無意味なものと不気味なもの (中公文庫 か89-2)

  • 中央公論新社 (2024年5月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784122075146

作品紹介・あらすじ

「あれはいったい何だったのだろう――?」

過去の人生において遭遇した、明確な恐怖とは言いがたい、けれど忘れることのできない記憶や小説。
大ヒット作『恐怖の正体』(中公新書)で話題を呼んだ作家・精神科医である著者が、精神の根源に触れるそうした〈恐怖寸前〉の〈無意味で不気味なものたち〉に惹かれて渉猟した、異色の文学エッセイにして読書案内。

刊行以来、ホラーや幻想文学の実作者を中心に、多くの読者から絶賛を得てきた名著に、書き下ろしの新章を増補した新版。
誰もが体験しながら、ふだんの日常においては意識の底に沈められがちな〈あれ〉を求めて……読めばきっと、あなたも語りたくなる。

推薦・澤村伊智
解説・朝宮運河

目次
文庫版のためのまえがき
まえがき

1 隠蔽された顔――N・ホーソーン『牧師の黒のベール』
2 本物そっくり――河野多惠子『半所有者』
3 糞と翼――パトリック・マグラア『長靴の物語』
4 姿勢と連想――古井由吉『仁摩』
5 受話器を握る怪物――H・P・ラヴクラフト『ランドルフ・カーターの陳述』
6 孤独な日々――日影丈吉『旅は道づれ』
7 南洋の郵便配達夫――J・M・スコット『人魚とビスケット』
8 描きかけの風景画――藤枝静男『風景小説』
9 墜落する人――レイ・ブラッドベリ『目かくし運転』
10 救われたい気持ち――高井有一『夜の音』
11 果てしない日々――クレイ・レイノルズ『消えた娘』
12 世界の構造――富岡多惠子『遠い空』
13 グロテスク考――カースン・マッカラーズ『黄金の眼に映るもの』
14 うふふ。――車谷長吉『忌中』
16 昆虫的――内田百閒『殺生』+ブルーノ・シュルツ『父の最後の逃亡』
16 入り込んでくる人――庄野潤三『黒い牧師』

あとがき

解説 朝宮運河

〈本書は、無意味なものと不気味なものにまつわる探求報告であり、「あれはいったい何だったのだろう」という呟きの執拗な反復である。もし読者諸氏にも「あれはいったい何だったのだろう」との文言が病原菌のように感染すれば、著者としては嬉しい。寂しさがまぎれ、この世界に生を営んでいくことの不安を、幾分なりとも忘れさせてくれそうだからである。……〉(「まえがき」より)

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

無意味で不気味なものに焦点を当てたこの作品は、著者の個人的な体験を通じて、私たちが恐れるものや不気味さについて深く考察します。精神科医としての視点から、さまざまな小説を紹介しながら、作品の魅力を引き出...

感想・レビュー・書評

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  • 無意味なものと不気味なもの 春日武彦|潮田クロ(2023年9月15日)
    https://note.com/ttroom371/n/n3da204d5f16e

    『無意味なものと不気味なもの』春日武彦 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163688701

    春日武彦さん「恐怖の正体」インタビュー 人の心の根源的な謎に迫る|好書好日(2023.11.18)
    https://book.asahi.com/article/15059380

    無意味なものと不気味なもの -春日武彦 著|文庫|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/bunko/2024/05/207514.html
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    (yamanedoさん)本の やまね洞から

  • 奇妙で気味の悪い小説がある。この本ではそのような小説を自身の体験と重ねて語る。作品も気になるが精神科医としてのエッセイも面白くすらすらと読めた。私たちが恐れるもの、不気味だと思うものはなんなのだろうか。小説で知る事は出来るのだろうか。

  • 感想
    意味を与えられない。人は物怖じしてしまう。だから無理に解釈しようとする。そこにただ存在しているだけ。その事実は受け入れられない。

  • 精神科医の著者が読み、明確な“恐怖”以前の不穏さや不気味さ、不安、グロテスクさを覚えた各種文学作品17編を題材に、自身の体験と随想を加えつつ人間精神の不可解さと闇を覗き込む異貌の“恐怖”文学論。

