夜の道標 (中公文庫 あ102-1)

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  • 中央公論新社 (2025年4月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (424ページ) / ISBN・EAN: 9784122076402

作品紹介・あらすじ

1996年、横浜市内で塾経営者が殺害された。事件発生から2年、被疑者である元教え子の足取りは今もつかめていない――。
殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受けている少年。
それぞれの守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を迎える。
日本推理作家協会賞受賞作。(解説)山田詠美

みんなの感想まとめ

複数の視点から描かれる物語が、登場人物たちの背景や立ち位置を丁寧に掘り下げながら進行します。物語は、殺人事件を中心に展開し、特にその動機に焦点を当てることで、予想外の深いテーマを浮き彫りにします。読者...

感想・レビュー・書評

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  • 芦沢央さん、2冊目。
    “作家生活10周年記念作品”らしいが、皆さんの★も多かったこの本にしてみた。

    「仲村桜介」「長尾豊子」「平良正太郎」「橋本波留」の四人の視点から語られる物語。
    「バスケ好きの少年」「惣菜店のパート社員」「上司からいびられ捜査が行き詰った事件だけを押し付けられている刑事」「父から『当たり屋』を強要されている桜介の同級生」の、その背景と今の立ち位置が丁寧に語られて、ずんずんと読まされる。
    それらの話が、どうつながっていくのかと思っていたが、その四人の視点からでしか語られない、五人目の登場人物を中心に巧く結びついていく。

    『数年前から「正しさが変わること」について考えるようになりました』という作者さん。
    殺人事件を追って、犯人は早めに知れる一方、その動機がポイントとなった話だったが、その謎が解かれた時に思いもかけない課題が描かれていて、物語の重みが増した。

  • これはすごい。芦沢さんの不快感を表現する文力に圧倒されました。
    前半の「こいつキモいね〜」ってところから、中盤になって「お前かい」ってなって、後半「ミステリじゃなかったんかい」って驚かされました。

    余談ですが「平良」とか「仲村」とか、沖縄っぽい苗字がたくさんあるなぁと思っていたのに、舞台がばりばり北関東なのオモロってなりました。

  • 一昔前の話のように描かれていたが、阿久津や波留が今を生きていたとして、上手に生きていけるように色んなことが整備された世の中になっているのか自信がないなと思った。

    今は多様性なんたらで、あれもダメこれもダメが多いが、昔普通だったことがそのままになっていた方が幸せだったと思う人もいるのかもしれないなと思った。

    正直、戸川先生が殺された理由がわからずスッキリはしないけど、波留に幸せになって欲しいと思った。

  • 久しぶりのズッシリミステリー
    事件から2年、犯人は捕まらず。
    匿う人、親から虐待受けてる少年、少年の同級生、刑事と四つの視点で進む構成。
    これ最後どう繋がるの?と思いながら…
    最後は切ない。法律に考えさせられる。
    なぜ30年前の設定なんだろう?とは思っていたが、ちゃんとリンクしていた。読後にも法律について検索_φ(・_・ 正しいか正しくないかは、その時にはわからないまま判断し未来に正解がわかる的な表現が辛い、、、(>人<;)

  • 読む前に裏表紙に描かれいるあらすじを見たら
    重いテーマだなという印象でした。 
    4人の視点で物語が進んでいくのですが、4人とも
    に苦しい環境の中生きていく様子が描かれていて、バスケが得意な少年 橋本波留は、貧乏な
    生活のなかで、ある事をして、苦しい生活を乗り越えてきたし、父親からの虐待に必死に耐えていた。そんなある時に波留は一軒の家を見つける。
    そこに住んでいたのは、ある事件で指名手配に
    なっている阿久津弦だった。
    この2人の出会いから、事件は急展開を見せていく。
    窓際に追いやられた刑事や、阿久津を匿う同級生の女、波留の親友の桜介、すべての人たちの心理描写が上手く文章に表現さてれいて、読む側から
    してもとてもスリルな読み心地になっています。


  • 初読みの作家さん
    たまたま書店で推されていたので手に取りましたが心を深く揺さぶられました。読んで良かった。

    ミステリーという謎解きよりもそれぞれが抱える闇の部分が絡み合う人間描写が主体

    殺人犯を匿う女
    虐待を受ける少年とその友達
    殺人事件を追う刑事
    そして殺人犯

    それぞれの視点描写に自然と引き込まれ、罪と救いが何たるかを考えさせられる作品

    それぞれの生き様が深く心に刺さりました

  • 舞台は1998年。2年前に起きた事件を軸に、様々な人物からの視点で話は進んでゆきます。
    何故この時代の話だったのか、作者の意図が最後に突きつけられるように明かされるのが印象的でした。
    私自身が、かつてその事を知った時感じた、遠い昔の話ではない驚きと嫌悪が再び甦りました。
    ただやるせなさだけが残る作品ではなかったのが私には救いでした。

  • 芦沢央さん『夜の道標』
    ------------
    1. 背景、テーマ:1996年、「正しさ」が変容する過渡期の闇

    物語の舞台は1996年から1998年。

    それは現代のような「発達障害」という概念が定着する前夜です。「精薄(精神薄弱)」という言葉がまだ公然と使われ、旧優生保護法の影が色濃く残る時代です。

    法律や社会が掲げる「支援」や「善意」が、実は当事者を深く傷つけ、否定するものであったとしたら?

