数学の世界 (中公文庫 も 32-2)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122072015

作品紹介・あらすじ

対談、座談の多い印象のある森だが、この本はその中でも出色の一品。大抵の場合、森毅のキャラクターが場の空気を制圧して、対談全体がゆるくホニャララなものになってしまうところ、終始冷静な竹内啓は森が出す論点(そして小ネタやとぼけ)のことごとくに異論をとなえ冷水を浴びせかける。

 こうして、森の面白おかしいネタへの脱線と、それに応じない竹内の生真面目な切り返し、森の縦横無尽に展開する雑学と竹内の実用知の経験とが混じり合い、絶妙の汽水域を作り出していて、数学の純粋な楽しみと応用の豊かさ、そして自由さや厳密性がモザイクと化して、数学の多面的な魅力を描き出し、数学オンチの自分が、それでも諦め悪く数学と付き合い続けるルーツとなっている。

(読書猿――〈web中公新書〉「私をつくった中公新書」より)


集合ブームの学校数学への疑問から始まり、例えば算数でおなじみの+-×÷などにも数学の本質的な構造が意外に深く根をおろしていることを明らかにし、ついで、ユニークな発想で数学の世界の生い立ちをとらえる。教育にも深いかかわりをもつ数学者と、数学の社会的役割に強い関心をよせる統計学者のイキの合った討議は、人間の文化を豊かにするものとしての数学の世界を楽しく描き出し、その教え方、使われ方の現状を的確に批判する。
解説は、『独学大全』の読書猿。


【目次】

 はしがき  竹内 啓

第一部 数学の世界を獲得する

 数学と論理

 基数・序数・自然数

 たす・ひく・かける・わる

 連続量と実数

 関数

 代数系

第二部 数学の世界をふりかえる

 ギリシャ 数学の世界の誕生

 イスラム 代数の発達

 十六、十七世紀 数学の世界の大展開

 十八世紀 偉大な職人の世紀

 十九世紀 専門家の時代

 現代 構造解明の数学

第三部 数学の世界を楽しむ

 あとがき  森 毅

 文庫版のためのあとがき 竹内 啓

解説 読書猿

感想・レビュー・書評

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  • 森毅の言うこと、書くことはすべて全肯定したいので、この本の半分は大好き。この世ならざるものを、数字を通じて観察し続けてるような森教授の頭の中を少しだけ覗くことができる。

  • 【書誌情報】
    『数学の世界』
    著者:森 毅[もり・つよし]
    著者:竹内 啓[たけうち・けい]
    解説:読書猿[どくしょざる]
    出版社:中央公論新社
    刊行日:2022/4/20
    判型:文庫判
    頁数:352
    定価:1056円(10%税込)
    ISBN:978-4-12-207201-5

    教育者でもある数学者と、数学の社会的役割に注目する統計学者による対談から、人間の文化を豊かにする数学の多面的な魅力が浮かび上がる。
    https://www.chuko.co.jp/bunko/2022/04/207201.html


    【目次】
    はしがき(1973年2月 竹内啓) [003-005]
    目次 [006-007]
    用語解説 [008]


    第1部 数学の世界を獲得する 011

    第01章 数学と論理 012
    01.1 数学がつねに正しいと思うのは誤解
    01.2 個体の認識が数学的論理の出発点
    01.3 数の認識は牧畜にはじまる?
    01.4 類の認識――実体・属性二元論の落とし穴
    01.5 内包で了解し、外延で定式化する。外延で押し通す集合教育への批判
    [集合]
    01.6 類で考えるか、関係で考えるか?
    [写像と関係]
    01.7 発生形態と最終形態のちがいが教育上の悩み
    [順序]
    01.8 集合論はいつ有効性を発揮するのか?

    第02章 基数・序数・自然数 047
    02.1 数え主義はなぜよくないか?
    [自然数]
    [無限集合]
    02.2 一対一対応とはなにか?
    02.3 序数と日常レベルでの順序
    02.4 ペアノ式公理は過大評価されている
    [ペアノ式公理系]

    第03章 たす・ひく・かける・わる 075
    03.1 寄せ算と足し算のちがいは本質的
    [加減]
    03.2 すべてわかってしまう子どもはアテにならない
    03.3 差法は減法と区別しなければならない
    03.4 マイナスは差法から出てくる
    03.5 十進法は便宜的なものにすぎないが、それなりのよさもある
    03.6 2×5と5×2は区別しなければいけないか?
    [乗除]
    03.7 なぜ複比例はむずしいか?
    03.8 分数と比はどう考え方がちがうか?
    [分数]

    第04章 連続量と実数 110
    04.1 量と量まがいのものの区別に気をつけよう
    04.2 原子化と連続量のイメージ
    04.3 連続量と実数をどう結びつけるか?――√2の場合
    [実数の定義]
    04.4 分数の世界と小数の世界
    04.5 曲線の長さは果たして量か?――πをめぐって
    04.6 近似は現実の法則の認識として重要である
    04.7 近代的な極限概念は近似と強く結びついている

    第05章 関数 141
    05.1 集合から出発する関数は概念には2つの欠陥がある
    [極限]
    05.2 関数を一つの[もの]として考える
    [線形代数]
    05.3 ベクトル――異質のものを一まとめにすることの意味
    05.4 無理に1変数にすると、かえって理解しにくくなる
    05.5 連立一次方程式の問題は双対性を背景に持つ
    [双対性]
    05.6 解析学と線形代数の両面が必要なのだが...
    05.7 空間的微積分と時間的微積分と

