表現の技術 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066526

作品紹介・あらすじ

人は笑うまえに必ず驚いている――。数々のヒットCMで知られる広告クリエイティブの第一人者が、「起承転結のワナ」「オムニバス禁止令」「ポストイット脚本術」など、豊富な事例を挙げながら、映像や脚本づくりのテクニックを公開。クリエイターのみならず、「伝わる」表現とは何か知りたいすべての人に役立つ本。解説・佐渡島庸平

感想・レビュー・書評

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  • 表現の技術
    著:高崎 卓馬
    紙版
    中公文庫

    CM屋の著者がかたる、ポストイット脚本術と、同時多発思考は圧巻でした

    見ようと思わなくても見てしまうもの。だから、面白くなくてはいけない。
    CMをつくる心構えを、そう教えられてきた。それは広告の本質だと思う。

    すべての表現は、見たくなるなにかを内包していることが大切なのだ。
    メディアの力が弱くなったから、広告が話題にならないのではない。面白いものを僕たちがつくりきれていないから、話題にならないだけなのだ。

    人が人になにかを伝え、なにかを残す。そして、それだけをひたする追求すると、探してでも見たい、教えたくなる、コンテンツとしての魅力が生まれる

    この本は、すべての表現に必要な、探してでも見たくなるものと、教えたくなるもの、をつくりだすための方法論や心構えをまとめたものです。
    あらゆるものに基本というものは存在する。それをきちんと磨いた先に新しいものは存在する。基本のスキルをもたないプロフェッショナルなど存在するはずがない。

    気になったことは以下です。

    ■人の心

    人の心の振り子を揺らさない表現は、存在する価値がない。
    感情を動かすために絶対必要な要素、それは、オドロキ、です。すべての人は笑う直前に必ず驚いているのです。
    人が泣く場合も、ほぼ同じことが言えます。登場人物が助かったと思ったら、助からなかった、あるいは、そう思ったら助かった、というようなあるオドロキ、心の起伏のようなものがあって人は涙腺を決壊させます。
    観客の心のガードを下げさせるためにオドロキが絶対に必要なのです。
    想像を裏切ること、それこそが、見てよかった、人に教えたくなる、また見たくなる、という感情の原点になるのです

    起承転結的な発想は平凡でありがちです。それが、この順番を入れ替えるというスキルをひとつもっているだけで、凡庸な企画とは一線を画すことが可能になるのです。

    映像は空間で、つまり立体的に考えるべきです。平面的に考えているだけだと、物語は陳腐なものにしかなりません。

    おもしろいものは、ほぼ間違いなく、ズレ、をもっています。なにかをズラすと、そこに面白さが発生する。逆に言うと、ズレのないものは面白くない。

    立場を入れ替えます。なにかを生みはじめそうです。この置換をする場合、置換要素はそのシーンでひとつ、にするのが鉄則です

    設定を見直すだけで、そのコンテの生命力に変化起こることがわかります。

    笑いは表現の技術を駆使し尽くして、つくりだすものです。技術によって作り出すものであるということは、逆に言うと鍛錬すれば身につくスキルでもあるということです

    ■ポストイット脚本術

    すべての映画はおよそ3幕で構成されていたのです
     ①問題の提起
     ②問題の複雑化、信じていたものが崩壊する
     ③問題の解決

    ポストイット脚本術
     ①プロット ショート
     ②プロット ロング
     ③3幕分解 大目的
     ④各幕を数値化 中目的
     ⑤各章をシーン化 小目的
     ⑥エピソードの入れ替え 伏線
     ⑦各登場人物管理 感情

    これは、映画を分解するという格闘の末に身につけた、映画や小説、舞台などの脚本を書くときにつかっている僕のオリジナルの方法です。
    僕にしか、書けないものを書くべきだ、という気持ちから考えたものです

