ワルキューレ-巡査長 真行寺弘道 (中公文庫 え 21-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122067233

作品紹介・あらすじ

元モデルで聾唖だという17歳の少女・麻倉瞳が誘拐された。彼女の母親は、評論家デボラ・ヨハンソンの秘書を務めているだけでなく、レズビアンであるデボラのパートナーでもあった。母娘とデボラは同居しており、瞳はデボラのことを「ママ」と呼んでいる。
誘拐犯の要求は、フェミニズムの論客であるデボラに対し「これまでの主張がすべて間違いであったと認め、今後一切の活動を停止しろ」というものであった。出世を拒否し、53歳で警視庁捜査一課のヒラ刑事である真行寺弘道巡査長は、元捜査一課の刑事で現在は杉並署に異動している同期の四竈とともに、捜査を始めるが――。

「このミステリーがすごい! 2019年版」(宝島社刊)で評論家や翻訳家に注目されたニュータイプの警察小説シリーズ、待望の第3弾!

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第三弾。
    前作はイマイチとの評価だった。
    自分としては、あれはあれで真行寺巡査長の一面が見られて面白かった。
    やっぱ黒木は良いよね、舞台回しの役割に味と重みと言うか、真行寺の人となりが良くも悪くも浮き出る感じが良い。
    前作から出てきた森園とサランも良い。色々あるけど一作毎に真行寺の環境や周りの人間模様や考え方も変わってきている。そんな揺らぎが登場人物とのやり取りの中で表現されている。
    今までの登場人物が色々な役回しで再登場してくる趣向も面白い。
    また一作目から読み返してみたい、そんな気になるシリーズ。

  • 榎本憲男『ワルキューレ 巡査長 真行寺弘道』中公文庫。

    シリーズ第3弾。文庫書き下ろし。オーディオマニアでロックフリークの53歳のヒラ刑事・真行寺弘道を主人公にした奇妙な警察小説。第2弾は第1弾がフロックだったのかと思うくらいにレベルダウンしていただけに少し心配。

    第1弾が面白かったのは、真行寺とタッグを組んだ天才ハッカーの黒木良平の活躍によるところが大きい。本作では中盤に黒木が登場し、ストーリーは俄然面白くなる。しかし、描かれる事件、テーマが限定的で今一つ面白味に欠ける。第2弾よりは持ち直したものの、第1弾ほどの面白さは無い。

    元モデルの17歳の少女・麻倉瞳が誘拐される。母親は評論家デボラ・ヨハンソンの秘書を務めると共にデボラのパートナーでもあった。誘拐犯の要求はフェミニズムの論客であるデボラにこれまでの主張の間違いを認め、一切の活動を停止することだった。警視庁捜査一課の真行寺弘道巡査長は、同期の四竈刑事と共に事件の捜査にあたる。

    本体価格820円
    ★★★

  • 身近な業界ネタに関して一つだけクレームあるけれど。総じてよくリサーチされてます。音楽のことやら今回のテーマやらドドーンと展開された気は、するww 軽快なやり取りは、好きです☆

  • 2月-13。3.0点。
    巡査長真行寺シリーズ。聾唖のモデルが行方不明に。家出か、誘拐か。モデルの母は、外人の聾者と同居。

    サラッと読める。ジェンダーに関するやり取りが多く、少し読み辛い部分も。ラストはスピード感あり。次作も期待。

  • 本シリーズの3作目となる本作、相変わらず安定の面白さです。今回はフェミニズムや男女の性差、LGBTといったあたりに絡んだ事件が起こるのですが、こういった社会系トレンドネタが織り込まれているのも毎度のお約束、著者の視点の鋭さがうかがえます。
    フェミニズムや性差に関する登場人物の持論や真行寺、水野が展開する論については少々難しいところもあるので、この点、個人による好みがわかれるところかもしれません。
    とはいえ、そういった点を差し引いても本シリーズの魅力が色あせることはなく、真行寺の鋭い観察眼や仮説構築力は相変わらずですし、黒木のハッキング技術も手伝って事件が解決されてゆく展開、そしてこれも毎度のことですが、主犯格の人物を逮捕できないもどかしさ・やるせなさが残るのも、安心して読み進めることができる構成です。もはや様式美という、ある種の”型”ではないかとさえ思ってしまいます(←わかりにくいかもしれませんが、ほめてます)。
    たまに話しの展開に退屈してしまう著作ですと読みながらもページ数が気になることがあります、あと何ページか、とかですが、本シリーズはそういった雑念に惑わされることなく読み進めることができる数少ない作品であると思います。とにかく読みながら真行寺のアタマの中の思考を追いかけてゆくのが本当に心地よいのです。たまに登場人物の思考内容を回りくどい持って回った表現でながながと説明している著作もありますが、本シリーズではそういったこともなく、極めて読みやすい書きっぷり。それでいて真行寺という人物の持つ矜持も十二分に表現されていて、次回作にも期待が高まろうというものです。前作や前々作のレビューにも書きましたがドラマ化、映画化してほしい作品ですね。

