- 本 ・本 (576ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122075450
作品紹介・あらすじ
学生時代はボランティアサークルに所属し、国内外で活動しながら、ある出来事で心に深傷を負い、無気力な中年になったみのり。不登校の甥とともに、戦争で片足を失った祖父の秘密や、祖父と繋がるパラ陸上選手を追ううちに、みのりの心は予想外の道へと走りはじめる。あきらめた人生に使命〈タラント〉が宿る、慟哭の長篇小説。
解説・奈倉有里
感想・レビュー・書評
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綺麗な青空だな。
空に向かっての高跳び、気持ちよさそうだな。
そういう表紙を見ていつも気になっていた本。年末気軽に買ったのですが、内容はなかなかなかなかでした。
世代の違うおじいちゃんと孫。それぞれの異なる青春時代があるのに、今の時代を同じようになんとなく過ごしているように見える。
でもそこに行き着くまでには、実はそれぞれの世代が経験する異なる辛い背景がある。それに纏わる苦しい、悲しい思い出、それでも楽しい思い出も。時代や背景が違えど、人として思うことの原点というのは実はやっぱり同じだったりする。
初めは「点」としての物語で、それが私の日常とはかけ離れていて申し訳ないが馴染みがなく、どう繋がるんだろうと不思議だったが、自分の位置とこれらの点がどんどん結びついて最後には線になり、そこでとても深く考えさせられた。
…あれ?もしかして「高跳び」っていうのに意味があるのかな。ぴょーーんと今まで味わったことのない世界に跳び、ハードルを超え、新しい景色が見える。
そこにきっかけと勇気と、自分のぶれない意志があれば。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
角田光代さんの作品をまた読んでみたいと思っていて、やっと手に取った作品です。
でも、残念ながら私にはあまり響かなかったようです。
情報が多すぎました。そして「使命感」「タラント」とか、何だか使われてる言葉が大袈裟な気がしてしまいました。
主人公、みのりが大学生時代、ボランティア活動に参加して、ある出来事で心に深い傷を負った。だからといって一緒にボランティア活動していた仲間の卒業後の活躍や生き方を気にし過ぎのように思えました。
そんな所に
「いいかげんいじけるのはやめて、やりたいことを思うままやったらどうですかね。」というフレーズが。
「そうよ。これよ、これ!」
この一文を読んだときはスッキリした気分になりました。
文章の長い作品で情報量も多くて「何が伝えたいのかな?」
とずっと考えていましたが、7章、8章になるとわかり易く動き出して読み終えることが出来ました。
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ボランティアとはをみのりと玲と意見の言い合いが何度も出てきてムーミンが文珠チームで楽しくやりましょうよと投げかけてその場にいる事が意味があるのかどうか禅門なのかなーで最後にみのりは答えを出したんだ、清美の死も無駄にしない。でも清美の上京の真実と戦争と1番最初のが清美じゃなくて陸だったのを踏まえてもう一度読むと全然違うだろうな。涼花の手紙を書いてるうちに自分の愚痴とかあれやこれや書いてる後ろめたさがあった告白も、みんな同じ様に悩み事あるんだなって思った。涼花とか寿士とかムーミンの登場シーンが上手だなぁ、みのりの目からと清美の上京を思い止める=コロナを伝えるのが一番上手いと思う もちろんマスゴミなんかよりも。あと星影さやかに読んだ後でどちらも同じ時期の戦争の話でした
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香川から東京の大学に進学し、ボランティアサークルに入ったみのり。
卒業後も日本の絵本に外国語の翻訳をつけて、本を送る小さな出版社に就職し、休みには海外の難民キャンプを回るようたスタディツアーに参加していた。
ヨルダンの難民キャンプでみのりが抱いた親切心から起こった事件がトラウマとなり…
みのりは…
戦争で片足を失ったみのりの祖父・清美は、みのりの進学とともに、たびたび東京に。
清美は何をしているのか…
パラアスリート・涼花との繋がりは…
なかなか長かった…
そこまで引きずらなくても、というくらい。
みのりはごくごく普通なのかもしれない、何か飛び抜けたものがあるような。
