マインド (中公文庫 こ 40-33 警視庁捜査一課・碓氷弘一 6)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122065819

作品紹介・あらすじ

殺人、自殺、性犯罪……。ゴールデンウィーク最後の夜に起こった七件の事件を繋ぐ意外な糸とは? 藤森紗英も再登場!大人気シリーズ第6弾。

感想・レビュー・書評

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  •  警視庁捜査一課、碓氷弘一。48歳。
     腹の出た体をくたびれた背広に包み、薄くなってきた頭髪を気にするサエない中年男だ。近ごろ警部補に昇進し、第5係最年長ということもあって鈴木係長の番頭的な存在になっている。

     そんなベテラン刑事が事件解決に奔走する警察サスペンス。シリーズ6作目。
             ◇
     その朝、碓氷は若手の警官が自殺したことをニュースで知ったが、特に気に留めることはなかった。だが出勤してみると、事件は奇妙な色合いを帯びていた。

    警官の自殺と同じ23時過ぎに、中学生の自殺が1件、殺人事件が2件起きている。殺人事件の容疑者はすでに逮捕されてはいるが、別個の事件が同時刻に起きたことに疑問を持った田端捜一課長は特命捜査班を設置。第5係をこれに当てることにした。

     調べを進めるうちに、同日同時刻に強姦未遂2件と盗撮1件の3件の事件が起きていたことも判明した。その背後には何かあると確信した田端は、警察庁から心理調査官・藤森紗英の招聘を決めたのだった。
          (「第1〜6話」) 全26話。

         * * * * *

     藤森紗英が再登場。
     紗英の今回の相手は臨床心理の専門家です。催眠術や暗示などマインドコントロールスキルに長けた犯人と対峙する紗英が物語の中心。もちろん碓氷はいつものようにサポート役を担います。

     第1ラウンドの相手は、メンタルクリニック院長で精神科医の水沢瞳。
     水沢の隙を見せない受け答えに碓氷は攻め手を見出せず、紗英とバトンタッチするしかありません。
     ここでの水沢と紗英との丁々発止のやりとりがすごく興味深い。決め手には欠けたものの、水沢のプロファイリングをした紗英の判定勝ちと言えるでしょう。

     第2ラウンドの相手は、クリニック助手の持田奈緒子。優秀な臨床心理士でもある女性です。穏やかな微笑みを絶やさない持田も水沢同様で、碓氷にはつけ入る隙がありません。
     ここも紗英が碓氷の後を引き受けて質問することになるのですが、持田のしたたかさは水沢以上で引き分けに終わりました。
     おまけに、自分に目を合わせてにこやかに対応してくれる持田に好意を持った碓氷はつい気を許してしまい……。


     それにしても、ここで描かれるマインドコントロールスキルには驚愕するばかりです。
    『パラレル』にも登場した役行者(が憑依した賀茂晶) の操心術は「ファンタジーだから」で流せても、この臨床心理の達人技は現実世界のことのようで笑って済ませられませんでした。
     心療の世界のことはあまり知らないのですが、こんなことが実際にできるのなら想像しただけで戦慄が走ります。


     さて、待望の藤森紗英です。本作では、犯罪心理学の紗英 VS 臨床心理学の犯人という構図です。紗英と犯人が繰り広げる心理戦は『エチュード』以上で、存分に楽しめました。
     やっぱり、『心理調査官・藤森紗英』のシリーズを立ち上げて欲しいと願ってやみません。


     最後に懺悔です。
     実は、かつて『碓氷弘一』シリーズを初めて読んだときは、自分の未熟さもあって碓氷の魅力がわからず、2作目で読むのを止めてしまったのでした。
     でも今回改めて読んでみてびっくり。おもしろい。特に3作目からのおもしろさを知って、自分の不明さが悔やまれてしかたありません。
     軽々に評価を下したりすることは厳に慎もうと思いました。
     今野敏先生、誠に申しわけありませんでした。

  • さすがの今野敏作品。美人の相棒も随分と頼もしくなって。ウスやん、今回はチョット失敗もあったけどね。

  • 面白かったです。
    「警視庁捜査一課・碓氷弘一」シリーズはパートナーとの絡みで時に現実離れした展開になっていて、あまり好きではなかったのですが、今回の心理調査官との絡みは落ち着いていて、話の展開も楽しく読めました。
    また犯人のキャラクターもなかなか興味深く、またどこかで登場してほしいです。
    ラストもホロリとさせられました。

  • 2015年5月中央公論新社刊。2018年5月中公文庫化。碓氷弘一シリーズ6作目。再び、心理捜査官の藤森とのコンビネーション。碓氷さんの公平、公正さの本領が発揮されます。良い結果を招くのが、楽しめます。