    本作は、「良かれと思ってなされたことが、人を死に追いやる」という救いのない逆説をテーマに、時代が生んだ悲劇を浮き彫りにします。 
    ------------
    2. 物語の中心人物:交錯する「持たざる者」たち

    • 阿久津 弦(あくつ げん):
    恩師である塾講師を殺害したとされる容疑者。軽度の知的障害があり、言葉を字面通りにしか受け取れない危うさを持つ。

    • 橋本 波留(はしもと はる):
    父親から虐待を受け、公道を走る車にぶつかる「当たり屋」を強要されている小学生。

    • 戸川 勝弘: 被害者の塾講師。障害児教育に熱心で「聖人」と慕われていた男。彼こそが阿久津にとっての唯一の道標でした。
    ------------
    3. 動きだすシナリオ:半地下の窓が開くとき

    戸川が殺害されてから2年が経過します。
    阿久津は同級生の豊子の家に潜伏し、息を潜めて生きていました。

    一方、飢えと暴力に晒される波留は、偶然見つけた阿久津の潜伏先の小窓から、彼と接触します。

    「殺人犯」と「虐待される子供」。

    社会から存在を否定され、公助からも見捨てられた二人が、暗闇の中で手を取り合う皮肉な救済の物語です。

    阿久津が波留の願いを叶えるために外の世界へ踏み出そうと決意したとき、止まっていた2年前の事件の真相と、警察の捜査が激しく動き出します。
    ------------
    4. 読み終えて:真の「道標」を誰が示せるのか

    読み終えて突きつけられるのは、「子供に罪はない」という言葉の重みと、それを守れなかった社会の罪です。

    戸川先生が生徒の阿久津に与えていたのは「教育」ではなかったのです。
    では、何を与えたのか?
    ここが、物語の核心となります。

    私たちは、誰かを救おうとする自分の「正しさ」が、相手を追い詰めているかもしれません。

    この小説は、下記の問いかけを投げ込んできます。

    私たちは、世界を歩く誰かのために、壊れない道標を立てられているのか??

    本作は、その問いを一生消えない火傷のように、ジリジリと心に残す作品でした。

  • ストーリーは、私塾の元教え子の男が、私塾の経営者兼先生に手をかけてしまいある事情から匿われて
    いるという設定
    また、もう一人の親から虐待を受けている小学生の
    男の子もいて、二人の話が軸になっている。
    殺人犯として指名手配されてしまい、かつての内部告発から窓際に追いやられた刑事と相棒の部下が、
    班場も縮小された事件として、殺人犯の捜査を続けて、元教え子の足取りを追う。
    先生は元教え子の恨みを買うような過去は見えなかったが、ラストに進むにつれ、ある背景が見えてくる。
    ネタバレになるから書けないが、動機がショッキングな事情からだった。
    男の子は父の虐待から生きる気力も削がれていくが、自分のことを真剣に考えてくれる友人を得るところが救いだったと思う。
    元教え子の男と虐待を受ける男の子の出会いが、物語の肝でそこからのストーリーが面白い
    芦沢央の小説は、ミステリーものも充分楽しめる!

  • 今年の文庫で売出し中。小生初、芦沢央さん。推理作家協会賞受賞作。日本の犯罪系・逃走系ミステリー、層厚いしレベル高いし、途中で止められないなーと一気読み、結末はあの話に繋がってて、もう怒涛でした。

  • 当たり屋ならば、血気胸、多発肋骨骨折を3回繰り返した男性を思い出した。私の当たり屋のイメージはそんな器用な男性しかなかった。もうこんな始まり方されたら、なんとか救われることを期待しながら読むしかなかった。

  • こんな重いものになるとは。主要数人の視点で描かれていく、一応ミステリーの部類か?中盤超えたあたりまで各登場人物がどう結び付いていくのかわからず、結構バラバラに進んでいくのが若干気が散ってしまうことがあった。結び付いてくると途端に物語が進んでいく感覚があり、終盤にはなかなか重い事実も絡んでくる。大ごとなんだが、大問題をメインに据えないのは物語に入り込み易い効果もあったのでは。終盤は簡単な言葉で言うなら感動だった。物語が集束していくので、置いて行かれた登場人物についても描いて欲しかったとは思う。

  • 今月から生活道路の制限速度は30km/hへ。道標が無くても常識や認識が変わる。国も人も変わってく。過去は過去、今は今の事情があって、そこは酌む。でも、後悔や悲痛な叫びこそ、未来を変える道標なのでは?