  • 元モデルで聾唖だという17歳の少女・麻倉瞳が誘拐された。彼女の母親は、評論家デボラ・ヨハンソンの秘書を務めているだけでなく、レズビアンであるデボラのパートナーでもあった。母娘とデボラは同居しており、瞳はデボラのことを「ママ」と呼んでいる。
    誘拐犯の要求は、フェミニズムの論客であるデボラに対し「これまでの主張がすべて間違いであったと認め、今後一切の活動を停止しろ」というものであった。出世を拒否し、53歳で警視庁捜査一課のヒラ刑事である真行寺弘道巡査長は、元捜査一課の刑事で現在は杉並署に異動している同期の四竈とともに、捜査を始めるが――。

  •  これもミステリー部分ではないところで読ませる。

  • 今回のテーマが
    聾唖のレズビアンカップルが
    デザイナーズベイビーとして
    聾唖の子をつくることが赦されるのか
    (三代続く聾唖の家系で 
    ゲイの方の精子を人工授精として探していた)

    それは単なる個性としてデザインしていいものなのだろうか?
    (身長の高低、体毛の有り無し、色の濃さなどと比べられるような個性なのか?)

    そして話は万能細胞の話になっていく

    ips細胞、万能細胞の研究が進めば
    体毛や唾などから精子、卵子足りえる細胞をつくれることになるだろう
    その時、今言われているジェンダー、セックス、男女平等論などは風で吹き飛んでしまう論理になる
    まさにSFのような世界が始まるかもしれない

    だからこその
    最後の森園やサランと疑似家族のように
    交流しているのは腑に落ちる
    血のつながりだけが家族じゃない

    警察小説のていをした
    シリーズなのもうなずける

  • 巡査長真行寺弘道シリーズ第三弾。

    17歳聾唖少女の誘拐事件。少女の母親と接触した真行寺はこの事件にどことなく違和感を覚える。
    それを裏付けるかのような誘拐犯からの要求は前代未聞のものだった。そして少女は無事保護され事件は解決したかに見えたが。。

    今回のテーマはフェミニズムと生殖医療。
    過激なフェミニスト評論家と真行寺との直接対決は真行寺の完敗となったものの、今回は彼の考えに共感。生殖医療に人間が、科学がどこまで手を加えていいのかという問題。法ではなく倫理の問題となると途端に曖昧になる。難しい。
    何より自由を愛する真行寺が、色々な経験をする中で、考えが少しずつ変容していくところや、自分の矛盾に気づき、自問自答していくところがいい。
    そしてもちろん、黒木との関係性も。

    このシリーズで個人的に好きなのは若いキャリアの女性課長と真行寺のやり取り。異端の真行寺の実力をかって登用し、自由に単独行動をさせる彼女の度量と、そんな彼女を尊重し期待を裏切らない真行寺の姿。なかなかいい関係性です。
    恋愛に発展することは、、、ないか。

  • 真行寺シリーズ3作目
    好き勝手に動かすにはもうちょっと高い地位なり、背後があるなりの設定があったほうがいいような気がしてしまうが、展開が早く小気味よく進めばいいかな?

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著者プロフィール

一九五九年和歌山県生まれ。大学卒業後、西武セゾングループの文化事業部に勤務。その後東京テアトルにて映画事業に携わる。劇場支配人、番組編成担当、プロデューサー等を務め、退社。二〇一一年、監督デビュー作「見えないほどの遠くの空を」の公開と同時に、同作の小説を発表。一六年『エアー2・0』が大藪春彦賞候補となる。他の著書に「巡査長真行寺弘道」「DASPA吉良大介」シリーズなどがある。

「2022年 『アクション 捜査一課 刈谷杏奈の事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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