あの家に暮らす四人の女 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.49
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本棚登録 : 2663
レビュー : 208
  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066014

作品紹介・あらすじ

ここは女たちの地上の楽園?! シングルだけど、〝一人〟じゃない。女たちの本音と夢があふれ出す、阿佐ヶ谷の古びた洋館・牧田家。家の平和を守る老人、「開かずの間」の秘密、ストーカー男の闖入など、今日も牧田家の暮らしは豊かでかしましい。

感想・レビュー・書評

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  • 単行本で読んだのだが再読のため投稿出来ないので文庫にて書く。三浦版『細雪』らしいが、そこは置いておいて楽しめた。

    家付き娘として牧田家の屋敷を守ってきた母・鶴代。刺繍作家として作品を売り牧田家で教室も営む佐知。そこに訳あって転がり込んできた友人の雪乃とその同僚・多恵美。
    四人の女たちのユルい共同生活を描く。

    しかし実は敷地内の離れには山田なる老人も暮らしている。鶴代の祖父の代から住んでいるという山田は、山田の父親こそ牧田家で働いていたようだがその父親が死んでからも何故か住み続けている。
    佐知としては気づいたらそこにいた山田について『靴に入り込んだ小石』のように気になるものの、今さら取り出すのも…とスルーしている。それでいて老朽化した屋敷の水道管から水漏れすると鶴代と共に山田を頼る羽目になる。

    そんな具合で四人プラス一人、それぞれにベクトルの向きがバラバラで面白い。
    佐知は刺繍に関してはプロフェッショナルで『無』になれるほど真剣に向き合っているが、それ以外の部分は曖昧だし先にあるような突発的事項にも対処出来ないし、山田問題にも向き合っていない。
    鶴代は天気予報とテレビ番組をしっかり見て時折伊勢丹に行くのを何より楽しみにしているが、娘の刺繍の仕事については趣味の延長程度にしか見ていない。また突然転がり込んできた二人の女たちについても深く考えることなく迎え入れ、直ぐに共同生活に馴染んでいる。
    雪乃は将来を見据えてしっかり働くことには力を入れているが、水難のためにアパートを住めなくなった時も多恵美がストーカー男に付きまとわれている時も佐知母子に相談もなく牧田家へ転がり込んできた。
    多恵美はストーカー男に付きまとわれていて危険なことにならないように注意を怠ってはいないが、新しい出会い探しを楽しんでいる。
    そして山田は私生活は謎だが、鶴代と佐知を守ることが使命と考えているようだ。

    それぞれに価値観や考え方、生き方、恋愛観、重要度が違っていてちぐはぐなのに、特に鶴代との会話は噛み合わないくらいなのに、この四人の共同生活は上手くまとまっているし、時には良い連帯感も見せている。
    同様に、山田の存在も最初は異様に感じていたのに次第に馴染んでくる。それは佐知の変化でもある。

    中盤になって突如現れるカラスや父親の魂語りに戸惑うが、頼りない父親の火事場の馬鹿力的な頑張りは良かった。
    奇妙な関係だが上手くやっているなら良いじゃないか。そのうち変化もあるだろうが牧田家のユルさはそのままだろう。山田も他人の女二人も、かつて佐知の父親が買い集めた偽物の骨董品も、刺繍も畑の野菜や果物たちも、カラスも魂もみんな受け止めて受け入れてくれるのが牧田家のおおらかさであり懐の深さだろう。

    佐知がこの先結婚しようがしまいが、雪乃が恋愛などに脇目も振らず仕事と自分磨きに邁進しようが、多恵美に新しい恋人が出来ようが、鶴代が山田に辛辣だろうが頼りにしようが、牧田家が佐知の代で終わろうが続こうが皆が納得して楽しくやってるなら良いじゃないか。これぞ多様性。

  • 細雪をリスペクトされているのは
    分かるのですが
    これは全く切り離して
    三浦しおん先生を楽しむのがよろしいかと
    軽妙かつ 不思議な落ち着きは
    三浦先生独特の 良さであると思います
    どちらかというと
    結構な ドタバタコメディー的な
    要素もあって ごんごん読書が進みます

