園芸家12カ月-新装版 (中公文庫 チ 1-3)

  • 中央公論新社
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本棚登録 : 217
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122069305

作品紹介・あらすじ

われわれ園芸家は未来に生きているのだ――。草花をこよなく愛したチェコの作家、カレル・チャペックが描く、園芸愛好家の幸福な熱狂に満ちた一年。その軽妙な筆致で世界中の読者を魅了し続ける名エッセイを、著者生誕130年を記念し、新装版として刊行。

〈新装版解説〉阿部賢一

感想・レビュー・書評

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  • 面白い!
    まさかこれほどユーモア溢れ、小気味良い寄席のような面白い本たど思ってもみなかった!

    現在の我が家は庭もなく、園芸と言えば4個のサボテンを何年も愛おしく育てている(サボテンの花は本当に美しいのです!)以外、何もしていないのだが…
    そんなの全く関係なく楽しめる

    熱心でマニアックで、少々偏屈オヤジの園芸エッセイだ
    サブタイトルでも付けることを許されるのであれば、「頑固親父の園芸生活12ヶ月」…みたいな感じだ
    間違ってもインスタに投稿されそうなオサレ女子の園芸生活とは全く違う!
    また、憧れのイングリッシュガーデン手引書みたいなのとも全く違う!
    とにかく表に出てくる花のビジュアルだけを大事にする園芸家ではなく、土をいじってなんぼの、コテコテの園芸家なのだ


    注)ネタバレ有
    ※ネタバレ無しにこの本の面白さを伝える力量がないため…


    チャペック曰く
    ~ほんとうの園芸家は花をつくるのではなく、土をつくっているのだ
    園芸家の喜びは花よりもっと深い大地の胎内に根ざしているのだ~

    ふふふ
    これだけで掴みはOKだ

    そして以下の表現がなんともユーモアと知的表現でお見事である
    ~次の世に生まれ変わったら、園芸家は、花の香に酔う蝶になんかにはならい
    窒素を含む、かおり高い、くろぐろとした、ありとあらゆる大地の珍味を求めて、土の中をはいまわるミミズになるだろう~

    そして、土の肥やしとしてにうってつけの舗道に転がっている馬糞を欲しいけど拾えない羞恥心と葛藤しているのだ
    そう、花よりダンゴならぬ、泥ダンゴ
    といった感じだ

    また最高に素晴らしい土は、こんな風に表現されている
    ~ベーコンのようにこってりしていて、羽のように軽くて、ショートケーキのようにボロボロくずれやすい土
    品格のある美しさを持っている
    それに反し、ねっとりとした土、かたまった土、じくじくした粘りっけの強い、冷たい不毛の土は役に立たない醜い土で天が人類か授けたものだ
    人間の心の冷酷さや、頑迷さや、陰険さと同じようにそういう土はみんな醜い~

    時折こんな感じで土(自然)も人間も同じなのだと、何かチャペックの訴えが聞こえるようである


    3月春
    植物たちの芽吹き
    チャペックがもし自分が作曲家であったなら「芽の行進曲」を作ったかもしれないと言っている
    ここで各楽器に見立てた植物たちの行進が描かれていて楽しくなるのだが、さらに好きなのが以下だ

    ~芽が出る
    ねばねばした鱗片からは、若々しいみどりが顔を出し、ふとった芽がひらきかかって、小さな葉脈と小さなたたみ目の、やさしいすかし細工が押しあって出ようとしていた
    赤くなってはにかむことはないのだ
    たたんだ扇をひらくがいい
    うぶ毛をはやしてねむっている芽よ、目をさませ
    スタートの命令が、もう出たのだ
    楽譜にのらない行進曲の、はなやかなラッパを吹き鳴らすがいい!
    日を受けて光れ、金いろの金管楽器
    とどろけ、太鼓
    吹け、フリュート
    幾百万のヴァイオリンたちよ、おまえたちのしぶき雨をまきちらすがいい
    茶色とみどりのしずかな庭が凱旋行進曲を始めたのだ~

    躍動感が音楽を通して伝わる見事な部分
    シビれます!

    いちいち表現力が素晴らしい
    目の付け所がニクイ!
    こんな園芸エッセイ他にないだろう
    なんというか、本当に土臭いリアルな部分に、心を掴まれてしまうのだ
    チャペックの溢れんばかりの園芸愛、そしてユーモアあふれるエッセイ
    自然と人間に対する鋭い観察力…
    園芸愛が強すぎて、奥様やお子様にけん制されている俗っぽさがなんとも可笑しい!
    園芸エッセイという枠にとどまらない多彩な読み方ができる

    植物に無知でもまったく問題なくしっかり楽しめます!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ハイジさん
      訳者の小松太郎は、此の訳に手を入れていたらしい。それを読んでみたい、、、
      チェコ語からの直訳もあって、植物名を比べたりしています...
      ハイジさん
      訳者の小松太郎は、此の訳に手を入れていたらしい。それを読んでみたい、、、
      チェコ語からの直訳もあって、植物名を比べたりしています(暇な猫)
      2021/02/24
    • ハイジさん
      猫丸さん
      コメントありがとうございます。
      確かに良くも悪くも、訳者の個性というかアクがちょっと目立ちました(笑)
      猫丸さん
      コメントありがとうございます。
      確かに良くも悪くも、訳者の個性というかアクがちょっと目立ちました(笑)
      2021/02/24
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ハイジさん
      多分、好き過ぎてかな?重訳元から、ハイテンションだったりして、、、
      ハイジさん
      多分、好き過ぎてかな?重訳元から、ハイテンションだったりして、、、
      2021/02/25
  • 『園芸家12カ月 新装版』お詫びと訂正
    https://www.chuko.co.jp/news/114622.html

