軍国日本の興亡-日清戦争から日中戦争へ (中公文庫 い 65-2)
- 中央公論新社 (2021年1月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122070134
作品紹介・あらすじ
明治維新後、日本は数十年にして近代民族国家としての自立に成功した。近代化とは軍国化にほかならず、日清・日露戦争に勝利すると、国際社会の一員として世界各国と協力し、互いに主権と独立を守という精神は次第に忘れられ、軍国主義化の色彩を強めていった。
軍部は立憲国家の枠を越えて独走、日本は国際的孤立化に陥った。
施政者と世論を巻き込み、国家の自爆ともいえる大東亜戦争あるいは太平洋戦争に至った経緯を詳説する。
巻末に『軍国日本に生きる』を文庫初収録。
感想・レビュー・書評
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日清・日露戦争に勝利した日本は軍国主義化し、国際的に孤立した。軍部の独走を許し国家の自爆に至った経緯を詳説する。著者の回想「軍国日本に生きる」を併録。
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防衛大学校長も勤めた著者が、戦後日本の空想的平和主義 ー著者は、考え方が独善的で、国際的視野を欠いて一国主義的であることは、戦前・戦中の軍国主義と双生児のように似ている、と指摘するー を克服するためには、軍国主義へ至る歴史を振り返ることが必要と考えて、近代日本の歴史を概説したものである。
外交・軍事等の対外政策や、その時々の為政者や軍人の姿勢、態度に対する著者の見方や評価がかなりストレートに表されており、賛否はあるだろうが、非常に面白い。
特に興味深かったところ
・P93〜96 日露戦争勝利後の満州問題について
1906年5月の「満州問題に関する協議会」において、満州に地歩を築こうとする軍事当局者に対し、元老が文民統制を貫徹できたもの。ただ、この問題の根は深く、著者は、大日本帝国はこのため39年後に亡んだといっても過言ではないとする。
・P176 民政党内閣による金解禁について
金解禁と緊縮財政との経済政策は、浜口首相や井上蔵相をテロの犠牲にしたばかりでなく、社会的危機を招いた。柳条湖事件に始まる陸軍の膨張政策が広く国民の応援を勝ち得た背景には、浜口・井上の財政・金融政策の失敗があった。
・P245 ニ・ニ六事件等に見られる軍の考え方
動機さえ君国を思うに出たものであれば、「何をしても許される」という恐るべき動機主義の害毒が示されている。……陸軍主流に脈々と流れていたのは、法治主義や立憲主義とは両立しない天皇親政の神話思想であった。
近代日本が、どうして無謀な太平洋戦争に突入することになってしまったのかを、軍国化、軍国主義化という観点から捉えたもので、視点が明確でコンパクトにまとまっており、大変参考になると思う。