    まず、表現のコンセプトレベルのものを考える
    その後、それを大きなプロット(1)にする。いわゆるあらすじです。
    そして、それをさらに細分化した原稿用紙10枚ほどの長いプロット(2)にする
    次に、そのプロットを、前述した3幕にそれぞれの役目を意識しながら分けていく
    さらに1幕ごとに細分化して、チャプターのようなものに分ける
    ここで、それを細かくポストイットに書いて張り付けていきます
    それから、ポストイットの横に、さらに小さなポストイットで細かい事柄を書いて貼っていきます
    そうやって発生するすべての事柄をポストイットにして流れを意識しながら貼ります。
    ひとしきり、それをやったところで今度は、ちょっと冷静な気持ちでその並べ替えをしていきます。
    その後登場人物別にストーリーを追います。都合よく使ってしまった人を見つけ出したり、途中で消えてしまった人物を探し出し修正します。
    全体の流れがポストイットで構成できると、自分で弱いところ、見せ場になるであろうところなどが把握できます。
    脚本をカタカタ書き始めるのは、このポストイットの段階で納得がいくものができてから、です。
    無理をせず、物語のいく末に不安が生まれたら、もう一度そこからポストイットに戻るのです
    この作業は全体を俯瞰して安心して脚本にのめり込むためのものです。
    ポストイットなので、いくらでも張り替えが可能です。

    ■同時多発思考

    ①まずひとつの案件に集中する、そして、思いつきたいもの、までを明確にイメージする

    ②それができて答えまですぐにたどり着かない場合は、別の案件で同じことをやります

    そして、常に脳のなかで、その案件の、思いつきたいスイッチをオンにしておく

    ③するとまったく、別の案件のときに、もうひとつの案件の考えが浮かんだりする

    ④この方法を意識するようになってから、飛躍的に複数の案件を並行して考えることができるようになってじぶんのキャパシティを広げることができました。

    目次

    はじめに

    人のココロにふれる
     感情は振り子である
     人は笑う前に必ず驚いている
     起承転結のワナ
     空間で考える
     ズレが面白さになる
     笑いはテクノロジー
     関係で笑いをつくろう
     物語を説明しない
     オムニバス禁止令
     主人公にプチ不幸を
     観客が安心して不安になる
     ちゃんとコンテを書こう
     言葉を映像の武器にする
     アイデアは目的が連れてくる
     ミッションの見つけ方
     ミッション発見具体例
     ポジティブ発想でつくる

    つくり方をつくる

     つくり方をつくる
     映画のつくり方をつくる
     ダイハードを分解する
     プロットに戻す
     ポストイット脚本術

    発想脳をつくる

     右脳と左脳を使う
     疑う力
     違和感は答えを教える
     難しいほうを選ぶ
     シンプル思考、大きめ思考
     同時多発思考のすすめ
     これからの広告たち

    おわりに
    解説 佐渡島 庸平

    ISBN:9784122066526
    出版社:中央公論新社
    判型:文庫
    ページ数:256ページ
    定価:700円(本体)
    発売日:2018年10月25日初版発行
    発売日:2021年04月30日再版発行

  • radiko詩の朗読コンテンツ『311 VOICE Message』に佐藤健、窪田正孝ら参加 - その他のニュース : CINRA.NET
    https://www.cinra.net/news/20210311-voicemessage

    311 VOICE Message | radiko.jp
    https://radiko.jp/rg/311/voicemessage/

    表現の技術|文庫|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/bunko/2018/10/206652.html

  • 「ものづくり」を志す方には、是非一度読んで頂きたい本

    外山滋比古氏の「思考の整理学」を広告メディアに置き換えて説明している感じです。
    ポイントは何事も疑い、繰り返し繰り返し考えを深めることができるか?
    モノの特徴や性能の語るのではなく、「どこに辿り着きたいのか?(何を成し遂げたいのか?)」を言語化、具体的な映像化が自分で出来ているか?
    制作スタッフに正しく伝えることができるか?

    自分の時代は、こんな親切に「手の内」を解説してくれる本は無かったなぁ~

  • 「表現の技術/髙崎卓馬」
    探しても見たくなるものと、教えたくなるものを作り出す為の方法論や心構え

    ★心を動かすきっかけ論
    ・笑う前に必ず驚いている
    ・起承転結を操作する
    ・観客のみが知っている未来をつくる
    ・場面設定のみずらす
    ・物語は語らない。登場人物の行動を書く。
    ・主人公にプチ不幸
    ・視点は動かしすごない。カメラの位置を意識。
    ・広告が持つミッションとは?