    (誤)カバーイラスト ヨゼフ・チャペック
       カバーデザイン・イラスト着彩 中央公論新社デザイン室
    (正)カバー ズデネク・サイドルの原書デザインによる

    ※トルンカの切り紙アニメ「楽しいサーカス」で、カミル・ルホターク、フランチシェク・チヒーとデザインを担当したズデニェク・セイドゥル。

    「著者生誕130年を記念し、新装版として刊行。」ですって!
    しかも解説は阿部賢一、、、

    重訳に、どんな解説をされるんだろう?

    園芸家12カ月|文庫|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/bunko/2020/08/206930.html

  •  チャペックは、ジャーナリストで、小説家で、童話作家ですが、実は「庭作り」が本職です。ナーんちゃって。もちろん冗談ですが、最近彼のことを思い出して訪ねてみましたが、庭いじりに夢中で、相手にしてもらえなかった顛末をブログに書きました。よろしければ、覗いてみてください。
     ああ、この本は最近の新版ですが、ぼくが訪ねたのは、30年ほど前の庭でして、まあ、変わりはないとは思いますが、よろしければ、どうぞ。
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202010220000/

  • 私の持っているのは1997年改版の中公文庫、20年以上も前に園芸の楽しみを知り始めたころに「そうそう、そのとおり」と膝を打ちながら読んだ本。今もずっと庭仕事が好きでたまらず、赤ん坊を眺めていて飽きないのと同じにいつまでのみていたい庭である。明るいので窓辺に座って読書をしようと思っても庭に目がいってさっぱり進まないという困ったことになるのだ。文と兄ヨゼフの挿絵が一体となって実に楽しい。

  • 「ロボット」という言葉を生んだカレル・チャペック生誕130周年。北海道より北に位置するチェコで晩秋来春の庭計画を夢見、牛糞堆肥を愛し、クロッカスに狂喜し、雑草と水撒きに格闘し、いつかはダリア、薔薇の新種を求め。酒も煙草もやらずガタイが良く品行方正なガーディナーの12カ月。植物を愛する姿が愛しすぎと園芸王子三上さんも大絶賛。

  • 1月から12月までの園芸家の毎日が綴られているエッセイ。
    チェコの首都での植物の名前が260?くらいでてきて、知ってるのは少し。調べながら読もうとしていたけど追いつかない。
    旅行へいくにも庭の植物が気になって帰る日を指折り数えていたり。
    植物が好きなひとだけでなくなにかに熱中することの素敵さを感じた。
    書かれた時代は厳しかったようだ。

  • われわれ園芸家は未来に生きているのだ―。草花をこよなく愛したチェコの作家、カレル・チャペックが描く、園芸愛好家の幸福な熱狂に満ちた一年。そのユーモラスな筆致で世界中の読者を魅了し続ける、無類に愉快な名エッセイ。


    挿絵まであってとってもかわいい本

  • 表紙がかわいくて買った。
    兄ヨゼフのイラストが全編に入っていてとてもいい。
    塗り絵をしたくなる。
    「一日も無駄にできない」と春も夏も秋も冬も園芸に邁進してるけどカレル・チャペックってちゃんと本業の仕事してたのかな?と思ってしまう。
    11月の項は、未だ見えぬ春(未来)に向かっている様子が人間の生き方にも通じていてとてもよかった。
    また、あとになって後悔したり欲をかいてしまったりする様子がいかにも人間らしくて今も昔も人間ってこうだよねと思って安心した。

  • ユーモアのある園芸エッセイです。色々な所に取り上げられているので目にする頻度が高かったので読んでみました。
    釣りでも骨董でも絵画でもマニア道は奥が深いですが、英国と言えばガーデニングですよね。美しい庭でお茶を飲むというイメージは昔からあります。
    僕も庭には興味あるものの根気が皆無なので保つことが不可能です。現在も空き家風ガーデニングに励んでおります。
    庭にはまる姿が面白く描かれていて一気に読めます。

  • 園芸家のつぶやき&心の中だろうか。
    いやいやあるある。ちょいとでも植物を育てたら、痛い程わかるなぁ。
    ここまで、私はマニアックではないけど。
    フレーズが詩的だなと思ったら、著者は本業は劇作家でした。

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著者プロフィール

一八九〇年、東ボヘミア(現在のチェコ)の小さな町マレー・スヴァトニョヴィツェで生まれる。十五歳頃から散文や詩の創作を発表し、プラハのカレル大学で哲学を学ぶ。一九二一年、「人民新聞」に入社。チェコ「第一共和国」時代の文壇・言論界で活躍した。著書に『ロボット』『山椒魚戦争』『ダーシェンカ』など多数。三八年、プラハで死去。兄ヨゼフは特異な画家・詩人として知られ、カレルの生涯の協力者であった。

「2020年 『ロボット RUR』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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