結実する大河小説。


    全編とても映画的というか、場面の空気・音・色彩が鮮明にイメージできる文章。
    特にp55、月明かり差し込む離れで兄妹ふたりが会話するシーンはとても静謐で美しい。
    一転してp209〜215、空襲で爆弾が降り注ぎ命の危機迫る最中に玉青とせいちゃんがダンスを踊るシーンは屈指の名場面だと思う。ハードで理不尽な状況に対して「自由」を掲げ膝を屈しない姿は本当に力強く感じられた。
    沢山の文献を参照されている通り、戦後闇市の
    描写も実に雰囲気がある。バイオレンスで煤けた街の様子がありありと目に浮かぶ。

    現代パート・雄哉(と拡)の変化が性急に感じられたのは確か。あんなにリアリストでバリバリの仕事人だったのに、きっかけひとつで急に鳥や虫や草木の美しさ・豊かさに目覚めるのはちょっと笑ってしまった。
    拡が本編最後の発言を担当するなんて。しかも当初と印象が全く違う。

    p332、淡々とした形で画学生達のその後が明かされるのも却って胸にしみる。ここは一番涙が込み上げてきた。


    古内一絵先生は初読みだったが、ぜひとも他の作品も読んでみたくなった。


    1刷
    2021.9.9

  • とてもドラマチックな物語。1人の青年の成長と再生の物語でもあり、玉青さんの生きた過酷な時代を描くことで、戦争、人種、性別、現代にも通ずる問題を提起して散りばめていてすばらかった。玉青さんのように、戦後過酷な時代を強いられた没落華族の人々が実際にいたらしいので、そこももっと詳しく深掘りしたくなった。

  • 十六夜荘の歴史と大伯母・玉青の一生に、強く引き込まれた一冊でした。
    玉青が激動の戦前から戦中、戦後を、華族という身分の時代の変化に怯むことなく力強く生きた様、十六夜荘に込める半端ない想いに、私の中にあるものを全部持っていかれたように引き込まれ、途中から一気に読み終えました。
    "満月の後、少し欠けた十六夜。人も月と同じで満ちてくときもあれば、欠けてくときだってある。だからこそ、周りの星の輝きに気づくことができる。"
    タイトルに込められたメッセージが素敵で素晴らしかったです。
    また、玉青と十六夜荘の歴史を知るうちに、そのことと、もう1つ大事な事に気づいた雄哉の変化する様も大変興味深いものがありました。記憶は自分だけのものではなく、自分が忘れていることが、周囲に影響を及ぼしていることもある。
    私も一緒に、これらのことに気づかされました。
    さすが、「マカン・マラン」シリーズを書かれた古内一絵さんだなぁ。
    なんだか十六夜荘にシャールさんがいるような気分になりました。

  • 『百年の子』を読んでからこれを読んだら、過去と現在を交互に描いて、主人公が(読者が)知らなかったことを読み解いていく方式が同じだった。
    雄哉が生きる現代と、玉青の生きる昭和、戦争の時代がフラッシュバックしながら、物語が進む。
    雄哉が疑問に思っていることや、困っていることが、玉青の時代にスイッチされると理解できるようになっているので、混乱することはない。

    もちろん、物語の素晴らしさがその手法によって損なわれることはない。古内さんならではの、魅力あふれる個性的な人たちが次々と現れて、ドラマを作っていく。
    以下、ネタバレあり。注意。


    玉青と雄哉が出会うこともなければ、雄哉が玉青の人生を知ることもないまま、物語のラストで意外な人物が現れる。
    安心した。この人物が大叔母のことを知る限り雄哉に語ってくれるだろうから。
    安易に恋愛で幕引きしたりしないところ、雄哉の人生を決めつけない終わり方にも好感が持てた。

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著者プロフィール

1966年、東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。『銀色のマーメイド』で第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年にデビュー。17年、『フラダン』が第63回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選出、第6回JBBY賞(文学作品部門)受賞。他の著書に「マカン・マラン」シリーズ、「キネマトグラフィカ」シリーズ、『風の向こうへ駆け抜けろ』『蒼のファンファーレ』『鐘を鳴らす子供たち』『お誕生会クロニクル』『最高のアフタヌーンティーの作り方』『星影さやかに』などがある。

「2021年 『山亭ミアキス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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