装丁物語 (中公文庫 わ25-1)

  • 中央公論新社 (2020年2月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784122068445

作品紹介・あらすじ

星新一から村上春樹まで――かくも愉しき装丁今昔




そのデザインの源泉は、幅広い好奇心と書物への愛着。


編集者から依頼を受け、ゲラを読み、絵を描き、文字を配し、


一冊の本を作り上げるプロセスを詳しく紹介。




軽妙な語り口にその人柄がにじむ、和田誠さんの本作りの話。

みんなの感想まとめ

装丁という仕事の魅力と奥深さが、著者の豊富な経験を通じて語られる本作は、デザインやレイアウト、用紙選びに至るまで、細部へのこだわりが光ります。和田誠さんの軽妙な語り口は、彼自身の人柄を感じさせ、装丁へ...

感想・レビュー・書評

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  • どうやら本好きであるらしい。
    最近分かってきたことだが、読書好きというのとは少し違う気がしてきた。
    「本にまつわる本」というと、おおかたのひとは本を媒介にした物語を思い浮かべるようだ。
    たぶんそれが「読書好き」なひとなのだろう。
    ところが私は、本というハードな媒体の話が好きなのだ。
    特に、どのような工程を経て完成に向かうか、その間の創意工夫や手順、使用する道具のことなどを聞かされるとワクワクが止まらない。
    きっとものづくりそのものが好きだからだろう。

    もちろん「読書好き」という面も多々あるが、比重は「本好き」7に対して「読書好き」は3程度かな。(その3の部分で新書をお薦めしている・笑)
    残念ながら「本作り」そのものを解説した本は少ない。
    本棚を見てみたら、3冊しか入っていないことも判明した。
    ブックガイドや書評本・読書術の本は玉石混交というほど数多いのに。

    前置きが長くなったが、そういうわけで和田誠さんの装丁のお話を。
    デザイナーさんであり、挿絵画家さんであり、映画監督さんでもある。
    この本がとても良いのだ。読書好きなひとなら読まずとも見覚えのある本が次々に登場して、和田さんの仕事の幅広さを再認識できる。
    遠藤周作、星新一、谷川俊太郎、丸谷才一、吉行淳之介、村上春樹、赤塚不二夫、山本容子、阿刀田高、辻邦夫、椎名誠・・海外文学と映画の本もそれはいっぱい。
    手がけた装丁が1000冊以上だそうだから、知らずに視界に入れている可能性は相当に高い。
    作家さんたちとの交流の話、どんな道具を使うか、一冊ごとのエピソードには失敗談もあれば苦労談もある。傍らで気さくに話しかけられているような語りの温かみで、本に対する愛情がひしひしと伝わってくる。

    発想の原点、装丁のコツ、(あの真っすぐなラインのコツもやっと分かった)勉強になることが山盛り。今までどの本にも載っていなかった紙の話とペンの話、帯の話もあり、ここは何度も読み返すことになった。
    バーコードが印刷されることに強く反対されていて、「決まりだから」ではなくなぜ納得がいくまで粘り強く話し合わないのか、という批判も。
    装丁も本の一部なのだということを理解できないひとが、便利だというだけで本の文化や歴史を傷つけていることを深く嘆いている。
    97年の本を9年後にUブックス化したのがこの本だから、現在はどうなのだろう。
    和田さんの声は届いたのだろうか。