    全部で17編の小説が採り上げられ(文庫版で1編が新録)ているが、怪奇幻想色が濃厚なのはホーソーン、パトリック・.マグラア、HPLそれにブルーノ・シュルツの作品くらいで、後は純文学系の作品が占める(ブラッドベリ「目かくし運転」も彼の他作品に比べると幻想味は薄い)。が、どの作品も(紹介される内容だけでも)何かしら不穏さや不安、不気味さを覚えるもので、時に人間とはかくも醜悪なまでにグロテスクな存在ないしそのような側面を持つものなのか―と気が滅入ってくるものすらある。その辺りは恐怖という食材を“エンターテイメント”という一品料理に仕上げず、生の素材のまま―譬えるならば生魚の腹を割いただけで内蔵を取り除かずに皿に盛る如く―“人間の様々な側面、内面”を表現、提示しようとする純文学だから、とも言えるのか(純文学ってそういうものか?)。

    どの作品も概要は勿論、あらすじから結末までが書かれているのでブックガイドとしては些か不向きだし(そんな意図でそもそも書いていないだろうが)、ネタバレを避けたい向きは目次で事前にチェックが必須かと。ちなみに自分はホーソーン「牧師の黒いベール」とラヴクラフト「ランドルフ・カーターの陳述」しか既読がなかったが、その他の作品にしても本書の記述だけでお腹いっぱい気味で、個々の作品を新たに読んでみたいという気には……なれず。

  • 2025.11.

  • 作者様の読書量が半端ない事がわかる本。


    評論でも学術書でもないので個人的な感想が合う人と合わない人で評価が分かれそう。

    登場作品のあらすじが説明されてる。
    どれも興味を惹かれる内容で、読後すぐに登場作品をリサーチしてしまった。

    間違いなく自身の読本視野は広がった。

  • ここに選ばれているすべての作品を絶賛しているわけではないのが読んでいて面白いところ。
    わざわざ凡作を紹介する意義があるのか?と考えると、そこはまた微妙だけれども、著者が個人的に刺さった作品なので、我々読者が読んで感心できるかはまた別の話、ということで。
    でも、人肉食の何が問題なの?餓死しそうだったら私躊躇なく食べるよとか、宮沢賢治の作品を一つもいいとは思わないとか、著者のとんがり具合が大変好ましいので、読んでよかった。

  • ・精神科医の作者が書いた書評のようなもの。

    ・「不用意なことを言うと現実になる」って言うのはわかる。神様みたいなものがいるとしたら、そういう言動にこそ罰を与える気がする。

    ・筆者は昆虫が根本的に嫌いみたい。私は昆虫好き寄りだけど、自分の領域に入ってきた時はその限りではない。

    ・タイトルが一番印象的な本だった。最後の解説が一番読みやすかった。内田百閒の短編は読んでいようかな。

  • なるほどそうきたか。

    怖いとか不気味とか感じる寸前の「違和感」を味わう一冊。
    モヤモヤしたまま、二三日後に急に情景が頭をよぎって、自分で自分にびっくりする。
    中国の陶器の枕とかね。
    あまりにも脳裏にこびりつくようなら、作者の思惑にのって、元の小説を読んでみてもいいかな、と思ってしまう。

  • 本のタイトルと裏表紙の内容紹介に書かれているラブクラフトの名前に惹かれて購入する。
    16章に渡り、17作品の文学論と各作品と関連する春日氏の自伝的エッセイが書かれていて、一風変わった文芸評論集とのこと。
    春日武彦さんの作品に触れる機会が無かったのだが、とても面白かった。
    紹介されている作家さんも、殆ど知らない方ばかりだが、どの作品にも興味を持った。是非、各作品を読んでみたいと思った。
    この中ではラブクラフトだけは僕が、よく読む作家だ。
    東京創元推理文庫の全集も読んでいるし、青心社の暗黒神話大系シリーズも、殆ど購入済みだ。
    春日氏がラブクラフトの作品に対して、どのような評論が書かれているのか、興味津々で読ませてもらった。
    春日氏は、つまらないと一言。
    良くぞ、言ってくれた!その通り、つまんないよね。
    あ~っ、スッキリした。
    ラブクラフトは、嫌いじゃないし、これからも読み続けるけど本当に、あの世界観に旨くはまれないと読むのが辛いんだよね。
    春日さんのことは、この一言で大好きになった。この人の作品は今後も読んで行こうと思った。

