やさしい猫 (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2024年7月22日発売)
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本 ・本 (552ページ) / ISBN・EAN: 9784122075399

作品紹介・あらすじ

家族三人で暮らしたい、

ただそれだけの望みを叶えるのが

こんなに難しいなんて



シングルマザーの保育士ミユキさんが心ひかれたのは、八歳年下の自動車整備士クマさん。娘のマヤも面倒見のいいクマさんに懐いて、すったもんだはありつつも、穏やかな日々が続くはずだったのに……。



出会って、好きになって、ずっと一緒にいたいと願う。

そんな小さな幸せが突然奪われたのは、

クマさんがスリランカ出身の外国人だったから。



〈ハラハラしてます〉〈ラストがよかった〉〈知らないって恐ろしい〉

読売新聞連載中から反響続々

中島京子の長編小説最新刊

感想・レビュー・書評

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  •  なんて尊い家族! なんて優しく温かい物語! でも、なんて酷いこの国の差別と偏見! 本書を読みながら、ずーっとそんなことを考えてました。

     震災ボランティアで出会い惹かれ合った2人、スマトラ出身のクマさん(24歳)とシングルマザーのミユキさん(32歳)、そしてミユキさんのひとり娘・マヤ(8歳)。物語は、一貫してマヤから"きみ"へ語りかける形式で綴られていきます。

     諸々の困難を乗り越え3人は家族となるも、クマさんの在留資格が切れ、不法残留で東京入国管理局に収容されてしまいます。そこからクマさん返還のため、ミユキさんとマヤの闘いが始まります。

     入管制度がこれほど重く理不尽な制度だったかと思い知らされました。しかし本書は、法的政治的な訴えの論調ではなく、リアルな家族小説として読みやすい点が実に優れています。マヤの存在と語り口が絶妙でお見事です。この優しい語り口が、非人道的な制度をより浮き彫りにしている気がします。

     本作の刊行とほぼ同時期(2021年)、スリランカ国籍のウィシュマさんが名古屋の入管施設で亡くなる事件がありました。何となく思い出しましたが、その段階では他人事で済ませていた自分を恥じ、改めてこの物語の現実とのつながりを実感しました。
     人権が尊重されない現実社会に一石を投じる"やさしい"物語として、とても価値ある一冊でした。
    
 マヤが語りかける"きみ"は、これから生まれる未来を担う存在であり、読み手の私たちでしょう。マヤの語りがきっと未来に光をもたらす傑作でした。

    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      どんぐりさん、こんにちは♪
      これ、万人の方に"超おすすめ"です!
      もっと早く読みたかったなぁ、というくらい(^^)
      どんぐりさん、こんにちは♪
      これ、万人の方に"超おすすめ"です!
      もっと早く読みたかったなぁ、というくらい(^^)
      2025/06/01
    • かなさん
      良作でしたよね!
      入管制度の問題点がしっかり描かれているのもよかったし
      家族を思う気持ちは国籍なんか関係ないと思わせてくれたのも
      よか...
      良作でしたよね!
      入管制度の問題点がしっかり描かれているのもよかったし
      家族を思う気持ちは国籍なんか関係ないと思わせてくれたのも
      よかったです。
      2025/06/03
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      かなさん、仰る通りでしたね♪
      とりわけ、マヤ視点で「きみ」へ向けた
      語りかけが素晴らしいの一言でした(^^)
      中高生にも読んでほしいですよね...
      かなさん、仰る通りでしたね♪
      とりわけ、マヤ視点で「きみ」へ向けた
      語りかけが素晴らしいの一言でした(^^)
      中高生にも読んでほしいですよね
      (*´д`)(´д`*)ネー
      2025/06/03
  • お父さんが亡くなってから、母のミユキさんと2人で暮らしてきたマヤ。
    保育士として働いていたミユキさんは、東北の被災地で炊き出しを手伝うことになり、そこでスリランカ人のクマさん(クマラさん)と出会います。

    娘思いのシングルマザーミユキさんと、真面目で真っ直ぐな青年クマさんは、ミユキさんの母にもようやく許しをもらい、やっとの思いで結婚するのですが、婚姻届を出したあと、在留資格の手続きに東京入国管理局に行ったクマさんは、警察に捕まって収容されてしまいます。

    私たちの住む日本という国が、外国人にこんなにも厳しいなんて知らなかった。

    日本人同士なら法に触れないのに、外国籍の人と日本人との結婚は何かと問題にされるとか、外国人が日本語を読めないのをいいことに、無理やりサインさせて不当に解雇したりとか、理不尽な現状を知って驚きます。

