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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784122069718
作品紹介・あらすじ
自分の顔がしっくりこない男子高校生。五十過ぎに始めた合気道で若い男の子とペアを組むことになった会社員。恋人の元カノの存在に拘泥する女子大生。妻も部下も、なぜ自分を不快にさせるのかと苛立つ銀行支店長。彼らは「手の画像を見せて」という不思議なネット掲示板に辿り着く……。「私」という違和感に優しく寄り添う物語。〈解説〉吉川トリコ
感想・レビュー・書評
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読みやすく、一話一話は短いのに、個人的には割と没入感があった。
自分の体がしっくりこない人たちがメインの話。
こんな時自分が男だったら…とは思ったことあるし、なんだかわかるなぁという話が多かった。
中学生の時にこの本に-こんな読みやすさでさらっとジェンダーのバイアスとかを扱う話に-出会えていたら、もっとはやく視野が広がって、無意識に他の人にバイアスのある視線や声をかけず、自分も気にせず過ごせてよかっただろうにな、と少し思ってしまった。
とりあえず、合気道、とてもやってみたい。
中学、高校の時の柔道の授業で受け身が特に好きだったことを思い出した。 -
自分自身との折り合いがうまくいかない、自分でいることに窮屈さを感じる。こんなに苦しいことってあるか。だけど、共感すること多く読み進めました。
相手との関係性、距離感にもよるが、おそらく人は大なり小なり自分を演じている部分もあるのではないか。
コンプレックス、性別、年齢、こうあるべきという価値観、一般的な役割をうち破りながら自分を見つめ、認め直してゆく。
無意識に解放されたいという思いが繋がったのか、各章の主人公は、あるネット掲示板に辿り着く。この一風変わったスレッドへの応答に様々な捉え方がきっかけとなり現実と向き合う。
体を脱ぐ、役割の枠に押し込められず、素のままのなりたい自分になる、これが出来たらいいのですが…。
5つの章、どれも個性に富み深かった。特別何が起きたというわけではないけれど、現代を生きる人たちの(居場所を探す)生きにくさの繊細な心理描写が響きました。
印象的だったのは、「あざが薄れるころ」の真知子。
世間からは少し違ったかもしれないが、ひたすら技を磨く姿が凛としてかっこいい。
「欲しいもの、これさえあればいい、他の人が持っているものはあったら嬉しいけど、なくてもまあいい、というものが分かったから、幸せになれたのかもしれない」
どれもラストは、主人公の表情がすっきり生き生きとして見えるところが良かった。
一生つきあっていく自分自身、やはり好きになるのが
いいけれど、人はこういう思いを抱えてるんだなと。 -
人は自分の理解を早めるために、自分のなかで作ったフレームに合わせて物事を理解しようとする。
「顔が良ければ、その他の全て素晴らしい人だ」、「女の人は女らしいかっこをして結婚することが幸せだ」、「死んだ元カノには勝てない」等フレームが邪魔をする。
このフレームは物事を素早く理解するのには役立つが本質を見極めようとする時には邪魔をする。難しい。
最後まで読んだ後で「鮮やかな熱病」を読み返すと、本藤が手の写真の掲示板を見た時の感想、これが一番フレームが邪魔をする例を面白おかしく体感できる。 -
なんとなく読みやすいかな?と言うだけで手に取った一冊。何も期待していなかっただけに予想以上に面白かったし、気持ちが前向きになれた。
短編でサクサク読める。ひとつのネットの書き込みをめぐってのそれぞれの見方が面白い。どれもわかる点はある。どの主人公、どのストーリーも好きだった。 -
☆3.0
短編はあまり好きじゃないけど
上手にまとまってて面白かった -
自分や相手に違和感を感じて、やるせなさや息苦しさを感じる。誰もが経験したことのあるこの感じ。
些細なきっかけで、その違和感を受け止めて前に進んでいく彼らに元気をもらえる、ほっこりする作品です。 -
5編どれもとても良かった。体のコンプレックス・・・というか、自分のありようと客観との間にあるギャップに、戸惑う気持ちがいろいろな方向から繊細に描かれている。どのお話を読んでも少しずつ、あ、なんだか分かるな、と思ったり、戸惑う人がいたら、こんなふうに接すればいいのかな、と思ったり。
ふだん生きる社会と、自分の内面とがなんだか噛み合わないと思う人は多いのかな。程度の差はあれ。その感覚に対して、どう向き合うのかも人それぞれ。「認めていいんだ」と思えるようになる高校生の和海。すでに飲み下して、「変わってる」と言われることに何かを感じることもなく日々の楽しみを見つけている50代の真知子。私が一番気持ちを寄せたのは真知子だった。欲しいもの、なくてもいいものを、きちんと見分けられるようになって、幸せな夜を過ごせたらいいな、と思う。
客観的な要請に合わせれば過ごしやすくなるのかもしれないけど、それが生きやすさに繋がらないならしんどい。そこに目を向け、息をつける瞬間も与えてくれる、そんな物語。
いい言葉もたくさん。
「息抜きしたり、自分を作り変えたり、そういう力をあんただけじゃなくて周りも手に入れて、優しくなるから。」
「新しい価値を不快に感じるのは、それまでのルールに上手く乗ってこられた奴だ。」
「愚かな熱病に、一度ぐらいかかってみても良かったのかもしれない。そうでなければ、他人の病を許せないのかもしれない。」
あと、各話に共通して出てくる「手を見せてほしい」のスレ主に『マリアを愛する』の香葉子だけが違和感を覚えている。「労力と成果の帳尻が合っていない」と。スレ主が目指した女の子と香葉子が近い世代だからかなと思うとおもしろい。 -
はじめのイケメン男子高校生の話で不思議と共感する部分があり引き込まれました。文鳥との絡みを想像するだけでとても美しくて次の話も楽しみになりました。合気道の話も
年齢がやや近いということもあってグイグイ引き込まれました。3つ目からは設定が少し飛んでたのではじめ混乱しましたが4つ目の堅物おじさんの話は嫌悪感がありなかなか進まず最後の最後でそうくるか!な面白さが爽快。最後の話は、ゲームのアバターを通じた交流でしたが、展開が綺麗でおもしろく。こんなきれいな交流ができるならネットの交流もわるくないよな!と思わせてくれました。
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手の書き込みサイトがどれでも出てきて気になったのも、最後にちゃんとオチが付く、これもまたいい作り。物語も繋がっているし内なるテーマも繋がるし、いいですね。身体を脱ぎ捨てるという発想と実際にあり得る事と、なるほど頷く。綾瀬まるさんは桜の下で待ってるから読み初めて、地元が舞台で訛りがちゃんとしてて、そこからですね好きになる。震災の時に相馬で電車に乗っていたんだった。やがて海へと帰るが強く残ってて、あの世界観が何回でも読める
著者プロフィール
彩瀬まるの作品






不眠症気味の私。
読んでみたい本です。
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