橘外男日本怪談集 蒲団 (中公文庫)

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  • 中央公論新社 (2022年7月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784122072312

作品紹介・あらすじ

「日本最凶」の古典怪談、ここに甦る……。

ある地方の古着屋が入手した、青海波模様の縮緬布団。以来、その周囲では血塗れの美女が出現する怪現象が続発し、ついに死人まで――読む者を虚実のあわいに引きずり込む、独特の恐怖世界。日本怪談史上屈指の名作として読み継がれる表題作ほか、現代ホラー界の先駆的存在である著者初の怪談ベスト・セレクション全七篇。

【目次】
 Ⅰ
蒲団(1937)
棚田裁判長の怪死(1953)
棺前結婚(1952)
 Ⅱ
生不動(1937)
逗子物語(1937)
雨傘の女(1956)
帰らぬ子(1958)

〈解説〉朝宮運河

みんなの感想まとめ

日本の古典怪談を現代に甦らせた作品集は、読者を不思議な恐怖の世界へと誘います。特に表題作の「蒲団」は、青海波模様の布団をめぐる怪現象を描き、恐怖が徐々に増していく手法が秀逸です。その他の作品も、幽霊や...

感想・レビュー・書評

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  • 橘外男は初読。 #朝活書写 のお題に取り上げられていて、気になったので読んでみた。何でも乱歩と同時期に活躍した奇談・怪談の名手で、直木賞受賞作家。寡聞にしてその名を知らなかったのだが、最近、中公文庫から2022年、23年と立て続けに作品集が出るなど再評価されているらしい。表題作の「蒲団」が有名とのことだが、「逗子物語」の方が良かった。よくある廃寺の幽霊譚だが、本当に幽霊を見た人はかくやと思わせるストーリー展開で、佳作。ほかにも 姑にいびられ、無理やり離縁させられたことで自ら死を選んだ娘の霊魂が巻き起こす不思議と、死体と再婚する男を描いた「棺前結婚」も相当に面白い。体が弱く、7歳で夭折した子供との楽しい思い出と、その子供が幽霊となって現れるまでを描いた「帰らぬ子」も良い。

  •  秘境小説の作家として名前は知っていたが、怪談も書いているということは知らなかったし、本書で初めてその作品を読んだ。

     長短あわせて7作が収録されているが、表題作の『蒲団』はアンソロジーにも良く収録されているらしいく、肯るかな、確かにベストの作品と思った。上州の古着屋の主人が東京で、縮緬の蒲団を掘り出し物で仕入れてきた。これは高く売れると喜んだのだが、なぜか商いは上手くいかず、家の中は辛気くさくなってしまった。そんなとき、腰を真っ赤にした綺麗な女が姿を現すなど、不思議が続き、とうとう……といった話。怪異を段々と語り、恐怖を盛り上げていく手際が見事。

     合理的な解決がないのが怪談とは言え、『棚田裁判長の怪死』は、怪死の理由が全く判然としないのはどうだろうか。せっかく前半で先祖の悪業を描いているにも拘わらず、そのこととの連関もなく、読んでいて不完全燃焼の感。
     優秀な若手医師と結婚したのに、派手好きな義母との折り合いが悪くなり、遂には結核で離縁を言い渡され自裁してしまった頼子であったが、死んでなお夫に大事を伝えようとする。九死に一生を得た夫の杉村は、彼女の愛情の深さを知り、ある決断をするという『棺前結婚』。ラストは感動的ではあるのだが、前半の杉村の態度に腹が立ち、その分が減点要素。

     『蒲団』に並ぶアンソロジーピースである『逗子物語』、幼くして亡くした子供への切々たる愛情が哀しい『帰らぬ子』もなかなか良かった。
     

  • “日本怪談最恐”の一篇と名高い表題作や恐怖と哀切を湛えたマスターピース「逗子物語」の代表作2篇他、「棚田裁判長の怪死」「雨傘の女」「帰らぬ子」など虚実のあわいを描いたバラエティ豊かな怪談7篇を収録。

    ・とにかく“怖い”と有名な「蒲団」だが、実際なぜこの話はそこまで怖いのか。現れる女の幽霊の描写か、敷布団の中に隠されたものから想起する猟奇性か、はたまた因果も何も関係なくその蒲団に関わった者に祟る凄まじいまでの怨念か……恐らくはそれらが揃ったが故のこの無類の怖さ、なんだろう。
    ・先祖の受けた恨みが子孫に仇を為す体の「棚田裁判長の怪死」は不条理といえば不条理譚。ピアノ曲の演奏に合わせて尺八や風の音、怒号や叫声が現われるシーンは、短いけれどもここだけで1つの音楽怪談になるんじゃないかというくらいの迫力。
    ・優秀だが気弱で世事に疎い青年医師と彼に嫁いだ令嬢「棺前結婚」はもどかしさとやりきれなさばかりが残る。最後に棺を開けなかったことで物悲しくも美しく物語が終わった、ような。