    それでもその仕事はしっかり形になって残っている。
    子どもたちは、必ず谷川さんの絵本を読んで大きくなるだろう。マザー・グース好きな人は、宝物を手渡すように次世代に差し出すだろう。
    ほのぼのとした色彩とデザインが、小さな子の記憶に残ることを想像するだけで温かい気持ちになる。
    これからも私は、表紙や挿絵をゆっくり見せながら和田さんの本を読み聞かせることと思う。
    装丁というお仕事は、書物への愛情が創造の元だと知ることができた。自分が相当な本好きだということもね。
    読んで良かった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      明日、この本を探して確認しようと思っているのですが、古い記憶なので別の本だっかも、、、
      学生の頃、和田誠を真似た訳じゃな...
      nejidonさん
      明日、この本を探して確認しようと思っているのですが、古い記憶なので別の本だっかも、、、
      学生の頃、和田誠を真似た訳じゃないけど、ロットリングを使っていた。
      和田誠とロットリングの意外な出会いについて、書かれてたと思うので、、、猫が所持しているのはUブックス版
      2020/11/20
    • nejidonさん
      猫丸さん。
      図書館に返却してしまったので正確な記憶ではありませんが。。。
      たぶん本書だと思われます。
      画材をさんざん探しぬいて、ロット...
      猫丸さん。
      図書館に返却してしまったので正確な記憶ではありませんが。。。
      たぶん本書だと思われます。
      画材をさんざん探しぬいて、ロットリングに出会ってからこれ一本という記述があったような。
      製図に使用するような細いペンですよね。
      和田さんの均一な線がずうっと謎だったのですが、私も答えを知ってすっきりしたのです。
      猫丸さんも使ってらしたんですか?
      わぁお!和田猫さんだったんですね!猫絵も描かれますか?
      2020/11/21
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      ありがとうございます!
      「ブラウン管の映画館」と「装丁物語」の2冊が無事?見つかり、
      気になっていた部分の確認中。...
      nejidonさん
      ありがとうございます!
      「ブラウン管の映画館」と「装丁物語」の2冊が無事?見つかり、
      気になっていた部分の確認中。。。

      ロットリングの話は最初にあって、記憶の確認が出来ました。因みに、その方は当時ドイツ留学中だった高橋悠治。

      この黒猫アイコンも自作ですが、もう絵の話は過去形です。。。
      2020/11/21
  • 1997年の新書を底本として2020年に発行された本。装丁という仕事についてデザイン・文字・レイアウト・用紙などなど具体的に語られている。和田誠さんの博識は作家や映画への愛からきてることがよくわかった。バーコードも当たり前でなかったのか!

  • その人柄を彷彿とさせる語り口で、装丁への想いと
    真摯な制作、作家たちとのエピソードを語る、本作りの話。
    1 装丁で忙しくなり始めたころ 2 装丁と装幀
    3 谷川俊太郎さんの本 4 文字について
    5 装丁の依頼 6 丸谷才一さんの本 7 映画の本の装丁
    8 先生たちの本 9 シリーズものの装丁
    10 つかこうへいさんの本 11 紙の話 12 画材について
    13 文庫のカヴァー 14 村上春樹さんの本
    15 人の絵を使う 16 自著の装丁 17 言い残したこと
    18 バーコードについて
    ・あとがき

    積読本の一冊。
    思った以上に深い内容だったので時間をかけて、読了。
    グラフィックデザイナー、イラストレーターとして
    数々の本の装丁を手掛けた著者の、本作りの話。
    装丁は内容を正確に伝えるものでないといけないをモットーに、
    自分のデザインのやり方で、その書物を生かせるか
    どうかを考え、発想とアイデアを盛り込んでゆく。
    作品による道具の使い分けに筆記用具の拘り、
    どの部位にどんな紙を使うか、紙の組み合わせ、
    インク等の画材、銅版画や写真、コラージュなどの技法、
    カヴァーとオビ、束見本、描き文字などにも細心に気配っている。
    遠藤周作、星新一、丸谷才一、つかこうへい、村上春樹などの
    作家たちとの、装丁や交流のエピソード。
    映画の本、恩師などの先生たちの本、シリーズもの、自著、
    文庫のカヴァー等の制作のポイントなどを惜しげもなく、披露。
    グラフィックデザイナーとしての装丁の凄みを感じました。
    そして、バーコードへの憤りも、ごもっとも。

  • 和田誠が手掛けた装丁の話が豊富に入っていて、それぞれの本について、どんなことを考えてデザインしたかを読んでいると、改めて見直したくなる。

    ジャケ買いという言葉があるように、本にとってジャケットを含めたトータルデザインはハズせない。

    栞の色が絶妙だったり、紙の質感がイメージ通りだったりするだけで、高くてもハードカバー買いますうー!置いときますうー!となる。
    作家にとっては複雑な言葉だった。ごめん。

