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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784122074101
作品紹介・あらすじ
「解体新書」の翻訳を牽引した前野良沢(『冬の鷹』)、日本最初の女性産科医・楠本いね(『ふぉん・しいほるとの娘』)、脚気病の治療法を開発した高木兼寛(『白い航跡』)……。江戸中期から明治初期に現れた、日本近代医学の先駆者たち十二人の苦闘の生涯を描く。著者による医家をテーマにした長編作品群の原点であり要となる短編集。巻末にエッセイ「『日本医家伝』と岩本さん」を新たに収録。
みんなの感想まとめ
日本の近代医学の先駆者たちの苦闘と功績を描いた短編集で、江戸中期から明治初期にかけて活躍した12人の医家の生涯が紹介されています。それぞれの医家の個性や業績が簡潔にまとめられ、特に女性医師の苦難や、時...
感想・レビュー・書評
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江戸時代中期から明治初期にかけて、日本の近代医学に貢献した12名の医家たち。それぞれの人となりや功績を、よくこれだけ簡潔にまとめることができたなと、感心しきりな短篇集です。
変わりゆく時代に翻弄されながら、流入してくる西洋医学に対する受容と反発。そうした混沌とした時代に、克己して人を救いたい一心で生涯を捧げた人もいれば、金銭や栄誉を欲して身を滅ぼす人など、褒めるばかりでないところが著者らしいところです。
また、女性蔑視の風潮著しい時代に苦難な生涯を送った二名の女性、その苦労の片鱗を知ることができて読んで良かったと思いました。
あと、医家ではないですが著者の『間宮林蔵』に、短篇中に書かれている「シーボルト事件」について詳しく書かれています。より知りたい場合は、こちらもおすすめ。
以下は、12人の医家の概略と、『』内は後に著者が長編として発表した小説のタイトルです。深掘りしたい場合は、参考にしてください。
中でも、笠原良策を取り上げた『雪の花』は、今読んでおきたい名作。170年以上も前に私財を投げ打ってまで、人々をウィルスから守ろうとした気概に心を打たれます。おすすめです。
山脇東洋:日本で初めて腑分を実見した医家
前野良沢:「解体新書」翻訳を進めた中津藩の藩医
小説『冬の鷹』
伊東玄朴:江戸屈指のオランダ医家
土生玄碩:新しい手術を積極的に推し進めた眼科医
楠本いね:シーボルトの娘で日本初の女性産科医
小説『ふぉん・しーほるとの娘』
中川五郎治:日本における種痘法の祖
小説『北天の星』
笠原良策:種痘の普及につとめた福井の医家
小説『雪の花』
松本良順:初代陸軍医総監
小説『暁の旅人』
相良知安:日本にドイツ医学を定着させた医家
荻野ぎん:日本最初の女医
高木兼寛:脚気の治療法を実証的に開発した功績
小説『白い航跡』
秦佐八郎:梅毒の特効薬を開発した細菌学者 -
日本の近代医学発展に貢献した12人の医家たちの生涯と苦闘を描く。
一章ごとに伝記1冊分の重み。
近代医学とはつまり、鎖国をしていた日本にもたらされた西洋医学で、その始まりはやはり徳川吉宗が蘭学を取り入れることに対して寛容だったところに始まるのではないか。
そして、何事も、新しいことを始めようとすると反発を受ける。
薬を飲ませるだけだった医術から、解剖、外科手術となるとまず体に刃物を入れることへの抵抗。
種痘となると、病原菌をわざわざ体に入れる事への恐怖。
それはまあ、仕方がない。
あとは漫画やドラマなどでも描かれている、これまで医者として働いてきた漢方医学者たちからの妨害である。
ほぼ年代順に書かれており、序盤はシーボルトの関係が多い。
シーボルトは日本の近代医学にとって重要人物だったことがうかがえるが、例の事件に連座した人物も多い。
こうして日本の西洋医学の始まりは蘭学だったが、幕末、開国、明治と進む中、蘭学は古くなり、イギリスやドイツの医学が入ってくる。
十二人は非常な努力をして新しい医学に挑み、道を開いた。
けれど、その偉業ののち、
手柄を金に変えようと思う人、
発見を独占しようとする人、
人を信用できず、業界に居られなくなる人、
晩年は極貧の生活を送ったり、奇人変人もあり、
偉大な功績を残した人が必ずしも人格的に優れていたわけではなかったようだ。
道を切り開いたところで力尽きてしまったのかもしれない。
個人的に、特に苦難の人という印象が残るのは、最初の女医、荻野ぎんだった。
「女だから」という壁にここまで苦しめられた人がいるだろうか。
彼女の切り開いた道によって、その後、女医としての栄光をつかんだものは多くある。
三武将のたとえ話にもあるが、新しい世界を作るためには、道を拓くもの、ならすもの、その道を歩むもの、と人は天から与えられた役割があるのかもしれない -
知っていた人や、初めて聞く人や、地元の偉人も取り上げられているうえに、それぞれの人たちには、いろいろなしがらみや、関わりがあったとは!
とても面白く読みました。
この作品から生まれた長編作品も読みたくなりました。 -
前野良沢や笠原良策の長編を既に読んでいたので、ここから発展したのかと聖地巡礼のような気持ちになって読めた。
萩野ぎんの苦難と苦闘を思う。
激動の時代に、持てる能力を最大限発揮して生きた医家の一人ひとりに敬意。
日本のカルテがドイツ語なのも、なるほどーと。 -
江戸中期から明治初期に近代医学を切り開いた12人の医師の短編集。
12の短編だが、時系列的に話がどこか繋がっていて面白かった。「解体新書」を翻訳した杉田玄白は実はお金に執着がある人で、前野良沢という人がこの翻訳本の中心人物だったと言う事を知り、教わった史実の裏話に驚いた。
眼科医の土生玄碩が印象深かった。不真面目な眼医者だったが、馬の目の膿を取る施術に刺激を受け、人の眼の治療に行い白内障をはじめ多くの眼病者を治療し名声をあげた。
その彼がシーボルト事件に繋がるとは…
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歴史に埋もれてしまうような江戸、明治の医者の戦いがここにある。吉村昭の小説は、やはり勉強になる。
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江戸〜明治にかけて足跡を残した12人の医家を描いているが、時代の制約を著しく受ける中、医学の向上への情熱と強烈な個性を有する人物が多い。
分けても、女性であるが故に、更なる苦労を強いられた、楠本いねと荻野ぎんには心打たれる。 -
医師に関する吉村昭作品のダイジェスト、といったところ。
1冊を1つの大きな作品として読むのには軽すぎるが、余暇に少しずつ読み進めるにはちょうどいい印象。
作中の日本初の女性医師、荻野ぎんの粘り強さには尊敬の念を持った。何度も何度も挫折したが、その度に這い上がった姿と、そのようにしてせっかく得た医師資格でありながら、愛のために全てを捨てた姿には人間味を感じた。 -
前野良沢、楠本いね、高木兼寛、荻野ぎん……日本近代医学の先駆者十二人の苦闘の生涯を描く。著者の医家を主題にした長編群の原点であり要となる短編集。
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