随筆-本が崩れる (中公文庫 く 28-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 240
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066571

作品紹介・あらすじ

2LDKのマンションを埋める数万冊の蔵書が雪崩となってくずれてきた。風呂場のドアが開かない。これは読書の快楽への罰なのか。抱腹、超絶、悪夢の本との格闘が始まる――。本好き、古本好き、積ん読派に恐怖と共感の嵐をまきおこすこと必至の随筆集。単行本未収録原稿を増補。解説・平山周吉

感想・レビュー・書評

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  •  本が好きな人、いや、本を買い込むのが好きな人がこの本を読むと、ちょっと、本気でこわくなるかもしれない。
     あなたが一人暮らしで、だんだん本が増えて行って、やがて、今そこでのんびり本なんか読んでる部屋から、ちょっとトイレ化なんかに入って、用を済ませて、ドアを開けようと思うと「開かない」、どうしても開かない。叫んでも誰も来ない。もう何時間、便器にこうして腰かけているだろう。
     そんなことあるわけないでしょ。いやそれがあるんです。表紙をご覧になればわかりますでしょ。こうなれば、一番好きな○○に命を取られることになるわけです。究極のしあわせ。
    そうなりかかった人がこの本の主人公です。何とか生き延びたようですよ。読みませんか?
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202005270000/
     

  • 2LDKのマンション。住んでいる場所の物理的な規模は一般的なはずなのに、一足踏み込むとスケールが違い過ぎる。さながら本のダンジョン。気を抜くと襲われる。崩れる本から、旅の思い出、野球少年時代の記憶、煙草メインに語られる懐かしい政治家たちまで、走馬灯のように話題が巡り、そして本の話に帰結する。言葉の綾でなく、本に囲まれて暮らし本に埋もれて亡くなった物書き。幸せな生涯って何かしらと考えてしまう。

  • 本に埋もれる

  • 蔵書の山が崩れて部屋に閉じ込められたという体験談はおもしろいが、あまりに多いせいか本を乱雑に扱っている点がいただけない。

  • お風呂に入った途端、入り口に積んであった本が崩れる。なにしろ、家中本が積み重ねてあるから、一カ所崩れると、それをかき分けるにもかき分けようがない。筆者はかくして風呂の中に閉じ込められることになるが、その間に考えたこと、やったことを書き連ねてできたのが本書。草森さんは本が大好きで本ばかり読んできた。本が崩れるというのは、愛書家にとって幸せなことなのか。ぼくも一時は本を研究室の床に積み重ねてきた。これは草森さんもいうように技術がいる。古本屋さんはこの点、天才だ。しかし、積み重ねると、下の方の本を取るのが至難の業になる。あげくのはては、諦めるか買い直すことになる。人はなぜ本を処分しないのか。それは、自分が歩んできた読書人生を振り返りたいからである。本が全部なくなったときにどうなるか、それはまるで自分自身の知的生活がゼロになるような気になるのではないか。内田樹さんは、本がない人の部屋を訪ねると,話のとっかかりがなくなると嘆いていた。草森さんは本を書くためにもたくさん本を買い読んできたが、本質的には読むのがすきなのだろう。そして、読んだ本たちに囲まれていることに至上の喜びを感じていたのではないだろうか。

  • 「随筆 本が崩れる」
    久々の随筆もの。


    草森紳一作品を初めて拝読した。雑誌編集者を経た文筆家とあり、多岐に渡るジャンルを手がけた書き手である。逝去後も著作が刊行され、本書は19作目と言う訳で、きっと著名な方なのだろう。表題に始まり、野球と喫煙に関する随筆を加えた作品集である。


    本が崩れるとはどれだけの本を抱えているのだろうか。本棚に溢れている?倉庫を借りている?はたまた、まさかの段ボールに詰め込みですか?と思いながらページをめくったところ、なるほどどれも違った。一人暮らしにある洗濯物を山にしたアレの本versionが見事に鎮座している笑。凄い。確かに凄い。が、こりゃ崩れて風呂に閉じ込められてもしゃあないすわ先生、と言っちゃう。


    よく一見ぐちゃぐちゃに物を持つ人は、いやいや、ちゃんとどこに何があるか分かってるのよ、と言うけど、本当に?と毎回思っていたが、著者も本の分類はしっかりされていると言うが、本当に??である。何がどこにあるのか分かると言うが、それは良く読む本のみに対してのことで、興味が無くなった本はどこにあるか覚えてないに違いない!と思うのだがどうだろうか。


    本が崩れて風呂に閉じ込められるのは、大事に至らず良かったが、ちゃんと本棚を買ってくださいと余計なお世話で思っちゃったのである。本棚あれば整理しやすいし、見栄えよいし、何よりこんなに床に鎮座させちゃうと埃がたんまりになる。その埃が本に被らないようになると言うメリットがあるのよ先生!と誰かが著者の肩を揉み揉みしながら本棚を売り込むべきだった。