    ミユキさん、クマさん、マヤちゃんの三人は、優秀な弁護士の先生と出会って裁判することを決意します。
    三人で幸せに暮らすための、長い長い戦いが始まるのです。

    この小さな家族の物語は、”きみ"に向けて、娘のマヤの目線でやさしく語られていきます。
    国籍なんて関係なく、この世に生まれてきた一人一人の命がとても尊いものだということを忘れないでいたい。
    少しでも多くの人にこの本を読んでもらえたらよいなと思います。

  • 名古屋のオーバーステイで収容されて亡くなった女性の話が全てだと思うホント人間じゃない腐った生き物達だから亡くなった。クマさん何度も倒れたのに無難な放置するのも同じ 上原の前に対応した審理官も裁判の名前を言わせた検事も あーいうのが出世するから組織は変わらないし、本気で外国人を統制してるならクルド人が問題になっている筈がない、と前置き長いけど中島京子さんよくぞよくぞ描いてくれたって、現実の体験があるからここまで真実を伝えられる。ほぼ裁判についてだけど、こんなんナンボあってもいい、カナダと比べる場面あったけど日本って遅れてるのが治らない、なんで?失われた30年 嫌な世の中を仕方ない当たり前の世の中と思う、高い税金払ってもキックバックする国会議員ってなんなんだ。

    • なんてひださん
      母の待つ里を読んでる中序盤の徹の友達出てる所で野球でいうと2回表の攻撃中
      母の待つ里を読んでる中序盤の徹の友達出てる所で野球でいうと2回表の攻撃中
      2025/01/17
    • しずくさん
      レビューをお待ちしてま~す
      レビューをお待ちしてま~す
      2025/01/18
    • なんてひださん
      がってんでぃ
      がってんでぃ
      2025/01/18
  • 祝文庫化!!!

    米統治下の奄美に触れ注目 中島京子著・小説「やさしい猫」|芸能・文化|南海日日新聞(2021年08月29日)
    https://x.gd/YWsIj

    理不尽の連続に立ち向かう中島京子『やさしい猫』 - 新刊めったくたガイド|WEB本の雑誌(本の雑誌 2021年11月号掲載)
    https://www.webdoku.jp/mettakuta/takato_sawako/20211119080000.html

    『やさしい猫』(中央公論新社) - 著者:中島 京子 - 角田 光代による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS(毎日新聞 2021年10月9日)
    https://allreviews.jp/review/6603

    中島京子さんインタビュー 知らなかった。 信じられない。そして自分に何かできないだろうか、と。 | ファッション雑誌『リンネル』の読みもの(21.11.23)
    https://liniere.jp/column/culture/5606/

    中島京子さん「やさしい猫」インタビュー 入管行政という重いテーマを読みやすく|好書好日(2021.09.23)
    https://book.asahi.com/article/14444581

    やさしい猫 -中島京子 著|文庫|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/bunko/2024/07/207539.html
    (単行本)
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2021/08/005455.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      小説と同じ結末にはならず…「やさしい猫」そっくり在留資格裁判は敗訴 作家・中島京子さん「何のための裁判か」:東京新聞デジタル(2024年12...
      小説と同じ結末にはならず…「やさしい猫」そっくり在留資格裁判は敗訴 作家・中島京子さん「何のための裁判か」:東京新聞デジタル(2024年12月18日 会員限定記事)
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/374234
      2024/12/19
  • 面白かった!
    1日で読んでしまった。
    スリランカ人で優しくて楽しいクマラさんが、東北の震災でボランティアしていたときに会ったミユキさんとその娘マヤとの家族の愛の話。
    右葉曲折して結婚に至ったクマラさんが会社を解雇され就活中にオーバーステイになってしまう。
    結婚証明を持って入管に相談に行こうとするクマラさんが途中で警察に捕まってしまい、勾留されてしまう。
    外国人が日本で働き続けるのが難しい現状が、日本が外国人に対する永住権を認めない現状がよくわかった。世の中、知らないことが多すぎるな、と思った。

  • 友達に勧められて読んだ。外国人の彼と家族の物語。家族一緒に暮らすことが、こんなにもたいへんなのか。家族3人の裁判の様子に、胸が苦しくなった。最後まで読んで、ああよかった、と思うのと、現実の厳しさ。知らないことが多すぎる、知らされていないことが。

