世界の歴史 (14) ムガル帝国から英領インドへ

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  • Amazon.co.jp ・本 (598ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124034141

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  • 中央公論社の『世界の歴史』シリーズでは最もページ数が多いのでしょうか、約600ページもあるので読了するのに時間がかかりブログの更新がままなりませんでした。本巻ではインドのデリースルタン朝からムガル帝国、そしてイギリス東インド会社の進出とシパーヒーの乱、そして英領インド帝国の成立までをあつかっています。また、最後の章では南インドのチョーラ朝、ヴィジャヤナガル王国、そして分裂時代から東インド会社のマドラスを拠点とした南インド征服もあつかっています。最近、教科書もインド近代史の記述が変わってきており、私が学生時代にはほとんど聞いたこともなかったマンサブダール制度(ムガル帝国が行った、騎兵の一定量の維持を条件に徴税地を与えられる制度)に、ザミンダーリー制(イギリス東インド会社が行った、数十~数百村の徴税を請け負う代わりにその地の支配を認められる制度で、ベンガル州を中心に施行される)やライヤットワーリー制(これもイギリス東インド会社が行った、農地を地片化して自営農民に耕作させる制度で南インドで施行される)をなどもよく目にするようになっています。それにしても、インドは何をするにしてもカーストがからんでくるので、日本人には非常に分かりづらくあります。そもそも、カーストに関する記述自体私達の学生の頃とは変わっており、昔は「カースト制度」と書かれていたものが今では「カースト集団」と書かれています。要するに、一つの村落では「農民カースト」や「洗濯人カースト」、「大工カースト」などさまざまな職業集団=カースト集団(ジャーティー)がヴァルナ制(バラモン・クシャトリヤ・ヴァイシャ・シュードラ)の各階層に所属して複雑な(しかし互いを補うように結びついた)共同体が伝統的に運営されていたということです。中国や西ヨーロッパ、アメリカ合衆国に偏重したこれまでの高校世界史が反省され、他地域についても詳しく書かれるようになったことは歓迎すべきですが、それに追いつくために日々勉強を続けるのは大変です。だけど、新しい知識が身につくのは楽しいことです。

    以下備忘録
    「天才か狂人か」「不運な理想家か血に飢えた暴君か」といわれたトゥグルク朝2代目の王ムハンマド・ビン・トゥグルクについてイブン・バットゥータの記述がある(つまり、イブン・バットゥータがインドを訪れたのはトゥグルク朝のとき)

    ムガル帝国の君主はスルタンではなく「パードシャー(皇帝、王の意)」を名乗る(だから「帝国」と呼ぶ)

    アクバル大帝はジズヤの廃止や「神の宗教」創始だけでなく、幼児婚やサティー(寡婦殉死)の禁止、寡婦の再婚奨励なども行っている(再婚はイスラームでは普通に行われているから当然といえば当然か)

    マラーター王国の創始者=シヴァージー(陳舜臣の『インド三国志』にも出てましたね)

    ムガル帝国の公用語はペルシア語(すぐ忘れそうになるのでここにも書いておきます)

    ペルシアの細密画の影響を受けたムガル絵画は、ムガル帝国が衰退すると、絵師たちがラージプート諸王国を新たな保護者としてラージプート絵画を興す(ただし山川出版社の『詳説世界史』にはラージプート絵画の言葉は無くなっている・・・)

    綿布の産地がインド南部だったために、イギリス東インド会社はまずマドラスを発達させた)

    コロマンデル海岸=「モルッカ諸島の左腕」・・・まずヨーロッパから持ち出した銀を南インドで綿布に換え、モルッカ諸島で香料やコショウを手にする(東南アジアではまだ貨幣経済が発達していないため、銀では交換に支障をきたす)

    インドからの綿布輸入にイギリスの織物業者が反対したため、イギリス議会は1700年にキャリコ輸入禁止法を制定する。これが東インド会社が中国貿易に目を向けるきっかけとなる。

    デリー衰退の原因は、アフシャール朝創始者のナーディル・シャーのデリー占領(1739年)と、アフガニスタンのドゥッラーニー朝のデリー侵入(1757年)

    糸紡ぎに関してはカーストの規制がないため、広く女性の副業となった。

    インド大反乱の一因といわれる牛豚の脂が塗られた薬包は、噛みちぎるところではなく手に持つところに塗られていた。当時のベンガル軍にはバラモンやラージプートのような上位カーストが多く、牛の脂を触ることは大問題であった。

    バクティー信仰の対象はヴィシュヌやシヴァなどの「大伝統」の神々であり、地方神などは対象にならない。

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