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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784122068292
作品紹介・あらすじ
極限の孤絶状態に陥り、
酷寒の迷宮に足を踏み入れた私の行く手に
待ち受けるものは――
最初の1ページを読み始めたら、決して後戻りはできない。
予断を揺るがし、世界の行く末を見透かす、
強靱なサバイバルの物語。
この危機は、人類の未来図なのか。
村上春樹が紹介した英国発の話題作、いよいよ文庫化。
みんなの感想まとめ
極限の孤独と絶望をテーマにしたこの物語は、近未来のシベリアを舞台にしたサバイバルの旅を描いています。主人公は絶滅寸前の人類の中で生き残り、死への渇望から逃れるために過酷な旅に出ます。物語が進むにつれ、...
感想・レビュー・書評
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マーセル・セロー『極北』中公文庫。
シベリアを舞台にした単純なサバイバル冒険小説かと思って読み始めたのだが、少しずつ物語の全貌が明らかになるにつれ、真っ暗な絶望感だけが心の中を侵食していく。
こういう小説の場合、大概主人公は男なのだが、途中で主人公が女である描写があり、驚かされる。何があったのか解らないのだが、絶滅寸前の人類が辛うじて極北に生き残った近未来が舞台のようだ。
絶望の果てに死を決意したはずの主人公のメイクピースは、死への渇望から逃れ、単身過酷な旅に出る……
話題になっている理由は翻訳が村上春樹だからだろう。
本体価格860円
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荒廃した厳寒の極北の地で一人で暮らしているメイクピース。家族はすでに亡くなり、殺し合いと奪い合いの結果、町にもほとんど人は残っておらず廃墟と化しており・・・。
アンナ・カヴァンの『氷』を読んだときもそうだったが、荒廃した世紀末…という設定にいつも反射的に私の脳内に浮かぶイメージは『北斗の拳』の世界(苦笑)しかしまあ、あながち間違ってもいないと思う。狡猾な者、そして腕力のある者が、弱者から奪い搾取する世界を、メイクピースは孤独にサヴァイブしていく。
その極北がどこであるかは徐々にメイクピースの回想の中で明かされていく。サバイバルスキルがあり、タフで反骨心のあるメイクピースは、あらゆる困難を乗り越え一人生き残るが、大切な人を失い、生きる意味も見失いながら、僅かな希望をみつけ旅立つことを選ぶ。まだどこかに文明社会があり正しい生活を営んでいる人々がいるはずだと信じてそれを探し求めるメイクピース。希望はことごとく裏切られるが、しかしメイクピースは生きることを諦めない。
なぜ人は生きるのか、生きる意味とは何なのか、そうまでして生きる価値はあるのか。自分という存在に生きる価値があるのかという意味ではなく、生きることそのものに何の価値があるのか、という問いかけを、メイクピースの生きざまは粉砕していくようだ。ただひたすら、生きるために生きる、その本能に従うだけ。クールで潔い。
メイクピースの変転とともに物語もぐいぐい転がっていくが、何度かちょっとした仕掛けがあり、飽きさせない。どんでん返しというほどではないけれど、メイクピースが知っていることを小出しにするせいもあり、突然今まで伏せていたカードを表にかえす、そのタイミングがうまいので何度かハッとさせられた。(だからその重要な部分はこの感想には書かずにおきます)
メイクピースの生きる目的は「復讐」というわけではなかったけれど、結果的にそれを果たすことになる痛快さも少しだけある。ある人物がメイクピースに吐き捨てる「イゼベルめ」というセリフだけ、少し記憶に留めておくことをおすすめします。
余談ですが作中何度も出てくるカリブーという動物、語感からなんとなくブタとか猪っぽい生き物を勝手に想像していたのですが、どうやらトナカイらしい。寒いもんね。あとムースというのはヘラジカのことで、出てくる動物のほとんどはそっち系で想像するのが正解かも。でもどうしても食べるってなるとトナカイやシカ系はイメージしづらいんですけども。
