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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784122073517
作品紹介・あらすじ
それぞれの東京、それぞれの生活、そこにドラマがある。青春・貧乏・出会いと別れ。地方出身の多くの作家にとって、創作のモチーフとなった「上京」、そして作品の磁場となった「東京」。上京者によって紡がれる多彩な十一篇。
【収録作品】
稲見一良 終着駅
林芙美子 耳輪のついた馬
生方敏郎 東京初上り(抄)
司 修 赤羽モンマルトル
坂口安吾 二十一
浅川マキ プロデューサー
富岡多恵子 十二社の瀧
重松 清 東京に門前払いをくらった彼女のために
丸谷才一 だらだら坂
梶井基次郎 橡の花
佐藤泰志 草の響き
感想・レビュー・書評
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東京。その地は明治以降、進学や就職、そして観光、あるいは確たる当てはなくとも都に行って職を探したい、とにかく田舎の家を出たいなど、いろいろな思いで上京する者たちが集まるところだった。また、それらの者たちが住む下宿やアパートでは、見ず知らずの者たちが暮らし、生活を共にすることとなった。そんな上京者たちのことを描いた小説を、編者の岡崎氏は“上京小説”と名付けて、これまで何冊かのアンソロジーを出してきた。本書もそんな一冊。
収録作は次のとおり。
〇生方敏郎「東京初上り」~大正11年開催の「平和記念東京博覧会」を見ようと出てきた家族連れ。甥の住んでいる護国寺まで行くのも一苦労。当時の道路事情や住家の様子が面白く描かれている。
〇稲見一良「終着駅」~東京駅の数少なくなった赤帽。実直に仕事をしていた人間に突然あることが起こる。一体この後どんな展開になるのか、すごく気になってしまった。
〇林芙美子「耳輪のついた馬」~複雑な家庭環境で育った主人公の八汐(やしお)の子ども時代が描かれる。そして東京に出てくるが頼る人もいなければ仕事もみつからない。それでも「どうにかなろうたい」に、ホッとさせられる。
〇司修「赤羽モンマルトル」~かつて住んでいた赤羽を20年振りに訪れた作者。住んでいたアパート巴里館と、そこに住んでいた師匠の「うんの先生」始めおかしな住人たち。めちゃめちゃな中に死の翳が覆う。
〇坂口安十一」~神経衰弱になってしまった作者と精神病院に入院している友人との不思議なやり取り。安吾にはこんな作品もあるのか。
〇浅川マキ「プロデューサー」~シンガー浅川マキの小説。北陸の漁師町から出てきた彼女の歌手デビュー当初、彼女とそのプロデューサーとのかかわりが描かれる。彼女が何を考えているのか良く分からないものの、不思議な緊張感に包まれた一篇。
〇富岡多恵子「十二杜の瀧」~大阪から出てきて初めて住んだ新宿十二社のシモタ屋。そこに住んでいた浪曲師夫婦のおかしくも哀しい生活が描かれる。
〇重松清「東京に門前払いをくらった彼女のために」~時代は新しくなって1981年。東京の大学を目指し彼女とともに受験で出てきた主人公は、参宮橋近くのユースホステルに泊まる。しかし彼女は受験に失敗し東京に住めないことが確定。楽しく原宿を遊ぶはずだったが、別れの思いを抱えて彼女は東京駅へ。
〇丸谷才一「だらだら坂」~戦争が終わって5年目、東京での予備校通いのためアパートを探しに渋谷道元坂の不動産屋を見ていた主人公が金を出せと不良に絡まれてしまう。喧嘩になり、もしかしたら人を殺してしまったかもしれない状況に置かれた主人公は現場を立ち去るのであったが、その道すがら誰も自分のことを気にかけていない都会というものに驚く、その辺りの心理が良く書かれている。
〇梶井基次郎「橡の花」~梶井らしく、程よい緊張感と濃密な香りを感じる。
〇佐藤泰泰志「草の響き」~文選の作業場で働いていた主人公は神経を病んでしまい自律神経失調症と診断され、仕事を休み、雑念を入れず、ただ走ることを勧められる。毎日、走り、走り、走っていくうちに、走ること自体が楽しくなり、目的化する。その走る姿と主人公の気持ちを描く文章のリズムが心地よい。
こうして東京を巡る作品を読んでいると、やはり東京が特権的な地であることを痛感する。
今でも上京小説は書かれているのだろうが、隣りに住んでいる人がどんな人間なのか分からなくなっている現代では、下宿小説、アパート小説のようなものは書きにくくなっているのだろうな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
それぞれの東京、それぞれの生活、そこにはドラマがある。青春・貧乏・出会いと別れ。地方出身の作家によって紡がれた、「上京」をめぐる多彩な十一篇。
著者プロフィール
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