    オビの色はこちらでコーディネートするが、内容は編集者の思いの見せどころ、という言葉も面白い。
    そんな和田さんが、本のデザインを語り尽くしたところで、最後に、バーコード問題について怒りを湛え始める。

    そこで、ハッとさせられるのだ。
    この問題を語らずして、装丁がどうのとか言ってるんじゃないよ、と。
    反省した。
    というか、これだけ技術の進歩が激しい現代にあって、バーコードがあのサイズでないといけない理由って……。

    筆者以外の話をして申し訳ないのだけど、私が初めて買った全集というのが、安部公房だった。
    正直、それまで特に好きな作家でもなかったのだけれど、銀色のプレートが貼られた全集が手元にやってきた時、あああ、お金出して買って良かったあぁーと心踊った(笑)
    文庫のジャケットも同様に、近藤一弥さんがデザインされている。

    読んでいない本のタイトルを聞くと、私はジャケットで思い出す。
    ああ、こういう絵柄のとか、こういう色のとか。
    和田さんの仕事の姿勢を読んでいると、作家さんにとってはありがたい人なんだろうなと思う。

  • いろんな方の本の装丁を手掛けられた和田誠さん。丁度わたしと同時代で、途中で紹介されている本も読んでいるのも沢山あって本の内容が思い出されて懐かしい。それと、毎回新しい作家や新しい本の装丁に携わるたびに、新しい試みでチャレンンジされている。一つ一つ本の内容に組みいって愛情と思いをもって装丁、本づくりに参加されている。

    そのような仕事は、何年経っても色あせることがない作品である。
    「いい、しごと、してますな。」

  • 和田さんの本を初めて読む。職業病って感じの本だったけれど、やはり面白い。こういうこだわりに携わりたいと思う。表4のバーコードは、当たり前だと思っていたので、経緯を知っておどろいた。そう思うとたしかに野暮だ。

  •  表紙だけで「本」を買わせる人。この本は、決して肩を凝らせたりしませんよ。そう思わせる装丁の妙。謎が知りたければ、この本を読めば、なるほどそうだったのかと納得することを受け合います。
     亡くなってしまって、ちょっとつらい和田誠さんの「装丁」術をイロハから本人が語っています。新装しても「和田誠」、復刊してくれた中公文庫に感謝。
     ブログに感想書きました。読んでいただけると嬉しい。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202005210000/
     

  • イラストレーターでありながら装丁家としても活躍した著者による装丁の全てが網羅されたエッセイ。これまで手掛けた装丁の解説から紙、文字、画材などのこだわりまで印刷やデザインに関わる者には必読の内容。改めて和田誠の偉大さが分かる一冊。‬

  • 手元に読む本がない……という非常事態(笑)。
    でもさがせばある。
    途中で置いていた、和田さんの本。
    イラストを描いたり、デザインをしたりと一応、和田さんと同じ仕事だけど、ま、力量もなにもかも違いすぎる…というか中学の時、和田さんの「お楽しみはこれからだ」を読んでそのまま和田さんに憧れた私にとっては大先生の本。
    なのに途中で積読とは…。読んで良かった。
    改めて新年から働いている心構えになりました。

  • 図書館で働くということと本を愛するということは違うのだ、と痛感。いろいろな意味で深く恥じ入らずにはいられない。「バーコードについて」

  • デザインや絵を描くことは出来ないので、ワードとエクセルでもってチラシを作ったりするわけだが、文字情報としてだけならなんとか出来上がっても「もう少しカッコよく」という欲が出ると途端に詰まる。それが結構多くなって、製本をやり始めると、さらに中身に対して手も足も出ないのが悔しく悲しく…なんてボヤいていたら友人が貸してくれました。てゆうか私も見つけたんだけど、友人の方が先に見つけてました。負け。

    和田誠さんによる装丁に関するあれこれ。

    タイポグラフィとカリグラフィーの違いはなるほど目から鱗。タイポグラフィは文字を分解してくっつけてもバランスが取れるけど、カリグラフィーはバラバラにしたらチグハグになる。

    読み終わって装丁を眺めてみて、内容が反映されている本が好き。
    装丁が気に入っている本は『The Book』のハードカヴァー『はてしない物語』のあかがね色のハードカヴァー。ちゃんと読んでるなぁと感じる。

