人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫 た30-61)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 中央公論新社 (2022年9月21日発売)
3.94
  • (8)
  • (15)
  • (6)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 329
感想 : 22
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784122072596

作品紹介・あらすじ

美しき人魚を賛美する南京の貴公子、魔術師に魅せられ半羊神と化す妖しい世界に遊ぶ名作。水島爾保布の挿画を完全収載。
〈解説〉中井英夫をそのままに、前田恭二による「水島爾保布小伝」を新しく追加。〈註解〉明里千章

みんなの感想まとめ

耽美的な短編が描くのは、贅を尽くす貴公子と神秘的な魔術師の物語です。主人公は、華やかな生活に飽き飽きし、究極の美を求めて人魚に魅了されます。その妖艶な描写は、谷崎潤一郎の巧みな言葉によって生き生きと表...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 谷崎潤一郎の、耽美的な短編2作。
    どちらも大正6年(1917年)の作品。
    発表当時の水島爾保布の挿画を完全収載。これが時代色もあり、妖艶な魅力で雰囲気を増しています。

    「人魚の嘆き」
    若くして莫大な財産を相続した主人公の若者は、眉目秀麗で優秀と、何ひとつ不足がなかった。
    その貴公子、当初は仲間と遊蕩にふけったが、数年で飽きてしまった。
    贅沢な屋敷に選り抜きの美女を集めて側室とし、日々その特技を披露させ、それでも退屈してしまう。
    最高に美しいもの、世にも珍しいものを求め続けるのだったが‥
    中国は清朝の時代、最盛期だった乾隆帝の次の皇帝の御世というあたりも、爛熟頽廃の気配を漂わせる設定ですね。
    貴公子は人魚の噂を聞き、魅了されて、ついにオランダ商人から手に入れる。
    この世ならぬ美しさをたたえた顔に長い髪、人ならぬ長い魚の尾。
    憂い悲しむ人魚の望みをかなえるため、最後に‥
    ビアズリー風の挿画は、人魚を曲線的に描いて、思いのほか肉感的でたくましい、野生を感じさせる姿が印象的です。

    「魔術師」
    遊興に気が高ぶり、高台から群衆の上に飛び降りる人までいる街。
    高名な魔術師は中性的な美貌。社交界の貴人も裕福な男女も魅せられて、公園の舞台に熱中し、自ら危険な役割を果たそうとする。
    現実には考えにくいが、だからこそ書いたのか‥
    魔術師の力によって、その場で半羊神となってしまうという。怪奇な変容。
    ほとんど誰も知らなかったような、難しい言葉をちりばめ、東洋西洋の神秘的なモチーフを練り込んでいく。
    こんな作品を当時の人はどう受け止めたのだろうか。

    モチーフは日本的ではないが、ある意味、歌舞伎や文楽の美麗さ残酷さと重なる面があるかも知れません。
    結末には、愛を貫く筋が1本きらっと通っているので、そこが谷崎らしいというか、後味は悪くありませんよ。
    私はエドガー・アラン・ポオが好きなので、その作品と相通じるものも感じました。

    谷崎潤一郎自身は、言葉を選び抜き、とても苦労して書いた作品だが、後に読み返した時には、苦労と後々まで残る作品かどうかは別だと思ったとか。
    耽美系の作品とはどのように生まれて、展開してきたのか、興味がわきました。
    それゆえ、中井英夫の解説も、おおいに勉強になりました。
    (26年5月31日)

  • 祝文庫化!

    #375 東京国立近代美術館「あやしい絵」展〜神秘・退廃・グロテスク…蕭白から松園まで、名画で辿る”あやしい”の系譜〜|ぶらぶら美術・博物館|BS日テレ
    https://www.bs4.jp/burabi/articles/5su1q6y262501klm.html

    人魚の嘆き・魔術師|谷崎潤一郎 百年の時を経て豪華装丁で完全復刻
    https://www.shunyodo.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000000733

    人魚の嘆き・魔術師 谷崎 潤一郎(著/文) - 中央公論新社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784122072596

  • 挿画が目的で読みました。
    100年以上前の作品を、当時の挿画そのままに出版している中公文庫に感謝。楽しめました。

    この本を手に取ったのは、半月ほど前に別の文庫本で「魔術師」を読んだのがきっかけです。その際の感想は下記のとおりですが、読み直してよかったです。表紙画、扉絵だけで気分が高揚します。挿画は「人魚の嘆き」の方が良かったかな。巻末に両作品の挿画を描いた水島爾保布の小伝が収録されているのも嬉しいです。
    「人形の嘆き」「魔術師」ともに衒学的で独特の文体ですが、描かれた背景などは中井英夫による解説に詳しいです。