    そもそも広告は…
    ものを売るために存在しているが、ものを売る以上のこともできる。
    この世界に広告が存在する意味を日頃から真剣に考えておくこと。それが企画の見えない土台になって表現が生まれる

    表現の学び方
    《自分の生理を客観的に理解すると同時に、面白いものがなぜ面白くできているのかを考えるヒントになる》
    広告、映画、新聞、小説など自分のすきなもの、心が動いたものを集める。

    ファイル化してなぜ面白いのか、どう使うと面白くなるのかをメモ

    ❌教科書的になぞるだけ
    ⭕️自分が使える文法をさがす

  • 構成論の本の中で一番わかりやすかったかも

  • スクランブルスクエア2回の本屋で見つけてメルカリで買っちゃった、、
    人は笑う前に必ず驚いてる
    っていうのが序盤の主張であるけどめちゃくちゃ同意できた。笑う=面白いではないと前から思ってたから、かっこよすぎて笑う、うますぎて笑う、怖すぎて笑うとかってかなり自然なことなんだねって腑に落ちた

  • 方法論はあくまで方法論。そのままなぞっても強い表現が生まれるわけではありません。方法論を見て人は心を動かしたりしない。方法論とは正しく悩む方法でしかないのかもしれません。正しく深く誰よりも悩んだ先にしか、方法論を越えた先にある強い表現は生まれないのです。ちゃんと苦しんだものしか面白くないのです。

    表現の使命の1つはその表現と出会う前と後でその表現と出会った人の何かを1ミリでも帰ること。

    感情は振り子である
    人は笑う前に必ず驚いている

    人の心に触れると言うのは、振り子の揺れを作ると言うこと。嘘のない言葉、物語への期待、などいくつもの間ものくぐり抜けて慎重に、そして大胆に、アイディアをつけてこの振り子を揺らしにかかりましょう。

    観客の心のガードを下げさせるために驚きが絶対に必要なのです。予定調和は表現の敵。

    起承転結の罠
    結論から先に言うと面白くなったりもする
    起承転結を壊す作業は、時間軸を操作すると言うことです。結論を見せることで、その原因を知りたいと言う欲求を作る。その欲求が面白いと言う感覚を作り出す。この時間軸を有効に使うと俄然そのエンターテイメント性を上がります。ドキドキを作る最大の武器なのです。サスペンスを作り出す最大の道具なのです。映像を作ると言う事は時間を作ると言うことなのだ。

    空間で考える
    映像は平面的に考えているだけだと物語は陳腐なものにしかならない世界には奥行きがある立体的に空間的に考えるとできることが増える。

    ズレが面白さにつながる
    それを意図的に作る方法を、置換行為と呼んでよく使っている。

    笑いはテクノロジー
    笑いながら笑いは作れない
    笑は技術によって作り出すものである
    逆に言うと鍛錬すれば身に付くスキルでもある。
    企画する人間の都合が見えるものは面白くない。芝居の流れに整合性がない、リアルではないコンテは死んでいる。

    できるだけ登場人物の行動で書く。感情を書いてしまうとそこで終わってしまう。その人物なら悲しみに直面した時どういう行動を取るのか。そこを注意深く観察して描くようにしている。

    オムニバス禁止令
    1つの心を深くことで表面的なメッセージだったものが物語歌詞始める。みんながこういうときこ思うよと言う話より、僕は神の時光を持ったと言う話の方が強く逆に普遍的なものになる。

    観客が安心して不安になる
    この条件の中でどうやって主人公はその問題を解決するのか。2時間の間観客をトロッコに乗せて走り切ることができるか。この条件の中でと言う魅力ある問題設定が大切になります。

    ちゃんとコンテを書こう
    言葉を映像の武器にする
    アイディアは目的が連れてくる
    ミッションの見つけ方
    ポジティブ発想で作る
    作り方を作る

