妻たちの二・二六事件 - 新装版 (中公文庫 さ 27-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122064997

作品紹介・あらすじ

二・二六事件で“至誠”に殉じた熱血の青年将校たち。遺された妻たちは事件後、どのような人生を歩んでいったのか。困難な取材をねばり強く重ね、文字通り足で歩いて検証した、もう一つの二・二六事件。衝撃と感動を呼ぶ、ノンフィクションの金字塔。

〈解説〉中田整一目次一九七一年夏雪の別れ男たちの退場燃えつきたひと花嫁人形 暗き陰翳余燼の中で秘められた喪章 一秘められた喪章 二母としての枷西田はつ 聴き書き生けるものの紡ぎ車辛酸に堪えられよ過去への旅 現在への旅あとがき解説 中田整一

感想・レビュー・書評

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  • 映画「226」の公開に合わせ、30年ほど前に読んだけれど、
    ほとんど記憶にない。
    読むのに苦労したことは、何となく覚えている。
    わたしも若かったんだなぁ、といまさらながら感じる。

    酸いも甘いもかみ分けた、アラカンの今、
    正直、昭和の226事件で処刑された妻達の心持は
    歯がゆい。
    それは昭和の時代が遠くなったから。
    あの頃の女達は、この価値観や時代感覚で生きていたはず。

    それにしても、なぜ、あれほどの事件を起こす男達が
    妻帯したのか、女一人を路頭に放り投げるような人間に
    大仕事ができるはずがない。
    夫であった青年将校の甘さに、腹が立つばかり。

    向田邦子さんの親友であった、
    澤地久枝氏の渾身の一作。
    どれほどの手間と取材を重ねたのかと、あらためて頭が下がる。

  • 当時の天皇派から見れば完全なクーデターまたはテロとして見られていて“悪“として扱われています。その妻の重責たるや想像に難く無いですね。

  • 「澤地久枝」のノンフィクション作品『妻たちの二・二六事件【新装版】』を読みました。

    二月ですからね… 二・二六事件関連の作品を読みたくなったんですよね。

    -----story-------------
    “至誠"に殉じた二・二六事件の若き将校たち。
    彼らへの愛を秘めて激動の昭和を生きた妻たちの三十五年をたどる、感動のドキュメント。
    〈解説〉「中田整一」
    -----------------------

    昭和維新を目指し、二・二六事件を主導したとされて処刑された青年将校等の妻… 十余名の未亡人たちがどのような人生を歩んでいったのか?困難な取材を粘り強く重ね、足で歩いて検証したノンフィクション作品です。

     ■一九七一年夏
     ■雪の別れ
     ■男たちの退場
     ■燃えつきたひと
     ■花嫁人形暗き陰翳
     ■余燼の中で
     ■秘められた喪章
     ■母としての枷
     ■西田はつ聴き書き
     ■生けるものの紡ぎ車
     ■辛酸に堪えられよ
     ■過去への旅 現在への旅
     ■あとがき
     ■改めて思うこと――新装版に寄せて
     ■解説 中田整一

    事件から30年後の1971年(昭和46年)、遺された妻たち一人ひとりに丁寧に聞き取りをした記録です… あまりに短かった新婚生活、家族よりも大義を優先し、処刑の直前に慌ただしく家族に宛てた遺書を残していった夫、一審即決・非公開・弁護人なしの軍事裁判で裁かれ、戦死ではなく反逆者として処刑された夫の妻の烙印を押され、それでも生きなければならなかった未亡人の苦しみ等々、本書がなければ決して表には出ることはなかった人間模様、生き様を知ることができましたね、、、

    そして、事件を起こした青年将校等は、全てを自分たちに都合良く解釈してしまうという純粋だが騙されやすい弱点を持っていて、情勢判断も甘かったことから、老将軍や軍幕僚の老獪さや打算には太刀打ちできなかったことにも改めて気付かされました… 軍上層部による責任を回避するための陰険姑息な謀略によりウヤムヤのうちに叛徒とされてしまった感じですね。

    最も印象に残ったのは「香田清貞大尉」の妻「富美子」の半生ですね… 夫の処刑後、婚家と実家がぶつかりあい、実家は娘を引き取って再婚させようとするが、婚家は息子の嫁(孫の母)を手放すまいと実家に帰ることに絶対反対、、、

    事態はすっかりこじれ、婚家に居辛くなったものの、婚家から除籍が認められず(当時は家長の承諾がないと籍を外せなかったようです)、子どもを残して「香田」姓のまま、実家に戻らざるを得ない状況に… 16年振りに子どもたちと再会した際は、娘から「なんでお母さんは私たちを捨てたのですか」と言われたとか。

    うーん、辛い… 程度の差はあれ、それぞれが、叛徒の未亡人という重荷を背負った半生を過ごしているんですよね、、、

    今さら語りたくない、そっとしておいてほしい… というのが、未亡人の方々の正直な気持ちだったと思いますが、丹念な取材により、その嘆き、痛み、憤りが伝わってきましたね。