    『魔術師』
    デビュー7年後の大正期の作品。西洋やオリエント等々への憧れを絢爛な文章で並べ立てた幻想文学。「乙女の本棚」向きだなと思ったら、既刊でした。中公文庫版の「人魚の嘆き・魔術師」の挿絵が素晴らしいそうなので、今度見てみようと思う。

  • 2022年9月22日初版
    水島爾保布による表紙とカラー挿絵が巻頭、文中の挿絵が随所にあり、豪華。
    『人魚の嘆き』
    清王朝時代南京の貴公子が主人公。贅を尽くしたが現状に満足せず、張り合いのない退屈な日々を過ごしていたが、いよいよ人魚を買うことになり有頂天に。人魚の美しさの形容が饒舌な谷崎氏の表現でめまいがしそう。香港からイギリス行きの汽船に乗った春に哎呦(がいゆう)一声して水中に沈む人魚との一瞬の再会。
    人魚に関心を持って、他にも人魚を題材にした作品があるらしい。
    『魔術師』
    中性的な魅力の魔術師に惑わされる様子が迷宮のような公園で迷子になるような動悸を感じて読み進めた。結末はあっという間。

    • 傍らに珈琲を。さん
      ベルガモットさん、こんばんは!
      私も読みました♪
      同じ中公文庫なのですが私が手にした方は、中公文庫た30―11。
      バーコードを読ませたら、こ...
      ベルガモットさん、こんばんは!
      私も読みました♪
      同じ中公文庫なのですが私が手にした方は、中公文庫た30―11。
      バーコードを読ませたら、こちらとは違うものになりました。
      表紙が素敵で手に取ったら、中にも挿絵があって嬉しくなりました。
      少し変わったお話ですよね。
      それでも随所に谷崎だなーって表現があって楽しく読めました。
      2022/11/12
    • ☆ベルガモット☆さん
      傍らに珈琲を。さん、コメントありがとうございます!
      おお、もうすでに読んでらっしゃったですかっ
      バーコードを読ませるとか、ブグログアプリ使用...
      傍らに珈琲を。さん、コメントありがとうございます!
      おお、もうすでに読んでらっしゃったですかっ
      バーコードを読ませるとか、ブグログアプリ使用でしょうか?!
      谷崎らしさ満載でしたね♪
      難しい言葉も妖艶な雰囲気を醸し出すあの独特さ癖になります
      2022/11/12
    • 傍らに珈琲を。さん
      ベルガモットさん、お返事有難う御座います。
      はい、アプリ使ってます♪
      谷崎潤一郎って=エロスなイメージばかりが先行するけど、表現力が素晴らし...
      ベルガモットさん、お返事有難う御座います。
      はい、アプリ使ってます♪
      谷崎潤一郎って=エロスなイメージばかりが先行するけど、表現力が素晴らしいですよね。
      水島爾保布の挿絵があまりにもぴったりで、表紙を眺めるだけでも満たされてしまいます。
      2022/11/12
  • 今年の谷崎潤一郎。美しくてため息が出る。
    てっきり食べられちゃうのかと思ったし(人魚)、公園前の乱痴気騒ぎが異常すぎる(魔術師)。
    挿絵も多くてご褒美的な一冊。

  • かなり良かった。丁装と挿絵が美しいだけでなく、日本語の美しさも際立っていた。「人魚の嘆き」「魔術師」どちらのお話も主人公が美しさに魅せられるお話なので、どこをとっても美しい本、という感じだった。
    谷崎潤一郎は「痴人の愛」を読んだことがあったのだが、文体が古い(固い)割にスルスルと読めるのが特徴だなと思う。
    実際には本の1/3程が註解と解説なのだが大満足だった。

  • SOMPO美術館『大正イマジュリィの世界』に行って、水島爾保布の作品に魅せられて帰りに道に購入。

    初めて谷崎潤一郎を読んでみたら(こんなにも好みの文体だったのか!)とびっくり。美しい文章大好き。
    あとポオの引用が多くて(ラズジョのときに読んだ経験がここで生きるとは!)となるなど。

