世界でいちばん幸せな屋上 ミルリトン探偵局 (中公文庫 よ39-12)
- 中央公論新社 (2025年2月21日発売)
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感想 : 19件
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784122076242
作品紹介・あらすじ
シナモンとチョコレート。
消息不明のシンガー・ソングライターと、ビルの屋上にあるレコード店。
皿洗いの仕事に集う若者たち……
黒猫シンクが旅する先で幸せな光景が浮かび上がる。
猫の“おみやげ”を手がかりに推理する〈ミルリトン探偵局〉第2作。
作家・吉田篤弘が別名義で著した名作を大幅改稿。
イラストと解説を新規収録。
感想・レビュー・書評
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吉田篤弘さんの別名義「架空の著者・吉田音」による『夜に猫が身をひそめるところ』の続編です。
吉田音は中学生で吉田夫妻のひとり娘。父の友人で学者の円田と「ミルリトン探偵局」を結成。それは、黒猫シンクが、夜中に散歩へ出ては不思議な物を持ち帰り、その謎を推理するためでした。
構成は前作同様、探偵局パート(音や円田周辺で起こる出来事)と物語パート(それぞれ全く別の場所にいる様々な人とその周辺の出来事)が1セットで1章となっています。言わばレコードのA面とB面で、これが交互に4章分繰り返されます。
郷愁を誘う物語が魅力的で、各章が少しずつつながり、最後はひとつに収束していきます。つながりの度合いは前作よりも強く感じました。
このレコード盤の表裏の物語は、鏡に映ったシンメトリーな世界にも思え、不思議な世界観を深めています。そして、この2つの場所を唯一行き来しているのが黒猫のシンクで、推理と想像を膨らませる重要な役割なんですね。
音ちゃんは、間違いなく吉田篤弘夫妻の血を引き、味のある物語を紡げる娘でした。いつかまた、吉田音名義の物語を読んでみたくなりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
音ちゃんのミルリトン探偵局続編。
相変わらず素敵な吉田さんのイラスト。
今回も黒猫シンクの持ち帰るお土産から、音ちゃんと円田さんの推理が始まる。
「バディ・ホリー商會」の章。
スパイスの卸業者である長瀬君の所からの、メモ書きのお土産が楽しかった。
なるほど、カクメイ、バクダン、スパイ…それだけ目にすると物騒だ。
でも安心して、円田さん、音ちゃん。
それは長瀬君の努力の欠片だから。
「世界でいちばん幸せな屋上」は、ちょっぴり切ないけれど音楽に溢れた章だった。
そしてここで初めて音ちゃんの名がシンクのお出掛け先に登場する。
不思議な気分だった。
音ちゃん、貴女が書いたお葉書が1人のラジオDJを突き動かしたんだよ。
しかもそのDJは、シンクにチョコレートをあげた張本人。
ちゃんと、世界は繋がってるんだなー。
そして、続く「屋上の楽園」の章がこれまたいい。
前章の切なさを掬い上げて、満たされた気持ちにさせてくれた。
それはそうと、私は吉田作品に登場するラジオ番組が好きだ。
きっと良い曲ばかり流れてくる、素敵で優しい番組だろうなーと想像する。
深夜にこんな番組があったら、いつも欠かさず聴いているに違いない。
本作に登場するラジオ番組は〈ルーフトップ・パラダイス〉。
オープニング曲がニール・ヤングの「Only Love Can Break Your Heart」ってところがめちゃくちゃいい。
私はThe Fifth Avenue Bandは知らなかったけれど、検索して「One Way or the Other」を聴いてみたら、こちらもとっても心地良かった。
先に“吉田作品に登場するラジオ番組が好きだ”と書いたのは、別作品『鯨オーケストラ』にもラジオ番組が登場するからだ。
あの時のオープニング曲はトッド・ラングレン「Be Nice To Me」だった。
この曲も深夜のラジオ番組にはぴったりの静かでやわらかな曲。
吉田さんの作品て、こういうところがちょいちょいツボるんだよな~。
そんなわけで後半はアルバムThe Fifth Avenue Bandを聴きながら読み終えた。
ラストの章「アンジェリーナ1970」の石山君が、「バディ・ホリー商會」の石山部長であったことに、おぉ!と思った。
こんなところにも小さな繋がりが仕込まれてたなんて。
他にも“おぉ!”は続き、「アンジェリーナ1970」はラストを締め括るに相応しい素敵な章となっている。
(その繋がりの“おぉ!”は「チョコレエトをかじりながら書いたあとがき」にも及んでいるのだけど。)
本作はミルリトン探偵局の一作目よりも好きだった♪
シンクを挟んでのあちら側とこちら側の行き来が一層楽しく、また、細かにシンメトリーが仕組まれていたりと発見も楽しかったからだ。
(解説にもある通り、平間、岡本、二宮、本田など。)
ニール・ヤングやThe Fifth Avenue Bandの曲たちも豊かな色味を添えてくれているし、
うん、私は二作目のこちらの方が好きだ!