    途中、馴染みのない作家さんや業界の昔の有名人とかが沢山出てきたのでちょっと身が入らなかったが、バーコード問題は目がカッと開いた。

    邪魔だよね〜バーコード…
    めちゃめちゃお世話になりまくってるけど、作品の完成度として、これさえなければなぁと思うことが多々ある。唐突に張り付けられた全く違う世界観に無理やりに目を慣らして来た。だって美しいスカートの後側の左臀部の上にバーコードが入ったら嫌だ。だけどデザイナーさんに相談せずに決めちゃったのか…

    本という物体の装いについてとっても勉強になった。

  • 地味な本が地味であることを尊重し愛しその地味さに誠実に応える装丁、最高です。

    「堅い本は堅く、地味な本は地味に装丁したい。」

  • 読めば、次からはきっと本の表紙やカバーも気になってくる。
    レコードやCDはデザインを見て購入することがあると思うが、本ではどうだろうか。著者があって、タイトルがあって、裏表紙のあらすじがあって、少し流し読みをして。本を選ぶポイントはその辺りが主だったのだが、和田さんの装丁への思いや工夫、意図などについて読むと、なるほど今度はその点も見てみようと思えてくる。和田さんから言わせれば、裏表紙にあるバーコードもあらすじも全体デザインにとっては邪魔なわけで、譲れない矜持があるのだ。

    電子書籍が普及すると、こうした本のデザインはより埋没していくような気がしていて、元々買おうと思っていた本があって、クリックひとつで購入する。こうなると、目的もなく本屋に行くことや、ましてデザインを見ていいなと思って読んでみることも少ないだろう。自分の趣味嗜好の殻を破る可能性が減るわけだ。

    紹介されている本を見ると、和田さんが装丁した本をたくさん見たことがあって、このタッチは和田さんのものだったのかと驚く。きっとこのデザインに親しんだ方はたくさんいるはずだ。

  • もうなんだろう。
    自分で意図したわけでもないのに、この本の前に読んでいたのが『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』『古くてあたらしい仕事』だったりして、そこでユリシーズや和田誠さんの話が触れられていたりして。

    本の力というものがあるならこういうことなんだろうなぁ。。。

    本当に最後のバーコードのところ。あまりにも「便利さ」というものにとらわれ過ぎて、関わる人たちをないがしろに進めていってはだめだよね。。。

    ここ何冊か、泣かされっぱなしだなぁ。。やぱり本が、紙や印刷や文字、装訂などを全部含めた本の文化というものが好きなんだろうな、自分は。

  • 書店で何気なく見かけて、気楽に読めそうと思って購入したが、意外と面白くて佇まいを直しながら読んだ一冊。

    村上春樹との共作「ポートレイト・イン・ジャズ」を手掛けるなどイラストレーターとして活躍し、昨年逝去した著者がライフワークとして手掛けた”装丁”をテーマに、様々な作品のエピソードが語られていくのだけれど、本好きの自分でも全く知らない世界ばかりで本当に面白い。

    全体のデザイン、イラストや写真の作成、フォントの選定や自らのフォント作成、紙の材質の選定など、”装丁”とはここまで奥深い世界だったのかと驚かされる。同時に、実際に著者が手掛けた無数の作品が紹介され、その作品をどう表現するかに関する工夫は、単なるプロフェッショナリズム以上に”装丁”に対する愛に溢れている。

    ”装丁”についての見方が絶対に変わる、本好きには絶対にお勧めしたい一冊。

  • 図録『和田誠展』によると、装丁を手がけた単行本・新書・文庫は2000点以上になるらしい。
    本書『装丁物語』は全18章、装丁に対する自分の考えを語っている。校正刷りを読み、作品の内容と著者を考えながら、アイデアを練る、絵を描き、文字を配し、用紙を選び、レイアウトと配色を考える。その具体的プロセス、その試行錯誤の過程を話している。とくに印象深かったのは、文字に対するこだわりの強さ。
    丸谷才一、村上春樹、谷川俊太郎、つかこうへいには個別の章が設けられ、彼らとその装丁に対する思い入れが書かれている。丸谷は毎回(建設的な)リクエストをしてきたし、つかは劇場用のポスターを作って以来のつきあいだった。
    挿まれている書影は残念ながらモノクロ。上記図録には、装丁本がカラーで収められている。図録を参照しながら読むと、味わいもぐっと深まる。
    (p.s. 和田誠の装丁本は、カバーを開いて表と裏をつなげると、思ってもみなかった図案が展開することがある。)

