富士 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
4.56
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本棚登録 : 69
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (686ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066250

作品紹介・あらすじ

悠揚たる富士に見おろされる精神病院。時に入り交じり、時に入れ替わる人間の「狂気」と「正常」の謎に挑み、深い人間哲学をくりひろげる武田文学の最高傑作。自作解説、連載担当者・村松友視によるエッセイ、堀江敏幸の解説を収録する増補新版。

感想・レビュー・書評

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  • 「戦時下」の「富士山麓」の「精神病院」を舞台に設定し、描かれた小説。武田泰淳の代表作と評される小説で、「狂気とは何か」「性欲とは何か」「この世に生まれ死んでいくということはどういうことなのか」等、人間の根源に迫る問いを発する小説となっている。テーマは難解も、「登場人物間の対話」が魅力的で、かつ事件も複数発生し、多くの人が死んでいく。さながら、ドストエフスキーの世界にも似た世界も、東洋風曼陀羅の世界。武田泰淳の富士山荘の実体験も反映されており、武田百合子氏の富士日記に書かれている犬の死も百合子氏とともに出てくる。主人公の名前の大島も、もともとは武田泰淳のもとの姓。武田ファミリーの世界を知っている人たちには、より身近に感じられる世界でもある。描かれている世界は、「仮想世界」で奥深いが、「遊び」があり、それがこの小説をより現実世界に近いものに感じられるようにしている。一生の中で必ず読んでおいた方がいい本の中の1冊。

  • 新装版で再読。
    本書はかなりクォリティの高い『幻想小説』でもある……と思っているのだが、賛同してくれる人はいるのだろうかw

  • この小説は同調圧力や、声の強いものに対して無自覚・無批判に順応していく我々を描いていると思った。私は私なりに(それが正しいかどうかは別にして)この結論にたどり着いたが、そこに至るには能動的な作業が必要だった。武田泰淳の狙いはソコにあるのではないだろうか。

    戦時下の精神病院を舞台にした小説なので、正常と対になる「患者」たちの存在が、患者以外の人間を浮き彫りにする。「富士」や「宮様」と紐づけられた価値観を前に、思考停止している我々のほうが病んでいるのかも。この世は茶番なり。


    「一つの恍惚状態に向かって統一されていく、昇華されていく」P553

  • 4.56/69
    内容(「BOOK」データベースより)
    『悠揚たる富士に見おろされる戦時下の精神病院を舞台に、人間の狂気と正常の謎にいどみ、深い人間哲学をくりひろげる武田文学の最高傑作。自作を語る「富士と日本人」、担当編集者・村松友視によるエッセイ「終章のあとのエピローグ」などを収めた増補新版。』

    冒頭
    『リスの尾の方がリスの顔つきより、感情をよくあらわしているにちがいなかった。
    あたまの上まで尾を折りかえして、パンをたべていたリスと、長い尾をそのまま雪の上に敷いて食べるリスとでは、ずいぶん性格もちがうだろう。だが、私はいつも、一匹のリスが気分によって尾っぽのとりあつかいをちがえるのか、それとも、二匹の別のリスが習性として、ちがった尾のとりあつかいをするのかわからなかった。』


    『富士』
    著者:武田 泰淳(たけだ たいじゅん)
    出版社 ‏: ‎中央公論新社
    文庫 ‏: ‎686ページ

  • 悠揚たる富士に見おろされる精神病院を舞台に、人間の狂気と正常の謎にいどみ、深い人間哲学をくりひろげる武田文学の最高傑作。〈解説〉堀江敏幸

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著者プロフィール

武田泰淳
一九一二(明治四十五)年、東京・本郷の潮泉寺住職大島泰信の息子として生まれる。旧制浦和高校を経て東大支那文学科を中退。僧侶としての体験、左翼運動、戦時下における中国体験が、思想的重量感を持つ作品群の起動点となった。四三(昭和十八)年『司馬遷』を刊行、四六年以後、戦後文学の代表的旗手としてかずかずの創作を発表し、不滅の足跡を残した。七六(昭和五十一)年十月没。七三年『快楽』により日本文学大賞、七六年『目まいのする散歩』により野間文芸賞を受賞。『武田泰淳全集』全十八巻、別巻三巻の他、絶筆『上海の蛍』がある。

「2022年 『司馬遷』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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