    第06章 代数系 173
    06.1 不自然な例を出して代数系を考える不自然さ
    [代数系]
    06.2 反自然主義としての代数系
    [ブール束]

      第2部 数学の世界をふりかえる 187
    第07章 ギリシャ――数学の世界の誕生 188
    07.1 セクト間闘争が論理を育てた
    [ユークリッド『原論』]
    07.2 イデオロギーの象徴として手ごろだった幾何学
    07.3 人類史上の文化大革命を前提として
    07.4 ヘンなことを考えるヘンな人間がいないと新しいものは出てこない
    07.5 ギリシャの滅び方のおそろしさ

    第08章 イスラム――代数の発達 210
    08.1 ハウ・ツウという発想で解法を一般化
    08.2 SFとしての文学式中国起源説

    第09章 16・17世紀――数学の世界の大展開 216
    09.1 数の普遍化(量化)が完成する
    09.2 空間も量化された
    09.3 変化そのものを法則としてとらえる
    [デカルト『幾何学』]
    09.4 奇跡的な100年
    [ニュートン『自然哲学の数学原理』]
    09.5 開明主義者であることは?

    第10章 18世紀――偉大な職人の世紀 235
    10.1 ニュートンを導きの星として
    10.2 本質を見抜く力を持った職人、オイラー
    10.3 百科全書派の本領を発揮したダランベール
    10.4 確率論の基礎をきずいたヤコブ・ベルヌーイ
    10.5 関数の概念が確立していった歴史
    [大数法則]

    第11章 十九世紀――専門家の時代 250
    11.1 理論体系主義と専門家主義
    11.2 再び数学の象徴機能について

    第12章 現代――構造解明の数学 259
    12.1 集合論誕生の背景
    12.2 数理哲学的公理主義から構造主義的公理主義へ
    12.3 了解可能性としての数理科学
    12.4 了解の内容の豊かさが問題
    12.5 現代の関数解析
    12.6 うそから出たまこと

      第3部 数学の世界を楽しむ 287

    13.1 メメシク数学を楽しみたくて...
    13.2 職業としての数学者
    13.3 「遊びとしての数学」を伝えたい気持ち
    13.4 数学の[よさ]は、生活をデザインするときの中身の豊かさにつながる
    13.5 乱雑と組織化の両立という奇妙な状態にある教育
    13.6 わかるということには不思議なところがある
    13.7 「35歳からの数学」の提唱
    13.8 「絶対試験をしない数学」

    あとがき(1973年2月 森毅) [323-324]
    文庫版へのあとがき(2022年3月 竹内啓) [325-328]
    解説(読書猿) [329-342]

  • 竹内啓氏の発言は、哲学的なようで実は大変偏っており、時折反資本主義的なイデオロギーと結びつける。肝心の数学の話で読むべき部分はほぼない。

  • 本屋で横済みになっていたので、購入。

    ちょっと歯が立たなかった。加算の「寄せ算」と「足し算」の違いが判らず。
    基数と序数についても、真面目に考えたことがなかった。う~ん、何が問題なんだろう。主に数学教育を竹内先生が問題にしているんだけど、その指摘する問題点がピンと来ないんだな。つまりいい加減に数学を覚えてきたんだなあ。

    後半は数学の歴史。やっぱり学者の名前は聞いたことあるけれどやっぱりピンと来ない。
    ガリレイ裁判なれ合い説は驚いた。科学信念を主張し過ぎだぞと怒られて、少し日和れと云われ、じゃあ日和りますとなれ合ったとのこと。

    数学が絶対的に正しいものではないと云われてもなあ。三五歳からの数学という話が出てきたけれど、六〇歳からの数学が欲しいなあ。
    うん、きちんと数学の勉強をしたいなあと思いつつ、終了。

  • [目次]
    はしがき 竹内 啓
    第一部 数学の世界を獲得する
    数学と論理
    基数・序数・自然数
    たす・ひく・かける・わる
    連続量と実数
    関数
    代数系
    第二部 数学の世界をふりかえる
    ギリシャ 数学の世界の誕生
    イスラム 代数の発達
    十六、十七世紀 数学の世界の大展開
    十八世紀 偉大な職人の世紀
    十九世紀 専門家の時代
    現代 構造解明の数学
    第三部 数学の世界を楽しむ
    あとがき 森 毅
    文庫版のためのあとがき 竹内 啓
    解説 読書猿

  • 教育者でもある数学者と、数学の社会的役割に注目する統計学者による対談から、人間の文化を豊かにする数学の多面的な魅力が浮かび上がる。〈解説〉読 書 猿

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著者プロフィール

1928年東京生まれ。数学者。東京大学数学科を卒業。京都大学教養部で教鞭を執り、民間の数学教育運動にも参画した。京都大学名誉教授。数学科関係の主な著書として『数学の歴史』(講談社学術文庫)、『微積分の意味』(日本評論社)、エッセイ・自伝に『まちがったっていいじゃないか』(ちくま文庫)『自由を生きる』(東京新聞出版局)ほか多数。2010年7月逝去。

「2021年 『悩んでなんぼの青春よ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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