- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122067592
作品紹介・あらすじ
「私はあなたが好きです」
日本語の例文みたいな告白だった。彼に告白する言葉は、もっと別のものにするつもりだった。
十二年に一度の秘祭「潮祭」が開かれる夏。高校生の深冬は片想い相手の優弥とともに、彼の故郷・潮見島へ向かう。普通の大学生だと思っていた優弥は、皆から慕われる祭司という深冬の知らない顔を持っていた。そして島には、絶対にかなわない恋敵がいた。子供と大人、自由と伝統、恋と友情。見えない呪縛に囚われる少女がとった、すべてをぶち壊す選択とは?
この夏、最も心を揺さぶる青春小説。
『潮風エスケープ』を改題。
感想・レビュー・書評
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単行本の「潮風エスケープ」を改題して文庫化した作品。
額賀澪さんの「拝啓、本が売れません」で本作品のプロットが紹介されていたことに興味を持ち、読みました。
文庫本の帯は恋愛小説であるかのように作られていますが、主人公の深冬の成長物語でありながら、関係する人たちの群像小説のような趣もある作品でした。
時折主人公以外の視点から書かれている部分もありますが、他の登場人物を主人公にしても小説ができそうな、奥行きのある作品でした。
恋愛小説とか、青春小説とか、そういうカテゴリーにそのまま当てはまらない作品で、何と言うべきか形容しがたい作品ですが、とても良い作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み終わって、とってもさわやかな気分になった。
後味最高です。
大農家の一人娘、いずれは家業を継ぐように言い聞かせられて育ち、そんな親の考えに反発する深冬。
島の伝統のお祭りで神女になる権利を得るため、島を一歩も出ては行けないという決まりを頑なに守り続ける柑奈。
ある意味似たような環境だけど考え方が全然違う2人は、ケンカばっかり。
島で育った優弥、渚、憲兄ちゃん、どの人物も好感が持てて、その関係性も微笑ましい。
深冬は失恋したけど、素敵な島で素敵な仲間たちと出会い、忘れられない夏になっただろうな。
こんなに色んな意味で強烈な夏を経験したら、『夏なんてもういらない』って思えるのかもなぁ。
キレイな潮見島の風景が目の前に広がるよう。
12年に一度、3日間かけて行われるお祭りも、準備の段階ではあまり興味が持てなかったけど、最後には、ぜひ行って見てみたいと思えた。 -
どこの世界に行ったって
人との付き合いはいつだって不条理で、人々が自分にとってはくだらないことにこだわっていて、
良い意味でも悪い意味でも、大事にしている価値観が
それぞれにある。それを理解し合い、時には擦り合わせていかなければならない。
目に見えない信仰というものは
どこに行っても付き纏うものなんだな、と。
どんなに地獄でも、嫌いでも
帰る場所であるのだから
大事にしていかなければならない。
最後には
故郷に顔を出そう。と、
向き合おうとする深冬がカッコよかった。
深冬のような芯が強く、頑固な性格の人ほど
周りにいる大事な人との絆は一生ものであって、
これからの深冬を成長させてくれるような存在だろうなと思う。
友達なんて多くなくていい。
あれだけ嫌いだと言っていても
あの島にまた足を運んで土産を持ってカンナに会いに行くなんて素敵。
前半は深冬の性格がが苦手で入り込み辛さがあったが
大失恋や家族、信仰、友情、
沢山の問題が一気に付き纏ったこの夏を命懸けで
乗り越えた深冬を
気付けば応援し、大好きになっていました。
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序盤は軽い恋愛小説かな〜という感じだった
徐々に恋愛以外の、昔からの伝統を守るのも愛だし、自分の好きな事をするのも愛だし、というテーマが見えてきて面白かった
帰る場所があるって良いなと思った -
人間関係含め青春ストーリー
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キラキラしてた!ライトに読めるけど程よく恋愛以外のテーマも存在感があって読み応えも十分。
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思ってたより軽く読める青春物語でした
ユウヤがイケメン -
積読してた本を片っ端から読もうシリーズ34冊目。
久しぶりの額賀澪さんの作品。
テーマが良かった!
とある小さな島で受け継がれていく伝統や文化。
伝統を大事にし古い考え方に囚われがちな世代と、
伝統のこれからの在り方や意味に疑問を持ちながらも
しっかりと向き合い自分たちなりの答えを出そうとする若い世代。
世代間の価値観の違いや
親と子の間で交わされるやり取りは、
きっと本書のテーマになったような特殊な伝統だけではなく
深冬の家業の農家のように様々なところで起きていることだと思う。
けれど、ありきたりなテーマでそれを語られたら
多分印象には残らない話になっていた。
この独特な世界観が良かった。
イメージとして、映画「君の名は」で
三葉の家が代々引き継いでいた神社の家業みたいなカンジだろうか。
エピローグがちょっとだけ長かったけど、
ラストは爽やかな読後感でした。