  • 第76回日本推理作家協会賞受賞作とのこと
    塾経営者が殺され犯人は逃走し二年たっても行方不明
    各章4人の視点で描かれながら物語はすすむ
    序盤はなんの接点もない4人なのでそれぞれの物語が
    それぞれに展開していきちょっと退屈感も
    ありましたがでもやはり交わりだすのでした
    実際に今回のような人っているわけで接し方は
    難しそうな感じもしましたし
    当時のやりかたはどうなのかと、もちろん理解できる
    部分もあるんですが・・・
    物語としては楽しめましたです

  • 面白かった!遅ればせながら初めてこの著者の本を読んだ。丁寧な人物や心情の描写と流れるような物語の動きがすーっと入ってきて、深いところにいったい何があるのか気になって2日でイッキ読み。人の生殖を管理すること、罪人と悪人、親の愛、、登場人物たちそれぞれの揺れる想いや上辺からはなかなか見えない深層を丁寧に掬い取り、深く考えさせられる重いテーマの秀逸なミステリー。山田詠美さんの解説もさすが。他の作品も読んでみよう。

  • Boy Meets Girlではなく、少年が逃亡犯とめぐり逢ってしまう物語。だが、その少年も逃亡犯も、どこか様子がおかしい。

    少年・波留が小学6年生という設定は秀逸だと思う。成長の個人差が大きく表れる時期で、大人びた子もいれば、まだまだ子供らしさの残る子もいる。そんな中、家庭環境のためにさまざまなことを諦めざるを得なかった波留は、無理に大人ぶっている子供だ。

    一方の逃亡犯、阿久津弦は、明らかに何らかの障害を抱えている。

    そんな二人の逃避行は、どうあがいても長続きするはずがなく、あっけなく終わりを迎える。それでも、その道中にはバディもののようにずっと見ていたくなる空気感があった。

    ただし、この関係は信頼や相互補完によって成り立っているわけではない。むしろ阿久津は、波留の心の内を映し出す鏡として機能している。その意味で、二人はどこまでもいびつなバディだ。

    なかなかやるせない物語だった。

    それだけに、ラストで波留の「本当のバディ」の登場を予感させる結末が、ささやかな救いになっていると思う。

    面白かったです。

  • それぞれ違う立場の登場人物の日常が描かれ、何か関係があるのかと読み進めると、少しづつ接点が見えてくる。とても見事な描き方だった。

    結末はなんだかやり切れない。
    その時代の何が正しいのか…
    時が経って善悪の判断ができるが、その時を生きている者は、例え自分の感情と異なっても社会を信じるしかないのかもしれない。

  • ある殺人事件の犯人から、どんどん絡み合う人々の様子に引き込まれた。
    特に父親から虐待を受ける波留、殺人を犯してしまった阿久津がなんだか憐れで仕方ない。
    どちらも親に幸せを壊されてしまい、やるせないが、波留にとっては前向きで微笑ましい終わり方でよかった。

  • 4人の視点から物語は進んでいく。
    父親の命令で危険な行為に手を染めざるを得ない橋本波留。そんな波留を放っておけず、友情を寄せる同級生・仲村桜介。人望ある塾講師が殺害された事件を追う刑事・平良正太郎。そして事件の鍵を握る過去を抱えた女性、長尾豊子。
    この4人の物語が少しずつ絡まり、気付けば大きなうねりへと変わっていく。

    その中心にいるのに、自分の視点では決して語られない男・阿久津弦。

    1996年に起きた塾経営者殺害事件。通常の学校では居場所を見つけにくい子どもたちを受け入れていた個別指導塾・戸川塾。幼少期に阿久津はそこに通い、事件当時は35歳だった。目撃証言から犯人とされたが、嘘がつけず、曖昧な質問には答えられない彼が、どうして道標のような存在だった先生を殺めてしまったのか。その気持ちが知りたくて、ページを捲る手が止まらなかった。

    物語の背景には、旧優生保護法や「不幸な子どもの生まれない運動」という、今では信じられない人権侵害が色濃く影を落としている。当時はそれが“正しいこと”として推奨されていたという事実に、胸がざわつく。登場人物たちが口にする言葉を前に、完全には同意できないのに、どこか理解してしまいそうになる自分がいて、それもまた苦しかった。

    誰かひとりを「絶対悪」と切り捨てることができない物語だと思う。だからこそ、どうしようもない切なさが込み上げる。
    ニュースでは決して表に出ない、それぞれの人生や背景がそこにはあって、本人の了解なしに物事が決められていく残酷さが痛いほど響く。罪は罪として重いのに、ただ裁いて終わりにできない。

    読み終えて残ったのは、不幸な生い立ちを背負った登場人物たちが、どうかせめてこれからは幸福に向かって歩けますように。そんな祈りのような気持ちだった。

  • 最後までどうして弦が殺人を犯してしまったのかよく分からなかった。自分自身でさえもどうしてこんな行動をとってしまうのだろうと思う事をよくやっている。でも、どうしてそうなったの!!??と思う登場人物が沢山出てきてザワザワとした気持ちになった。

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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