翻訳は村上春樹ですが、春樹臭はそれほど感じませんでした。メイクピースのキャラクターにも春樹感はなく、メイクピースのことは私はとても好きだったので、読みやすく簡潔な翻訳で良かったと思う。 -
単行本で既読。もう一度読みたくなって文庫を購入。
シベリアが舞台の近未来SF。サバイバルの物語。
サウナのシーンが印象に残っていた。この物語の中では唯一心温まる展開であり、だからこそその後の孤独が耐え難くつらい。
描かれる世界は過酷すぎて、絶望してしまいそうだが、人間の生命力を感じる。これは近未来小説だが、大昔から人類は気候変動や感染症等の困難を乗り越えて命を繋いできたのだなと…
極限状態での善悪、倫理的な問題については、なかなか難しいものがありもやもやが残る。とはいえ、意外な展開をみせる物語のおもしろさもあるし、興味を持った方にはぜひ読んでみてほしい一冊。装丁もいい。
“思い出せる限り、このずいぶん長い歳月のあいだで初めて、私は満足を感じることができた。ここでようやく、世界は私にとって闘うべき相手ではなくなったのだ” -
だれも自分が人類の歴史上の終末期にいるとは思わないだろう
【メイクピース】と名付けられた女のとことん孤独で強い一生の物語
【極北】ではどんな正義のコンパスも役にはたたない
めずらしく物語としても面白い近未来SFだった
キリスト教の考え方だけに終始とらわれているのが物足りなさを感じる一因だと思う
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文明が終わった後の物語。
北の果てを目指して食料を求めて彷徨う主人公の女。
北の果てではコンパスは意味を為さない。針はぐるぐる回転するだけでどこを向いても北であり、どこにもない方向だからだ。コンパスを人が生きる指針、正しさ、善、倫理だと喩えるとマーセル・セローの「極北」はまさにコンパスが意味を失った世界を描いている。うまいタイトルだと読後に感じた。 -
途中まで冒険小説?と思いながら読み進めていたのだけど、村上春樹の言う「近未来小説」の幕が、中盤を過ぎた所でブワァッと突然上がる。
そこから見える光景が、なんともはや。
ゾーン。なるほど。予想外でした。
以下、ネタバレ含みます。
個人的には超序盤の、主人公メイクピースと言葉の通じないピングの出会いがすごく好き。
本を盗みだすピングに銃撃をお見舞いするメイクピースなのだけど、殺しはせず、その後二人は共に暮らすことに。
湯船で互いに女であることが分かり、ピングがすすり泣きながらメイクピースに抱き付くシーンに、じーんと来てしまった。
これ、男同士では生じないであろう(笑)
結局、ここが幸せの絶頂期なのだけど。
カリブー捌いたり、男に痛手を負わせたりと、メイクピースの格好良い姿は最後まで味わえます。
ピングを喪って、生きることの意味を失う姿も、飛行機を見て、世界の外に新たな希望を見出す姿も一連の流れにあるのに、浅さを感じさせず、彼女の求めるものとは、人だったのかなと切なく思うのでした。 -
普段はこういうサバイバル小説を手に取ることってあまり無いんだけれど、コロナ禍で無意識的に購入してた。自粛とかで知らず知らずのうちに鬱屈としてたのかなぁ。
まぁ村上春樹訳ってのも大いにあるけれど。
「この小説くらい、一人でも多くの読者の感想を聞いてみたいと思ったものはない。」と帯には書いてある。
私はまずあらすじで全体像を掴んでから読み始める派なんだけど、ネットで探してもほとんど出てこなくて、とにかく読んでくれ!みたいな感想ばかりだったので、しぶしぶ読み始めた。そしてすぐにその意味がわかった。
近未来だろうか、荒廃した極北の地でひっそりと身を潜めながら生きる主人公。状況を理解できるのはその程度で、「なぜ?」「どうして?」と前提を求めるのは不毛だと感じた。とにかく読み進めるしかないと。そして次から次に変わりゆく物語の様相と次第に明らかになってゆく真相にただただ身を揺さぶられ続けたまま読破。
読み終わった時には総毛立った。
とにかく極北である。文化も文明も歴史も取っ払われた極北で、ただ生き延びるためだけに生き延びる極限の主人公がいる。
作中で描かれる「オレンジ」が、まるで私の知らない神秘の果実のようだった。たまらなく美しくて鮮やかな。
それにしても、この小説は予言書か何かなのだろうか?
