文明の生態史観 増補新版 (中公文庫 う15-16)

  • 中央公論新社 (2023年10月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784122074262

作品紹介・あらすじ

一九五五年、京都大学の学術探検隊に同行し、西アジア諸国を歴訪した著者。その体験から生まれた視点により、対立ではなく平行進化として東西の近代化を捉え、〈中洋〉を提唱する。六〇年代にかけての東南アジア、アフリカ各国訪問を経て、比較宗教論へと連なる論考の集成に、著者の到達点を示す「海と日本文明」(二〇〇〇年)を増補する。

〈解説〉谷泰

みんなの感想まとめ

この作品は、文明の発展を「第一地域」と「第二地域」に分けて考察する独自の視点を提供します。著者は、アジアや欧州、北アフリカを対象に、地域ごとの文明の特性や発展の背景を探求し、特に日本文明と西欧文明の平...

感想・レビュー・書評

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  • 『文明の生態史観』|感想・レビュー - 読書メーター
    https://bookmeter.com/books/564777

    「文明の生態史観」と東アジア共同体|日本総研(RIM 環太平洋ビジネス情報 2006年01月号Vol.6 No.20)
    https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=4767

    文明の生態史観ほか -梅棹忠夫 著 白石隆 解説|全集・その他|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/zenshu/2002/11/160041.html

    文明の生態史観 -梅棹忠夫 著|文庫|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/bunko/2023/10/207426.html

  • 考察の対象をアジア、欧州、北アフリカに限定し、西欧と日本の東西両端を第一地域、それ以外を第二地域として世界史を説明した本です。

    第二地域は、文明の発祥地だが、常に乾燥地帯の遊牧民からの侵攻を受けて発展が阻害されるが、第一地域は、優れた文明が伝播する程度に第二地域に隣接する一方で、遊牧民の侵攻から逃れられる程度に第二地域から離れているため、発展した。。大まかにまとめるとこんな感じの理論と理解しています。さらに、広大な第二世界をインド、中国、ロシア、イスラム•地中海、東南アジア、東欧に区分して、それぞれの特徴を論じています。

    元々、この本を読む前に著者の「文明の生態史観」という考えを知り、それを詳しく知りたいと本書を読みましたが、全体的にエッセイ的なテイストであまり体系的に生態史観が説明されておらず、少し物足りませんでした。

    理論そのものについては、数十年前の日本でやりがちだった、西欧文明に羨望を抱く一方で他のアジア諸国を下に見て、「日本はアジアの中でも特別で西欧に近い」という論理になっていないか注意しながら読んでいましたが、そういう理論ではなく、新しい観点から世界史の整理を試みた理論だと思います。ただ、「インドや東南アジアって破壊的な影響を遊牧民から受けたっけ」など、理論の骨子となる部分に疑問がありますし、いくら何でも第一地域と第二地域の二元論で語るのは大雑把すぎる気もします。

    正確かどうか、或いは有用かどうかは私の知識では分かりませんが、総じて言うと、非常に面白い考え方だと思いますし、何より著者自身が考えてこうした新しい視点を考案できるのはすごいと思います。

  • 初出は1956年だが、古さは皆無。著者の先見性には戦慄を覚えるほど。
    優れた理論は現実を切り取るというが、本書の「第一地域と第二地域」モデルはまさにそれ。何度でも読み返したい。

  • 比較文明学者(敢えてこう呼ぶ)の梅棹忠夫博士による表題作を含む十二の論考。彼の主張でユニークなのはユーラシア大陸を間の「乾燥地帯」で第一地域と第二地域に分け、封建主義から自己発展的という意味合いに置いて日本文明と西欧文明を同一視する「平行進化説」という考え方である。
    また、本書ではその思想の変遷や深化が彼自身のフィールドワークを通して高度化していくのが読み取れる点が興味深い。インドを西洋でもなく東洋でもなく「中洋」と称するに至る体験は随筆としても面白い。
    世界の文明を構造で捉える説はフランシス・フクヤマ氏やフランシス・フクヤマ氏など幾つかあり、現代となっては梅棹氏の説はややシンプル過ぎるきらいはあるが、日本初の小論として切り口の鋭い分析として教養になる一冊。

