- 本 ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122070752
作品紹介・あらすじ
軽妙な語り口で市井の人びとの日常をユーモラスに描いた梅崎春生。直木賞を受賞した表題作ほか、「黒い花」「零子」など同賞の候補となった全四篇と、自作について綴った随筆を併せて収める。文庫オリジナル作品集。
〈巻末エッセイ〉野呂邦暢〈解説〉荻原魚雷
■目次
Ⅰ
黒い花/拐帯者/零子/猫と蟻と犬/ボロ家の春秋
Ⅱ
私の小説作法/私の創作体験/わが小説/私の小説作法
〈巻末エッセイ〉名前(野呂邦暢)〈解説〉荻原魚雷
感想・レビュー・書評
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1954年の直木賞受賞作品ほか候補作4篇。「猫と蟻と犬」は声に出して笑った。惚けている。
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梅崎春生は相当昔に読んだ記憶があって、書架を探したが見つからない。どうやら高校生の頃に図書館で借りて読んだようだ。たぶん有名な『桜島』辺りは読んでたのではないかと思う。
本書は新たな文庫オリジナル作品集。中公文庫は今なお、昭和の地味な作家の作品を地味に出版し続けていて、実に得がたく真面目で、エライ出版社だと思う。
梅崎春生といえば「戦後派」に属する作家で、当然純文学のイメージだったが、実は「ボロ家の春秋」で直木賞を受賞したらしい。まったくもって、芥川賞と直木賞の区別は難しい。
本書は直木賞候補作となった4編と受賞作を収めている。執筆年代は1950(昭和25)年から1954(昭和29)年。さらに、小説の執筆をめぐる短い随筆が幾つか収録されている。
小説5編のうち冒頭の「黒い花」がとても良かった。自分の居場所を見つけられず彷徨する少女の心の移ろいを描いてリアルだ。しかしこれは直木賞の対象なのか? これは芥川賞候補でいいじゃないか、と思った。なかなかに優れた文学作品と感じる。
4つめの「猫と蟻と犬」と表題作ではユーモア小説の方に進んでいる。私は前者の方が好きだった。確かに面白く、笑いながら読んだ。表題作の方は、まあ滑稽ではあるが、2人の人物が意地悪をしあうので、そこには悪意があって、ちょっと笑えない感じだった。なにか窮屈な読み心地で、評価しづらい感想。自分なら「ボロ家の春秋」には賞はあげない。が、世間一般ではこれが良いとされているようだ。
自分が高く評価したのは「黒い花」「零子」「猫と蟻と犬」。巻末の随筆も、梅崎春生という作家の主体性の位置がわかって有益だった。この作家の本、探してもうちょっと読んでおこうと思った。 -
直木賞受賞の表題作と「黒い花」をはじめ候補作全四篇に、小説をめぐる随筆を併録した文庫オリジナル作品集。〈巻末エッセイ〉野呂邦暢〈解説〉荻原魚雷
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梅崎春生の作品