未曾有の東日本大震災と原発問題を経験し、未知のウイルスに翻弄されている現状と、完全に切り離して考えることができない。
早10年が経とうとする大震災のことを私はどれだけ正確に覚えているだろう。激しい揺れと津波の恐怖、放射能に汚染された土地、今なお帰れない人々のこと。地元じゃないか。私はなぜ今こんなにも平然と暮らしているのだろう?
新型コロナウイルスだってそう。もはや猛暑日にも全員が当たり前のようにマスクをしているのを異様とも思わず、人との距離を保つ新しい生活様式にはすっかり順応した。
そしてまた忘れていくんだろうか?台風は?水害は?次の地震は?その都度世界の終わりを肌身で感じては恐ろしさを思い出し、それでもまだ終わらない世界に安堵し、一瞬ののちに平和な日常に戻る。馬鹿みたいに。
フィクションに教わる現実でいいんだろうか。
常に備えておかねばならない。私たちはいつだって災厄の一日前にいる。 -
ポール・セローの息子さん。こういう紹介嫌だろうなぁと思いながら。
近未来小説。文字で書かれた物語が、脳内で自然に映像化されると読みやすいけれど、時代設定がいまいちイメージできなかった。
海外作家の小説はあまり読んでこなかったけど、村上春樹訳ならということで。
これはわりと最近の小説だけど、日本語も50年ぐらい経つと言葉が変化して読みにくくなるので、こういった作家さんに今の言葉で訳してもらえるのは有り難い。 -
文明が衰退し、荒廃した世界を生きるメイクピース。
読んでる間、もうずっとメイクピース!って思ってた(応援)
この寒い季節に読んだものだから、自分も極寒の過酷な地に飛ばされた
気分になり、読み終わった時には、だいぶ消耗。
時代が過酷になった時、人は何を求めるか。
彼女のタフさから導かれたものは、すごくシンプルな希望だった。 -
過酷な世界観と物語に圧倒された作品でした。
舞台となるのは文明が崩壊した世界。そこで独り生きるメイクピースはあるきっかけから、自分以外の文明を見つけるため、住み慣れた廃墟から旅に出ます。その旅でメイクピースが出会うものは……
まず圧倒されたのが世界観。孤独に生きるメイクピースの生活の様子から、思いがけない出会い、そして絶望。表現は淡々としているけれど、不思議と読み手の感情を揺さぶってくる。そして荒々しくも時に美しく、幻想的で退廃的な自然や廃墟の描写も素晴らしい。
RPGやアドベンチャーゲームの雪や廃墟ステージが好きなので、雪原やオーロラ、打ち捨てられた街など想像力がとても刺激されました。
物語のテーマとしても静かに読み手に訴えかけられるものがありました。訳者あとがきでは3・11後の世界を思わせる、といったことが書かれているけど、
今自分が読んだ感想としてはコロナ禍によってより鮮明となった社会、世界、そして富める者とそうでない者たちの格差というものを考えさせられました。
科学や文明といったものが機能しなくなるからこそ現れる人間の本質。善と悪、生と死、創生と終焉……
これからの世界と人間の在り方を示唆する黙示録的な小説でありながらも、重々しさだけでなく、命の美しさや燦然とした輝きも内包した一冊でした。 -
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荒廃した世界で、孤独に生きる。世界は終末を迎えており、日を追うごとに益々苦しい状況に追い込まれていく。
こんなにも過酷な状況を著していたら、読んでいるうち、胸が悪くなり、目を背けて読むのをやめてしまいそうだが、そうはならない。
むしろ、読めば読むほどに、腹の奥底に火がつき、「生きる」ことに座を正して向き合おうという気持ちになる。
読了後、爪先から脳天までどっぷりと余韻に浸って、しばらく動けなかった。 -