    本筋から幾分離れてしまったが、随筆と言うと堅苦しいものをイメージしていたが、読みやすかった。きっと随筆にも色々あるのだろうが、逝去後にも著作が刊行される理由は読み易さにもあるのだろう。

  • 偏屈な仙人みたいなじいさんが本に埋もれて暮らしていた、と思うとちょっとうらやましい
    須賀敦子氏の「塩一トンの読書」を読んだ時と同じ、このくらいじゃないと本好き語っちゃだめかー

  • 数万冊の蔵書が雪崩となってくずれてきた。風呂場に閉じこめられ、本との格闘が始まる。共感必至の随筆集。単行本未収録原稿を増補。〈解説〉平山周吉

  • やはり本がありすぎて崩れたことのある人の話と言われると、個人的には食指が伸びてしまい、たまらない。そのことにまつわるこだわり、うんちく、事件などなど、堪能しました。/崩れた本で風呂場に閉じ込められ、まずやったことが風呂にお湯をためること、そしてやっぱり本を読むこと。まあ落ち着こう、そのうち良い思案が浮かぶと。悪戦苦闘なんとか出られるわけだけど、その後も、本の積み方の職人芸や積んだ本から抜く哲学などなど、可笑しみと共感を抑えきれない。旅に出ても時計を持たないから、田舎のバス停で、バス停の周りをしばし散策してバス停、しばし散策、バス停、という落ち着かないながらも味のある一刻。なんでこんな重いリュック背負ってるんだ、旅に出て読みもしない本をいっぱいに詰め込むから、てのには激しく頷く。「死蔵しているわけでない。このまま仕事をするかぎり、増えてつづける。どうする気だ、お前」という自問。/"本を抜くのは仕事に役立てるため、利用したということで決してけなすべき行為ではない。本の崩壊をおそれ、抜くのをあきらめてしまうのが、最も悪徳である。"/"一生、本も読まずに生きていられる人たちにとって、「本」は、いつだってゴミに見えているに違いない。すこしだけだが、うらやましい。このゴミなしに生きられない私は、その支配もままならぬ、なさけなきゴミの大王である"/地震で崩壊した本を積み直すのに20日。けど積み直しは「知的作業」なので人に頼むわけにもいかない/本というものは、たえず気をつかっていないと、物も言わずにしのびよってくる獣のようなところがあり、気がついた時は、すでに遅かりしで、人間の居場所などは、知らずに狭められてしまっている/あと、李賀「詠懐/二首」の、「鏡中聊か自ら笑う」、気になった全編、本が崩れた話かと思いきやそれは半分くらいで、あとは、少年時代の野球や喫煙にまつわる話で、個人的にはあまりそそられず。

  • 文筆家、草森紳一の随筆集。蔵書、野球、煙草についての随筆3本立て。
    私は草森紳一をリアルタイムでは知らず、死後に他の作家の作品の中でその蔵書のことを知り、この本を手に取った。正直なところ、野球と煙草の部分は興味がなかったけど(私は野球はよくわからないし、煙草については全く賛同できない)、とりあえず全部読んだ。
    草森は執筆のため、膨大な本を所有していた。東京の自宅マンションに3万2千冊、北海道の実家に建てた書庫に3万冊、合計6万2千冊。ちょっとした図書館のレベルだ。図書館はある程度のスペースに書棚を立て、背表紙が見えるように本を並べるが、個人の自宅ではそうはいかないから、床から積み上げることになる。その様子の写真がこの本の表紙や文中に使われているのだが、想像を超えて壮絶。本当にこの中で生活していたのか。草森はヘビースモーカーだったから、火災の心配もあっただろう。しかも、本人はどこに何の本があるか、把握していたという。統制されたカオスということか。
    巻末の解説によると、草森は自宅マンションの蔵書の中で「消息を断ち」、死後10日経ってから発見されたそうだ。それは本人にとって望ましい死の形だったのかもしれない。
    こういった大量の蔵書は、本人の死後、解体されることが多いが、草森の蔵書は地元・北海道の短大に丸ごと収蔵されたとのこと。蔵書にとっても望ましい形となった。

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著者プロフィール

一九三八年北海道生まれ。慶應義塾大学中国文学科卒業。七三年『江戸のデザイン』で毎日出版文化賞受賞。二〇〇八年三月、大量の蔵書を遺し逝去。著書に『ナンセンスの練習』、『円の冒険』『絶対の宣伝 ナチス・プロパガンダ(全四巻)』『荷風の永代橋』『「明日の王」詩と評論』(共著)など多数。

「2018年 『本が崩れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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