  • 刺繍作家のアラフォー独身の佐知、自由気ままな母鶴代、佐知の友達でリアリストな雪乃、雪乃の後輩でダメンズウォーカーな多恵美。不思議なつながりの女ばかり4人が暮らす、古びた洋館での日常。

    全くの偶然ながら、こちらも現代版細雪と銘打っていて、同じく現代版細雪、手のひらの京に続いて読んだ。
    私は物語のシリアスしをんさんも、エッセイでのしをんさんも好きなのですが。
    この本、途中から、「ん?これエッセイだったかな?」というくらい、しをんさん本人が顔を出してきて、佐知のキャラが変わってしまった感があり。。。のほほんとした家つき娘なんじゃなかったっけ?キャラぶれすぎじゃない?と、最初の方を読み返すと、もうイメージが佐知=しをんさんになってて、最初に持ったイメージは吹き飛んでいた。
    アラフォー独身女性というところや、自営業の仕事はコツコツ、でもプライベートはぐだぐだというところ、ご自分を投影されているのかとは思うのだけど(雪乃や多恵美もお友達にモデルがいそう)、エッセイ読者的には、ちょっと投影しすぎかなと思う。
    内装職人さん相手に妄想かっとばしたり、水着売場で懊悩する様は、完全にしをん節。

    "まず第一に、試着を頼むことができない。試着室に入って水着に着替え、「お客様、いかがですか?」と声をかけてくる店員に応えて姿を現す。たるんだ肉をビキニから大幅にあふれさせて。あるいは、トドのごとき重厚な姿態で。悪魔だ。佐知にとっても悪夢だが、佐知の水着姿を目にした店員だって、今晩うなされることになるはずだ。"

    アラフォー女性の考え方や暮らしぶり、エッセイ的なものとして笑えばいいのか、物語としてもっと入り込むべきなのか、どういう姿勢で読めばいいのやら悩んでるうちに読み終わっていた。
    しをんさんの作品は男性主人公のものが多いけど、男性主人公のものの方が個人的には読みやすいと感じた。

    うーん、でも、女4人の同居生活が横軸で、小さい頃にいなくなったというお父さんの話が縦軸で、嵐の夜の大事件もいいスパイスで、話としてはやっぱり面白いし、最後の終わり方は好きだった。

  • 2020(R2)7.19-7.25

    個性豊かな4人の女性が織りなす日常模様。

    帯に「谷崎潤一郎メモリアル特別小説作品 ざんねんな女たちの、現代版『細雪』」とあり、
    「これは、『細雪』を読んでないと分からない話なのか?でもまあいいや。きっと三浦しをんだから、それを読んでなくてもそれなりに楽しめるだろう。」と思って読んだが、案の定楽しめた。
    三浦しをんの実話(? エッセイ?)を読んでいる気にすらなっていた。

    物語は、主人公っぽい「佐知」を中心にしながら、4人の視点が絡まり合って進んでいく。
    中表紙には大きなカラス。表紙にも裏表紙にもカラスの羽。
    その謎が途中でいきなり解ける。2段ブーストで。
    それはそれで有りかもしれないし、2段目のブーストによって、大笑いしながらもこの物語の主題に一気に迫り、心温まるいいお話に帰着するんだけど、そのブーストを仕掛けるのなら、初めから小出しに匂わせておけばよかったのにな、と、シロウトのくせに大きな口をたたく。

  • 肩の力を抜いて楽しく読めました。
    少し地味な主人公の女性ならではの悩みや、友達や母親との距離感に共感する部分が多かったです。
    女性4人の暮らしは煩わしさも少しあるかもしれないけど、温かく、楽しそうで、、何処かで本当に暮らしているんじゃないかと思う程。
    それだけに、唐突なファンタジー展開には驚きましたが、朝ドラのナレーションの様で、後半は気にならなくなりました。