初セロー。村上春樹訳ということで購入。実際にメイクピース(make piece=平和をつくる、とは皮肉ですね)のような人間が実在するとは驚きです…。近未来(WW3後のような世界)小説。感想を述べるのが大変難しい…ただ生きていくだけでも困難な状況下で(一年の大半は冬)力強く生きた、ある一人の人物の一生を描いた作品。第四部の終わり方が意外過ぎて、より一層わからなくなってしまった…。星三つ半。
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見渡す限り雪原が続く、極北が舞台。
そこで独りで生きる、メイクピースという人間の話。
孤独で、尚且つ辛く厳しい目に遭いながら、ただ淡々と生きる、生きていく、それだけで歩いている。
あぁしたい、これがしたいとは思わず、ただ本当に淡々と生きている。時々、たった一つだけ、食べてみたいものを思い浮かべる。
村上春樹訳なので、手に取ったが…全然村上春樹っぽさがなく、とても読みやすかった。
話の内容としては重いし、ゾーンがどこであるかに気付くとハッとさせられるし、メイクピースが歩んできた道を想像すると、とてもじゃないけどやっていけないと思う。
何がメイクピースをそんなに強靭な肉体と精神の持ち主に育て上げたのか。
ある一文を読んで、とある事実を知り、え…………となった。
最初はただのサバイバル冒険小説のように感じていたが、一人の人間の孤独と苦難に満ちた人生の話であり、極北の"寒い"という言葉では語りきれない厳しい土地での出来事が、私の心に入り込んできた。
メイクピースの人生は波乱に満ちたものではあるだろうが、淡々と生きている。そして淡々と静かに語られる。まるで夜中に降り続く雪のように淡々と。
昔の顔馴染みと会見し、ずっと夢に見ていたものを手にして、匂いを感じたシーン。胸にずっしりとくるものがあった。
淡々と進むし、辛いシーンもあったので読み進めるのが大変だった箇所もあるが、面白い話であった。
もっともっと寒くなったら、いずれまた読んでみたい。 -
すごかった。こんな大きいスケールの物語を淡々と描けるの本当に凄い。
『私はたとえばオーロラに対して畏怖と驚異の念を覚えるが、それが自然の営みであることを知っている。ところが橋の上に立ち、対岸に広がる空っぽの都市を眺めるとき、私の視野の領域に収まるすべては、人の手によってそこに据えられたものだ。電線を張り巡らせた鉄柱も、空にそびえる高層建築も、瓦の敷かれた屋根も、すべてがそうだ。そこにはかつて何百万もの人を養えるだけの食料と飲料水が備えられていた。私は簡単に涙を流すような人間ではない。しかしそのかつての我々の残骸を眺めているうちに、そしてぼろを見にまとった一群の囚人たちが、巨人の死体をついばみに行く小鳥たちのようにそこに向かって歩いていくのを見ているうちに、いつしか目の前がぼんやりと滲んできた。』
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世界は終わった―。そう言葉にするのは容易いが、それでも人はその【終わった世界】を生きる他にない。極北の地を舞台に、ひとり取り残された主人公は旅に出る。傍らの日常を奪われた時、人はアイデンティティを喪失する。肩書、知識、信仰までも価値を失った時、人は真価は問われる。幾度と傷つき、感傷に浸り、それでも【何か】を求めサヴァイブする主人公のタフさが胸を打つ。先読み出来ない展開も終盤に差し掛かりトーンダウンするが、そこで作品に隠された仕組みが浮かび上がる。ひとつ命が尽き果てようとも、継承される物語は未だ終わらない。
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予断無く読むといいんじゃないかな。
明るい話ではないけれど読む価値のある作品だと思います。
読んだ人と語り合えると有意義な感じもしますね。
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