    1幕問題提起
    2幕問題の複雑化(信じていたものが崩壊する)
    3幕問題の解決

    既存の映画を分解する
    プロットに戻す
    その内容を置き換える
    ポストイット脚本術
    発想脳をつくる
    疑う力
    違和感は答えを教える
    コンテ以上にするために、以降のすべてのステップは存在する。コンテ通りに作る必要は無い。

    難しい方を選ぶ
    テクノロジーや場所は外側のアイディアに過ぎない。どんなに面白い場所にその広告があっても中身が大したものでなかったら、結局人は珍しいものを見たと言う薄い感情しか持たない。

    シンプル志向、大きめ思考。

    多少無理してでも、できるだけたくさんの仕事をする。その無理の中から自分の活路を見出していく。そういう努力と工夫をし尽くして初めて僕たちはプロになる。ある程度の努力とそこそこの工夫しかしないでいたら、その程度のクリエイティブにしかならない。

    それって本当に面白い?珍しいだけなんじゃない?谷それは人を振り向かせるための装置であって、人が無理に振り向いてくれたその後に見せるものが全てなんじゃないの?僕たちは「なんかええな」を作るべき

  • 人の心は、どのように動くのか。動かされるのか。
    同じクラスの友達を笑わせるのが得意な少年は、これを自問しながら、「ネタ」を考えているかもしれません。
    物語を創作したり、映画を撮ったりする人は、職業柄、常に、これを問い続けているでしょう。
    電通ディレクターの髙﨑卓馬さんの著書「表現の技術」は、見ている人の心に刺さる、見ている人の心を動かす映像表現を創るために必要な技術について、書かれています。

    表現の創り手に向けて書かれた本だと思いますが、表現の受け手(視聴者、消費者)が読んでも面白いと思います。
    本書の「笑いはテクノロジー」という章では、「笑い」をつくることの難しさに触れています。

    著者は次のように書いています。

    >>
    笑いの難しさを知って、常に自分を更新し続けること。それが実は、「正しく悩む」ということなのです。
    脳は筋肉です。鍛えたら強くなります。
    けれど間違えた鍛錬では正しい筋肉はつかない。
    正しく悩む、正しく鍛えるためには、この笑いのテクノロジーの海にどっぷりつかる必要があります。
    >>

    ここで出てきたキーワード「正しく悩む」は、とても重要だと思いました。

    私なりに解釈すると、

    「正しく悩む」は、同じことを同じ程度で考えて、ぐるぐる回ってしまう思考ではなく、考えを進めていく方向が明確な思考。
    理想や目標がはっきりしていて、そのために、何に焦点を当てたらよいのか。自分がどうしたらいいのか。
    自分自身に問い続けていける状態をつくれることだと思います。

    「正しく悩む」のは、結構、難しい。
    問題を認識できていなかったり、自問自答すべきポイントがずれていたりして、間違えた鍛錬にはまっていることは、よくあることかもしれません。

  • 忘れられない企画づくりの極意。商品のゴール、競合との差別化。最も消費者が気持ちいいと思うインサイトの発掘。そしてその先に、忘れられない表現を生み出す数々のtipsを学んだ。笑い、つまり人に伝えたくなるような心動く仕掛けについてもっとパターンと構造を収集しようと思う。

  • 本当に「伝わる」「グッとくる」表現とは? 広告クリエイティブの第一人者が、ココロを動かす表現のつくり方、ヒットを生み出す思考法を教える。〈解説〉佐渡島庸平

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著者プロフィール

一九六九年、福岡県生まれ。早稲田大学法学部卒業。電通エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/CMプランナー。JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤー、TCCグランプリ、カンヌ国際広告賞、アドフェストグランプリなど、国内外の受賞多数。最近の仕事に、JR東日本「行くぜ、東北」、サントリーオランジーナ「ムッシュはつらいよ」など。映画『ホノカアボーイ』の脚本・プロデュース、小説『はるかかけら』の執筆など、分野を越えて活躍している。

「2018年 『表現の技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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