世界の歴史 1

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124034011

感想・レビュー・書評

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  • 中央公論社の『世界の歴史』シリーズの第1巻です。人類の誕生から文明の誕生(アンデス文明も含む)、メソポタミア文明(都市国家の成立~アッシリアの滅亡と新バビロニア王国)、エジプト文明(新王国時代の終わりまで)が範囲となっています。人類の誕生については、原人や旧人が直接我々現代人につながっていないという説はだいぶ人口に膾炙した感がありますが、今の教科書には反映されているのかどうかは、ちょと今手元に最新版の世界史教科書がないため確認できません(ここ2年間先史時代は教えてないし、今年は世界史Bすらもてなかったので教科書を読んでませんでした・・・)。ようは、サハラ以南のアフリカで新たな系統の新人が誕生して全世界に広がり、ネアンデルタール人などは氷河期のあいだに滅亡したということらしいです。

    また、文化と文明の違いについて、本書では文化を「身体外と思考の中に作り出したさまざまな技術、慣習、認識や判断の基準などを総称して文化という。」(125ページ)とし、文明を「国家という政治システムを持つ社会」(131ページ)としています。さらに文化と文明の関係についても国家は政治の機構であるから、それは広い意味では社会の仕組みのことであり、したがって広い意味では文化の一部でもある。もし、人間の営みのすべてを文化というならば、文明とは国家という政治機構を持った社会とその文化のことである」(132ページ)としています。

    メソポタミア文明について興味深かった話は、アッシリアと新バビロニアは同じく被支配民族を強制連行したが、アッシリアが民族の分断や混交をしたのに対して新バビロニアはそれをしなかったためにユダ王国の人たちはヤハウェへの信仰を保つことができたということ。いわゆるバビロン捕囚のことですが、授業でも使える話です。

    エジプト文明では、ヘロドトスの言うとおり「エジプトはナイルのたまもの」なんですが、“ナイル川の増水が肥沃な土を運び、農業に適した土壌を作る”というところまでが私の知識でしたが、さらにナイルの増水時期が麦の生育サイクルと整合しているということまでは知りませんでした。6月の夏至の頃から増水が開始され、9月中旬から10月の上旬に最高位に達する。エジプト人はこれを利用してベイスン・イリゲイション(貯溜式灌漑あるいは湛水灌漑)〔つまり水路を通じて増水の水を畑に注ぎ、水深1メートル以上の水がたまると水門を閉じて2ヶ月ほど放置する。するとナイルの水に含まれる肥えた土が畑につもると当時に土壌中の塩分が水に溶ける。あとは推水位が下がったときに水門を開けて一気に排水すれば塩化が防がれた地力を回復した畑が残されるという方法〕で、畑の地力を更新し、冬作物である麦の播種を行う。そして収穫後放置してまた増水期を迎えるということらしいです。ホントうまくできていると感心します。
    また、中王国時代を終わらせたヒクソスはエジプトに馬と戦車(戦闘用二輪車、チャリオット)などをもちこんだこと、高校世界史では新王国時代にアモン・ラー信仰(本書ではアメンと表記)が広まるということを教えるが、エジプトの神々が太陽神ラーと習合することで自身を天地創造神であるとの主張を正当化(もちろん行ったのはその神を祀る神官団)するが、それを快く思わなかった本家のラー神官団が、当時政治介入まで行うほどの権力を握っていたアモン神官団を退けるアメンホテプ4世の宗教改革に協力したということなどは大変興味をかき立てられました。

    このあたりは高校生にとって「世界史」の導入にあたるところなので、今後の授業をよりよく展開するためにも大事に、興味・関心を引き立てるように組み立てていかなければなりません。

  • シュメール、アッカド、アッシリア、ヒッタイト、、、。
    名前は聞いたことあってもまったくイメージのわかなかった古代国家が身近に感じられる。

  • 古代オリエントのアッシリアとバビロンの長期にわたる興亡史が興味深かったです。アッシリアがまた1400年もの長期にわたり盛衰を繰り返したということも世界史の中で大国の興亡がここにもあったのか、という感じです。また古代エジプトの何期にもわたる王朝の交代、特に女傑ハトシェプストとトトメス二世の夫婦など、あまりにも長い時間の中で人間が繰り返し行ってきた愚かしいことに、普遍性を逆に感じてしまいます。

  • 父さんに買ってもらった。
    いまだに半分も理解できない。ていうか、オリエントのとこしか読んでない。

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著者プロフィール

1937年、東京に生まれる。東京大学教養学部文科人類学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科教授を経て、東京大学名誉教授。先史・文化人類学を専攻。著書に『アンデスの黄金 クントゥル・ワシの神殿発掘記』(中公新書、2000年)、『人類の起原と古代オリエント』〈世界の歴史1〉(共著、中公文庫、2009年)ほか。

「2018年 『アンデス古代の探求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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