    ・旅行先で目撃した炎に包まれる3人の人々「生不動」。解説にある通り著者本人の過去の心象風景か。
    ・妻を喪い失意のまま逗子に逗留する“私”が従者2人を伴った美しい少年と出会う「逗子物語」。“ジェントル・ゴースト・ストーリー”の範疇になるのだろうけど、後半の哀切→恐慌状態→親愛の情、という“私”の感情の極端な起伏が、逆にリアル。
    ・掌編「雨傘の女」。傘が“どうせ一つ余りましたから”という女の言葉の意味は、その後妻から聞いた事実によって悲しく哀れなものとわかるのだけれど、傘を渡すべき亭主についての言及がその後何もないことを踏まえると、別の……厭な解釈も成り立つわけで。
    ・幼い頃から難病を患い僅か7歳で逝った長男が20年後《足音だけ》帰って来る「帰らぬ子」。我が子を喪った父親の悲嘆と救済―というとクーンツ「黎明」等、心に沁みる作品はいくつもあるが、これは幼くして亡くなった長男と、健康に成長した次男、2人の子供への親心が描かれているのが特色。前半、長くは生きられぬと覚悟しつつも息子の成長と病状に一喜一憂する両親の姿は微笑ましく哀切極まりない。後半は長男の死後生れた次男が健やかに成長した姿と、奥座敷の外に聞こえる小さな足音に長男を感じる描写が並行する。山岳部に入った次男の登山を必死に反対する母親の姿は、幾つになっても変わらぬ親心というものなんだろう。

    我が子を看取った親の悲痛さを身近で具に見ているが故に、未だ父親となっていない自分ですらも、この作品は胸を衝くものがある。

  •  橘外男の日本を舞台とした怪奇小説を集めたもの。執筆は1937(昭和12)年から1957(昭和32)年。
     初めて聞く名前の作家で、全然知らなかったのだが、江戸川乱歩と生年が同じらしい。
     巻頭の『蒲団』を読んで衝撃を受けた。昭和12年の作品などとは信じられない、実に素晴らしく、傑出したホラー短編なのだ。これこそが名作というものだろう。
     感動しつつ、2つめの「棚田裁判長の怪死」を読んでみるとこちらは私には面白くなく、良くなかった。しかし他はなかなか良く、長めの「棺前結婚」「逗子物語」は面白かった。これらに出てくる幽霊は人を取り殺すような悪意の存在ではなく、「善い霊」なので、恐怖メインではないが、なにがしかの感情を喚起する優れた幻想小説だった。
     文章は完璧というには遠く、ときどきひっかかる部分もあるものの、「語り」は実に上手く、読者を巧みに物語ストリームに乗せてゆく。人物像や台詞、情景等にはそれなりにリアリティがあり、何から何まで人工臭があってあからさまに作り物めいた江戸川乱歩の世界とは一線を画し、勝れている。
     橘外男はこのような怪異小説をを中心にたくさん書いた小説家らしく、これからちょっとこの作家の本を(古書で)集めようと思う。

  • 好きなホラー作家が新しくできた!
    岡本綺堂作品が好きであればこちらも好きなのでは。私は情景描写から怪異のあらわれ方がとても頭の中に映像として現れる。
    昔の話になるが、読んでいるうちに、自分が見たかのような映像が浮かんでくるほどの怪談はなかなかない。
    あと、ホラー というより怪談、の方がしっくりくる。
    蒲団 定番の怪談という感じだが、湿気の感じるような雰囲気がよい。
    逗子物語 映画を見ているようで、坊ちゃん一行の映像が浮かぶ。
    帰らぬ子 胸に迫る前半、後半の信彦に対する感情の起伏があたたかくも時にコミカルにも感じた。

  • 文章の硬さがいい感じ。
    しかし少々まだるっこしくて
    最終話には飽きて手が出なかった。

  • 解説・朝宮運河より
    「ときに容赦なく怖ろしく、ときにもの悲しさを感じさせる七篇をあらためて通読して感じるのは、並外れた語りの上手さであった。しばしば饒舌体と評されるエネルギッシュな語りが虚実の境目をいつしか突き崩し、ありうべからざる世界を現出させている。外男は岡本綺堂や田中貢太郎、内田百閒とはまた違ったやり方で、近代の怪談小説を確立したのである。そしてその魅力は発表から半世紀以上経った今日でも、色あせてはいない。」

  • 『逗子物語』は以前『怪異十三』で読んだことがあったけど、それ以外は今回初めて読んだ。

    表題作の『蒲団』が一番良かった。
    怖さはそんなにはないけど話として面白かった。
    他の話は盛り上がるポイントがぼんやりしていたりして冗長に感じてしまった。

  • 読みづらい……表題作はまあまあ怖かったですが、そのあとの短編は「それで?」という印象しか残らなかったです。

  • 古典

  • 橘外男の怪談を集めた文庫オリジナルの短編集。
    表題作の「蒲団」は格安で手に入れた蒲団に纏わる話。よく出来た怪談ではあるが、今読むとまとまり過ぎな印象。
    印象的だったのは「棚田裁判長の怪死」と「棺前結婚」の2作。
    「棚田裁判長の怪死」ははっきりした説明も解決もない実話怪談の先駆けともいえるような話。「棺前結婚」は純愛ホラー。ホラーというより変格物?

  • 虚実のあわいに読者を引きずり込む、独特の恐怖世界――日本怪談史上屈指の名作である表題作他全七篇を収録した、著者初の怪談傑作選。〈解説〉朝宮運河

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著者プロフィール

橘外男
一八九四年、石川県に生まれる。厳格な軍人の家庭に育ったが中学を退学、札幌の叔父に預けられる。その後、医療器機店、書籍配給会社などの職を転々。一九二二年、有島武郎の推挽を受けた『太陽の沈みゆく時』でデビューし、ベストセラーとなる。三六年「酒場ルーレット紛擾記」で『文藝春秋』の実話募集に入選し再デビュー。三八年「ナリン殿下への回想」で第七回直木賞を受賞。五九年死去。作品に『陰獣トリステサ』『青白き裸女群像』『私は前科者である』等がある。

「2023年 『橘外男海外伝奇集 人を呼ぶ湖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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