    心に残るノンフィクション作品でした。

  • 二・二六事件で刑死、自決した青年将校21人、そのうち14人が未亡人を残している。歴史的な無機質な事実に立体的な視点を与えビビッドに伝える屈指のノンフィクション。

    筆者のデビュー作。既に出版から50年を経過。当時は当事者たちがまだ生きながらえていた頃。英雄的、悲劇的に捉えられるがちな青年将校を全く違った視点からものすところが素晴らしい。それぞれの人物が遺書や未亡人の話から、遠い昔とはいえ我々と同じように笑い、泣き、若い妻や幼き子を残す男の心情が立体的に浮かび上がる。

    ノンフィクションとしては古典的な部類かもしれない。今さら感もあるが、名だけ知っていた本書、じっくり読んでみて本当に良かったと思う。

  •  2019年8月15日、NHK放送で「全貌二・二六事件~最高機密文書で迫る~」が放送された。従来は、蹶起した陸軍側の資料を元に二・二六事件が語られ、書籍が発行されてきたが、今回は海軍側の極秘文書が見つかり、事件は複眼的な史実を詳細に伝える放送となった。1936年2月26日、首都・東京の中枢で首相や大臣が襲撃された、近代日本最大の軍事クーデター「二・二六事件」。これまで、事件に関する主な公的記録は、完全非公開で「暗黒裁判」と言われた陸軍の軍事裁判資料とされ、事件をリアルタイムで記録した1次資料はなく、多くが謎とされてた。事件から83年が経ち、見つかった「極秘文書」によって、青年将校達の反乱と、その鎮圧にいたる「4日間」の詳細が明らかとなった。
     本書は、二・二六事件に関わった青年将校達の妻や家族に焦点をあて、五味川純平の大著「戦争と人間」の調査経験を元に、筆者が1972年に著した最初の作品である。蹶起した逆賊の妻として、わずかな結婚生活と事件後の辛い生活、子育てを行った妻たちの思いが綴られる。人知れず事件後を生きた妻たち、著者のインタビューに戸惑い、断る妻たち。蹶起した青年将校達の手記や手紙が物語るものは何か。1928年の張作霖爆殺事件、1936年の柳条湖事件で泥沼の日中15年戦争に突入し、1937年の五・一五事件を経て、1936年の二・二六事件で軍部の台頭を決定づけ、、1937年の盧溝橋事件、1941年の対米英戦争にアジア・太平洋戦争に突入した全体主義・軍国主義国家日本。
     歴史を複眼で捕らえ、事実を積み重ねる重要性と共に、著者澤地久枝さんのその後の平和への思いが、女性ならでは視点で綴られる重みは大きい。重版され読み続けられる書籍の重みを噛みしめた。

    2019年8月15日(木) 午後7時30分~8時43分
    全貌 二・二六事件~最高機密文書で迫る~
    全貌 二・二六事件 ~最高機密文書で迫る~ - NHKスペシャル
    https://www.nhk.or.jp/special/backnumber/20190815.html

  • 東2法経図・6F開架:916A/Sa93t//K

  • NHK特集のアーカイブで二二六事件の盗聴資料音源が放送されていました。
    放送当時未亡人は60歳くらいで生々しい証言が取れました。
    番組の補足として読んでみましたが、それぞれの人生に心が乱されました。

  • 反逆者として死刑になった二・二六事件の青年将校たち。残された妻たちは、長く辛い日々をどう生きたのか。口を開かない、会ってくれない妻たちを訪ね歩き、胸の奥にしまった言葉を引き出した著者の熱意に心を打たれた。反乱軍の先頭に立てば命はないと分かっていたはずなのに、なぜ妻をめとり子をもうけたのか。読め読むほど男の身勝手がしみてくる。そして、過酷な運命に耐えて生き抜いてきた妻たちが美しく見えた。

  • ?至誠?に殉じた二・二六事件の若き将校たち。彼らへの愛を秘めて激動の昭和を生きた妻たちの三十五年をたどる、感動のドキュメント。〈解説〉中田整一

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著者プロフィール

澤地久枝(さわち・ひさえ):1930年、東京生まれ。その後、家族と共に満洲に渡る。ノンフィクション作家。1949年中央公論社に入社。在社中に早稲田大学第二文学部を卒業。著書に『妻たちの二・二六事件』『火はわが胸中にあり』『14歳〈フォーティーン〉』『昭和とわたし』など多数。『滄海よ眠れ』『記録ミッドウェー海戦』でミッドウェー海戦を克明に跡づけるとともに、日米の戦死者を掘り起こした功績により菊池寛賞受賞。2008年朝日賞受賞。

「2023年 『記録 ミッドウェー海戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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