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〈ミルリトン探偵局〉第二弾。
今回もまた、非日常を味わえる、居心地の良い空間が果てしなく広がっています。
シンクの持ち帰るおみやげから展開される推理は、思わぬ方向へ向かってしまうようだけれど、物語には正解も不正解もないし、自由な発想で、謎は謎のままでよいのだろう。
空想と日常、この二つの世界を行ったり来たり。
黒猫が運ぶささやかな幸せを感じながら、小説というものはほんとに楽しいものなのだと実感させてくれます。
スパイスの輸入卸業を営む小さな会社、スコットランドのシンガーソングライター、ビルの屋上にあるレコード店、伊勢佐木町の〈アンジェリーナ〉という店でアルバイトをしていた若者たち…。
これらの物語たちが、さいごには一つに重なっていくようで、読んでいてとても楽しかったです。
〈ミルリトン探偵局〉は、吉田篤弘さんの吉田音名義のデビュー作で、シリーズの番外編といわれる『圏外へ』も読んでみたくなりました。 -
4階建ての小さなビルの屋上に、<ルーフトップ・レコード>という輸入専門のレコード屋があった。
お気に入りのレコードのレーベル・ロゴの上には、小さな黒猫のシルエットが描かれていた。
ある日、その音楽を作ったアーチストに会いに行く。
その人の仕事場もビルの屋上にあった。
屋上という場所は、地上で幸福を探し求める人々を見下ろすのに丁度良い場所だった。
ここは「世界でいちばん幸せな屋上」なのだと、誰かに知らせたい気分になる。
この物語に登場する黒猫は、<ミルリトン探偵局>では"Think"と呼ばれていたが、
出かけた先のピザ屋<アンジェリーナ>では"Bolero"と呼ばれるようになる。
なぜ"Bolero"かは、読んでのお楽しみ。
吉田音としての3作目も書いているが、内容に納得できなくて単行本化は保留にしているそうだ。
そこに登場する猫の名前も「オセロ」に決めていたが、どうなるか分かりません。
「オセロ」は、つむじ風食堂の夜に出てきちゃったからね。
ただ、書き直した後も、音楽と猫と食べ物が織りなす物語であることは間違いないでしょう。 -
吉田篤弘さんの幻のデビュー作「ミルリトン探偵局第2弾です。音ちゃんと円田さんが、黒猫Thinkのお土産を前に頭をひねる章と、答え合わせ感のあるショートストーリーの絡みが切なくも美しい。洋楽に詳しかったらもっと深く味わえるのでしょうね。出てくる曲で私が知っていたのは、「ボレロ」と「レット・イット・ビー」だけなので…。
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2025年4月19日再読了。
「夜に猫が身をひそめるところ」の続編、「世界でいちばん幸せな屋上」、再読了。
前作に引き継続き、黒猫シンクのおみやげをもとに推理する音ちゃんと円田さん。
過去と未来は、黒い子猫がキーとなって交差していく。
そこに出てくる「屋上」は幸せの象徴だけど、幸せの中にいるときはそれに気づかない。
後で「ああ、幸せだったのだな」と気づく。
確かに屋上って(めちゃくちゃ高い屋上はさておき)、日常と非日常の境目みたいな感じ。
いつも見ているものの、いつも見えない面が見れたりするんだけど、「いつも」とかけ離れすぎていない、絶妙なエリアよなあ。
この本のおかげで、ニール・ヤングを聴いてみました。
なかなかにいい曲だった。
そんなわけで、その話のときはそれを聴きながら本を読んでみました。
あのホルン奏者が出てきたのも、うれしかった。
なんか憎めないよね、あの人。
私は、この作者が書いた本は、まだ「ミルリトン探偵局」しかしらないんだけど、この人の書く文章や言葉が、なんかすっごく好き。
もっともっと読んでみたい。
出会ってくれてありがとう。-
もちさん、こんばんは。
音ちゃんもシンクも可愛いですよね。
それにニール・ヤング!