  • 4人姉妹とか 4人家族の話かと思って読み始めたら 親子とその友達2人の話だったのねー。
    ほっこり心和むストーリー。

  • 母親と娘、娘の友人とその後輩が四人で暮らす様子が面白おかしく描かれていて、時々コメディなのかと思うような展開もあり、ストレスのない物語だ。
    女だらけでも友情物語ではないし、仕事や結婚に悩む話でもないのが、軽やかで読みやすかった。
    敷地内別世帯の山田はなかなか存在感があって、最初は近すぎる親戚のようで面倒くさいだろうなと思っていたのが、読み進むにつれて好ましく思えてきた。

  • 善福丸がいきなり登場し、『これは一体誰なんだろう?読み飛ばしたか?』と、一瞬わからなくなった。が、佐知の亡くなった父の霊(それから干からびたかっぱ)までもが登場する頃には、物語の展開にも慣れていた。予想できない登場人の回想による説明は、唐突感を否めなかった。

  • 谷崎潤一郎の『細雪』をベースに、谷崎の没後50年に当たる2015年の企画として委嘱され、書かれた小説だという。
    恥ずかしながら、細雪を読んだことがありません…

    杉並の古い洋館に暮らす、牧田母娘。
    昔はかなりの土地持ちだったらしく、敷地は広い。
    働いたことのないお嬢様で、庭の菜園と、たまに伊勢丹に行くことが趣味の牧田鶴代は70代らしい。
    その娘、刺繍作家の佐知はほぼ引きこもりで刺繍に集中し、次第に身なりに気を使わず、男の影もない37歳。
    彼女の名誉のために付け足せば、ちゃんと老後のためを考えて、必死で仕事をしているのである。
    刺繍を“女の手慰み”“趣味の延長”などと考える輩は許すまじ。
    鶴代の夫、つまり佐知の父は出て行ったということしか分からず、父の不在が佐知の心にそこはかとない頼りなさと影を落としている。
    佐知の友人・雪乃は同い年。アパートの水漏れで、佐知の提案で牧田家に避難し、そのまま住まう。
    多恵美は雪乃の会社の後輩で、10歳年下の27歳。
    ストーカーの元彼に悩まされ、雪乃の勧めで牧田家に住むようになる。

    こまごました事件を抱えながらも、いや、ミイラや強盗、思考するカラスの意志の集合体など、かなりエキセントリックなエピソードを抱えながらも、なぜか「日常」と言いきれてしまうようなゆるい日々が展開される。
    血のつながらない、「家族」の形態もさまざまあれど、寂しみを感じない関係は何だろう、と語られる。
    それを見守りながら、少しの寂しみを味わっているものが、距離を置いて「あの家」と言っているのだと、最後に分かる。

    なんだか退屈だなあ…と思いながら読み進んだが、急に心に染みてくる。
    どのあたりで界面活性剤が注入されたのかしら。
    たとえば桔梗なんかの閉じたつぼみの中で、先の見えない微かな、ほんの微かな不安が膨らんで膨らんで、ポンっとはじけて新しい空気の中にさらされた様な、新鮮さを感じるラスト。
    古い家にも新しい風が吹いている。


    ドラマ化のお話が進んでいるらしいけれど、とりあえず山田さんは小林稔侍さんがいいなあ…と思います。

  • なかなか読書に取りかかれない中でどうにか手に取った一冊。読み始めればとても読みやすい。三浦しをん版平成細雪。
    しをんさんの描く登場人物は一見ごくごく普通の人でとても自然にそこで生活しているのにどこか可笑しみのあるところがある。
    元々住んでいた母娘の元に事情が重なり同居している4人の女性(プラス1人とアルファ)のお話。淡々とした日常がありながら、妙齢の女性の実感のこもった会話や気持ち、母娘のやりとりに共感を覚えたりする。
    そんな生活の中で小さなトラブルと大きな事件が起こる(それがちょっと笑える事態)ファンタジーの要素もある。浮世離れ感とファンタジー要素はありながら描かれている心情はリアルを感じた物語であった。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。小説家。2000年『格闘する者に○』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、12年『舟を編む』で本屋大賞、15年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞受賞。

「2020年 『自転車に乗って アウトドアと文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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