  • 実は先に「文明の生態史観はいま」の方を途中まで読んでいたが、これは対談であってやはり先に「文明の生態史観」を読まないと分からないと思った。それでこの本を読み出したのだが、全く今読んでも現在を体現しているように感じる。それは最近読んだ「地球史マップ」というビジュアルな分厚い本と、もう一つ、「小麦の地政学」。その中に先生の言われている楕円形の地図がでている。

    「ひずみなき世界の姿を」で全地球的な課題について比較文明論を考えることはできるはずだ、と先生は言われている。

    50年経ってこれほど繋がったこの本と地球史マップ はありえない、と感動した。

    第1地域と第2地域の知識人における政治的意識と政治的実戦のあたりも大変興味をもった。

    最後の比較宗教論は難しいかったけれども免疫との展開の仕方には、こんな方法もあるのかと目から鱗だ。
    実際に世界を歩いて生活や環境を見てきた人には敵わない。大いに世界を歩いて観ることと今の若い人にこの本を勧めたい。

  • 中公文庫の文明の生態史観〔改版〕を以前に読んでいるので、改めて気がついた感想を書いておく

    「生態史観からみた日本」で語られている日本の知識人たちについての考察が中々に面白かった。
    そのような知識人が世界政治、国際関係にあまり関心がなく、日本国内の政治に特別の関心があるという考察は令和の世においても腑に落ちる内容だった。

  • 配置場所・貸出状況はこちらからご確認ください↓
    https://opac.ao.omu.ac.jp/webopac/BB61717426

  • 世界にはさまざまな文明がある。この多様性がどのようにして形成されたのかは、歴史学や比較社会学などの学問の関心の的である。1950年代に、この議論に生態学の視点から光を当て、「文明の生態史観」を提唱したのが、本書に収められた論考である。

    生態学では、生物の個体の種類やその誕生から死にいたる過程などを見るのではなく、ある環境の中に生息するさまざまな生物種からなる多数の個体を、ひとつの群落として捉え、どのような環境要因によってその群落が形成されるのか、環境が異なると群落の構成がどのように変わるのかを、比較を通じて研究していく。そういった意味では、現在のありようを現在の環境から説明する、同時代的な視点に立った理論である。筆者は、この生態学の考え方を文明の理論に応用した。

    筆者の議論は、まず大胆な地域区分から始まる。ユーラシア大陸の両端に日本と西ヨーロッパという二つの地域を切り取り、それらを「第一地域」と呼ぶ。そしてそれらに挟まれた広大な大陸中央部を「第二地域」と呼ぶ。第一地域は辺境としてスタートし、第二地域に誕生した文明から学びながら文明を立ち上げたが、その後は封建制やブルジョア革命を経て、資本主義社会を構築している。第二地域は古代文明を発達させたものの、その後は専制主義の帝国と度重なる騎馬民族による蹂躙を繰り返し、第一地域のような近代化はまだ達成されていない。

    このような違いを生む環境要因として、第一地域は比較的湿潤で熱帯雨林とは異なる森林と草地が広がっていることや、地理的に辺境であったことから第二地域を蹂躙した騎馬民族による破壊を免れたことなどを要因として挙げている。一方の第二地域はその中央部を砂漠地帯が横切り、ステップや草原が広がる環境にある。これらは古代文明を生むには適していたが、外界からの絶えざる侵入により、安定した封建制や近代化の前提となる資本蓄積を行うことができなかったことが、現在の状態に繋がっているという。


    さらに生態学においては、環境が一定程度変化すると生態が変化することから、その遷移(サクセッション)の様子を記述することは可能である。このような視点を文明の生態史観に応用することで、それぞれの地域の文明がどのような環境変化を受けてどのように変化したのかということを考察することもできる。

    このような視点は、文明のあり方をその時点での環境との関係性で捉えようとするという点で、ひとつの文明の誕生から消滅までを個体論の観点で捉えようとするトインビーの歴史論とは異なる。また、環境の変化の方向性によって文明の遷移のあり方も変わってくると考えている点で、ひとつの歴史理論の中にさまざまな文明を位置づける、マルクスの発展段階論とも異なる。