  • 「普通」の刑事碓氷が、異色の相棒と共に事件を解決するシリーズ第6弾。
    今回は、『エチュード』で登場した美人心理調査官藤森紗英と再びタッグを組んで、同日同時刻に起きた七つの事件を追う。
    この作品では、碓氷のぼやきというか、モノローグがやたら目についた。
    刑事という仕事についてとか、また職場や同僚のことや、あるいは家族について。
    内面描写を多用することで、「普通」だという碓氷の人となりを際立たせ、他のシリーズと区別化を図ろうとしているのだろうか。
    碓氷の奥さんは、『隠蔽』シリーズの竜崎の妻と言動が似てきているけど、警官にとっても仕事をする男にとっても、妻の理想像か(笑)・・・

  • ホントに多くのシリーズを持つ氏だからこそ書ける、地味なオジさんが主人公の、でも不思議と面白いんだよね。

  • 「今野敏」の長篇ミステリ小説『マインド 警視庁捜査一課・碓氷弘一6』を読みました。
    ここのところ国内ミステリ作品が続いています。

    -----story-------------
    殺人、自殺、性犯罪……。
    ゴールデンウィーク最後の夜に起こった七件の事件を繋ぐ意外な糸とは? 
    「藤森紗英」も再登場! 
    大人気シリーズ第6弾。
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    2015年(平成27年)に刊行された警視庁捜査一課「碓氷弘一」シリーズの第6作… 「ユースケ・サンタマリア」主演でテレビドラマ化されているようですね。


    ゴールデンウィーク明けのある朝、出勤した警視庁捜査一課「碓氷警部補」の元に都内で起こった2件の自殺と2件の殺人の報が入る… 発生時刻はすべて同じ日の午後11時だった、、、

    関連性を疑う第五係は「田端捜査一課長」の特命を受けて捜査を開始する… その後、さらに同日同時刻に都内で盗撮・強姦未遂等あわせて3件の事件が起こっていたことが判明。

    第五係と、再度捜査協力に訪れた心理調査官「藤森紗英」は、意外な共通点に気づく… 一見関連性がないように見える7つ事件は、実は意外な共通点で繋がっていた……。


    警視庁捜査一課「碓氷弘一」と心理調査官「藤森紗英」が、地道に捜査を進め、お互いの知識や経験・スキルを活かしながら協力して真相を突き止めていく警察小説… 後催眠により潜在意識に閉じ込められた強い願望が解放されたとしても、殺人事件や自殺、強姦未遂、盗撮等までには至らないだろうなー とは思いましたが、捜査の過程や警察官のプライベートな部分も丹念に描いてあり愉しく読めました、、、

    400ページ強のボリュームでしたが、とても読みやすい文体だったので、思ったよりも早く読み終えました… 本シリーズ、機会があれば、別の作品も読んでみたいですね。

  • 2018年11月にユースケ・サンタマリア主演でテレ朝系で放送された2時間ドラマの原作。確か見たと思うけど、あまり覚えてなかったが、このシリーズの中でも藤森紗英が登場した「エチュード」は覚えがあったのですんなりと読めた。ネタは読めるんだけど、なるほどそういう風に持って行くのね。さすがの今野さん。最後のユースケの解説もいい

  • 催眠術恐るべし。

  • シリーズ第6弾にして心理調査官藤森紗英が再登場し、またも碓氷とのコンビで、同じ日付、同じ時刻に発生した殺人事件2件、自殺2件、そして強姦2件、盗撮1件、計7件の事件のつながりの解明に挑みます。

    殺人事件で確保した被疑者の供述が要領を得ない様子があり、だったらあの心理調査官が出てくればいいのに、と思っていたところに登場したものですから、個人的にはすごく盛り上がりました。

    タイトルの「マインド」、また7つの事件の裏になにかつながりがありそう、被疑者は犯行当時のことをよく覚えていない、となればマインドコントロール的なものが介在しているであろうことは、かなりの読者が気付いていたのではないかと思いますが、それでも容疑者の水沢とのやりとりはさながら高度な心理戦の様相を呈していて、次々とページを読み進めてしまいます。

    そして黒幕である持田と藤森の対峙も非常に読み応えがありました。直接対面しているシーンよりもむしろ、持田の足取りや行動を読み解こうと藤森が推理力を駆使するシーンをこそ推します。果たして、藤森の読み通りの結果であるのかが知りたくて、またしてもページをめくる手が止まりません。

    いわば”静”なる戦いというべきでしょうか、力や迫力を感じさせる”動”の展開とはまた違った魅力がありますね。

    それにしてもシリーズが進むにつれて、碓氷による自身の内面を描写するシーンが増えましたね。また捜査一課の係長や課長など碓氷の周辺の人物の登場シーンも増えました。1作目ではちょっぴりアウトローなイメージがあった碓氷ですが、なかなかどうして組織、いやチームといったほうがしっくりくるでしょうか、そのなかで自身の居場所を確立し、周囲からもその実力を認められ、碓氷本人が思っている以上の存在感なのだと思います。

    そして家庭でも、本人が思っている以上に家族は碓氷のことを父親として、夫として想っている、そんなことが伝わってくるラストシーンでした。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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