  • あれはいったい何だったのだろう――精神の暗部に触れる無意味で不気味なものを論じる異色の文学エッセイに、書き下ろしを増補した決定版。〈解説〉朝宮運河

  • たまたま手に取り斜め読み。
    さまざまな知識満載、表現力の妙味、
    例えば、富岡多恵子の遠い空を、
    田舎を舞台にした気味の悪い小説である
    肥溜めに石を放り込んでみるような怖さと好奇心とに満たされている
    という感想。遠い空の紹介の前には、アメリカ西部劇やドラマに出てくる底なし沼のことが書かれており、とにかく引き出しが広く多く想定外の発想と結びつきの考察。面白いし、紹介されている本の内容も詳しいのでブックガイドとしても役立つ。

    遠い空の章がやはりなかなかよい。億劫であること面倒くさいという心性がもつ支配力、人を麻痺させる力。
    いい人は不精者。

    最初はおもろないと思ったが細かい考察表現法人間てしょうもないでもしようもないとこがよいところ大事なところということが底深く思い知らされる。

  • 個人的には全然魅力を感じず、面白味もなかった。

  • 精神科医、春日武彦による「恐怖の一歩手前」「グロテスクの未然形」とでも言うべき不安や違和感に満ちた感覚をもたらす文学作品を題材にしたブックガイドとも文学評論ともエッセイともつかない読み物。
    文庫化にあたりボーナストラックとして描き下ろしで一章が追加されている。

    取り上げられている作品の中で明確にホラーといえるのはラブクラフトの「ランドルフ・カーターの陳述」ぐらい。しかも内容は結構な diss。
    多くは純文学系のしかも割とマイナーな短編が多く、百閒の「殺生」とラブクラフト以外はいずれも未読どころかタイトルすら知らない作品。しかし、どれも怖いというより不気味というか厭な感じの小説で面白そうではある。特に河野多恵子の死んだ妻と性交する夫を描いた「半所有者」、富岡多恵子の田舎に暮らす五十代の寡婦が不気味で粗野な唖の男に性交を求められる「遠い空」など読んでみたい。
    巻末には紹介された作品を収録した比較的入手しやすい書籍をまとめてくれているのは親切で良い。

  • 各章に挟み込まれる筆者自身のエピソードが「どうだ不穏だろう不気味だろう」と露骨に仕掛けているように感じてしまい、いまいち乗れなかった
    紹介している作品の著者の顔をイジったりするのもなんだかな

  • 先生の辛辣な言い方がとても好き

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著者プロフィール

春日 武彦(かすが・たけひこ):1951年、京都府生まれ。日本医科大学卒業。医学博士。産婦人科医を経て、精神科医に。都立精神保健福祉センター、都立松沢病院、都立墨東病院などに勤務。多摩中央病院院長、成仁病院院長を経て、同名誉院長。著書に『ロマンティックな狂気は存在するか』(大和書房→新潮OH!文庫)『問題は、躁なんです』(光文社新書)『精神科医は腹の底で何を考えているか』(幻冬舎新書)『臨床の詩学』(医学書院)『奇想版・精神医学事典』(河出文庫)『屋根裏に誰かいるんですよ。』(河出文庫)『恐怖の正体』(中公新書)『無意味なものと不気味なもの』(文藝春秋→中公文庫)『自殺帳』『自滅帳』(ともに晶文社)ほか多数。

「2026年 『怪談の真髄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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