    各文明の「生態」やその変化の過程はそれぞれ平行して進んでおり、そこには固定的な「中心/周縁」も、「先進/後進」もない。文明の研究にこのような相対的で比較論に立脚した視点を持ち込んだことが、文明の生態史観の最も大きな貢献だったのであろうと思う。

    筆者の視点は環境との応答により文明のあり方が決まるという考え方に立脚しており、進化や発展といった概念とは距離を置いている。この考え方をもって世界の各文明を眺めると、文明は必然的に近代化へと向かうとは言えないということになる。

    歴史上も多くの文明が「衰退」し「消滅」しているが、これらも外部からの侵略と破壊によるものだけではなく、環境の変化に対する応答として「解消」されていったものもあるのではないかと思う。さらには、現代における各地域の今後の政治や経済、社会の変化を考える上でも、必ずしも西欧やアメリカのようなグローバル化した資本主義社会に向かっていくのではなく、多様な文明の「生態」が併存する世界の中で今後も我々は生きていくと考えた方が妥当であるように思える。

    また、グローバル化の趨勢も、時代と共にその強度が変化していく。このような変化は、群落に外界から与えられる影響の変化として、世界各地の文明のあり方に変化をもたらすだろう。歴史上も、大航海時代や帝国主義、そして現代の交通機関の発達などによりグローバル化の強度が高まった時期には、それぞれの地域で環境に適応していた文明にも大きな変化があった。文明の変化が環境の変化に対する応答であるのであれば、グローバル化の強度が与える影響も、生態学の視点からよりよく見えてくるだろう。

    ユーラシア大陸を大胆に「第一地域」と「第二地域」の2つに区分するなど、理論の大きな方向性を示す段階での議論ではあったが、文明の研究に自然科学的かつ比較論的な視点を与えてくれる本書は、文明のあり方を考える上でさまざまな可能性を考えさせてくれる意義深い本であると思う。

  • 【全体の主張】

    人類の文明の発展には「生態(自然環境)」と「社会構造」の相互作用がある。
    特に、ユーラシア大陸を東西に分けて、「東の世界」と「西の世界」の違いを軸に文明の成り立ちを分析します。



    【文明の分類】

    梅棹は、ユーラシア大陸を中心に世界を以下の2つに分けて考えます。

    1. 第一地域(西ユーラシア)
    • 中心:ヨーロッパ・中東
    • 特徴:牧畜を基盤とした移動型の生活文化 → 激しい宗教対立(例:キリスト教 vs イスラム教)
    • 文明:発展は早かったが、宗教や階級社会に縛られがち

    2. 第二地域(東ユーラシア)
    • 中心:日本・中国・東南アジア
    • 特徴:稲作を基盤とした定住型文化 → 比較的平和で柔軟な文化(例:仏教受容)
    • 文明:発展は遅れたが、近代化に成功しやすい素地がある



    【文明発展の2段階モデル】

    文明の発展は以下のように進むと説きます。
    1. 第一段階:文字文明の確立(古代)
    • 文書による記録、法制度、国家の成立
    2. 第二段階:情報文明の確立(近代)
    • 印刷技術、通信、教育普及 → 知識社会・民主主義の土台に

    → 日本は、この**「第二段階への飛躍」に成功した例外的な文明**である、と位置づけられています。



    【日本文明の特異性】
    • 西洋を模倣したわけではなく、独自の価値観と文化で近代化を達成した
    • 明治維新〜高度成長期の近代化は、**「東の文明が西を追い越す転換点」**になりうる



    【本書の意義】
    • 近代西洋中心の「世界史観」や「進化論的歴史観」を批判
    • 日本を含むアジアの文明に新しい誇りと視座を与える
    • 現代のSDGsやポスト成長社会を考える上でも示唆に富む

  • 東2法経図・6F指定:204A/U73b/Ishii

  • 日本と西ヨーロッパを第一地域、それ以外の旧世界を第二地域とする考え方、また第一地域において早く近代化が進んだ背景は興味深かった。一方で、その内容はYouTubeである程度知っており、それ以外ど新たにおっ!と思う内容に出会えなかったのが残念。また読み返したい

  • 東西の対立的座標軸で捉えられてきた世界史に生態学の視点を導入した比較文明論の名著。著者の到達点を示す「海と日本文明」を増補。〈解説〉谷 泰

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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