失敗するのが怖くて、なかなか踏み出せない。
考えすぎじゃないかというくらい、考えてしまう。
祖父・清美とパラアスリート・涼花との関係から、清美の過去を知り、義足について考え始める。
不要になった義足を必要とする人たちに届けることを思いつく。
みのりがやっと動き始める。
長かった…
ここまで10年以上かかったのか。
陸が書いてたんだね、清美の過去の話は。
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角田光代さんの小説に出てくる人物は、不器用だけど、みんな愛がある。愛の表現は決して上手ではないけれど。そして人間くさい。
だから読んでいてココロが温かくなるのだと思う。
結構、分厚い本だったけど、サクサクと読めた。
さすが飽きさせない。 -
文庫本で556頁もあるんで、読みこなすのに時間がかかるかと思たら、すいすいといつの間にか読み終えてしもた。センテンスが短いのと文章にリズムがあるけん、そいで日常語で綴られてんからかも(彼女たちの話し言葉につられてしもた笑)。
冒頭に、手記のようなものが記され、それが各章の都度繰り返される。やがてそれが主人公みのりの祖父の戦時中のことだとわかる。
ストーリーは、みのりの大学生活から結婚した現在までを時間を前後しながら繰り返される。
長編ゆえ、彼女の大学時代のボランティアサークルを通じた親友たちとの交友や、サークル仲間との海外活動、それに祖父の謎の交流などなど話は多岐にわたる。
それらの底に流れ、折に触れ語られるのは、題名の「タラント」=使命感(聖書に出てくる言葉だとか)。
主人公みのりはもとより、甥の翔太も繰り返す。使命感、言葉を換えれば才能が翔太にはあるし、親友たちにもあるが、みのりはあるふりをしていただけと思い惑いながらも、使命感のようなものに駆られたときが、たしかに自分にもあったと自覚する。
「だれも彼もが何かしらのなんということにない義務感に突き動かされ、それに従っていて、それがつまりはそれぞれにあたえられら使命であり才能だと」、みのりは思う。 -
まず。
やっと読めた、読み終わったという印象。
そして、どっと疲れた。
主人公山辺みのりの視点を通してずっと読み続けてきた。私自身みのりと同年代ということもあり、就職氷河期だったり、アメリカ同時多発テロだったり、東日本大地震だったり、コロナ禍だったり、大きな流れの中で何かできることをその時々で成し得たいと、もっというと、役割を果たしたいというみのりの気持ちや、挫折、戸惑いや迷い、諦めなどその全てが突き刺さる感じで、正直読み進めるのが難しかった。
物語の終盤、みのりはいろいろな人との出会いの中で、それでも自分を突き動かす何かによって、また何かをやり始めようと思う。そう、やらなければ、何もわからないし、何も始まらない。誰の人生でもなくて、己の人生の延長線上にしか、己はいないのだと、ようやく等身大の自分を分かるようになる。
角田さんの作品を読むと、私自身どうしようもなく平凡で何者でもない自分であることを真正面から叩きつけられるけれど、それでも前向きな気持ちにさせてくれるのは、それぞれの人物にはそれぞれの人生があるっていうことをちゃんと伝えてくれているからだろう。それをタラント、という言葉で言うのなら。 -
初めて手にした角田さんの作品がタラントで良かった。
この複雑な世の中に対して使命感を持って生きることも、何も知ろうともせずに生きることも、やりたいことを実現させるために生きることも、自分が成し遂げたいことを人がどう思うとも、自分だけにしかないタラントが何か気づけば、人は生きるチカラを得られると気づかされた。 -
話があちこちいっている感じで、なんとなく消化不良のまま終わってしまったような…。
「何かしたい、何かしなくては」というところから、
「なぜあの人が死んで私は生きているのか、生きている私は立派なことをしなくてはいけないのではないか。」
「何もしなくてもいいし、やりたいことは小さなことでもやってみればいいし、失敗したり続かなかったらまた新しいやりたいことを見つければいいし。」
へたどり着くまでの道のり、なのかなぁ…。 -
清美さんの最後の心情の吐露に泣けた。
世界各地の「現実」を知って、向き合って、
それに対して何か行動を起こすことも
特に行動しないことも、自分を守るために向き合わないことも、どれも間違いではない。
自分ができること、したいことをしよう。
「したい」と思ったときに。
著者プロフィール
角田光代の作品