  • 今やバーコードなんて当たり前に入ってる。極たまにバーコードのついてない本を見てあれ?と思ったこともあったけど、バーコードがつくからこその装丁の問題は目からウロコだった。バーコードはYouTubeの唐突に入るCMに似てる。他20近くの装丁物語も収録。

  • グラフィックデザイナー、イラストレーター。数多くの本の装丁を手がけた第一任者が語る装丁のディープな世界。

    本選びには直感が大事。とはいえジャケ買いするからには装丁のチカラも大きいことだろう。

    本書は読書好きなら誰でも見たことのある独特のイラスト、和田誠が装丁の世界を語る楽しい一冊。何気ないカバーや帯にも装丁家の意思が潜んでいる。

    筆者は今では当たり前だが裏表紙のパーコードに強く反対。本は表、裏から帯も含めて一つの世界。

    文庫本より単行本の方がより装丁は楽しめるようだ。

    ついつい中身にばかり目を取られがちだが装丁について関心を持つと、また本の世界が広がる。

  • 装丁物語だけど言葉だけで説明されても面白い訳がない。写真があっても白黒で小さい。
    さらに文庫であっては残念でしかありません。
    和田誠の蘊蓄を読む本なのかな?

  • 和田さんの語り口は謙虚で穏やか。そして責任を持って仕事をしてきたという誇りが随所に見てとれる。
    その仕事ぶりは作家や編集者、イラストレーター、写真家の、自身ではない人の仕事を最大限に尊重する姿勢によって貫かれている。《ミドルマン》のお手本のような和田さんの、その語り口がガラッと変わるのは最後の章。書籍の流通のため半ば強制的に表4(カバー裏面)に印刷されることとなった二段組のバーコードについて。
    デザインを学ぶ学生だった当時、その決定のプロセスに対して、またその美的感覚を無視した横暴に対して異を唱える人たちがいたことは、確かに記憶にある。しかし恥ずかしながら、和田さんがこんなに怒っていたことを、三十年以上経った今になって初めて知った。
    和田さんの予見通り、さまざまな分野で技術革新は進んだ。音楽や映像における媒体は、消滅したわけではないものの、テープやディスクといった物質から、手持ちの端末を利用してデータで鑑賞することが普通になり、ジャケット的なものの役割・有り様は完全に変わった。
    そう言われてみれば、しかし書籍のバーコードの形状にあの当時から大きな変更は無いと思うし、それを見直すという話も聞かない(と思う)。
    問題意識を持つ人がいるならば、今なら目立たないように変えることも可能ではと思うが、出版社に当時を知る人が少なくなり、いま現場にいる人たちは、そのことが前提となった商品しか知らず、デザイナーもそれが当たり前になっていたら…。もしかしたら誰も疑問に思わないかもしれない。
    昨今のあちこちで起きているさまざまな社会問題と根っこを同じくすることがこんなところにも、と暗澹たる気持ちで本を置くこととなってしまった。
    ちょうど神奈川県立近代美術館の鎌倉別館で開かれていた《美しい本》の展覧会を見たことと合わせて、それが豪華本であろうと一般的な書店に並ぶものであろうと、さまざまな素材の複合体としての本の魅力というものを、改めて考えるきっかけとなった。(20230422)

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著者プロフィール

一九三六年大阪生まれ。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)卒業。
五九年デザイン会社ライトパブリシティ入社。六八年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。
六五年創刊の雑誌「話の特集」アート・ディレクターを務める。
講談社出版文化賞、講談社エッセイ賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞など受賞多数。
七七年より「週刊文春」の表紙(絵とデザイン)を担当する。二〇一九年死去。

「2022年 『夢の砦 二人でつくった雑誌「話の特集」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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