私も本作をきっかけに久々聴きました。
いいですよね~。
...もちさん、こんばんは。
音ちゃんもシンクも可愛いですよね。
それにニール・ヤング!
私も本作をきっかけに久々聴きました。
いいですよね~。
レビューを拝読して、あちこち共感したので思わずコメントです。
お邪魔しましたっ。2025/04/21 -
こんばんわ!
シンクかわいいですよね〜!!
おみやげを小さいお口にいっぱいにして帰ってきてるのかなぁ、とか思ったりしてます笑。
共感してくだ...こんばんわ!
シンクかわいいですよね〜!!
おみやげを小さいお口にいっぱいにして帰ってきてるのかなぁ、とか思ったりしてます笑。
共感してくださって嬉しいです!
コメントありがとうございます!2025/04/21
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読んでる間、幸せでした。
素敵すぎます。
私にとって完璧な世界観です。
こんなに好きな作家に出会えるって、幸せです。
そして、人々の物語に黒猫が関わってるところが、たまらなく好き。 -
前作よりわかりやすくて面白い!
人とか人生とか空間とか、そういうものはいろんなものを通じてつながっていくよねっていう面白さ。
もうちょっとこの世界を旅してみたいなって思わせてくれる独特な一冊 -
1作目を時間をかけて読んだのだけど、読み終えた頃に今作を見つけてすぐに読み切りました。
今回も音ちゃんの世界と、もうひとつの世界が行ったり来たりするけれども、つながりが色々と感じられて愉しかった。
なにかが繋がって、縁が出来ていくのかなぁと思ったり。ホルン奏者さんがまた出てきてくれたのも嬉しかったです。
音ちゃんのご両親もすてき。 -
吉田音、吉田篤弘さんの別名とは知らず、しかも第二作とも知らず。
関内駅で降りたら、ビルを見上げ、魅力的な場所がないか探してしまうかもしれない。
ニール・ヤング、CSN&Yを聴きながら。 -
我が家にいる黒猫を撫でつつ、一気読み。
ヒトの人生にスパイスを与えつつ、左右させる黒猫…
面白かった!
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吉田作品の原点ここにあり。
3作目が出ることに期待。 -
黒猫がいい働きをしている。癒したり、刺激したり、運命すら変えたりしているとは、知ってか知らずか。
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世界観好き
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文庫化された吉田篤弘氏の作品の中で
この一冊だけ持っていませんでした。
ちくま文庫から出版されていた頃に買いそびれて、
その後も古書店などを探し回ったのですが見つからず、
もうすっかりあきらめていました。
それがこのたび中公文庫で復刊されて、
やっと手に取ることができました。
全面改稿されたようですが、
やはり最近の作品とは空気感が違いますね。
音ちゃんが書いたという体にしていることもあって、
文体も異なります。
でも、
レコード、音楽、ラジオ、DJ、オーケストラ等など、
今日の作品でもよく扱われている材料がいっぱい。
いくつかの全く異なる話が、
最後に大きなひとつのまとまりとなって立ち現れます。
けれど登場人物たちは
誰もそのことを知りません。
世界で一番幸せな屋上・・・
それはきっとどこかにあるような気がします。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2 -
シリーズ2作目と知らず読んだせいか、全体がよくわからなかった。吉田さんの作品はとても雰囲気良さそうで何度かトライするものの、何かが合わなくてはまらない。静かすぎるのか?
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2作ともとてもよかった。
世界が繋がっていてわくわくした。
音ちゃんの3作目、早く読みたいな。
「圏外へ」も読みたいけど買えなさそう
著者プロフィール
吉田篤弘の作品
