- Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122065826
作品紹介・あらすじ
暗渠化工事で川辺の棲みかを追われたネズミのタータ親子。夏の終わり、安住の地を求めて上流を目指す旅が始まる。彼らを待ち受ける幾多の試練や思いがけない出会い、はぐくまれる友情……。子どもから大人まで、あらゆる世代をとりこにした物語が、待望の文庫化!小さきものをこよなく愛する著者が、足元で脈動する世界の秘密を描き出した人気シリーズ第一弾。チッチが跳ね、タータが走り、タミーが飛び出す!島津和子氏による挿画も多数収録。
感想・レビュー・書評
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必要があって読む。
松浦寿輝による童話(?ではないかもしれない)。ともかくタータとチッチという兄弟ネズミとお父さんネズミの話。
3匹が住んでいた川岸が暗渠化されることになり、新たな棲家を求めて、他の動物たちにも助けられながら川をさかのぼる冒険譚。どうもアニメーションとして映像化されているようだ。
映画批評家としての顔も持つ松浦氏だけれど、たしかに読みながらずっと映像が頭に浮かんでいた(島津和子氏の挿絵が豊富なせいもある。ページをめくってこの挿絵が現れるたびに嬉しい)。映像化したい欲望をそそるのも頷ける。
いわゆる"現代思想"の研究者でもある氏。
途中、「帝国」などという言葉も登場し、むむ、もしやなにか難しい話が始まるのではないかと一瞬勝手に身構えたがなんのことはない。ここもすっかりネズミの一家に感情移入しながら楽しく読めた。
なかでも魅力的なのが脇役たちだ。犬のタミー(作者の飼い犬がモデルらしい)、スズメの一家、人間の少年、動物病院の先生にモグラの一家にグレンという(グールドを思わせる)ドブネズミ帝国から離反した図書館ネズミなどなど。
特に天真爛漫なタミーがお気に入りだ。
……と思ったら「外伝」も出版されているもよう。ぬかりがないね(笑)
さらに、物語りもうまいなあと思う。1つだけ書くと、ネズミ親子をバスに乗せる、大胆だけどそれしかないと思わせられるような展開なんかとても良かった。
ちょっと意地悪くメタな視点で語りの手法を分析しつつ読んでいたが、ついつい没入し、動物たちの振る舞いに一喜一憂してしまい、気がつくといつのまにか、次から次に試練に見舞われるネズミ親子を応援していた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
児童文学侮るなかれ。
恐らく都下の自然が残る川べりに住むねずみ家族が、河川の暗渠工事に伴って引っ越しをする話です。
色々な生き物たちに助けてもらいながら、新天地を目指す彼らの姿に感動します。我々がまだ歩く以外の手段を持っていなかった時代、途中で出会う人たちと一生会わないという事はざらだったのだと思います。彼らもねずみなので、移動には非常にリスクが伴います。途中で縁をつないだ仲間たちと別れて、一生会わないであろう彼らの友愛にぐっと胸を突かれます。
本書を読んでいると、人間が勝手に行う工事で小動物の住処が奪われることに憤慨しますが、実際身近にある内容だし、大自然とは言えない身近な環境変化に関しては無関心な自覚があります。
色々なものを擬人化することによって、小さな住民たちに親しみを持つ事が出来ます。この本を読んだ子供たちは道端の木の穴や、川の護岸の排水口などにねずみの親子が暮らしているのではないかと考えることでしょう。おっさんである僕でさえ思いましたから。
色々な視点から世の中を見る事ができる本という存在は本当に素晴らしいです。孫が出来たら読ませたい本がさらに増えました。 -
タータとチッチとお父さんのお話。
挿絵(島津和子さん)があって読み進めるのがこれまた楽しい。
ハラハラドキドキしながら読みました。
タミーも大好きです! -
「暗渠化工事で川辺の棲みかを追われたネズミのタータ親子。夏の終わり、安住の地を求めて上流を目指す旅が始まる。彼らを待ち受ける幾多の試練や思いがけない出会い、はぐくまれる友情……。子どもから大人まで、あらゆる世代をとりこにした物語が、待望の文庫化!小さきものをこよなく愛する著者が、足元で脈動する世界の秘密を描き出した人気シリーズ第一弾。チッチが跳ね、タータが走り、タミーが飛び出す!島津和子氏による挿画も多数収録。」
「この本を読み終えた今、私は生きるということを考えている。自分の場所を見つけて息抜き、誇り高く死んでゆけたらいい。そこに向かう毎日の中で、自然、文明、自分、他人、生きている物の全て、この世のあらゆることをみんな同じように大切に感じる事が出来る様になりたい。だから精一杯今を、一瞬を、ちゃんと感じて生きていたいと思った。」
(『小泉今日子書評集』より紹介) -
買ったものの随分放置していた本をようやく読み終えました。「冒険者たち」はやっぱりスゴイ作品だな、と改めて痛感。あの名作があるから、比べられちゃうのは仕方ないだろうけど、なんか中途半端にリアルで中途半端にファンタジーな辺りが引っかかるんですよね。
クマネズミの生態をよく知らないのですが、セミの死骸を「毒があるかもしれないから」と食べないのはなんか違うと思う。人間の残飯を主食にしている(ように描かれている気がする)なら、川の付近に住むこだわりも分からないし。
そもそもネズミの新陳代謝的に人間と同じ3食体制では無いし、年齢が違う兄弟がずっと親と行動しているのも…とか色々ツッコミ出すときりがなくて。いやファンタジーだよ、という割にはあまりファンタジーでもないしなぁ。
ただ、こういうネズミが主役の物語にしては悪い猫ではなく、良い猫が出てきたのでそれは嬉しかったです。後、タミーが可愛い(笑) -
久しぶりの児童書。
つい自分の今の状況に似た本を手に取りがちだけど、たまにはこういうのもいいね。
というかもっといろんなジャンルの本を読んだ方がいいよなぁ。知らなければその存在を認識すらすることもないし。
ネズミや雀、犬やネコにモグラ。小さな生き物がたくさん出てきてほっこりした。“ノスリ”なんて鳥がいることも知らなかった。調べたらザ・猛禽類って感じで驚いた。
ぜひ帝国との戦いが読みたいのだが、どこかで読めるのだろうか。 -
3.7
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2019.7.1(図書館)
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次から次へと訪れるピンチと仲間の繰り返しにページをめくる手がとまらず、2時間半ほどで一気読み。とてもわくわくした。
タータの勇気や成長ぶりに目を見はり、チッチの愛くるしさやリーダーシップの片鱗に目を細めたくなる。
川に住む、その最初の決意が揺らぎそうになるたびタータは深く自問し、自分にとってなにが大切かを考える。いっときの安心や、弟のため・・・という名目ではなくて、自分がどうしたいかと考える、その様子にはっとさせられた。ほかにも、タータが猫のブルーに受けた恩を小スズメに返そうとするところや、グレンの仲間たちが「希望」「友だち」の言葉をあらためて思い出すところなど・・・人が大切にしなければならないことが、動物たちの世界で語られている。 -
読売新聞に連載当時、とびとびに読んだ記憶が微かに残る。お父さんとタータとチッチの兄弟、3匹のネズミの家族の冒険。自分たちらしい暮らしを守ろうとする生き方に魅力を感じる。お父さんの素晴らしいことば。兄弟も少しずつ成長する。障がいになるのは大人にイタチそして大きなネズミ。助けてくれるのも大きなネズミ。そしてスズメ!や犬!猫!子供!に大人!
見た目が違い、普通なら敵対するものが協力することがあるのが嬉しい。