中央線小説傑作選 (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2022年3月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784122071933

作品紹介・あらすじ

首都圏の通勤通学の大動脈である「中央線」。昭和初期から、沿線には多くの文士が居を構え、文学サロンを形成してきた。上京した若者が多く住み、今も古書店・酒場・ライブハウス・喫茶店など、サブカルチャーの発信地となっている。本書では、中央線沿線を舞台にした作品をセレクト。私小説からミステリまで、多彩な作家による十一篇。鉄道が織りなす時間と風景、そして人間模様を味わう、傑作アンソロジー。

(収録作品)

「土手三番町」内田百閒

「こがね虫たちの夜」五木寛之

「揺り椅子」小沼丹

「阿佐ケ谷会」井伏鱒二

「寒鮒」上林暁

「心願の国」原民喜

「犯人」太宰治

「眼」吉村昭

「風の吹く部屋」尾辻克彦

「たまらん坂」黒井千次

「新開地の事件」松本清張

みんなの感想まとめ

中央線沿線を舞台にした短篇小説のアンソロジーは、名だたる作家たちによる多彩な作品が楽しめる一冊です。太宰治や松本清張、井伏鱒二などの作品が収められ、特に松本清張の「新開地の事件」はその緻密な描写が光り...

感想・レビュー・書評

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  • 中央線にまつわる文士、作品を集めた一冊。

    太宰治、井伏鱒二、五木寛之、吉村昭と名だたる作家陣のなか、松本清張の「新開地の事件」は、さすがの一篇でした。

    一番身近に感じた作品は、黒井千次の「たまらん坂」。あのRCサクセションの「多摩蘭坂」のお話しです。

    原民喜を初めて知りましたが、「心願の国」はまさしく遺書でした。

    自分の家のお風呂に中央線に乗って入りに行く、という不思議なお話し、尾辻克彦「風の吹く部屋」。父娘のやり取りが
    ほのぼのします。

    いずれも、昭和の「中央線」の風景。毎日見る車窓の景色を、少しセピア色にしてくれました。

  •  東京~高尾間を走るJR中央線の沿線を舞台とした短篇小説のアンソロジー。

     東京生活も30年以上になるが、これまで中央線沿線に居住したことはなく、また通勤で使ってもいないし、武蔵境より西は乗車したこともないくらいなので、あまり馴染みがあるとは言えない。ただ、井伏鱒二を中心とした阿佐ヶ谷会のことは『荻窪風土記』を始め参加者のエッセイなどで読んだことがあったし、文学者や画家など多くの文化人が住んでいた(いる)ことは有名な話。

     中央線の線路で自死した原民喜の『心願の国』は正に遺書のような作品で、読んでいて堪らない感情が込み上げてきてしまった。尾辻克彦の『風の吹く部屋』は、収録作の中では一番のお気に入り作品。父と娘の微笑ましい生活の一コマの描写が続くのかと思って読んでいたら、「お風呂へ行くよ」とのセリフ。銭湯でなくてうちのお風呂に行くよというので??になったら、国分寺の自宅から中央線に乗って高円寺にあるお風呂に行くという話。シュールなようで生活感のある描写が何とも言えない。松本清張の『新開地の事件』は、昔ながらの農地が点在するムラと新しく住宅の広がるマチとが混在する ”新開地” における夫婦とその娘、養子に入った婿との愛憎を巡る事件を描き、さすが清張という作品。
     

  • 中央線沿線に30数年住んでいる者として、セレクトに不満を覚えた。ふさわしい作品は他にたくさんある気がする。

    11編の短編・掌編が選ばれているが、私が納得できたのは原民喜「心願の国」と、黒井千次「たまらん坂」の2編のみだ。

    前者は、中央線の線路に身を横たえて自殺した原民喜の死後に発表されたもので、ほとんど小説の形を取った遺書のような内容である。ゆえに、これを選ぶのは理にかなっている。

    後者は、RCサクセションの名曲「多摩蘭坂」が作中に登場する短編で、これもこのアンソロジーにふさわしい。

    それ以外の9編は、「なぜこの作品なの?」と首をかしげつつ読んだ。

    ……と、ケチをつけてしまったが、それはそれとして、『中央線マンガ傑作選』も編めそうな気がするな。

    永島慎二、安部慎一らの阿佐ヶ谷もの、いしかわじゅんや江口寿史らの吉祥寺ものなど……。小坂俊史の『中央モノローグ線』もあるし。

  • 東京駅構内の書店で、「エキナカ書店大賞」エントリー作品、というポップで並べられていたので手に取りました。
    普段はなかなか手に取らない作家の作品ばかりが中央線でまとめられており、面白かった。

  •  地元の本屋に面陳、平積みで大々的に推してました。そりゃそうでしょう(笑)

