わが復員わが戦後 (中公文庫 お2-21)

  • 中央公論新社 (2025年4月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784122076419

作品紹介・あらすじ

1945年12月、復員船は博多に着いた──。
戦争末期、一兵士としてフィリピンのミンドロ島の警備にあたり、一年弱の俘虜生活を送った復員兵を待っていた戦後社会の混乱、家族や旧友との再会……。
戦争と戦後体験から生まれた名作を集成。遺稿となったエッセイ「二極対立の時代を生き続けたいたわしさ」を付す。
〈解説〉城山三郎 〈巻末エッセイ〉阿部昭

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

戦争と戦後の混乱を冷静に捉えた作品は、復員兵の心情や家族との葛藤を精緻に描写しています。著者はフィリピンのミンドロ島での従軍体験を通じて、戦場の過酷さや俘虜生活の影響を深く考察し、復員後も戦争の影響を...

感想・レビュー・書評

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  • 個人の幸福とか、家庭の幸福が無かった時代を未だに引きずっているのでは、ニッポン

  • 俘虜記が書かれるまでの成り立ち、および大岡氏の出生について語られる。
    復員後、戦後の日本社会に復帰していくことになる大岡氏、戦後の混乱を冷静な目でよく観察している。
    西矢隊始末記は、大岡氏がフィリピン、ミンドロ島で従軍した西矢隊の詳細が述べられている。戦況の悪化でフィリピン密林の山中に追い詰められていく日本兵の描写に胸がつぶれる思いがする。
    戦後、大岡氏はフィリピンに再度足を踏み入れており、その際の紀行が書かれている。
    すべての文章は明瞭、かつ冷静に書かれている。
    あとがきに、城山三郎氏の広田弘毅について書こうと試みた際、大岡氏が仲介したというのは興味深かった。

  •  単行本『わが復員わが戦後』(現代史出版会、1978年)に昭和天皇の生涯に触れた遺稿「二極対立の時代を生き続けたいたわしさ」を加えた文庫再編集版。「Ⅰ」で1946年冬に博多に帰還してから「俘虜記」を書き始めるまでの日々を描いた短篇が、「Ⅱ」ではミンドロ島で大岡が配属された部隊の記録を陣中日誌風に綴った「西矢隊始末記」の他、1960年代のフィリピンへの慰霊旅行にかかわるエッセイが収録される。

     前者については、復員して帰国した兵士の心情と、それを迎える家族の思いとのすれ違いや葛藤、戦場や収容所から「復員」しても、戦後の日常になかなか溶け込むことができない身体のありようが大岡らしい精緻な筆致で記される。あの大岡が、帰国後しばらくは文字がアタマに入ってこなかったと書いていることには驚いた。「愉快な連中」では、中村光夫や小林秀雄、青山二郎と大岡との交流・友情がしみじみと語られる。
     「西矢隊始末記」は、ミンドロ島で大岡が配属された部隊の戦闘について、自身が捕虜になった後の時間まで含めて、誰が・どこで・どのように命を落としたかが詳細に描き込まれている。この記述を準備するためにどれほどの準備をしたのかを想像すると、大岡の義務感・責任感が伝わってくる。結局のところ大岡は、「日本軍兵士」というアイデンティティから自由になることができなかったのではないか?

  • 大岡昇平を読むのは初めてだけれど、とても面白く読んでいる。奥さんの疎開先が明石の大久保で、
    復員後、戦後すぐの風物を記した随筆も興味深かったし、それにつづく『帰郷』も、和歌山ルーツの、
    実家のお姉さんの離婚騒動、顛末も現代的で、調停裁判をしたり、財産を争うのも令和の今と変わらず、読み飽きなかった。

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著者プロフィール

大岡昇平

明治四十二年(一九〇九)東京牛込に生まれる。成城高校を経て京大文学部仏文科に入学。成城時代、東大生の小林秀雄にフランス語の個人指導を受け、中原中也、河上徹太郎らを知る。昭和七年京大卒業後、スタンダールの翻訳、文芸批評を試みる。昭和十九年三月召集の後、フィリピン、ミンドロ島に派遣され、二十年一月米軍の俘虜となり、十二月復員。昭和二十三年『俘虜記』を「文学界」に発表。以後『武蔵野夫人』『野火』(読売文学賞)『花影』(新潮社文学賞)『将門記』『中原中也』(野間文芸賞)『歴史小説の問題』『事件』(日本推理作家協会賞)『雲の肖像』等を発表、この間、昭和四十七年『レイテ戦記』により毎日芸術賞を受賞した。昭和六十三年(一九八八)死去。

「2019年 『成城だよりⅢ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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