新版 嵐の中の北欧 抵抗か中立か服従か (中公文庫 た14-5)

  • 中央公論新社 (2022年9月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784122072619

作品紹介・あらすじ

激動の第二次大戦中、独ソの狭間で、北欧の小国はいかに生き延びたか。大国ロシアに対し勇壮な抗戦を繰り広げたフィンランド、ドイツに屈辱的な譲歩を重ね中立を保ったスウェーデン――その地政学的重要性によって大国に翻弄され続けた北欧四国の苦闘の歴史を、『物語 北欧の歴史』著者がドラマチックに綴る。〈解説〉岡崎久彦〈新版解説〉大木毅

みんなの感想まとめ

激動の第二次世界大戦中、北欧の小国がどのように生き延びたのかを描いた作品は、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの歴史的な選択と苦闘を鮮やかに浮き彫りにします。大国の圧力に対抗しながらも...

感想・レビュー・書評

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  •  現在、北欧諸国は比較的政治が安定しており、平和な印象を思い浮かべるかもしれない。実際、どの国も治安の良さや社会福祉の充実度は世界屈指である。しかし、第二次世界大戦時代において、各国が辿った運命は必ずしも同じではない。奇跡的に参戦せずに済んだ国もあれば、戦争に参加せざるを得ない状況に追い込まれた国もある。本書はそんな北欧の国々の歴史、具体的にはフィンランド、ノルウェー、スウェーデン、そしてデンマークの歴史的経緯に着目して、現代の政治体制に至ったのかを見ていく。
     まずフィンランドの歴史であるが、この国はソ連とフィンランドとの戦争(冬戦争)で、一部の領土割譲で和平協定を締結した歴史がある。これはフィンランドの軍人マンネルヘイムの活躍が重要であった。圧倒的な資源や人口を持つソ連と比べて、フィンランドは小国であり、ゆえにソ連のほうが戦争において優位な立場である。そんな現状を把握したうえで、マンネルヘイムは、国軍が健全な状態である間に、和平交渉を成功させることが残された道だと判断した。国際連盟や隣国があてにならない孤立状態だと理解していたため、ソ連との交渉で一部の領土を割譲せざるを得なかった。しかし、それによって最悪のケースは避けられ、犠牲者をむやみに増やすことなく収束した。一方で、その後フィンランドがナチスドイツと手を組んで、ソ連の戦争に参戦した(継続戦争)経緯ははっきりしないという。
     ノルウェーの場合、1940年ナチスドイツがノルウェーに侵攻して、傀儡政権が立てられた。ナチスドイツによる占領期間、ノルウェー政府を掌握したのがキスリングである。キスリングはナチスドイツに感化された人物で、政権を担った際、王位廃止、議会の解散などを実行して、キスリングに同調しない者は排除された。そんな状況下でも、抵抗運動は活発化しており、ドイツの敗北が決まり、キスリングは逮捕されて死刑が下された。
     北欧諸国で、唯一最後まで中立国を保ったスウェーデンは、本書を読むと偶然が重なって、結果的に中立を保てたことがわかる。それと同時に、中立保持が参戦国と比べて、どれほど孤立な戦いで危ない橋を渡っていたのがわかる。スウェーデンにも、キスリングのような人物は存在したが、キスリングほどの指導力がなかったおかげで、ノルウェーと同じ道を辿らずに済んだ。これもある意味偶然であった。
     最後にデンマークの歴史であるが、この国の場合、ドイツの侵攻からわずか4時間で降伏した。これは本書で言及されているが、デンマークには逃げるべき山岳地帯はなく、土地が平坦であった。また救援の余裕もなかったことから、抵抗できる時間がわずかであった。このように、北欧諸国は別々の運命をたどってきたが、いずれにせよ第2次世界大戦の経験から大国の恐ろしさを痛感し、小国ならではの安全保障を模索したのである。

  • 北欧4ヶ国の第二次大戦前後における身の処し方を追う。大国独ソの狭間にあって、フィンランドはソ連、デンマークはドイツの圧迫を直接受け多くの血が流れたが、スウェーデンとノルウェーは比較的その災いが間接的だったのも、地勢という宿命のなせる業。軍事力の乏しい国が、国を護るとはどういう事なのか、この古い著作が新刊されたのは、似た条件を持つウクライナの戦争を受けたものと思しい。高度な福祉国家で平穏なイメージのある北欧が、生き残りをかけて時に戦火を交え、時に抵抗運動を燃え上がらせ、時に妥協してきた経緯などは、一般には知られざる一面と言え、旅行前などに一読の価値あり。

  • 激動の第二次世界大戦中、大国独ソの狭間で北欧の小国はいかに生き延びたか。その苦闘の歴史をドラマチックに綴る。〈解説〉岡崎久彦〈新版解説〉大木 毅

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著者プロフィール

1928年北海道室蘭市生まれ。中央大学法学部卒。外務省語学留学生(ストックホルム大学)、外務省北欧担当官(この間NHK国際放送〔北欧向け〕顧問)。在スウェーデン、デンマーク大使館一等書記官、宮内庁式部官、駐イスタンブール総領事を歴任。北海道東海大学教授(国際政治および日本外交史)、東海大学教授(北欧政治・外交および北欧社会研究)。この間大阪外国語大学、立教大学非常勤講師。1999年退任。現在、北欧文化協会理事長。
〈主な著書〉
『白夜の国々』(中公新書 1985)、『物語 北欧の歴史』(中公新書 1993)、『北欧の外交』(東海大学出版会 1998)、『北欧を知るための43章』(明石書店 2001)、『福祉国家スウェーデンの闘い』(中公新書 2001)、『物語スウェーデン史』(新評論 2003)、『バイキングと北欧神話』(明石書店 2005)ほか多数。

「2006年 『北欧悲史 悲劇の国王、女王、王妃の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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