     どんな作家が、この中央線沿線に住んでいて、作品に登場させているかを見るだけでも面白く、また今回の編では、比較的古い作家さんが多く、ー 11作中存命なのは五木寛之、黒井千次の二人だけ ー 作品そのものの味わいより、中央線沿線の変遷、往時の街並みを垣間見れる記述を楽しみに読んだ(おそらく編者も、そうした記述のある著作を選んでいるように拝察)。

    「ここは僕のよく通る踏切なのだが、僕はここで遮断機が下りて、しばらく待たされるのだ。電車は西荻窪の方から現れたり、吉祥寺の駅の方からやってくる。」「心願の国」(原民喜)

     まだ高架化前、踏切のあった時代だ。「揺り椅子」(小沼丹)の中には高架化して見る景色が異なった様子が書いてあり、巻末編者解説でその年代を補ってくれている。
     
    「阿佐ヶ谷が複線のみ高架化したのは1964年9月で、高架複々線化工事が完了したのが1966年4月だというから、高架化を体験した驚きをわりとすぐに作品に反映したのだ。」

     11作目、松本清張「新開地の事件」では、中央線沿線へベッドタウンが西へ拡がっていく様、高度経済成長も相まって土地を持っていた農民が値上がりしたところで田畑を売却して豪邸を建てていく様子が具に描かれていて、その”事件“そっちのけで土地の変遷、沿線の住宅街の形成の様が面白かった。

     さすがに大御所たちの作品は、短編とはいえついつい読み進めてしまう巧さがある。黒井千次などは中学の頃の読書感想文の課題図書でしか読んだことが無く、当時は良さもなにもわからなかったけど、本書に編まれた「たまらん坂」などはユーモラスでもあり哀しさもあり、実に味わい深かった。

     尾辻克彦の「風の吹く部屋」も、ちょっと空想チックな設えになってはいるが、銭湯がなくなっていく様を描いて面白い。
     ちょうど去年から今年(2022年)にかけて地元町内の銭湯が2軒とも閉湯してしまったこともあり、時の流れをしみじみと味わいながら、掌編11作を楽しんだ。

  • 文化的な沿線という点では屈指の中央線。作家たちが舞台とした作品をまとめたアンソロジー。

    1つのブランドと言ってもいいだろう中央線沿線。全11篇からなるアンソロジー。

    内田百閒、五木寛之、小沼丹、井伏鱒二ら上林暁、原民喜、太宰治、吉村昭、尾辻克彦、黒井千次、松本清張。

    なんといっても黒井千次の「たまらん坂」。

  • 吉村昭サンと、ことに尾辻克彦サンの作品「風の吹く部屋」に魅せられました。尾辻サンの作品、図書館以外では、文庫等でも入手しにくくなってました。このアンソロジー☆☆☆ながら、尾辻サンと吉村サンの短編作品収録されている為、未だ手元に置いてます!

  • 中央線沿線が登場する小説を知る機会を得られて良い読書時間であった。知っている地名が出てくるのは楽しい。

  • 有名作家がずらりと並ぶ。
    一同に読むことができるのが良かった。
    文体の違いが分かるし、特徴も分かりやすい。

    読みたくなったのは原民喜。
    収録されている『心願の国』はエッセイ的な遺書のようなもの。
    文章が柔らかく、切なくて胸が締め付けられた。
    小学生の時に読んだきりでほとんど知らないから改めて読んでみたくなった。
    中央線の西荻窪と吉祥寺の間の線路に横たわって自殺したことも知らなかった。

    元々好きな上林暁と小沼丹も良かった。

    内田百閒と井伏鱒二はとても短いエッセイ。

    読んだことがあったのは、吉村昭『眼』だけで、あとは全て初見。

    実は松本清張はひとつも読んだことがなくて、これで読めて良かった。なるほど人気があるのも分かった。

    太宰治の『犯人』は志賀直哉が酷評してその後のいざこざになった作品だけど、私は「さすが太宰治、うまいなぁ」と思った。一番文章が今っぽいと思う。

  •  会社帰り、国立駅内のモールにある書店にちょっと寄ってみた折に、店頭に平積みされていたので目につきました。私はまさに中央線沿線の住人で、もう20数年間通勤で利用しているので、タイトルが気にならないわけがありません。
     内容は、中央線沿線を舞台にした短編小説を11編採録したものです。幅広いジャンルのさまざまな作品が採録されていて、普段なら決して手に取らないような作品にも出会うことができました。

  • 最初の内田百閒こそ四ツ谷~市ケ谷付近だが(ただし戦前)、以下は新宿より西、というか中野以西中心。やはり私になじみのある飯田橋あたりはあまり小説の題材にはならないようだ。漱石あたりまでさかのぼれば出てくるのだがあの頃は市電か。

  • 井伏、太宰をはじめ多くの文士が居を構えた「中央線」沿線。私小説からミステリまで、鉄道が織りなす時間と風景を味わう傑作アンソロジー。文庫オリジナル。

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