    解説に『猫と庄造と二人の女』が触れられていて手塚治虫のブラック・ジャックに『猫と庄造と』ってあったのはここからだったのかとちゃんと気づけて嬉しい。

  • 東洋を舞台ながらもエギゾチックに彩られた谷崎潤一郎の耽美小説
    ワイルドのサロメの挿絵師ビアズリーによく似た水島爾保布氏のイラストはストーリーの浮世離れした幻想的な世界を彩るのに一役を買っている
    また作者の作風から欧州コンプレックスを匂わせる描写も少なくなく、そのような当時の欧州への憧憬の世情や傾向を垣間見せる作品としても単なる和製耽美小説以上に重要なキーとなる作品とも言えると思う

  • 人間の想像力も大したものだが、それ以上に傲慢にもできている。

  • 西洋の美への憧れ
    美しい文体と挿絵

  • 2篇とも美しいお伽噺。
    人間と獣、夢と現、美と醜、清と濁、西洋と東洋、男と女、… その交わるところにこそ生まれる美しさを、谷崎が筆舌を尽くして描いている。
    自らが破滅したとしても、覗かずにはいられないその深淵。

    人魚は神のように美しいと同時に、おどろおどろしくて妖怪じみている。
    魔術師をうさんくさいとわかっていながら、魔術にかかりたいと欲望せずにはいられない。
    短編ながら、谷崎ならではの感じを十二分に受け取れる作品だと思いました。

  • なによりも挿絵が好きすぎる。うっとりする

    大正の唯美主義の、ただこの奇妙で不気味でおぞましい世界の美しさに浸るだけが目的の本が好きだ
    これでもかと散りばめられた難読熟語のことごとくが、なにかの美しさを表すことば
    美しさを表すことばってこんなにたくさんあるんだ

    宝物みたいな本だ

  • 男女共に魅了する美しいが書かれていた2作品だった。聞き馴染みのない単語も多いけれど、言葉選びや表現がとても綺麗。

  • これがあまりにもオタクの大好きな水島爾保布挿絵収録の「人魚の嘆き」と「魔術師」…。復刊したくなるオタクの気持ちも分かる。
    何度見てもめっちゃビアズリーなんだよなあ。

  • 初めて谷崎潤一郎の小説を読んだ。
    美しい日本語と文章が印象深い。
    以前読んだ小説のエピグラフに「魔術師」が引用されていて、とても気になり手に取ってみたけれど読んで良かった。

  • まず装丁と挿絵が好みすぎる。

  • 物凄く表現が多彩で頭の中に浮かぶ映像の解像度がどの本よりも高かったと思う。人魚への恋と魔術師への羨望、2つの非日常に魅せられ結末は全く別の方向へ。注解は多いけど、気にならないぐらい続きが気になってページを捲る手が止まらなかった

  • 水島爾保布によるカバー画・口絵・挿絵を収録した『人魚の嘆き・魔術師』(春陽堂、1919年)を文庫で再現したもの。

    若くして莫大な資産を受け継いだ中国の貴公子がオランダ商人から人魚を買う『人魚の嘆き』、美貌の魔術師が操る魔術を見に行く『魔術師』は、どちらも耽美的な作風の大正六年(1917年)の短編。仰々しい漢語が多いのが少々読みづらい。ビアズリー風の水島爾保布の絵は作風にマッチしていて、とくに肉感的な人魚が印象的。巻末の水島爾保布小伝も興味深い。

  • 2作品とも、どこか絵本や民話のようなお話。この世のものとは思えない美しさに魅入られる人間。
    旧仮名文字のまま収録されていて、今はほぼ使われていないような美しい言葉にどきどきする。注釈はあるが自分で意味を予測しながら読むのも楽しい。
    また、水島爾保布の挿絵が美しすぎる。水島氏に関する解説も丁寧なのでとても良い。谷崎はやっぱりおもしろい。

  • 人魚に恋をする貴公子、魔術師に魅せられ半羊神と化す幻想世界に遊ぶ名作。水島爾保布の挿画を口絵まで完全収載。〈註解〉明里千章〈解説〉中井英夫/前田恭二

全20件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1886年(明治19年)〜1965年(昭和40年)。東京・日本橋生まれ。明治末期から昭和中期まで、戦中・戦後の一時期を除き執筆活動を続け、国内外でその作品の芸術性が高い評価を得た。主な作品に「刺青」「痴人の愛」「春琴抄」「細雪」など、傑作を多く残している。

「2024年 『谷崎潤一郎 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

谷崎潤一郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×