52ヘルツのクジラたち (中公文庫 ま 55-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 2426
感想 : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122073708

作品紹介・あらすじ

2021年本屋大賞第1位。待望の文庫化。

52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一匹だけのクジラ。何も届かない、何も届けられない。そ
のためこの世で一番孤独だと言われている。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる――。
〈解説〉内田剛

感想・レビュー・書評

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  • 以前に単行本でも読んでたので、今回の文庫は再読になりますが、いつ読んでも感動する素晴らしい作品で今回も涙してしまいました。余談ですが、新幹線の車内で読んでたので、周りの人からは若干白い目で見られました。笑

    主人公は過去のトラウマを引きづるキコ。物語はキコが大分の辺鄙な村へと引っ越してくる場面から始まります。過去の贖罪に苛まれながら新たな生活を送る中で、1人の少年と出会います。その子は喋ることも出来ず、児童虐待を受けていました。そして少年の境遇に自分の境遇を重ねたキコは、徐々に少年と心を通わしていくストーリー。

    この物語は、主人公と少年の出会い、虐待から救われた主人公の過去と新たな生活、そして主人公の犯した罪、少年と主人公の絆の4つのシーンに大きく分けられ、各ポイントに泣けるポイントがあって、特にアンさんとのシーンは2度目なのでもう感慨深いものがありました。

    複雑化する現代で、救いの声をあげるのはもちろん大事ですが、その声を掬い上げることも等しく大事であるということが伝わる心優しい作品でした。

  • ☆5

    文庫化を楽しみにしていた作品。
    読み始めると、続きが気になって…一気読みしてしまいました!
    辛くて悲しいお話ではあったのですが、貴瑚と52の幸せを願って読み進めました。

    作品に出てくる「魂の番」という言葉が、とても印象に残りました。
    そして大切な人の52ヘルツの声は、絶対に聞き逃さないようにしたいと強く思いました。

    読んで良かったと思える、素晴らしい作品でした❁⃘*.゚

  • 届かないその声はなんのために、誰のために鳴き続けるのか・・・
    親からの愛情を知らない貴瑚とムシが紡ぐ愛の物語。
    読んでいる時は苦しくて、哀しくて、悔しくて、胸が苦しかったです。
    そんな中でも貴瑚はアンさん、ムシは貴瑚と出会います。
    自分の人生を変えるきっかけをくれる人に出会えるなんて早々ありませんが、
    ちょっとしたことでも人から受ける影響・与える影響は大小関係なくその人の世界を広げ、新しい自分にも出会えるように思います。
    終盤はボロボロ泣きながら読んで、前半とはまた違う意味で胸がいっぱいでした。
    人の心を殺すの人だけれど、人の心を救うのもまた人なんだなと、
    貴瑚と愛、二人を取り巻く周りの人たちを見て感じました。
    誰かに自分の声を受け入れてもらえたとき、受け入れてくれた人のことを大切にしなくちゃいけない。
    そしていつか自分も誰かの声を受け入れてあげられる人になれるように。
    どうか貴瑚と愛がこの先の人生からは幸せに過ごせますように・・・!!

  • 「52ヘルツのクジラ」とは他のクジラ達には聞こえない特別な周波数で歌を歌う世界で一頭しかいないクジラのことだという。他のクジラ達が近くにいてもその存在を知ることもなく、また己の存在を知られることもなく、究極の孤独を感じているのだという。実際にそのようなクジラがいるのかどうかは知らないが、今を生きる人々の孤独の象徴であり、心や身体が傷付きもがき苦しんでいる人々の物語だ。私達はマイノリティではなく多数派を占めるタイプの人間だと思いがちだが、実際にはこの物語の主人公や登場人物達と同じような孤独を抱えた「52ヘルツ」のクジラなのではないのだろうか。その「52ヘルツ」の叫び声や声なき声は誰にも届かない、その寂しさや辛さに打ちひしがれてるのではないだろうか。そんな気にさせられた。そして作者はこの物語の中で『いまこのとき、世界中にいる52ヘルツのクジラたちに向かって。 どうか、その声が誰かに届きますように。 優しく受け止めてもらえますように。』と祈りを込めて綴っているのではないだろか。

  • 2021年の本屋大賞受賞作品が、文庫化したので購読。ネグレクト、ジェンダー、ヤングケアラーと、軽くは扱えないトピックが多いわりに読みやすかった。本屋大賞らしい作品、若い人の目にたくさん触れると良いと思う。

  • その声は届かない。孤独の中で鳴き続けるクジラ。届くのか届かないのかわからない中で鳴き続ける。
    受けとる側が繊細にその声に耳を傾けたとき、その声は届くのかも知れない。

    テンポもよく重めなストーリーにしてはサクサク読み進められ相関図もいい。
    裏表紙にも気づいて良かった。

  • きっと私にしか聴こえない心の声があり私の何処かの誰かが受け止めてくれる心の叫びがあるのだと思うとこの広い海原を泳いで行く恐怖も少し和らぐ様に思います。

  • 感動した。最初から最後まで一気読みでした。
    52ヘルツのくじら。
    私も子供の頃からずっと52ヘルツのくじらです。気持ちが分かりすぎました。
    今年1番感動した小説です。
    個人的に表紙のどこか寂しげで儚いイラストと深いブルーもお気に入りです。

  • 文庫待ってました!!
    辛くて痛くて哀しくて優しい物語。
    誰にも届かないのに、誰かを求めて鳴き続ける52ヘルツのクジラたち。
    声をあげていればきっと誰かは見つけてくれる。
    これからの2人が前途洋々でありますように。

  • 本を読める時間が愛おしくてたまらなくなる1冊。
    隙間時間にスマホじゃなくてこの本を手に取る。

    ぐっと引き込まれてぐさっとくる。かなりしんどい背景や出来事があるけれど、あるのに、読んだ後は温かいものやすっきりしたものを感じる。
    優しくなりたいし強くなりたいし、その場限りじゃなくてその人のことを思ってきついことも言える人になりたい。
    村中君や美晴ちゃんみたいになりたい。

    日常で「自分がこうやってたら・ああいわなかったらこんなことにはならなかったかな」、とか、「お世話になったし我慢しなきゃいけなかったな」、とか思って苦しくなることがあるけど、そう思うこと自体はきっと全部がダメではないのだろうけど、そうやって自分だけや自分が主に悪いみたいな考えで?呪いで?自分を閉じ込める?思考停止するのはなんか違う、自分にもそういうとこあるなあ。

    表紙もタイトルも可愛い本。だけどなかなかヘビーな内容。だけどやっぱり優しいがあふれている本。

    町田そのこさんのほかの本も読んでみようと思う。

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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