背徳についての七篇-黒い炎 (中公文庫)

  • 中央公論新社
3.30
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本棚登録 : 62
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122065345

作品紹介・あらすじ

不倫、子殺し、乱倫――はからずも足を踏み入れてしまう人生の隘路。浮気を巡り夫婦二組の日常が交錯する永井荷風の「二人妻」、母への葛藤と哀しい出生の秘密が絡みあう河野多恵子の「雪」、性的不満を抱えた妻とその夫を愛する男性との三角関係を描いた小島信夫の「黒い炎」……一度迷い込んだら抜け出せない好評シリーズ第三弾。

感想・レビュー・書評

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  • 背徳。それは、道徳に背く行為。甘美な響。
    円地さんの文学忌に何か読もうと図書館蔵書検索して、なんとも興味深い一冊をお借りする。
    なかなかの文士様達からの選書。
    「裸体」永井家風
    美しき裸体を持つ女性の奔放な生き方。
    「原罪」円地文子
    姑と息子と暮らす寡婦。妻子ある男性を愛している。全てを捨てて男の子供を求める。
    「姦」久生十蘭 “かしまし”って読むらしい。
    うわっつ。大正くらいかな?女同士のマウント合戦。特に着物の描写と値踏みが現実的。最後は、平静を保つ女の勝ち。
    「二人妻」永井家風
    当時、地位のある男と結婚したら、お妾愛人、隠し子等当然だったのかしら。
    互いに夫の女の影に悩む二人の友人。バレても疑われても、やめない夫達。最後は、まさかの同じ女を。
    「紫と白」幸田文
    夫が入った愛人宅へ乗り込んで「お帰りになってくださる?」もちろん、帰りました。
    「雪」河野多恵子
    これは、濃密な短編。河野さんの作品を読みたくなります。
    愛人の産んだばかりの子を引き取る条件に別れさせた妻。2才になる自分の娘と愛人の子の子育て。
    雪の日に妻は壊れる。そこから、始まる愛人の子の宿命。

    そして、タイトルになった「黒い炎」小島信夫。
    妻を病気で亡くした男は、同僚の男が気になる。
    彼は妻子を愛している。彼の妻から夫婦関係の相談を受ける。そして、、、好きな男の妻と関係を持つ男。背徳感満点。

    何が凄いかといえば、この作家さんの顔ぶれで全て読んだことが無かった。選者は、コミック“働きマン”(主人公の仕事ぶりが好きだった!)の安野モヨコさん。装画挿絵もご担当。各作家さんの全集を読んでいるみたい。どれだけ読んでるのでしょうか、感嘆でした。

    • おびのりさん
      夫達が、背徳者なんだけど、情けない。
      夫達が、背徳者なんだけど、情けない。
      2023/11/14
    • ゆーき本さん
      ハッピーマニア!(古いっ)
      まさかの同じ女を…? なんか面白そう(*p'∀'q)
      ハッピーマニア!(古いっ)
      まさかの同じ女を…? なんか面白そう(*p'∀'q)
      2023/11/15
    • おびのりさん
      ハッピーマニア!渋いとこいくね。
      なんかもう、みんな、いろんなもの書いてるんだなって思いますよ。
      永井家風は、安定のって感じだけど。
      ハッピーマニア!渋いとこいくね。
      なんかもう、みんな、いろんなもの書いてるんだなって思いますよ。
      永井家風は、安定のって感じだけど。
      2023/11/15
  • 後ろめたき事ばかり…、悲しくなっちまう。あ、でもね。そこが面白いんですよね✴︎!✴︎後ろめたい気持ちがあるからこそ、読める、みたいなねー。あはは。

  • 安野モヨコさんって、近現代小説もよく読まれる方なんだなぁ!
    あっけらかんとした『裸体』が一番好きだった。

  • 2022年の一冊目。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
    というか帰省先に持っていって読む本として、積読の山からあえてのこちらを選び取る自分が痛い。
    「背徳についての七篇」。全員淫らで、人でなし。
    安野モヨコさん選出のこのシリーズは、これまで全然読んでこなかった作家に触れる機会を得られるので、すごく文学世界が広がる気がする。
    いずれの短編でもそうだけど、大正〜戦後ぐらいにかけてまでの妾の存在感のなんと色濃いことよ。妾腹(しょうふく)という言葉を初めて知った。読んでいたのがちょうど雪の降る日だったので、特に最後の「雪」はすごく胸に迫ってくるものがあって、河野多惠子さんの作品はもっと知りたいなと思った。
    大晦日の朝から読み始めて、戻りの新幹線のなかでキリよく読み終えた。
    ここ最近で考えてることなんだけど、東京から地元へ行くのと、地元から東京に行くの、どっちが私にとっての「帰る」なんだろうなぁ。そのいずれにも帰りを待っててくれる人がいるというのは、たいそう恵まれてることなのだろうね。 

  • 現代の感覚からすると背徳とは到底思えない話もあるが、やはり背徳と言えば不倫ですね。中途半端で優柔不断な男によって振り回される原罪、同僚に恋した故に気持ちを紛らわせる為にその妻と通じる黒い炎、出生の秘密と母からの虐待の記憶に苦しむ雪、夫の不倫疑惑揺れる妻達、、。
    現代人となんら変わりない悩みで共感する所が多かった。
    あと紫と白の布団によって不倫がバレた下りは男の脇の甘さと女な勘の良さに笑ってしまった

  • 2023.05.26 図書館

  • 全体的に不倫の話。時代と価値観の違いなのか…。
    「裸体」永井荷風→戦後の風俗の奔放さたるや…これをサラッと書いちゃうのが荷風だよなぁ。女の武器は身体!!!表現方法がなるほど永井荷風。 
    「原罪」円地文子→今いる子のことを考えてやって…。一時の激情ってすごいなぁ。
    「姦」久生十蘭→会話小説。女のマウント合戦!!
    「二人妻」永井荷風→人の不幸は蜜の味。浮気の跡を残さない努力がすごい。
    「黒い炎」小島信夫→おっさんずラブなのか…女じゃなくて男を求めていたのか…
    「紫と白」幸田文→なんかふわっとしてた。
    「雪」河野多惠子→一番ウワァ…となった作品。3歳の差は大きい。自分の娘を殺して妾の子を自分の子として育てるってもう横溝の世界…

  • 「ストイックに生きる」ことは、自分に厳しいだけの生き方なのか?キュニコス派ディオゲネスから、ゼノンら初期、パナイティオスら中期、セネカらローマ時代の後期の思想を比較・紹介

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著者プロフィール

円地文子

一九〇五(明治三十八)年東京生まれ。小説家、劇作家。国語学者・上田万年の次女。日本女子大附属高等女学校中退。豊かな古典の教養をもとに女性の執念や業を描いた。主な作品に『女坂』(野間文芸賞)、自伝的三部作『朱を奪うもの』『傷ある翼』『虹と修羅』(谷崎潤一郎賞)、『なまみこ物語』(女流文学賞)、『遊魂』(日本文学大賞)など。また『源氏物語』の現代語訳でも知られる。八五(昭和六十)年文化勲章受章。八六年没。

「2022年 『食卓のない家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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