  • 中学校で外国籍の生徒に日本語指導をしています。日本語が専門ではないので、なかなか大変です。子ども達は自分の意思とは関係なく親の都合で連れてこられた子、学校では日本語を使いますが、家では日本語以外の母語を使っています。
     夏の研修で、日本の入国管理について学びました。その話を学校司書さんにしたら、この本を貸してくれました。
     以前名古屋の収容施設で亡くなられたウィシュマさんが牛久観音の前で撮った写真を見たことがあります。なぜ牛久?と思いましたが、入管と関連性があったのかもしれないですね。研修では、入管審査は審査する人で変わると言われ、いい人に会うかどうかは運ともいわれ?が飛びましたが、この小説の中にも裁量という言葉が使われ納得しましたが、それでいいのかなぁと疑問も。
    これが、技能実習生や日系外国人を受け入れる日本の実態。
    労働人口が減るという数値的なものばかり主張していて、来る外国人には冷たい、こんなのが日本だと思うと、そのうち誰も日本に来なくなるんではと思ってしまいます。
    日本ってそんなにいい国なのかなと。いい国だと思って来た人の期待を裏切ってるかもしれないなどと考えてしまいます。
    課題が大きいし、多すぎる。
    日本語を話す外国人、それもアカデミックレベルが理解できる外国籍の人って尊敬しかありません。

  • 全く想像も違ったお話だった。
    もしかしたら、知っていたら読まなかったかもしれない。
    それぐらい、どこか自分とは無関係だと思っていた。海外からの移住者、難民認定、国際結婚、入管制度、永住権の問題など。
    日本ってこんなに酷い国なの??と腹もたった。
    自分自身、何も知らなかったくせに。問題意識も持っていなかったくせに。

    収容所で亡くなった方のお話、現実で耳にしていたはずなのに。申し訳なく思う。こんな日本になっているのは、どうしてなの??と怒りが込み上げる。

    クマさんが収容されてからの描写は、正直辛すぎて飛ばし読み。こんな理不尽なことがあるなんて!!私もミユキさんのように強くいられるかな、と自信が持てない。
    でも、世の中捨てたもんじゃないよね。ハムスター先生に繋いでくれた、上原さん?だっけ?、それにハムスター先生、その事務所の弁護士の先生たち、ちゃんと心のある人、気持ちの通じる人はいるんだなと信じられる。

    この語りが誰に向けたものなのか、私は鈍いのかまったく想像できなかった。弟くんだったんだね。
    ラストがハッピーエンドで良かった。

    モチーフとなったスリランカの優しい猫のお話は、実在のお話なのかな?
    日本の昔話のようなストーリーじゃない展開が斬新だった。私も一つのものの見方、考え方、お話の流れの定型にハマっているんだなあと感じる。
    ここが今回の小説で世に訴えている問題に繋がっているのかも。
    解説にもあったように、これがノンフィクションやルポタージュで語られていたら、それはものすごくセンセーショナルではあるかもしれないけど、やはり届く人は限定される可能性はある。
    この題材を小説としてくれた中島京子さんに感謝です。

  • 猫好きの私のために「猫」がつくタイトルを見て夫が図書館で借りてきてくれた本。
    だが全くタイトルからは想像がつかない話だった。
    USHIKUというマイナー系映画館で外国人の収容所の理不尽さは見たことがあったが、本当に大変な思いをさせてしまっていることに心が痛む。
    日本は性善説の精神が素晴らしいところなのに、
    島国だからか閉鎖的で外国籍の方々には偏見や差別がまだまだ多い現実は否めない。
    一方で日本の制度を悪用する外国人もいる。
    なかなか難しいところだが、国籍関係なく、上手く線引きが出来るようにしたいものである。

  • 「やさしい猫」は、語り手のマヤに義父となるクマさんが話して聞かせてくれたスリランカの寓話だ。
    のちにマヤの友達のナオキくんがそこに込められた意味を解いてみせる(ただしその真偽は明かされていない)。
    最近、仕事の関係で、日本に住む外国人にはさまざまな在留資格があって、就ける仕事も細かく指定されていることを知ったのだが、本書はさらにそんな彼らを管理する入管の実態を教えてくれる。
    もちろんこれはフィクションだが、たとえばノンフィクションを読むよりずっとリアリティを感じる。知らなかったことをまた一つ知れた。
    重苦しくなりがちなところだが、思春期の女の子の視点で描かれていて、受入れやすい。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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